「来るわよ!!素早く―――溶ける、力強く―――龍の波動!!」
「メエゴオオオオッ!!!」
「突き進め、ダメ押し!!」
「バアアラアアアアア!!!」
バトンタッチによって得たスピードと防御力、そして攻撃力はバンギラスの強さを更に補強した。欲を言えば身代わりも欲しかったが……ない物強請りをする暇はない、龍の波動を砂嵐によって上昇した特防でごり押ししながらも突き進み、その横っ面に痛烈な尻尾の殴打を加えてやる。溶けるによって防御は上昇している筈なのにヌメルゴンは大きく吹き飛ばされてしまう。それでもなんとか踏ん張って倒れ込まなかったのは流石チャンピオンのポケモンだと思う。
「なんてパワーなの……!!素早く―――命の雫!!力強く―――ボディプレス!!」
「何時まで耐えられるか、素早く―――龍の舞、力強く―――ダメ押し!!」
回復しながらも飛び掛かって来るヌメルゴンに素早く真横に飛び出してボディプレスを回避すると今度は助走をつけ、加速を付けてのドロップキックでヌメルゴンを吹き飛ばした。バンギラスという重量級ポケモンのドロップキック、アクロバティックな攻撃にヌメルゴンも驚愕しながらも立ち上がるが、そこへ悪の波動が襲い掛かって来て怯んでしまう。
「次はその回復を封じる。素早く―――挑発、力強く―――ストーンエッジ!!」
雄叫びと共に放たれた挑発はヌメルゴンの技を縛り上げる、これで高速回復が封じられてしまう。そして地面を殴りつけたバンギラス、それによって隆起した地面から鋭利な岩刃が浮かび上がるとそれを尻尾で打ち据えて発射するバンギラス。
「本当に詰めて来るわね!!素早く―――冷凍ビーム!!力強く―――吹雪!!」
冷凍ビームでストーンエッジを空中高速冷凍しスピードを殺し、それを吹雪で逆に押し返して攻撃しようとするが……それを容易に砕いてしまうバンギラス。この砂嵐下ではバンギラスには通用する攻撃を放つのは極めて困難。
「(手があるとすればドラゴンテールによる強制交代だけど、ラビ君がそれを考慮していない訳が無い……逆にこっちがそれをされて後続に猛毒を撒かれたらマズいわ……ヌメルゴンで何とかバンギラスを消耗させるか、盤面をリセットしないとジリ貧で詰み……)」
バトンタッチの凶悪性は重々承知していたつもりだが、それを極めて効率的に運用すると此処までになるといういい例になるとカルネは理解した。実はルチャブルで剣の舞やビルドアップを積んで後続にバトンタッチする事は検討していた、フォレトスに飛び膝蹴りを当てたらそうするつもりだったのだが……ラビはもっと合理的で且つ容赦がなかった。
「(なんというか本当に鋭いわね……鋭い?―――そうよ、これだわ!!)ヌメルゴン、ちょっと初チャレンジだけどぶっつけ本番だけどやってみるわよ!!」
「メ、メゴッ!?」
突然の言葉にもヌメルゴンはそれが何を指しているのかを理解してるのか吃驚していた。だがカルネの顔を見て直ぐに覚悟を決めたかのように勇ましい顔になった。
「バンギラス、来るぞ。馬鹿共を相手にするつもりで行こう」
「ギラァァァ……」
何かを試そうとしている、警戒する。ラビの頭の中で何をして来るかをシミュレートするが、この世界ではそれが余りに役に立たないという事は分かっているので、それを全てリセットして五感と直感を研ぎ澄ませてそれに備える。
「行くわよヌメルゴン、鋭利に―――ハイドロポンプ!!!」
「メエエエエッ……ゴオオオオオッ!!!」
やって来たのは巧業、初挑戦と言いながらも形になっているのが流石チャンピオン。だがそれ以上にラビはこのハイドロポンプに脅威を感じた、それは―――
「絶対に喰らうなバンギラス!!」
「ギラアア!!!」
咄嗟に回避するバンギラス、ラビの指示ながら間違いないと回避した直後、背後にあったステルスロックへとそれが直撃するのだが……それが切断されるように真っ二つに割れ、ズレる様に落ちていった。それを見たバンギラスは言葉を失い、ラビは汗をかきながらもその正体を看破する。
