「マジか……」
アーゴヨンの登場にラビは本気でビックリしていた。確かにサトシはポケモンリーグでアーゴヨンを使った事があるが、それは新設されたアローラリーグに限った事ではあったのでこれが事実上のウルトラビーストが大きな舞台で全世界に向けてその存在を明確に発信しているとも言える……アクジキング?あれはほら、リーグ外の事だったから……。
「ラビ、あの子、知ってるの?なんか、こう……異質な感じがするけど」
「そりゃ異質も異質だ、ありゃ異世界の特殊なポケモンだからな」
「異世界って言われてもなぁ……ポケモンにもそういうの割といるよな」
キバナの言葉に確かに、レビが頷く。話の腰を折らんでくれとも思うが、確かにポケモンにもそういうのは多い……だがそれはあくまで今いる世界と明確に隣り合っている異世界へと行ったり来たりする事が出来る連中だ、ウルトラビーストは全く異なる存在。
「ウルトラビースト、ウルトラスペースって言われる異次元空間からやって来る特殊なポケモン達の総称だ。俺の庭にもいるマッシブーンもその括りに入る」
「あいつか?毎日ポージングやりつつ、真似するちびっ子ポケモン共に教えたりしてる」
「ンな事してたんかいアイツ……まあそうだ。そのウルトラスペースを繋ぐウルトラホールってのからやって来る、但しこのウルトラホールってのは意図的に作り出さない限りは何時何処で発生するのはいまいち分からない、そんなのに巻き込まれてこっちに来たビースト連中は兎に角攻撃性が高い場合が多くて被害者も出てる」
「じゃ、じゃあマジやべぇポケモンなん?」
ロルの不安も正しくはあるのだが、彼らも彼らで侵略や破壊目的で来ている訳ではない。
「例えばだ、家で寛いでたのに突然全く別の場所に転移したらパニクるだろ?それで安全性を確保する為に周囲を調べたりする、ポケモンの場合は安全を確保する為にそこら一帯を縄張りにして落ち着こうともする。これがウルトラビーストの攻撃性の高さの原因とも言われてる。それらを保護する為にアローラ地方にはウルトラビーストを保護して元の生息地に戻すウルトラガーディアンって組織もある、俺も一時期そこで活動したしな」
「はぇ~そんなのまであるんだ」
「サトシさんはそこでの活動経験もある、あのアーゴヨンもウルトラビーストの一体ではあるが……明確に絆を結んでる、ピカチュウとサトシさんが大好きな奴らしいぞ」
自分が捕獲して送り返したのはテッカグヤとツンデツンデ、あとアクジキングだったかな……なんでアクジキングはあんなにデカいんだよって思ったりもした。
「んじゃという事をラバイに教えてやるか」
「またなんで知ってんだよって言われるよ?」
「だってウルトラガーディアン特別隊員だったし……当事者みたいなもんだったし……」
『という訳、アローラ地方のエーテル財団とかに問い合わせれば普通に返事してくれんじゃね?』
『だから兄さんは何でそういうこと知ってんだよ』
『そういうのを送り返す隊員経験あるからです』
『私もうラビさんが怖くなってきましたよ』
「ウルトラビースト―――サトシさんそれに電気タイプってもしかして、いる?」
「え~っと確かデンジュモクがそれに該当する、のかな?」
「う~ん興味深い……おっと、それよりも早くバトルしようよ!!いやぁ前情報が一切ない初めてのポケモンとのバトルとか何時振りだろうなぁ!!子供の時以来じゃないかな!?」
ナンジャモにとって新しい発見というのは貴重だ、配信者はネットに顔を出す為に様々な情報のシャワーを浴びてしまう。初めての物であってもある程度の情報を受けてしまう、故に本当の意味での新発見をそのままの状態で体験出来るなんて貴重なのである。
『NEXT BATTLE アーゴヨン VS ハラバリー!!3、2、1……BATTLE START!!』
「アーゴヨン、ヘドロ爆弾だ!!」
「ゴオオヨオオオッ!!!」
身体を翻しながらもお尻の毒針からヘドロ爆弾を発射するのだが、異常な量を打ち出して来る。力業で打ち出しているのかと思えるような弾幕が展開された。
「おちょちょちょ何この弾幕!!?ほ、放電!!!」
「バアリイイイイッ!!!」
下手に狙いを付けていたら逆に迎撃しきれないと踏んで、そこいらじゅうに電気をまき散らす放電を選択するナンジャモ。それは正解で放電はヘドロ爆弾を打ち落としていく、のだが―――それらは爆発すると濃い霧のように煙を展開して視界を奪い取っていく。
「うわマズいそういうの仕掛けてあったってマズい!!?素早く―――充電!!」
「バアアリイイイイッ!!!バリバァァッ!!?」
煙幕を突き破るように飛来してきたのは龍の波動、しかも掃射されておりハラバリーに命中したと思ったフィールドを抉るように照射されて、土煙を立ち昇らさせている。再び視界が封じられ、どうするかと思った直後に―――
「アアアアアガアアアヨンッ!!!」
「バリリリ!!?」
煙幕を一瞬でブチ抜いて突撃してきたアーゴヨンのシザークロスが炸裂し、ハラバリーが煙幕から飛び出した。
