『NEXT BATTLE ヌメルゴン VS ペンドラー!!3、2、1……BATTLE START!!』
意気込みこそ述べているが、ヌメルゴンは猛毒に侵されているしまきびしとステルスロックによってそれなりにダメージを負っている。これは中々に大きなハンデとなっている。だがカルネは慌てずに指示を出した。
「ヌメルゴン、まずは体調を整えるわよ。素早く―――雨乞い!!力強く―――命の雫!!」
「メンゴオオオッ!!!メゴッゴゴメ~ゴ!!」
その一吠えで空は暗くなり、雨が降り出すと同時にヌメルゴンは空に向けた雫を放つとそれを我が身で受ける。天から降り注ぐ雨と合わさってヌメルゴンは一気に元気を取り戻していく。それを見つつもラビはペンドラーに鉄壁と剣の舞を指示する。
「潤いボディだったか……草食辺りを警戒したけど」
「これで猛毒はチャラ、そしてダメージも大分回復したわよ」
「ああそう、だからそれが何か問題?」
ラビは全く動じなかった、起点作戦で目的としていた状態異常とダメージの蓄積が無駄になったとしても顔色一つ変えないのには理由がある事をカルネは分かっている。それを齎すまきびしやステロ、毒びしなどが排除されている訳ではない。ヌメルゴンに関しては無力化されたというだけの話でしかない。ならば問題ないと断じる。
「だったらこうするだけよね!!素早く―――溶ける、力強く―――雷!!!」
「メエゴオオオッ!!!」
素早さを上げて来るのならばこうだと言わんばかりにヌメルゴンの防御を上げながらも天からの雷を落とさせるカルネ。雨での雷は必中になる、これならば加速ペンドラーの意味はなくなる。
「素早く―――鉄壁!!力強く―――嫌な音!!」
「ペエエエドッドドドドドッ!!!」
「此処は耐えてヌメルゴン!!雷に集中よ!!!」
「メ、メエエッゴッ!!!」
鉄壁で雷のダメージを軽減させながらも、嫌な音でヌメルゴンの防御を削り取っていく。力業の雷故に幾らペンドラーでもダメージはあっという間に蓄積していく。
「素早く―――剣の舞、素早く―――鉄壁!!」
「更に上げていくわよ!!素早く―――電撃波!!力強く―――雷!!!」
必中の雷に融合させる電撃波、それが容赦なくペンドラーを焼いていく。ペンドラーはダメージを大きく受けて身体が揺れ始めている。これならば突破できると確信した時、ラビは決意した。
「ペンドラー、良く踏ん張った!!力強く―――身代わり!!そして素早く―――バトンタッチ!!」
「ペドドドドドッドッドッドットッ!!!ペド~!!!」
「ヌメルゴン逃がさないで!!雷!!」
「メエゴオオオオオ!!!」
ペンドラーは自らの分身を生み出すと即座に身を翻した、そこへ雷を放つが、ペンドラーは加速で得たスピードを活用して素早くボールへと向かう。だが雷は正確に命中する―――身代わりを貫き、本体であるペンドラーは帰還していった。カルネは身代わりは潰せたけど逃がした……!!と強い後悔を感じたが同時に次に出るそれへの警戒を弱めなかった。
『ここでバトンタッチです、ペンドラーは此処まで剣の舞を2度、鉄壁を3度と攻撃と防御を高めておりますが、それを得た後続が襲い掛かって来る事になります』
『いえ、兄のペンドラーの特性は加速。素早さが最低でも3段階は上がっているのが出てきます』
「踏み潰せ」
聞こえてきたその言葉に、カルネは身震いした。極めて単純な言葉でそれだけなのに……自分よりもずっと若い風貌の彼が……恐ろしく思えた。
「蹂躙しろ、GO!!バンギラアアス!!!」
「ギラアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
