「シイイイイイバアアアアアアルクァァァ!!!」「カンビィイイイイイッ!!!」
互いの拳が身体へと突き刺さる、マッシブーンの拳はカビゴンの顔面に、カビゴンの拳はマッシブーンの腹部へと突き立てられている。苦悶の声を漏らすが、マッシブーンは痛く、ない!!と言わんばかりに腹を張るように拳を跳ね返しながらもアッパーカットの直後に渾身のフックの振り下ろしを繰り出してカビゴンを吹き飛ばすが、それを受けながらもまだ問題ないと言わんばかりに、胸を張るカビゴンは跳躍しながら回転、そのままメガトンキックパンチを繰り出してマッシブーンを殴り飛ばした。
「シイイイバァァァ……!!!」
「カアンビィィィッ……!!!」
唸り声にも聞こえる互いの言霊、それが内包するのは相手へのリスペクトとダメージの蓄積を誤魔化す為の虚勢、分かり易いのはマッシブーンでポージングを決めながらも効いてないぞもっと打ち込んで来い!!と言わんばかりの猛アピール、これには特設艦の観客たちも大興奮の熱狂。カビゴンは腹の汚れを払うようにしつつも手を自分の側へと折り曲げてお前こそ打ってこいと挑発、これにも熱いバトルが大好物な観客たちは大興奮である。
「うっひゃぁぁぁ……やっぱりあの上腕二頭筋良いわぁ……マッシブーンの赤い身体は嫌らしさがない所気品あるルビーみたいに輝いてるし、あの広背筋はエロさすらあるわぁ……♡」
「メイもそう思う~?私は大腿四頭筋や大殿筋も捨てがたいけど、下腿三頭筋も捨てがたいわよねぇ……腹太鼓後のカビゴンは一気に代謝が上がって普段は脂肪で隠れちゃってるマッスルが見え隠れしてるのがチラリズムになってて好きなのよね~♡」
「やっだぁ~トウコお姉ちゃんってばスッケベ~♪」
「……ねぇキョウヘイにトウヤ、二人は何に興奮してるのかな……」
「筋肉フェチな所あるからなぁ……この二人……」
「あんまり気にしないでやってくれ……」
「あ、ああ……(ボクも鍛えた方が魅力的に映るのかな……?)」
躍動するマッスル、飛び散る汗、熱気と男気、ワイルドもありながら親しみやすさ溢れるポージング、普段は見せない冷徹さの奥に熱を確りと秘める挑発と色々と堪らない物が詰まりまくっているのか観客席のあちこちから黄色い声援が絶えない特設艦。
「シィィバァァァッ……」
マッシブーンはポージングをしながらボルテージを盛り上げていっている、だがその実は精神的な高揚で痛みを打ち消そうとしている。腹太鼓を行ったうえで技量MAXのレッドのカビゴンの攻撃はビルドアップで防御を上げているマッシブーンとはいえ許容しきれない程の化け物火力と化しているのだ。その身体は鋼とも言われる程の超硬度のマッシブーンの腹筋すら貫通する一撃にマッシブーンは抑え気味になっている。
「(流石腹太鼓だ……ビルドアップを連続で積んで此方だってそれに負けない位にはなっているのに……)」
「カンビィィィィッ……!!!」
低い低い唸り声を上げ続けているカビゴン、それは本気且つ全力で戦っている証拠、あのマッシブーンは自分を倒すのに十分すぎる力と技量を持っているという事だった。
『捻じ伏せろ!!力強く―――メガトンパンチ!!!』
『カンビイイイイイッ!!!!』
『来るぞ、対ドリルライナー対処!!!』
『バアアルクァ!!!』
カビゴンは全体重を乗せながらだけではなく、腕を捻りながらのコークスクリュー・ブローも必殺のパンチとして体得している。それをマッシブーンへと放ったのだが、マッシブーンはそれを両手で受け止めながらもなんと此方の回転に合わせて跳躍しながら回転、コークスクリュー・ブローを完全に受け流しながらも着地し、その勢いを使って逆にカビゴンを投げ飛ばしてしまった。
「……(マッシブーンのタイプは格闘タイプ、ヒートスタンプをかなり必死に回避してきたから多分虫タイプも含んでる……そうなると飛行で攻めたいけど流石に飛行技は使えない)」
レッドもマッシブーンの分析を完了させてタイプや傾向から物理重視のポケモンであることを見抜いてどうやって落とすべきかを考察する。飛行戦で圧倒して飛行技で落とすか、それが一番安全且つ現実味を帯びているが……何故あのマッシブーンにリザードンが勝てるヴィジョンが出てこないのだ。負ける姿も想像できないが、勝てる想像も浮上しない。
「(……成程、奴は既に伝説との戦いを経験してるんだ。負けない戦いならば、奴は無敵だ)」
その理由を察したレッド、伝説相手にあのマッシブーンは戦った経験がある。そしてそこで十二分な活躍をして己の戦いを弁え、それに徹している。自分の活かし方を心得ているのだ。それに徹しられたら恐らくリザードンは苦戦を強いられて消耗する。それに腹太鼓や鈍いと蓄えるを使っているカビゴンを戻す選択はない。
「(だったら……いやここで切るべきだな、あいつはコライドンでは苦労する、カビゴンもそれを望んでいる)カビゴン、本気を出せ、全てを出し切れ」
「―――!!!カアアンビィイイイイイッ!!!!」
カビゴンはまるでドラミングをするように胸を殴りつけて更にボルテージを上げていく。それを見てラビはこれから何が来るかを一瞬で理解してしまった、これほどまでにボルテージが上がっているカビゴンが繰り出して来るワザなどたった一つしかない……カビゴン専用Zワザ……!!!だが……その時、マッシブーンは振り返ってサムズアップをして来た。
「マッシブーン、いいのか」
「バァルク」
「……悪い、だがやるからには全開で迎え撃つぞ!!!見せてその完璧なプロポーションから繰り出される究極の一撃をな!!!」
「バアアアアアアアアアアアアアルクッ!!!!」
そう言うとマッシブーンは再びポージングを開始、だがその行動の一つ一つには酷く力が込められており、今まで以上に全身の筋肉が膨張しているのが分かる。それに対してレッドは静かにZクリスタルを嵌め込んでポーズを取った。
「行くぞカビゴン……Zワザ!!!」
「カンビィィィィィィィッ!!!!」
トレーナーズサークルまでやって来たカビゴンの上に乗りながらもポーズを取ったレッド、Zクリスタルからパワーが供給されたカビゴンは瞳を輝かせながらも雄叫びを上げた。そしてレッドが上から降りると―――到底カビゴンとは思えぬような超スピードで駆け出し始めた。トップスピードに到達した所で跳躍し重力落下のスピードをも使って全てを押し潰すカビゴンのZワザ……ノーマルタイプのZワザたるウルトラダッシュアタックから派生したと思われるのだが正式な名前はない、故にこう言われている―――カビゴンの本気を出す攻撃!!!
