「ンニャ……」
「マ、マスカーニャ大丈夫か?」
「ニャアアウンンッ……」
「おいおいおいマスカーニャ、ここでもやるのかそれ?」
まきびしを踏んでダメージを受けるのだが、それを気にしないようにサトシに跪いてその手の甲にキスを落とすマスカーニャ、サトシの様子から察するによくやっている事らしい。まるで愛しい人へとするような仕草だ、それを見てラビはあっこいつ落としたな?と思った。そして同時にダイケンキは思った、お前は人の事言えねぇだろ、っと。
『サトシ選手はパルデア地方の初心者向けポケモンの一角、草タイプのニャオハの最終進化形たるマスカーニャ!!そしてラビ選手のポケモンは……なんだこのポケモンは、データに一切ありません!?あっちょっとお待ちください、今なんかデータが受信されました』
『なんかってなんだよなんかって』
『あっこれ図鑑データですね……えっと、チオンジェン、災厄ポケモン。王の悪事を木簡に記し処罰された人の恨みが枯葉を纏いポケモンとなった。草木のエネルギーを吸い上げる。周囲の森は立ち処に枯れ果て、田畑は不作となる。と書いてあります』
『滅茶苦茶やべぇポケモンじゃねぇか……!?』
「何言ってんだお前、バンギラスとか山を崩したり、ミカルゲなんて悪行を重ねた魂がポケモンになったっていうし、ジュペッタだって捨てられた縫いぐるみに怨念が宿ってポケモン化したって言われてるんだぞ。破壊と死を司る伝説のポケモンだっているんだ、この位なんでもないじゃん」
『まあうん、確かにそれを言われてしまうと……というか何平然とこっちのシステムに干渉してんだよアンタ⁉』
やばいやばいと言われたりするが、図鑑説明ではもっとやばいと言われているポケモンなんて幾らでもいるのだ。マグカルゴなんて見てみろ、体温が最高で1万度まで行くとか言われてんだぞ。本当だったら地球溶けてんぞ。それに比べたら大地の栄養を奪う程度何よ!!と言いたい気分である。
「というか、チオンジェンは俺の庭だと全然厄災じゃねぇぞ。栄養過多になってる所から余分な栄養を吸い出して土壌の健全化を担って貰ってる。バトル好きって意味じゃこいつ以上の厄災がウチには居るんでね」
「「「「「ああっあいつか……」」」」」
会場どころか世界中が一匹のポケモンを想像する、その中でも翼を広げて吠えて戦いを始めているのだからもう筋金入りである。本当にあんなのが配信のマスコットとか本当に心外である。
『ええ~っととにかく色々ありましたが、如何やら草タイプ、しかも同じく悪タイプを持っている同士の対決となるようです!!これは中々に面白いバトルが見れそうです!!』
『草悪ミラーマッチなんてなかなか見れないぞ、これは楽しみだ』
『NEXT BATTLE マスカーニャ VS チオンジェン!!3、2、1……BATTLE START!!』
「行くぞマスカーニャ!!素早く―――グラスフィールド!!力強く―――トリックフラワー!!」
「ンンンニャアアアウッンンンンンンニャッ♡」
地面に手を置くとフィールドが一気に草原へと変貌していく、そしてそれによってパワーアップしたマスカーニャはそのままトリックフラワーを発動、回転しながら行う際にサトシへのウィンクを忘れずに行いながらも力業トリックフラワーはチオンジェンへと降り注ぐのだが、最早トリックも関係ないと言わんばかりの巨大な爆弾が降って来た。
「トリック関係ねええええっ!!?」
思わずラビも叫んでしまう程、リコのマスカーニャとは全く違う方向性で攻めて来たという感じだった。そしてそれは一瞬輝くとフィールドを飲み込むほどの大爆発を引き起こした。
『トリックフラワーの必中って、こういう意味でしたっけ……』
『いや、マスカーニャのテクニックで相手の不意を突いたりする感じだった気がするんだが……』
超広範囲を火力で薙ぎ払うトリックフラワーに流石の実況も言葉を失い、解説のラバイも言葉が出なくなっていた。これほどの爆発、同じ草タイプだとしても大ダメージは必須―――と誰もが思っていたのだが
