「……ねぇラビ氏、ボクとダイゴ氏、どっちが勝つと思う?」
「勝つか負けるかだから勝率50%で勝つ」
「……これでも真面目に聞いたんだけど」
シロナ対レッドのバトルでいきなり始まった緊急フィールド整備、その間にナンジャモはラビに話を聞いて自分のバトルの勝算を聞こうとしていた。今更聞いたところで変わるのは心持で戦略などが大きく揺れ動くなんて事はあり得ない。だからこれは気休めでしかない、だがそれでもナンジャモは聞いておきたかったのだろう。何せ相手のダイゴはチャンピオンリーグに進出したラビに勝っている……この舞台で同じフルバトルで。
「端的に言えばお前さんの方が有利な面が大きい。鋼タイプの技は電気タイプには今一つだが電気は鋼タイプに等倍のダメージを出せる、これだけでもかなり有利な材料ではあるだろ」
「それは、確かにそうだけど……」
「追加で言えば鋼タイプは一般的に素早さが遅いポケモンが多い、そこは速いのが多い電気と真逆な性質を持っているし、麻痺も通じるってのはかなり有利な部分と言えるな」
ラビが語るのは極めて当然な事を語っている、だがナンジャモはそれを欲しがった。客観的に自分の得意と相手の得意を比較して今の自分はどう戦えるかを知りたかった。レベの心配そうな顔は、無用な物だった、とは言わないが少し的外れではあった。
「だが鋼タイプは基本的に地面タイプの技を平然と覚える、不一致技ではあるが電気タイプでそれをまともに受けてしまえば致命傷に繋がりかねないのも当然だし、奴さんもそれを狙って来る。相手からすれば電気の唯一の弱点を突かない手はないからな」
「それについては電磁浮遊なんかでも対策するつもりだよ」
「ならいいが……お前が聞きたいのはもっと別の所じゃないのか」
「……ダイゴ氏は、ボクをどう攻略すると思う……?」
ある意味でナンジャモが一番聞きたいのがそれだった。ダイゴの戦術とはどんなものなのかという事だが、ラビが大真面目な顔をしながらも肩を竦めてしまった。
「悪いがそれは俺にも解析不能だ、俺はあの人じゃないからある程度の予測は出来るが、そのまま出してくる訳もない。ただ……メタグロスは確実に出て来る、そう思った方がいい」
「だろうね……」
ダイゴの相棒、色違いの銀に輝くメタグロス、メガシンカも行える個体であり実力は折り紙付き。ラビもランクバトルで勝利こそしているがあれは虚を突いたからこそ比較的容易に打ち倒せたにすぎないし、恐らく同じ手段は通じないと思う。
「つまり、ボクは真正面からあの鋼の貴公子に勝たないといけないって事だね……」
「そういう事だな……出来るか?」
「……正直な事を言うと分からないなぁ……ボクが何で準々決勝に居るのかさえも分からない……こんな所に立てるようなトレーナーじゃないってのはボクが一番自覚してるよ」
我ながら如何して準々決勝まで来れたのか、本当に分からないんだ。実力的にもパルデアのジムリーダーとしては下から数えた方が早い自分がどうしてPWCSの本選に参加しているんだ……本気で困惑している、多くの人の目に晒される事なんて慣れている筈なのに……世界中の人に見られる、慣れっこな筈なのに……身体が、震えている……。
「怖いよっボク、負けたくない……がっかり、されたぐ、な"い"っ……!!」
ここまで築き上げた勝利の塚、それは自分に不相応だとナンジャモは自覚している。だがここまで来てしまったそこに立つしかない、胸を張るしかない、それはいい、だけど負けたら全てを失うのでは……世界中から落胆の声が聞こえてきそうで……もう今すぐにでも逃げ出したい……。
「ナンジャモ、さん……」
レベは、まだ恋人の事を全く理解できていなかった事を思い知った。自分と触れ合っている間は、必死に虚勢を張っていたのだと分かった。何も支え、られていない……と思った時、ナンジャモの頭をぐしゃぐしゃと乱暴にラビが撫る。
「不相応?失望?誰がするかそんなの、お前はどうやってPWCSランキング26位になった」
「……それは、バトルをして……」
「そうだろ、お前は正当な手段で王道の勝利を勝ち取って来た。それの何が悪い、お前の評価は正しい……なんて偉そうな事を言う気はない、だけど―――」
ラビはナンジャモに目線を合わせて、いった。
「伊達や酔狂で俺はお前に業を最初に教えた訳じゃない、出来ると思ったから教えたんだ。やれる事だけやりゃいいんだよ、出来ねぇような事をやって大失敗したらそりゃ失望もされるだろうが、それすら笑い飛ばすのがナモ公だろ」
「ラビ―――」
「義兄さんで、いいんだよ……ナンジャモ」
そのまま笑う。
「思いっきりやりゃいいんだよ、負けるとか失望されるとか怖いとか、そんなのに惑わされるな。ただお前は、ナンジャモとして戦えばいい。俺の義妹、俺の弟の恋人として―――俺の弟子として……あのキザったらしい御曹司の顔面に一発喰らわせて来い」
「―――ナンジャモさん」
「えっむぅぅっ!?」
ナンジャモの両頬をホールドしたまま、レベはキスをする。余りにも不意打ちだったのでナンジャモの頭は真っ白になった。不安も、恐怖も全てが、消し飛ぶほどに真っ白になった。
「大好きです、僕は貴方の味方です。それだけじゃ……ダメですか?」
「―――……ううん、百人力だね」
キスを返すナンジャモ、先程までの不安が嘘のように消えている……自分は、存外単純なのかもしれない……うん、そんなのが一番なのかもしれない。
「ラビ氏、いやお義兄さん―――どうせだから、最高のバトルをしてさ、お義兄さんとお義姉さんのスピーチのネタにして来るから待っててね!!」
「そりゃいいっ拍手してやるよ、大笑い付きでな」
「うん、レベ君!!」
「あっはい!!?」
「どうせだから、そこでボクも君にプロポーズするから!!」
「えっ―――」
「行って来ます!!」
「えええええええええええええええええええええっっっ!!!!!????」
レベの絶叫を背にしながらも控室を飛び出すと、丁度整備終了の放送が入った、なんてタイミングがいい。この気持ちのままバトルに望める!!最高だね!!
「さあ、世界に言っちゃおう、おはこんハロチャオって!!!」
「ちょっとお兄ちゃんなんか凄い事言われちゃったんですけどぉ!!?」
「だな。これでラバイの一人身が加速するな」
「そこじゃねえええええ!!!?」
「何、お前ナンジャモ以外と身を固める気でもあったの?」
「無いよ!!ないけどさ、ボクがプロポーズするつもりだったんですけどぉ!!?夜景が綺麗な観覧車の頂上で指輪を渡しながらプロポーズするとか妄想してたんですけどぉ!!?」
「……ベタベタだな、お前」
「ほっといてよ!!?」
「さあ始めようかダイゴ氏!!ボクと貴方で、最高のバトルをね!!!」
「望む所だよナンジャモちゃん、結局僕が一番強くて凄いって事を教えてあげるよ!!!」
次回、ナンジャモ対ダイゴ、電気と鋼の戦い!!
をお送りしていきます。これも8話ぐらいかかるのかなぁ……。