チオンジェンというポケモンにとって、今の生活は何物にも代え難く、彼は即答で幸せだと答える事が出来る。封印されていた暗い暗い闇の中ではなく、ラビが立ててくれた小さな小屋、そこへと身体を仕舞い込んでしまえば完全に封鎖されてしまう程に狭い小屋、だが空は見える。窮屈さなどは欠片も感じなかった。
『ぽに!!』『フラ~ジェ』
『ルス』
今日も始めるのは庭の土壌チェック、栄養が不足している部分はないか、逆に多すぎる部分がないか。不足しているならば二人が補填する、多すぎれば自分がそれを吸い上げる。そして不足している場合でも基本的にチオンジェンの出番はある、二人の土壌を回復させる能力はそこまで細かいコントロールが出来る訳でもないので、基本的に多めに与えてしまう。それをチオンジェンが吸い上げていく、此方はかなり精密なコントロールが可能なので土壌をベストな状態に維持する事が可能となっている。
『ルスシ』
それが終われば散歩がてらに庭を一回りしつつ雑草などがあったらそれから栄養を吸い取って除去していく。そうしていくと朝食の時間になり、ご飯を食べ終わると次の仕事が舞い込んで来る。
『ガアアアアアアアアアアアアッ!!!』
当然、バトルである。アーマーガアをはじめとして、気性難四天王は当然の事、バトルを希望する者たちの相手をするのである。他からすればこれを引き受ける事はあり得ないと言われるが、自分にとって何物にも代え難い時間でもある。
「ンンッ、ニャアアアアッ……」
「これで、何発目のトリックフラワーだったかな……」
「ルルルウウウスッ……」
一日に最低でも5度のバトル、しかも最低回数だったのは初日のみでそれ以降は毎日15回以上をもこなし続けるチオンジェン。そんな彼にとって、確定急所のトリックフラワーだろうと耐え切る事は出来る。
『チオンジェンこれも耐えます!!怒涛の攻撃を仕掛けるマスカーニャ、トリックフラワーを囮にしてのじゃれつくやローキックにもびくともしません!!!』
『根を張るで体力は継続的に回復する、それに加えてちょくちょく花粉団子での回復……だとしてもあのタフさは異常だぜ……』
流石のマスカーニャも疲れが出始めているのか息が切れてきている。業の連発はPPも多く消費するので疲労も大きい。業を覚えたてのトレーナーが真っ先にやってしまうのがPP切れによる技の不発だという、故に耐久型の強みはこういう時に出やすい。
「さあて、こういうのはどうかな―――素早く―――宿木の種!!力強く―――草結び!!」
「ルゥゥスッスッスッ!!」
連続で発射される宿木の種、しかしそれはマスカーニャには当たらずにその周辺へと落ちた。サトシもチオンジェンも疲れが溜まっているのかと思った直後に宿木の種が発芽、そこから伸びた無数の蔓が伸びていく、そして直後にそれを補強するかのように地面から突き出した無数の草結びの蔓が宿木と融合してマスカーニャを取り囲むように檻を形成した。
「しまった囲まれた?!」
「ンニャアアニャアアンニャアアア!!!ニャアアッ……!?」
『チオンジェン完全な檻を作り上げました!!宿木の種は草タイプには効きにくい技とされていますが、それを敢えてフィールドに撃ち込んでそこで発芽、更に草結びと融合させる事で強固な壁を生み出しました!!』
『熟練度によっては宿木の種が効く事もあるが……通用しない事を警戒して地面で発芽させるのか……どういう発想だよ』
「自然の知恵だ、ジョウト地方でこういう使い方をするメガニウムとバトルしたんでな……久しく会ってねぇな……まあいい、チオンジェン!!」
「ルゥ!!」
「素早く―――カタストロフィ!!!」
「ルウウウスウジェエエ!!!」
瞳から発射される赤黒い光線、マスカーニャは何とか回避を試みようとするのだが狭い檻の中ではそれも出来ない。それどころから檻から草結びが伸びて来て足を縛っている。それによって回避が完全に塞がれてしまい、身体へとカタストロフィが突き刺さった。
「ン、ンニヤァァァァッッ……!?」
カタストロフィによって身体から力抜けて行くのと同時に激痛が襲って来る、脱力と激痛の二重奏は命中さえすればアーマーガアの動きも封じる事が出来る程。それによって動きを封じられた所にとどめの一撃……これこそがチオンジェンの必勝パターン。
「力強く―――花粉団子!!」
「ジェエエエエオンッ!!!」
フィールドを抉るような勢いで発射された一撃、それは檻ごと吹き飛ばすように炸裂してマスカーニャは吹き飛ばした。真っ直ぐ真後ろ、サトシの方へと飛んでいくのだが
「マスカーニャ!!!ふっぐううっ!!」「ピイィイカァァッッ!!」
サトシは避ける事もなく、吹き飛ばされてきたマスカーニャを真正面から受け止めた。ピカチュウも後ろから足を支えて補助をしてサトシはそれを完璧に受け止めきり、後ろに倒れ込む程度で済ませた、済ませてしまった。それを見たラビは流石に俺でも避けるぞ……と呟いてしまった。
「マスカーニャ大丈夫か!?ピカチュウもお前も!!」
「ピィカ!!」
ピカチュウはこの位全然!!と言わんばかりにVサインを浮かべる、流石の貫禄である。それに安心しているとマスカーニャは自分がサトシに抱かれている事に僅かながらの優越感と歓びを感じつつも罪悪感の中で意識を手放してしまった。
『マスカーニャ、戦闘不能!!チオンジェンの勝ち!!』
『マスカーニャの猛攻を耐えきったチオンジェン、圧倒的な耐久力です!!』
『相手の攻撃を全て耐え切り、チャンスを逃さずに物にする……こういうの上手いんだよなぁ兄さん……ガラルだとこういう事しまくったから評判悪かったって聞きましたが、見ごたえあると思うのは私だけですか?』
『いや私としても相手の攻撃を全て受け切る姿は中々にハラハラドキドキする物がありました』
さり気無くガラルのあれこれに対するコメントが流れる中でサトシはマスカーニャの頭を撫でて上げてからボールに戻した。パルデアでロケット団に襲われているのを助けて仲間になったニャオハが進化したマスカーニャ……だがその活躍は決して無駄にならない。寧ろチオンジェンの能力の殆どを解明してくれたと言っても過言ではない。
「繋げるぞ、リザードン、君に決めた!!」
「グウウオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!」
『サトシ選手、次はリザードンだぁぁぁ!!!レッド選手とのメガリザードンと死闘を演じたあのバトルは伝説の域!!氷山をも焼き尽くす火炎龍リザードン、大地を吸い上げるチオンジェンを攻略出来るかぁ!!?』
「頼むぜリザードン!!!」
「グウオオオオン!!」
「出て来たかリザードン……チオンジェン、油断するな!!」
「ルスッ!!」
現在の状況
サトシ ラビ
×シャリタツ ×クレッフィ
×ドダイトス チオンジェン
×マスカーニャ ???
リザードン ???
??? ???
??? ???