「ル、シカ、スッ!!!」
「お前ホントタフだな……」
『何と!!?チオンジェン、あのトリックフラワーをまともに受けてピンピンしております!!信じられません、必中確定急所且つグラスフィールドと力業で強化されたあの一撃を受けて無事です!!』
『おいおいおいどういうポケモンなんだよチオンジェンって!!?』
「凄い、負けてられないぞマスカーニャ!!」
「ンニャゥ!!」
サトシはやる気になっているが、流石にこれ程のタフさはラビも想定外だった。このタフさの理由の一つがチオンジェンの特性である災いのお札。場に居る限り、同じ災いのお札でない限りは攻撃が25%低下するという物理主体のポケモンにとって死活問題になりかねない強力な物。これによってチオンジェンの防御力はザマゼンタと互角にまでなる。
「だが念には念をだ、素早く―――花粉団子」
「ルス」
チオンジェンは真上に向けて花粉団子を打ち上げた、それは直ぐに落下してチオンジェンへと直撃するとその傷を一気に癒していく。
「ああそうだ、整備班の皆さん、今のうちに謝っときます、ごめんなさい。よしこれで好き放題やれるな、チオンジェン全開だ!!」
「カキルススウウウウッ!!!」
何処からか全然よしじゃない!!という声が聞こえて来るが無視しておく。後でフラージェスで元に戻しておくから勘弁してくれ。
「素早く―――挑発!!力強く―――根を張る!!」
「ダイゴさんと同じ戦術!?避けろマスカーニャ!!」
「ンニャアアアアッ……!!」
あと一歩のところで挑発の回避に失敗し変化技を封じられるマスカーニャ、だがこの位ならまだまだカバー可能だ。チオンジェンはどんなポケモンなのかまだ分からない、だが縮こまっていたら勝てないのも事実。だから攻めあるのみ!!
「素早く―――波動弾!!力強く―――トリックフラワー!!」
必中技の同時攻撃、片手で波動弾を発射しつつも片手で再び指を鳴らして巨大なトリックフラワーを投下する。草と悪タイプならば波動弾は有効な手段となり得るだろうとサトシは考えた。そして見るからにチオンジェンは動きが鈍いポケモン、ならばスピードで攻めるだけ。
「素早く―――花粉団子!!力強く―――カタストロフィ!!」
「ルウウウスウウウッ!!!」
迫ってくる波動弾を花粉団子をぶつけて誘爆させ、その爆発に巻き込んでトリックフラワーを迎撃
する。再びの大爆発が巻き起こる中で赤黒い二筋の光線が飛来してきた。それは真っ直ぐにマスカーニャへと伸びていく。
「躱せ!!」
「ンニャッ!!!」
マスカーニャは土壇場で回避するが、それは地面へと届いた瞬間―――グラスフィールドによって茂っていた筈の草原が瞬く間に枯れ果て始めた。地面からは生命力あふれる緑が消え、土と同じ茶色へと変貌していく。
「ンニャアアア!?」
「これって……まるでイベルタルじゃないか……!?」
それを見たサトシが思わずイベルタルを想起したのはある意味、トラウマに近い反射でもあった。イベルタルのデスウィングによって全ての命が吸い取られ石化していく光景に限りなく似ている……それだけの事を齎す力をあのチオンジェンは持っているのだと、理解した。
『こ、これはグラスフィールドが一瞬にして消えてしまいました!!?草木のエネルギーを吸い上げるに偽りなし……災厄ポケモン、チオンジェン!!!』
『なんつうポケモンを手に入れてんだよあの人、つうかどういう経緯でゲットした!?』
「まだグラスフィールドを消滅させただけでフィールドの土壌には影響与えてねぇよ……チオンジェン、デビュー戦を派手に飾るぞ!!」
「カキシルススウウウウッ!!!」
マスカーニャ出した時点でもう目論みバレバレで笑った。どっか寮長的なマスカーニャ、ベイリーフとはいつも自分の方がサトシを好きだと言い合いしてキャットファイトしてます。