『対戦ルールは6対6のフルバトルとなります!!各選手はメガシンカ、Zワザ、テラスタル、ダイマックスは一度ずつの使用が許可されます。ポケモンの交代は両者自由となります。それでは……レッド選手、ラビ選手。両者、最初のポケモンをフィールドへ!!』
「ピカチュウ……!!」「ビィガッ!!!」
『さあ決勝戦の幕がいよいよ上がろうとしています!!レッド選手はお馴染みピカチュウです、これまで数多くのバトルを繰り広げておりますレッド選手ですが、その先鋒はほぼ確実と言っても過言ではない程にピカチュウです!!彼のバトルはピカチュウの電撃によって始まるのです!!』
矢張りというべきか、ピカチュウで来たか。こればっかりは読む必要性もなかった。そして自分は手に取ったボールから姿を現した頼もしい背中に笑みを向ける、この選出でいいのかと何百回も思考したが、様々なバランスを考慮してこの結果になった。レッド相手に求められるのは総合力、一定の能力が無ければ速攻で弾けれる。だからこそのこいつだ。
「頼むぞ、なんでこの場でも噛むんですか」
「ガバァッ」
『ラビ選手はあああああっ!!?ちょっと大丈夫なんですか思いっきり噛まれてるんですけどぉ!!?』
『ああ大丈夫、あれが兄さんの奴の愛情表現だから』
『そ、そんな愛情表現ってあります?』
『サトシさんのポケモンの話する?火炎放射やら10万ボルトやらのしかかりやらを愛情表現に用いるポケモン達だぞ』
『私が間違ってました!?』
ラビが繰り出したのはガブリアス、起点作成役としては優れているし地面でドラゴンタイプなのでピカチュウの相手にも向いているので採用したのだが……この大一番にも出してくれた事が嬉しかったのか、この場でこの男は私の愛する者だ、舐めた真似したらぶっ潰すという意図を込めて、頭を丸のみにする勢いで噛みついた。
「ったくお前って奴は……(ガブ)いててててっ首はやめろ首は!!?」
「ガブ」
「あ~あ痕残っちゃった……」
首筋に残した歯形に満足気に頬を緩めながらも抑え切れない笑いを浮かべていると、レッドのピカチュウがうっわぁ……と言いたげな顔を向けて来ていた。
ガブ【なんだ何か文句でもあるのか】
ピカ【いやないけどさ……余裕、なさすぎない?】
ガブ【違うな、これは愛の証明だ】
ピカ【……大変だな、ラビも……】
「なんかピカチュウにすげぇ同情されてる気が……」
「奇遇、俺もそう思う」
『それでは、これよりPWCS決勝戦を開始いたします!!ピカチュウ VS ガブリアス!!3、2、1……BATTLE START!!!』
「素早く―――まきびし!!力強く―――ステルスロック!!!」
「カアブッガアアバアアアアッ!!!」
高速で回転しながらも周囲にばら撒かれていくまきびしと一瞬でそこいらじゅうに飛び散っていく浮遊する岩々、岩というよりも鏃のように尖っている為に岩の棘、それが一斉にピカチュウへとその矛先を向けられる。
「素早く―――高速移動!!力強く―――アイアンテール!!」
「ビガビガビガビガビッガァ!!!」
駆け抜けるピカチュウ、その高速移動は通常のピカチュウのそれよりも格段に速い為に観客の中にはピカチュウをロストする者も多い。その中で遂に差し向けられたステルスロックがピカチュウへと向かっていく。直撃弾を的確にアイアンテールで粉砕するのだが、その際に砕けた破片が身体に突き刺さって顔を歪めるピカチュウにレッドは即座に理解する。
「もう当たるな、更に高速移動」
「ビィッガァッ!!!」
その一言と共にアイアンテールの使い方を変えた、地面を殴って身体の向きを変えたりするという移動の補佐に使い始めた。あの一瞬でステルスロックの性質を全て看破している。力業でステルスロックを放つと、岩石封じの素早さ低下が付与される。元々が変化技のそれを変質させた為かとラビは思っているのだが……あっという間にステルスロックを超えて来るピカチュウに流石、という感嘆の息が漏れる。
「牽制だ、素早く―――まきびし!!力強く―――砂掛け!!」
「ガアブッガアアアバァァッ!!!!」
「ッ目を閉じろ!!」
まきびしで移動方向を誘導されながらの所へと思いっきり飛ばされてくる砂、ガブリアスのパワーと力業の影響か砂のカーテンのようなものが巻き上げられてしまった。それにもう突撃を止められないピカチュウに目を閉じる指示を飛ばすレッド、普通であれば目を閉ざすのは自殺行為だが、長時間視覚が使えないよりましだ、と思った直後にその目の前にガブリアスが腕を振り被っていた。
「来るかやっぱり!!」
「今更分かった所でなぁ!!ドラゴンクロー!!」
「ガアアブアアアア!!!」
「ビィィイイィィッ……!!!」
渾身の一撃が降り抜かれるが、ピカチュウは咄嗟にアイアンテールを発動させながらも身体を捻り、盾としての機能を高めた尻尾を盾のようにした。吹き飛ばしながらもガブリアスはそれを追おうとするが―――
「追うなガブリアス!!素早く―――まきびし!!力強く―――スケイルショット!!」
「素早く―――リフレクター、力強く―――ざぶざぶサーフ!!」
追って来ないガブリアスにピカチュウは舌打ちをしながらも地面に尻尾を突き刺すと一瞬でスピードを殺し、逆にそれをばねにするようにして一気に加速しながらも水と電撃を纏いながら迫ってくる。放たれる鱗を真っ向から砕きながらも直進するピカチュウのざぶざぶサーフ、それが直撃そうな所をスケイルショットで上昇した素早さでギリギリ回避する。地面に降り立ったピカチュウと睨み合う中で傷を撫でるガブリアス、そしてピカチュウは頬に掠ったスケイルショットの痕を見て笑うのだが……ガブリアスの身体に電気が走る。
『ガブリアスこれは麻痺になってしまったか!!?これは痛いぞ!?』
「ガバァァ……ガァァァアアアアアアアアッバアアアアリアッスゥゥッ!!!!」
身体に走る痺れ、身体の動きが取りにくくなっているのを察知しながらもガブリアスは全身からドラゴンタイプエネルギーを放出しながら気合を入れる。周囲に拡散するドラゴンタイプのエネルギーと共に身体の痺れが同時に四散する。
「ガァァブァァ……ガブ」
「なんだ、お前が魅せてくれるって言うのか?なら魅せてくれ、お前の全てを」
「ガァァァバァァ……!!」
懐きによる状態異常回復、それをラビのポケモンの中で初めて行ったガブリアス。それもこれも全てラビへのアピール染みているが……それも今は良い、ピカチュウ相手には良い傾向だ。
「ラビ、負けないから」「こっちの台詞だ」
「「行くぞっ!!!」」
「ビイイガァァァッ!!!」「ガアアアブァァァァ!!!」