飛び出したポケモンが地面を踏み締めながら咆哮を上げた時、空を覆い尽くしていた雨雲が押し退けられていき、その代わりだと言わんばかりに砂が舞い上がって周囲を包み込んでいく。一瞬にてフィールドを支配する暴君の登場。鎌首を擡げる様にヌメルゴンを睨み付ける眼光が鋭い。
『バ、バンギラスです!!ラビ選手がバトンを託した相手は砂の暴君バンギラス!!数多くのトレーナーが切り札にも据える強力なポケモンです!!』
『兄さんのポケモンの中でも特に気性が激しい奴らがいます。バンギラス、マルヤクデ、グソクムシャ、シルヴァディ、彼らを総括して気性難四天王と兄は呼んでいます。実力は相棒であるダイケンキと互角。特にあのバンギラスは何のためらいもなくダイケンキへと向かっていく程の暴れん坊で私も下の弟のレベもバンギラスを持っているのは兄の影響なんですが……まるで歯が立ちません。それほどまでにあれは強い』
ある意味で、ラビが最も信頼するポケモンの一体がこのバンギラス。バンギラスはゆっくりと振り向きながらもラビに顔を近づける、軽く喉を撫でられて低く喉を鳴らしつつも、戦っていいんだな?と言いたげな瞳を向ける。
「その為にペンドラーからバトンをさせた、期待してるぞ」
「ッ!!!ギラアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
気性難四天王の一角と言ってしまえば恐ろしいが、バンギラスはラビの隣、つまり相棒になりたいとずっと思っている甘えん坊で、常にダイケンキに嫉妬し、何時か実力でその相棒の座を奪ってやると挑戦し続けているだけ。故にラビにこういう事を言われた大喜びで力を発揮する為か、ラビ的には扱い易くて助かっている。
「バンギラス……!!」
ラビの家に滞在させて貰っているのでラビのポケモンは他の出場者以上に把握しているつもりではいたが……まさかここで出てくるとは思わなかった。言わばラビのエースクラスポケモンの一角、と言っても自分とアンシャが訪ねてみた時は朗らかでアンシャに手を差し伸べて喜んで背中に乗せてくれたりと中々に世話上手なポケモンだと思っていたが……バトルではその一面は完全に忘却の彼方へと消え失せて、暴君と異名を取るに相応しい覇気と雰囲気を纏っている。
「ヌメルゴン、油断しちゃダメよ」
「メェッゴッ!!」
このヌメルゴンとて、伊達にチャンピオンたる自分の手持ちとしている訳ではないのだから。やる気十分な表情を見せながらも開始の合図を今か今かと待つ。
『CHANGE BATTLE ヌメルゴン VS バンギラス!!3、2、1……BATTLE START!!』
「ヌメルゴン、素早く―――溶ける、力強く―――熱湯よ!!」
「バンギラス、素早く―――龍の舞、力強く―――冷凍パンチ」
溶けるから熱湯に繋ごうとしたヌメルゴンだが、龍の舞で一気に踏み込んでいたバンギラスがヌメルゴンの顎を冷気を纏った拳が捉えた。カルネは驚愕した、幾ら加速で得た素早さをバトルタッチで受け取っているからと言って、こんなに素早く動けるのか!?と思ったが即座に疑問が溶けた。
「普段からこういう戦い方をしてたのね!!だから淀みなく動けるのか!!!」
「ご明察、流石はカルネさん。伊達にチャンピオンではありませんね……分かった所で解決できなければ意味はありませんが」
「―――上等じゃない、ヌメルゴン!!」
「メエエゴッ!!!」
顎にアッパーを受けたヌメルゴンは空中で回転しながらも着地、熱湯を発射するが、バンギラスはそれに向けても冷凍パンチを繰り出すと熱湯を凍結させてしまった。ヌメルゴンは慌てて技を打ち切りながらも後ろに跳んだ。砂嵐の中、中々にきつい戦いを強いられる事になるが……やるだけだ、とカルネは気を引き締めた。