「きゅううううっ……ぬぅっ!!」
『ヌウウッ!!!』
「きゅううらぁ!!!」
『っ……やるな、お転婆』
アシレーヌ対ミュウツー、通常であれば両者ともに特殊寄りのポケモン。特にミュウツーなどは基本的にサイコキネシスなどをメインに据えるポケモン、使う物理技と言えば特殊でありながらも物理的なダメージを与えるサイコショックかサイコブレイク位だろう。アシレーヌはアシレーヌで、ムーンフォースを拳で殴って発射、それをスプーンで弾き返されるのだが、それを更に加速させて打ち出す。それにミュウツーは咄嗟に前に出ながらそれを回避、大上段に振り上げたスプーンで斬りかかろうとする。
「素早く―――渦潮!!力強く―――アイススピナー!!」
高速回転しながらの渦潮、それに重ねられるように発動されたアイススピナーは鋭角に、巨大化しながらも踊りながらアシレーヌはそれを蹴り出した。それにミュウツーは一瞬だけ驚くが即座にスプーンでそれを一刀両断してしまった。のだが―――
『っ……!!!』
両断された氷の渦潮、その斬撃を掠めるか掠めないかのギリギリのラインに飛び込んだアシレーヌが氷の奥から飛び込んで来た。思い切りが良過ぎる、少しでも見切りを誤れば大ダメージを負うような所業だが、そのリスクと引き換えに得たのは獲物を振るった直後の隙だからの状態。
「いけぇっ素早く―――アクアリング!!力強く―――ムーンインパクトォ!!!」
完全にミュウツーの懐へと入り込んだアシレーヌ、アクアリングを腕へと纏わせながらもそこへムーンフォースを集中させる。そして全力の一撃をミュウツーへと叩きつける。インパクトの瞬間、アシレーヌが出すような物ではない打撃音と衝撃波が特設艦へと伝播していく。
「受け流せ!!」
『ぐっこのパワーは……!!』
ミュウツーは咄嗟に身体を浮かせながらもスプーンを消した、そのまま全力で振り抜いたアシレーヌによって吹き飛ばされるのだがレッドに激突する寸前で制動を掛け、宙返りをしながらも着地し、改めてスプーンを出す。
『恐ろしいアシレーヌだ……カビゴンの打撃のような重さに加えてこのパワー……信じられん』
「ラビの所のポケモンは基本特殊な奴だぞ」
「お前に言われちゃおしまいだわ縄張りがシロガネ山」
しかしムーンインパクトが入ったのに対したダメージになっていない感じがするのはかなり辛い、いや打った本人であるアシレーヌは強敵♪(ㅎvㅎ )♪と嬉しそうにしているけどトレーナーとしてはかなり辛い。ミュウツーで一番低いのは防御と特防、なので物理だろうが特殊だろうが。ハッキリ良いのだがアシレーヌの事を考えると物理が好ましい、だがその必殺の一撃たるムーンインパクトがこの効き目……流石はミュウツーだ。
「……まさか奴がミュウツーを手に入れているとはな……」
サカキはVIP席であのミュウツーと互角以上にやり合うアシレーヌに驚嘆しつつも、探し求めていた存在が宿敵の元にいる事に一種の喜びに近い物を感じていた。
「父さん、あれを知ってるのか」
「ああ知っているとも……よく知っている。一時期は私のポケモンとしてジムで使った事もある」
「そうなのか……」
息子たるシルバーは純粋にミュウツーのパワーに目を奪われている、生憎シルバーにはロケット団の事は詳しく話している訳ではない、この子の生末は自分で決めるべきだと考えている。後継者としてロケット団の次期総帥になるのも良し、ロケット団と敵対する道を選ぶのもそれも良し、全く関与しない世界で幸せに暮らすのもそれも良しとしている。
「フフフッ……何とも嬉しい再会だな……ミュウツー」
ミュウツーはロケット団の研究施設で生まれた、ミュウの睫毛の化石から抽出した遺伝子を遺伝子操作する事で誕生したそれは戦闘能力で言えば部分的にミュウを上回る物がある。再びスプーンを振るってアシレーヌへと切りかかり、拳でスプーンを弾かれながらも楽し気に獲物を振るう姿は、自分の前では決してみる事が出来なかった別のミュウツーのようだ。
「(世界を手に入れるには貴様がいる、貴様に準ずる力を持つポケモンがな……そして如何足掻いてもレッドという最大の敵を屠られなければ目的は達成できない……素晴らしい事だ、レッド、お前を倒せばミュウツーもこの手に入れる事も出来る……一石二鳥か)」
サカキにとっては世界を手に入れる為の障害は自分を滾らせてくれるカンフル剤のようなもの、容易い征服など御免蒙る。
「きゅううううううんぬぅぅぅっ!!!」『ぬおおおぁぁ!!!』
再度、ムーンインパクトが放たれるが、今度は真正面から獲物を槍のように突き出して対抗する。得物に罅が入り始めた時、ミュウツーは笑いながらも腕をズラした。その時、スプーンがズレて―――新たなスプーンが出現し、アシレーヌを吹き飛ばした。
「きゅうううんんっ!?きゅんきゅううぬんっ!!」
「大丈夫かアシレーヌ!!」
「きゅううんぬ」
誰に言葉を掛けてらっしゃるのかしら?と言わんばかりの強気で無事をアピールするが、その視線の先には先程とは違い、二本目のスプーンを片手に保持し、二刀流を披露しているミュウツーが居た。
『スプーンならば重ねる事は可能、レッドも簡単に言ってくれるがやれば出来る物だ』
「だから言ったろ、お前なら出来るって」
「だからってマジでやるなよ……」
念のスプーン二刀流、益々状況は悪くなり続ける。この状況を乗り越えなければならない、ラビとしては苦しい展開だが、それでも喜んでいるアシレーヌを見てると空元気でも虚勢でも何でも張って前に進まなければならないと思い知らされる。
「やれやれ、奴さんは益々厄介になるな。だったらその厄介をスプーンごと圧し折ったれ!!」
「きゅううんぬっ!!!」