「―――にゃろめぇ……砂嵐の砂を研磨剤代わりにしてるのか……!!」
「一撃でバレた!?だとしても変わりないわ、連発よヌメルゴン!!」
「メエエゴオオオオオ!!!」
「接近しろバンギラス!!」
「バゴオオオオオオァァ!!!」
『ヌ、ヌメルゴンのハイドロポンプ凄まじい破壊力、いや切れ味というべきでしょうか!?岩の密林と化していたフィールドの岩、ステルスロックなどを切り刻んでいきます!!ラバイさんこれは……』
『ウォーターカッター、ですね。ハイドロポンプは単純に強力な水鉄砲という訳ではなく、強力な水圧を掛けて発射する大量の水です。そこに巧業という技の密度を増す第三の業を加えつつも、砂嵐で周囲に舞っている砂を巻き込み研磨剤として機能させる事で、岩をも両断する切断力を秘めた一撃に昇華させる事に成功しているんです』
「……捨てるしかないな」
回避しつつも距離を詰めていくバンギラスだが、その過程でフィールドに設置したステルスロック、いやまきびしや毒びしなどが次々とウォーターカッターで切断されていくのが分かる。フォレトスの頑張りはヌメルゴンだけにしか通用しなかった、正直申し訳ない……だからこそ
「そいつだけは何としても、叩き潰せバンギラス!!!」
「バアアゴオオララアアアアア!!!!」
「ヌメルゴン、鋭利に―――ハイドロポンプ!!!」
「メエゴオオオオオオオオッ!!!!」
超至近距離に到達したバンギラスへとウォーターカッターを浴びせかけようとしたヌメルゴン、その一閃を腕の間を通らせてギリギリの所で回避するバンギラスだが、それを読んでいたと言わんばかりに薙ぎ払うように迫ってくる一撃。これはもう当たる……とバンギラスは覚悟しつつも、その瞳は唯ヌメルゴンだけを捉えた。もう、外さん。
「猛々しく―――ダメ押し!!」
「バアゴオアアアアア!!!!」
猛烈な拳がヌメルゴンを捉えたと同時にウォーターカッターが確かにバンギラスを捉えた。それはバンギラスの能力変化と砂嵐による特防上昇を完全に無視し、その身体の本体を抉る。激痛が駆け巡るが裂帛の叫びと共に振り抜いた一撃はヌメルゴンを重力を無視したかのように真横に吹き飛ばして特殊合金の外壁へと叩きつけた。その一撃は艦全体に伝播する程の衝撃を生み出し、一時、艦からどよめきの声で溢れさせる。
「ヌメルゴンッ……!!」
「メ、メエエゴォォォッ……」
『ヌメルゴン、戦闘不能!!バンギラスの勝ち!!』
『バンギラス会心の一撃でヌメルゴンを打倒しました!!砂の暴君は伊達ではない、岩をも両断する一撃も暴君を下すには至らず、雨の革命はならず!!』
「ギ、ラァァァッ……!!」
思わず膝を突いてしまうバンギラス、巧業で能力変化を完全無視したハイドロポンプは容赦なく、抉って来た。何とかヌメルゴンを倒す事は出来たが、これではバンギラスを活かすのは難しいと言わざるを得ない……だがそれでも続行するしかないのが現状だ。
「悪いがお前は戻せない、気張ってくれバンギラス」
「ギラアアアアアアアアッ!!!!」
この程度問題ない!!と大声を張り上げながらも返事をするバンギラス、確かにダメージは大きいがまだまだやれる範疇だとアピールする。それを見てカルネは勝機を見出す、ギーマ戦で学んだ賭けを行う価値、それが見出した勝機の光と活路への希望、これを無駄にするわけにはいかない。
「ヌメルゴン、貴方の活躍は大きいわよ」
ボールへと戻したヌメルゴン、この価値は本当に大きい。さあそれを活かす為に足掻くとしよう。
「さあ活路を開くわよ、ガチゴラス!!!」
「ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアッスッ!!!」