「一先ず、俺達は如何すればいいんだろう」
改めてオーガポンについて立ち上がる事を決めた一行だが、何をするべきなのかをお爺ちゃんを交えて話し合う事になった。現状、何をするにもまずはオーガポンについて知る事が肝要な訳だが……
「そうですねぇ……アオイさんとハルトさんは取り合えずオリエンテーリングの続きをしてみたらいかがですか?今、この里の現状を知る意味でも重要ですしそれはオーガポンさんを知る事にも繋がるでしょう」
「あっそうだった、課題の事完全に忘れてた!?」
「やっべ、そっちの事も片付けなきゃいけないんだった……」
「んじゃとりま、ウチ達はそっちを片付けちゃう?」
「それが良いじゃろうな、ゼイユとスグリもオーガポン様について聞いた上に伝承を改めて確かめれば何かを感じるじゃろう」
「うん分かったよ爺ちゃん」
「私は如何しましょう、修復のお手伝いでもしましょうか?」
「それならば、おひとつお願いしたい事が」
学生組が如何するべきかを決めたが肝心のラビは暇になる所だったが、そこで役目が回ってきた。
「修復する為の素材、結晶の欠片が必要なんじゃが……それがあるのがこの里にあるてらす池なんじゃ」
「てらす池……」
「鬼が山の山頂にあるてらす池の底にある結晶があれば完全な修復が出来る」
「分かりました、それではアーマーガアと行ってきましょう」
そして、皆はそれぞれ行動を起こし始めるのであった。ラビはアーマーガアの背へと飛び乗って鬼が山へと向かって行く。
「ガアアアアア?ガアアアアア!!!」
「はいはい戦いって言うんだろ?それならお前に是非戦って欲しい相手が居るからその時頼む」
「ガア⁉ガアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
「やれやれ……そろそろ山頂のはず、おっあそこだアーマーガア」
暫し飛び続けた末に辿り着いた鬼が山の山頂、そこには幻想的で神秘的な雰囲気に包まれている池があった。そこには青緑色に輝いている巨大な水晶が連なっている、その色を映し出すかのように池の色も美しく染まっている。この世のものとは思えない不思議な存在感の池……てらす池へと到着した。
「てらす池……言い得て妙だ、本当にエリアゼロみたいじゃないか」
「ガアアア」
それにはアーマーガアも同意見のような声を漏らしている、池の中の光景は本当にエリアゼロのそれと酷似している。一先ずさっさと結晶を回収するとしよう……と思ってボールから一匹のポケモンを出した。そのポケモンはまるで人魚のような見た目をした美しいポケモン、アシレーヌ。
「この池の底の結晶の欠片を取って来てくれるかい?」
「きゅぅ~んぬ」
手を胸に当てながらも何処かジト目で此方を見てから勢いよく池へと飛び込んでいくアシレーヌ、気高いお嬢様のような振舞いに本当に相変わらずだなぁと苦笑していると背後から靴の音が聞こえてきた。
「おや、ラビじゃないか。まさかこんな所で会うとは驚きだね」
「はぁ……」
「頼むから会う度に溜息漏らすのやめて貰えないかな……流石に傷つくぞ」
背後に居たのはブライアだった。ハッキリした事を言えばラビはこの先生の事を全くと言っていい程に好いていない、正直した事を言えば自分が一時期教師という職への疑問を持っていた原因でもあったぐらいには苦手としていた人である。
「私は貴方のせいで結構迷惑してたんですから当然ですよ、出来得る事ならば二度と会いたくないとさえ願った程ですよ」
「そ、それについては本当に申し訳ないと思っているよ……だ、だがそのお陰で君のバトル技量も急上昇したのだから役には立っているだろう?」
「不幸中の幸いというか、完全な副産物でしたけどね」
ブライアは教師であると同時に研究者でもある、研究者としては相当に優秀で自分が在学中にはまだ完成していなかったがテラスタルドームの開発の中心人物だった。その為の研究には如何しても優秀なポケモンバトルの技術を持つ生徒が必要だったという事で自分が抜擢されて酷い目にあったりもした。
「そ、それよりも君は如何して此処に?」
「黙秘します。人に質問する前に自分の目的を語るべきでは」
「おっと失礼……何、このてらす池の水質調査だよ。君もパルデア地方に住んでいるならこの池の異質さは理解出来るのではないかい?」
「ええ、このてらす池はどうしてもテラスタルを連想しますからね」
「やはりそうだろう!!」
大声を張り上げながらも瞳を輝かせるブライア、それを見てまた始まった……と言いたげな顔を作ってしまうラビ。
「この池の水とテラスタルエネルギーは全く同じ波長を持っているんだ。それを解明出来ればパルデア地方以外でもテラスタル現象は安定化するだろう、素晴らしいと思わないかい!!?」
「……」
「あっ……」
酷く冷たく鋭い目になっているラビ、何故こんな目になっているかと言えば在学中も似たような理由で調査に同行を頼まれていった結果、その土地の守り神として崇められていたポケモンを怒らせる羽目になった。しかも当人はそのポケモンの素晴らしさに目を奪われていてその場の危険性に目を向けてさえいなかった。研究者としては確かに優秀ではある、だがそれ以上に問題を抱えている人物なのがブライアという教師なのだ。
「貴方、本当に変わりませんね。その挙句が私が対処する羽目になってその後貴方なんて言いましたっけ?素晴らしい、君達の戦いぶりは輝いていたよ!!でしたっけ……」
「いやその、あの時は目の前の事象に本気に感動してしまっていた上に君達の戦いぶりが本当に素晴らしかったからであって―――……いや本当にごめんなさい……」
「ブルベリ学園は本当に変化がない、悪い意味でね」
ゼイユとスグリから聞く限り本当に変化がない、食堂然り教師陣然り。生徒の自主性を重んじると言いながらその実は放逐と言ってもいい状態なのだから……。
「きゅうううんんぬ」
「おっと、お疲れ様です」
そんな話をしているとアシレーヌが結晶の欠片を取って戻ってきた、そしてほぼ同時に目を回して戦闘不能になったミロカロスも上がってきた。
「……もしかして戦いました?大丈夫でした?」
「きゅうぬ」
胸を張りながら何を当然のことを言ってるのかしら、私が負けると思って?と言いたげな様子のアシレーヌに笑いながらもお礼を言う。この強気なアシレーヌは本当に頼もしい、ボールに戻しながらも結晶の欠片を手の中で転がす。
「それは、てらす池の結晶の欠片かい?少し見せてもらいたいんだけど……」
「自分で取ってください、私は言いましたよ自分のポケモンぐらい持った方が良いですよって」
「い、いやぁそれは……」
「ハァッ……研究馬鹿が、私は行きます。アーマーガア頼みます」
「ガアアアア!!!」
アーマーガアの背中に再び乗ってその場を後にする、残されたブライアは溜息交じりだったが直ぐに気を取り直して水質の調査を始めた。強く言い過ぎただろうか、いやあの人にはこの位の強さがないとダメだ、と思って民宿へと戻ろうとした時だった。強い光が見えた。
「あの光は―――まさか、アーマーガアあの光の下へ!!」
「ガアアアアア!!!」
邪悪の桃の眷属が、動き始める。
「ヌンダフル!!」
「ッシラァ!!」
「キチチチチッ!!」