「と、突撃して来たぁ!!?」
「いいぞアーゴヨンそのまま飛ばしていけぇ!!!ヘドロウェーブだ!!」
「アアアアアァァァアアアッ!!!」
回転しながら毒針の先から毒液を溢れ出させるアーゴヨンだが、その量が余りにも異常過ぎる。一瞬でフィールドを覆う程の量を放出し、波乗りかと言わんばかりに毒液が迫ってくる。トレーナー保護機構が発動してトレーナーズサークル部分が競り上がる程の毒液量である。
「なんちゅう量……じゃなくてハラバリージャンプ!!!」
「バリリリイインバアアリィッ!!!」
身体をばねのように伸縮させ、その勢いを使って大ジャンプするハラバリー。ついでに伸縮する事で発電も同時にこなして充電も済ませる。
「(この威力、さっきの龍の波動も含めると、多分タイプ一致!!毒とドラゴン、またボクと相性のいいタイプか!!だけど対策されるなんてジムリーダーやってればいつもの事!!)素早く―――怪電波!!力強く―――10万ボルト!!!」
「悪巧みから龍の波動!!!」
怪電波を受けるアーゴヨンだが、苦しげな顔こそするが、技を中断する程でもないと言わんばかりに悪巧みを完遂させるとそのまま龍の波動を発射。直撃寸前まで迫っていた10万ボルトと激突するが、充電を行っていた筈のハラバリーの電撃を逆に押し込んで互角の所まで持って行ってしまった。
「嘘でしょ充電してるのに!!?」
「まだまだだぁ!!アーゴヨン、流星群!!!」
「アアアアアアアアッ!!!」
龍の波動を放ちながらもアーゴヨンはそのまま空へと向けて流星群を放出、猛烈な勢いで降り注いでくるそれに対してハラバリーは対応しきれずにまともに受けた所に龍の波動が一気に押し込んで来て炸裂する。
「ヤバい、このアーゴヨン、凄い強い……!!やっばい、楽しいぃぃぃっ……!!」
「バアアアリイイイイイッ……!!!」
それは自分も同じだと言わんばかりにやる気と電撃を漲らせるハラバリーに対してサトシもにっこりと笑った。
「アーゴヨン、見せてやろうぜ俺とお前のゼンリョクを!!!!」
「ゴヨッ!?アアアアアアアアッヨッ!!!!」
サトシの言葉にやったぁぁぁ!!!と言わんばかりに喜びを露にするアーゴヨンにナンジャモは何をするかを理解した、Zワザが来る……!!!既にハラバリーはダメージが限界に近い、怠けるで回復を図る?いや例え回復してもあのパワーのアーゴヨンのZワザなら体力を丸ごと持っていく可能性すらある……だったら、こっちも全力の一撃を放ったそれを上回るしかない!!
「ハラバリー、素早く―――充電!!力強く―――充電!!!」
「グモ!?グモモオンッ!!!バアアアアリイイイイイイイッッ!!!!」
全力で電力を生成し始めるハラバリー、それはゴローニャの超電磁砲を思わせるが、あれはゴローニャの生態をもフル活用している必殺の一撃なのでハラバリーでは不可能、それでも電力はハラバリーにとっては切り札になり得る。対するサトシはZクリスタルを嵌め込みながらもポーズを取り始めた、それは―――電気Zのそれだった。
「行くぞアーゴヨン!!お前とやるならやっぱりこれしかないもんな!!」
「ァァァアァゴッ!!!」
極まった充電とゼンリョクの絆の結晶が激突するのは―――今。
「スパーキングギガボルトォ!!!」
「ァァァアアアアアアアゥゥゴオオオオオオオ!!!!」
「ブチ抜けぇ!!!猛々しく―――雷だぁぁぁ!!!!」
「グモグモグモグモォォォォォッ……バアアアアリイイイイイイイッッ!!!!」
莫大な電撃の激突、雷と雷が激突した時、特設艦の電気系統にも大きな負荷が掛かっているのか照明器具が点滅を開始し、各部設備にも問題が起きそうになっている。それほどの激突の中で電気と電気が激突し、互いが互いの電気を纏うようにその身に浴びる中……ゆっくりと地面へと崩れ落ちた影が勝敗を決定付けた。
「バ、バリリリリグモオ~……」
『ハラバリー、戦闘不能!!!アーゴヨンの勝ち!!ナンジャモ選手残りポケモン0!!BATTLE OVER!!よってこの試合、サトシ選手の勝利となります!!』
『決着ぅぅぅぅぅぅっ!!!!謎多きポケモンアーゴヨン、その力は毒を纏いし猛き龍!!しかしその決め手は電気技!!これはサトシ選手の相棒たるピカチュウへのリスペクトを強く感じさせられる物であります!!おっとそれは正解だと言わんばかりにアーゴヨン、ピカチュウと握手を交わして背中に乗せております!!PWCS本選トーナメント、3位となりましたのはサトシ選手!!4位はナンジャモ選手です!!!ですが一地方のジムリーダーが此処までの順位に上り詰めたのは極めて稀です!!』
『実質的に世界で一番強いジムリーダーと言っても過言じゃないですからね……』
「ハラバリー、お疲れ様……負けちゃったかぁ……でも楽しかったなぁ……」
不思議と全身を突き抜ける解放感と喜びに身を預けながらもナンジャモは空を見上げていた。
「でもまあ……いっか、負けはしたけど楽しかったし……楽しいっていいよね~……これからもバトルが楽しくなるような事を配信でやろっと!!」