「来るぞマッシブーン、覚悟は良いか」
「シヴァァルク」
向かって来るカビゴン、それを真っ直ぐに見据えるマッシブーン。その目には覚悟がある、ラビはZワザを使わない選択肢をした、それはマッシブーンならばZワザ無しでも対抗出来るという確信がある訳でもない、ただ単に数的有利にある自分が此処で究極の一たるZワザを切ってしまうと、この後の控えているであろうリザードンとコライドンの撃破が難しくなるから。それをマッシブーンは見抜いており、確りと理解した。
「シィィバァァァッ……」
あの強敵が自分にあれだけの一撃を放ってくれる、そして自分は自分の持てる全てを以てあれに戦う、なんて素晴らしい事だろうか。トレーナーと共に迎え撃つのも乙な物だろうが、こういう時にはまず自分の力のみで立ち向かってみたいというのが自分なのだと胸を張る。そしてマッシブーンは目の前に手を構える、そして小指から隙間なく指を締め、最後に親指で固定する。例え万力のような力を加えられようともこの拳は解かんと誓いながらも拳を構える。
「拳に気持ちを込めろ、心を込めろ、魂を込めろ。それが漢の意地ってもんだ!!!真ん前からブチ破れ……猛々しく―――気合ッ!!パアアアアアンチ!!!!」
「ヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアルクアァアアアアアアアアアア!!!!!」
頭上から降り注いでくるカビゴンに対して全身全霊の拳が突き立てられる、カビゴンの全てが文字通りに降り注ぐ、己の存在全てを掛けて一撃がゼンリョクで敵を押し潰そうとする。余りの衝撃波にフィールドには地割れが発生し、衝撃波が艦全体へと伝播していく。フィールドが、マッシブーンとカビゴンを中心にして崩壊を始めようとしているかのような……光景がそこにあった。
「カンビイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイゴンンッ!!!!」
「ヴァアアアアアルクアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
両者の雄叫びが木霊する中で、遂にフィールドが耐え切れずに圧壊するように全体から土煙が上がっていく。その土煙をも巻き込むような竜巻が巻き起こり、爆風が空へと向けて放たれる。その果てに……立っていたのは……
「……カンビィィッ……」
息も絶え絶え、疲労し切っているカビゴンが膝を付きながらも手で身体を支えている、その前で勝利のスタンディングポーズのように拳を真上へと突きだして動かなくなっているマッシブーンがいた。マッシブーンが競り勝った……!?と誰もが思ったが、審判が即座にマッシブーンの元へと向かって確認すると……マッシブーンは拳を突き出し、一切膝を曲げずに、崩れる気配がないまま、意識を失っていた。
『マッシブーン、戦闘不能!!!カビゴンの勝ち!!!同時にバトルフィールドの被害甚大!!15分のインターバルを行いその間にバトルフィールドの交換を行います!!規定より、インターバル間にワザ、道具による回復はなしとします!!』
『カビゴン競り勝ったあぁぁぁ!!!マッシブーンを押し潰して勝利を我が物としました!!ですがマッシブーンも素晴らしい!!敗北して尚も膝を屈することなく、カビゴンが勝利こそしましたが、マッシブーンも負けておりません!!その筋肉の敗北の文字はなく堂々たる戦士の勲章となります!!』
意地のみで戦い切り、その意地でカビゴンのZワザと互角に戦って見せたマッシブーンに観客たちは降り注ぐ雨のような拍手を送った。その拍手は彼に聞こえていなくても、きっと理解している事だろう……ラビはマッシブーンをボールに戻しながらもそのボールを握る。
「よくやった、ゆっくり休め」
バトルフィールド交換によるインターバル、これでカビゴンもある程度回復するだろうが、ワザや道具に回復が出来ない以上、ダメージも体力もそこまで回復出来ない。これで数的有利は消滅したが、此方の有利は揺らがない。まずは……あのカビゴンを落とす。
なんか長くなった。