「……」
早朝、というには周囲は暗すぎる。現在午前3時、ヘルガーが起こしに来るよりもずっと早く目覚めて外に出ている。暗闇の帳が世界を支配する中でラビはワザとらしく、ライターを灯す。帳の中で押し寄せる波に抵抗する小さな灯の舟、それは強い風が吹くと消えるが……ラビはそれを見ながらももう一度点火、また消えるのも観ながらまた繰り返す。
「……いつの間にか復活した熱、か……」
一度消えた熱が再び灯っている自分がいる。その熱とバトルへの意欲は自分でも驚きを隠せない程の物があった。そして今、自分は共に旅をしていた世界最強のトレーナーと世界一を決める場所でバトルをしようとしている……それに対する意欲は高く、勝つつもりで挑もうとしている……
「なんで、バトルから離れたんだっけ」
そう口にして、自分に問い直さなければいけない程に思い出せなくなっている。改めて何故だっただろうか……ガラル地方でのダイマックスバトルを目の当たりにしてその違和感を強く感じつつもその時にローズ委員長に声を掛けられた。
『君ならばこのガラルのバトル環境に一石を投じてくれると思うのだが、どうかな僕からの推薦状を受け取って貰えるかな?』
『その推薦に沿う事が出来るって保証はありませんよ、これでもオレはサディストですから』
『ハッハッハッ攻撃的なトレーナーという事だね!!結構っ!!凝り固まった環境を変える為には多少なりとも痛い目を見ないと現状を見ないさ!!』
そんな感じでガラルリーグの挑戦が始まった訳だが……ラビのスタイルはガラルでは受け入れられなかった。特に耐久メインのバトルなんて大ブーイングの連続でジムリーダー戦では色々言われたりもした……特にキバナの時は一番酷かった記憶がある。
『ラビ、すまん』
『いや乗ったの俺だし』
『いやだから……ガラル地方を代表して、すまん……』
『せめてチャンピオンになってから代表名乗ろうか』
『間違った事じゃねぇけど腹立つなお前』
『それが俺だ』
キバナ優勢の大歓声の中、流石のキバナも言い過ぎだと思って声を上げようとした時に自分はそれらを捻じ伏せたのだ。全てを嘲笑う嘲笑を浮かべて、観客たちを。ローズに様々な事を頼まれたが結局ガラルは変わらない、そして自分はキバナとのバトル後、ローズに頭を下げてからガラルを後にした。確か……そんな感じでバトルへの熱が、無くなっていった感じだったと思う。
「まさか再燃するたぁねぇ~……」
冗談抜きでこのままだらだらと惰性でバトルは続けていくが、決して燃え上がる事はないと思っていたのに……人生分からない物だと改めて思う。
「勝てるか、俺は」
「ケェン」
何時の間にか隣にいたダイケンキに問う、レッドと旅をしたのはジョウトにオーレ地方、バトルフロンティア挑戦のカントーなどで思えば中々に一緒にいた時間が長いしそれなりにバトルをしたし偶に勝った事もあった。だが、ここまでガチ勝負はした事はない。不安からではなく、冷静な分析を求めるような声色に対して知らねぇよと返すダイケンキ。
「例えどんなバトルになろうとも、俺達は突き進むだけだな……」
「ケェン」
「分かってるよ、お前こそ子供にカッコいい所見せろよ?」
「……ケェェェンッ」
「えっミジュマルがホタチを投げつけて来たから弾いたらそれをキャッチしながらシェルブレードしてヒノアラシを泣かせた?どういう事?」
何時の間にか話はこれからのバトル云々ではなくダイケンキの育児奮闘記に対する意見交換会となっていた。ラビも弟たちの面倒でそれに近い事は経験豊富なので自然に相談に乗っていた。
「ケェェン……キケェェンダアアアイケ」
「ヒノアラシもヒノアラシでバッチリお前の血を受け継いじゃってるじゃねぇか……というかなんで鈍いが呪いになってんのよ、あいつまだゴーストじゃねぇ筈だろ」
「ケンキ」
「知らんじゃねぇだよアホンダラ、バクフーンの影響かぁ……?」
「ルルガァ!!!」
「痛い痛い痛い痛い痛い」
そんな話をしていると何時の間にかヘルガーの散歩の時間になっていた、だがヘルガーは起こしに行ったのに何処にもいないのであっちこっちを駆け回って探していたらしく、こんな所で何やってんの!!散歩の時間でしょ!!と抗議の噛みつきをしてくる。
「これお前の散歩、俺の散歩じゃないの」
「ルルルルガァ!!」
「わぁったわぁった……行けばいいんだろ行けば……」
もうどっちの散歩なのか分からなくなってきたが、取り敢えず散歩に出発。散歩と言っても庭を数周するだけなのだが……広大な敷地を誇るのでそれを一周するだけでもいい運動になるのだ。そんなこんなで毎日のルーティンを終えると軽くシャワーを浴びて直ぐに食事の準備に入る。今日は気性難も朝食のメンバーに入っているので気合を入れなければ……
「久しぶりだな、宣言通りに―――また、逢いに来たぞ」
「今度は歓迎してやるよ、ンでどうだよ旅は」
「それを見せる為に、貴様に逢いに来た」
そんな時に来客が訪れた、やって来たのは……何処か晴れ晴れとした顔をしながらも年相応な明るさを纏っていたアメジオだった。