低い姿勢を維持しているラビのゲッコウガに対して、サトシのゲッコウガは見下ろすように腕を組んで視線を向けているが……互いは動く気配が全くない。サトシとお揃いのグローブを付けてそこに埋め込まれたメガストーンを持つサトシのゲッコウガと額当てのようなバンダナにメガストーンを付けているラビのゲッコウガ。
『既に開始のゴングはなっていますが、ゲッコウガ同士、互いに視線を交えているのみで動こうとしません。あっいや今立ち上がりました、しかし……攻撃ではありません、互いに一定の距離を取りながらもゆっくりと歩いています、円を描くように互いに観察するかのように……』
『既に二人の中では刃が交わされているんでしょう……幾重にも交えられた刃の中で様々な思考が乱れ飛んでいる……どちらがその均衡を破るのか』
ゆっくり、ゆっくり……互いの一挙手一投足に注視しながら……
「(全然隙が無い……すげぇ忍者村にいたゲッコウガのような雰囲気は感じるけど、あれよりもずっと隙が無いし足運びも無駄がない……)」
「(やっぱりこの人のゲッコウガは格が違うな……オーラと覇気が違う……やれやれ、この先に絆変化とメガシンカがあると思うと溜息が出そうになるなぁ……)」
お互いにそれぞれのゲッコウガ思いが出る中で、遂にその時が来た。
「ゲッコウガ!!素早く―――アクアブレイク!!力強く―――水手裏剣!!!」
「素早く―――挑発!!力強く―――影分身!!」
遂に動いた両者、アクアブレイクから水手裏剣を繋げるサトシのゲッコウガ。自ら纏ったアクアブレイクの水を水手裏剣に集約し、更に巨大な水手裏剣を生み出してそれを投擲する。それに対して素早く―――挑発をした後に無数の分身を生み出したラビのゲッコウガ。迫り来る水手裏剣を分身ゲッコウガ達は一斉に回避する。
「素早く―――燕返し!!力強く―――影打ち!!」
「コウゥゥウガ―――っ!?」
「ゴウガァッ……!!!」「疾風返し……!!」
燕返しの体勢に入ったゲッコウガの懐に入り込み、顎の真下から掌底をお見舞いする。それによって動きが封じられたのを見ながらもラビは更なる指示を飛ばす。
「素早く―――ローキック!!力強く―――グロウパンチ!!」
「ゴウッ!!ガァァッ!!!」
怯んでいるゲッコウガへと回転しながらのローキックで体勢を崩し、その顔面へとグロウパンチが突き刺さった。吹き飛ばされるゲッコウガは頭を振りながらも意識を保つが、即座に目の前に迫ってくる漆黒のゲッコウガを見た。
「素早く―――剣の舞!!力強く―――辻斬り!!」
「負けるなゲッコウガ!!居合切りだ!!」
「コォォウウガァァッッ!!!」「ゴゥガァァ!!!」
水を苦無のようにして居合切りを放つゲッコウガと水を太刀のように伸ばした辻斬りが激突する、勝負を決めるのは獲物の切れ味とそれを支えるパワー。剣の舞でキレ味とパワーを上昇させている辻斬りがゲッコウガの苦無を押し込み、両断してしまう。
「コウッ……!?」
「いやそこだ、水手裏剣!!!」
「コウッガアアアアッ!!!」「ゴウッッ!!!」
苦無が両断され、言葉を失うが即座に水手裏剣を放つ。それすらも両断するが、それで時間的余裕を生み出してサトシのゲッコウガは一気に後退して距離を取った。ラビのゲッコウガは逃したか……と言いたげに太刀を背中に収めるような仕草をしながらもそれを消した。
「ゲ、ゲッコウガが押されてる……!?」
「どどうしてなのお兄ちゃん!?サトシのゲッコウガ強いのに!!?」
「今の状態では、ラビさんのゲッコウガの方が上手……という事でしょう」
カロス地方を旅したセレナ、ユリーカ、シトロンもその光景に驚かされていた。サトシとゲッコウガの強さは重々承知している、だがそれですら押し切れないのは基礎的な能力と技術が上回られているからとしか言いようがない。
「以前サトシから聞きました、ラビさんのゲッコウガは庭を守る警備班で侵入者や密猟者を捕縛してジュンサーさんに引き渡していると……それでワザが磨かれているのでしょう……」
それだけではない。警備班は場合によっては庭で暴れるラビのポケモンの鎮圧も担う事もある、つまるところ、三馬鹿や四天王を抑える役目も担う。その長的な役割を担うのがゲッコウガでもある。
「でも、サトシにはあれがあります!!」
「流石に強いな……ゲッコウガ、そろそろ行くぞ!!」
「コウガ!!」
「来るぜゲッコウガ、此処からは集中を切らすなよ」
「ゴウッ……!!!」
直後、ゲッコウガから水が溢れ出し、それは渦を巻いて立ち昇っていく。その中でサトシの姿がゲッコウガと重なっていき水が四散する。そこに居たのは……サトシとゲッコウガが完全にシンクロした姿、絆変化を遂げたサトシゲッコウガ。
『出たぁぁぁぁぁ!!!カロスリーグでその勇名を轟かせたあの不思議な姿のゲッコウガ!!!サトシ選手とシンクロしているという情報もあり、サトシゲッコウガとも呼ばれているとの事です!!この状態のゲッコウガはメガシンカにも匹敵する強さを持っています!!』
『遂に来た……!!』
改めて相対するとあのオーラと覇気は伊達ではない事が本当に良く分かる、これがあのサトシゲッコウガか……サンムーン時代はお世話になったし演出なげぇ……と思った記憶がある。だが敵になればその凶悪さが牙をむいてくる。ゲッコウガの種族値は530、そこからサトシゲッコウガは640にまで上昇する。メガシンカを超える上昇率だ。全く以てとんでもない話だ。
「これからが俺達の本気だ、行きますよラビさん!!」
「さぁって……見せて貰いましょうか、その力を、絆変化をね!!」
純粋なゲッコウガ状態だとラビの方が上、尚サトシは此処から絆変化とメガシンカがある。