「ルカリオは、ここでリタイアだな」
家でお茶を飲みながらラビは唐突に言った。視線の先にはポケモンセンターで治療を受けて帰って来たルカリオが木の下で瞑想をしているが……アーマーガアに煽られて直ぐに追いかけ始めた。一見すればいつも通りの光景だが……ルカリオは走れていない。そんな様子を見て、ハピナスとラッキーとタブンネが慌てて追いかけ始めた。
「再起不能って訳じゃないが……回復には時間が掛かり過ぎる。サトシさんとのバトルには出せねぇな……おっとそこで渋い顔をするのは違うんじゃないのカルネさん。俺は別に責めている訳じゃない、冷静に状況を言ってるだけだよ」
「でも……」
「あいつは満足してる、サーナイトとの戦いはあいつを十二分に満足させた」
今回のバトル、ルカリオは心の底から満足している、自分の全てを出し切れるような戦いに心の底からの笑みを浮かべているのがメガストーンを通じてラビにも伝わって来ていた。本当に嬉しそうだった……。
「そんなに酷いのラビ氏」
「ポケモンセンターを出る許可はもらえた、だがバトルは厳禁で走る事も許されない。最低でも3週間は安静にする事って言われてな」
「それじゃあラビさんは……」
ルカリオはラビにとって最強のメガシンカポケモン、それを準決勝では使えないという事になった。これはかなり痛い、相手はサトシなのだ、現PWCS1位のワールドチャンピオン相手に最高の戦力を揃えられないという事になる。
「まあ、元からあいつ出す気なかったけどね」
「えっ?」
思わずオニオンが間抜けな声を出してしまった。この家に来てからラビのポケモンの中でも特に強力なのが三馬鹿や四天王と言われているポケモン達なのだが、その一角を担っているポケモンを、サトシ相手に使う気がないとはっきりと明言する。
「ンな事言ったらカルネさん相手にダイケンキを使わなかった事ですら驚かれまくったじゃん俺」
「あれは本当に私も驚いたわよ、10万ボルトを連発してたのもダイケンキ対策で練習してたから威力に自信があったからなのよ?後ルカリオ相手だと効果が薄いエナジーボール辺りもね」
「おおっ怖い怖い」
試合後のインタビューでもラビはダイケンキを起用しない事への質問があったのだが、どんだけダイケンキを使うと思われているんだとツッコミたくなったが……カルネのパーティ予測的に刺さりが悪く、役割が持ちにくいと説明したら一部は納得しつつも他は全く理解されなかった。
「キバナっち~お兄ちゃんの起用法ってそんなに可笑しいん?相手のタイプに刺さりのいいポケモンを起用したり繰り出したりするのって基本中の基本じゃんってウチなんかは思うけど」
「それも正しいと言えば正しいと思うぜオレ様も。相手のパーティ構成が分かっているならそれに最適なポケモンを選出してぶつける、それも正しい」
「だけど、ボク的にはちょっと難しいかなぁ」
ナンジャモも意見を述べ始める。
「一つはそもそもの問題としてそのポケモンを用意出来るかって事。幾ら有効なポケモンが分かったとしてもそれを用意出来なきゃ意味ないでしょ?」
「あ~そだね」
「ラビの場合はポケモンの数がそもそも多いからな……ンで二つ目はそのポケモンの練度、レベル的な問題だな」
仮に相手のポケモンが50だとして、その有効なポケモンがレベル42などだったら採用は見送る判断をするだろう。ポケモンを沢山捕まえるのはまだいいが、それを実践レベルにまで鍛え上げるとなるとまた別の問題になる。
「ンでラスト、記者連中が一番驚いてたのは相棒っていう絶対の信頼がある奴を外した事」
サトシで言えばピカチュウをフルバトルの場面で起用しなかったに等しい行為、と一部のニュースでは書かれている。文字通りの相棒をこの重要な局面で起用しなかった事に驚かれたのだ。ポケモンバトルにおいて最も重要視される信頼を度外視したと叫ばれている。
「いやルカリオだって十分に信頼関係あるんだけど……」
「ダイケンキ程ではねぇだろ」
「いやまあそうだけどさ……」
信頼だけで勝てたら苦労はしないと言いたい所だが、懐き効果などを考慮したら否定出来ないのが本当に酷い事実だ……。
「というかもういいだろ勝ったんだからさ」
「本当ね、私が負けてラビ君が勝った、それが紛れもない真実」
「お母様もラビさんも凄かったのです!!」
「にしてもこれで準決勝のメンバーも勢揃いか……」
レッド対ナンジャモ、サトシ対ラビという組み合わせになり、PWCSはさらに過熱していく。が、今回の準々決勝のダメージはかなり深刻らしく、集中的な修繕工事を行う為に準決勝はなんと1週間後に設定された。これには不満も多く出たが下手したらバトル中に艦沈むぞ、と大真面目な警告が出された一斉に鎮静化された。
「にしてもよ」
「何よキバナ、お兄ちゃんの準決勝進出に文句でもあるの」
「いやねぇけどさ……カントー対パルデアの構図になったなって思って」
「「……あっホントだ」」
「おいお前らパルデア在住の自覚ねぇのか」
そんな事言われても……だが確かにカントー対パルデアの戦いだ。最終的にカントーとパルデアか、カントー対カントーか、パルデア対パルデアの戦いとなると思うと中々に愉快な構図だ。
「ラビ、お前サトシ相手にどんなパーティで行くんだ?」
「まあダイケンキを今回外す気はない、というかサトシさんのパーティを読むのもキツい。なんだったら俺は各地方からエースを選りすぐったパーティで来たとしても驚かないよ」
サトシも自分ほどではないが多くのポケモン達がいる。しかもサトシは理論派ではなく直感的且つ感情的な所でパーティ編成を決める所もあるので余計に読めない。レッドの方がまだ読める。というかレッドの方が確実に読める。
「だから俺がこれだと思う連中で編成する。それで相性悪くてもそこはそれで―――面白いバトルが出来そうじゃん」
素直な事を言うと、全地方からエースポケモンのみ選抜されても自分は喜ぶ自信がある。あのポケモン達と戦えるとワクワクしている自分がいて、この期待を裏切られる事にも期待してる自分がいて、本当に度し難いとさえ思う。だが……これこそがトレーナーの性なのだろう。
「バトル、したいなぁ……早く」
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