「えっえっ!?何が起きてんの!!?」
「ほ、祠がぶっ壊れて中からポケモンが……!?」
それは余りにも唐突すぎる事だった。ラビからの提案を受けて改めてオーガポンとともっことの間に起きた歴史を学び直そうと看板を巡って伝承されていた昔話を巡っていた一行。最後の一つを発見し、写真を確りと撮った後不服そうなゼイユはある事を言った。
『この祠も今思うとマジで腹立つ……!!一発殴っても許されるわよね!?』
『姉ちゃん俺もやる』
『応やるわよ!!』
『『おいおい……』』
アオイとハルトもそれは如何かと思ったが、オーガポンの事を踏まえると自分達だって殴りたい気分はあった。だから二人の後で殴りはするかな、程度は思っていた。そして殴ろうとした寸前に祠から紫色の光が溢れだして、そこからともっことして祀られている三匹のポケモン―――イイネイヌ、マシマシラ、キチキギスが姿を現した。
「えっえっ!!?」
「わ、わやじゃぁ……これ、俺達のせい!!?」
と困惑する二人にともっこたちは何やら三匹でひそひそ話を開始した、如何するべきかと困惑する中でアオイとハルトがポケモンを出して対応しようとした時だった。
イイネイヌは両手に毒を集中させながらも勢いよく両手をぶつけあって周辺に毒をばらまきつつ、マシマシラは周辺にクリアスモッグで煙幕を張りつつもそこへキチキギスは毒ガスを展開した。視界を奪い、周辺に毒突きの毒によるトラップと毒ガスで動きを止めに掛かった。
「ゲホゲホっなにこれ……!?」
「い、息が出来ないっ……苦しいっ……!!?」
「毒ガスに毒突きの……っ駄目だ兎に角息を止めて……!!」
「伏せるんだ、兎に角毒を吸わないように……!!」
一番近くにいたゼイユとスグリはそれを真っ先に吸ってしまった為か倒れ込むように咳き込み、アオイとハルトも咄嗟にハンカチで口を塞ぎつつも二人を庇いながら伏せるが、二人も着実に毒を吸ってしまったためか意識が遠のき始めている。
「(まずい、少しだけしか吸ってないのに……!!)」
「(何この毒、駄目っ意識が混濁してきた……ペ、パー……)」
「(ボタッ……)」
不意に、二人の脳裏に大事な人が浮かび上がってきた。何故だろうか、どうしようもなく会いたくなってしまった。会いたい、どうしても会いたい、そんな思いが脳裏を過る中で―――
―――叶えたいか、その願い。
そんな声が聞こえた気がした、一体何の声かも分からないが更に毒が回り始めようとした時―――
「アーマーガアは暴風!!ルカリオは癒しの波動!!」
「ガアアアアアアアアアアアアッッ!!!」
「ルゥゥゥウオオオウ!!!」
周囲に満ち溢れていた毒が一瞬にして晴れた、空高くへと打ち上げられた毒は更に空高くへと巻き上げられていく。そしてそこへ回復の波動が降り注いでいく、その波動によって毒によるダメージを回復させていく。
「「ごほっごぼぼぼっがはっ!!!」」
「「うへっがはっうっ!!」」
「もう大丈夫ですよ!!さあ落ち着いて息をしてください、そしてこのモモンの実を食べてください!!体内に残っている毒を中和出来る筈です!!」
声が聞こえてきた、今度はハッキリしていて誰なのかもわかる。ラビの声、それに安心しながらも瞳を開けるとそこには焦った表情のラビがそこにいた、呼吸が整い始めて来ると全員でモモンの実へとむしゃぶりついた。毒の苦しさを把握したが故の行動、そしてモモンの実を完食すると直ぐに効果が出たのか、それとも短時間だったからか苦しさは消えていた。
「た、助かりましたラビさん……マジでやばかったかも……」
「本気でやばかったぜ……」
「結晶の欠片をとってきたのですが、途中で光が見えたので大急ぎで此方に来たんですよ。それと同時に何やら3匹のポケモンが村の方に向かって行くのも見えました」
「そ、それともっこ、ともっこよそれ!!あ、あいつら私らに毒をっ……!!」
「ゲホガハッ……ハァハァハァはぁな、なんか変な声が聞こえた……」
スグリの言葉に思わず、声?と聞き返すラビ。だが声を聞いたのはスグリだけではない、アオイとハルトはおろか、ゼイユまでもが聞いたと口を揃えた。
「なんか、叶えたいかその願いって言われた気が……」
「言われた、言われたよそれ!!なんかいきなり声が聞こえて来てさ、私が何でこんな苦しいのとかともっこのウチの一匹あたしより綺麗でマジ許さんとか思ってたら叶えたいか、って言われた」
「姉ちゃんそんな事よくあの状況でよく考えられたね……俺は、鬼様と友達になりたいって凄い思ってたら聞こえてきた……」
「俺もそんな感じだった」
「私も」
「……欲望が引き出されている?」
話を総合するとともっこ達が放ったそれには強い毒性があり、それに侵されると苦しみの中で自分の中にある欲望が刺激された上で欲望を叶えたいかと問われる。恐らくそれに応えてしまった場合にはともっこ達のように更なる力と支配を得る事になる。
「(―――あっぶねぇぇぇぇぇぇぇっ!!?冗談抜きでやばかったって事じゃねぇかよ!!?良かったよともっこ優先しないで!!最悪の場合この4人を相手しないといけないんでしょ!?ある意味ディアパルよりきついわ!!)」
ラビの内心は荒れまくっていた。これで分かった事はモモワロウの眷属になってしまった相手が使う毒にも相手を支配する効果があるという事、これは本格的にモモワロウを何とかしないと本当のパンデミックが起きる恐れがある。ポケモン世界でアンブレラ案件なんて勘弁願いたい。
「兎も角皆さん、ともっこは相当に危険な事が分かりました。此処からはより一層の注意が必要になるという事ですよ。風を起こせるポケモンを持ってますか?」
「大丈夫、タイカイデンがいるぜ」
「私もクエスパトラがいる、エスパータイプの技で空気を操ればいけると思います!!」
「あ、あたしも大丈夫!!偶然だけどケララッパ連れて来てる!!スグあんたは!?」
「ヤ、ヤンヤンマいるから大丈夫」
「ならよし!!」
取り合えず同じような事になったら毒を振り解く必要がある、その為の技も決めておく。そしてこれからの行動も決めておく。
「ゼイユさん、すいませんがこの結晶の欠片をお願いします。アオイさんとハルトさんもゼイユさんと共に行動してともっこを追ってください」
「えっわ、解りました!!」
「ラビさんは?」
「恐らくですが、ともっこが狙うのは―――オーガポンだと思います。彼女の下へ」
「お、俺も行く!!」
ラビの腕を掴んで強く志願するスグリ、ゼイユは止めようとするが弟の顔を見てそれを改めた。本当に強く凛々しい顔をしていたのだ、自分が知っている弟の顔ではない。男の顔になっていた。
「お、俺鬼様の住んでる所分かるから案内する!!」
「ああもうスグ、ラビさんの迷惑になるんじゃないよ!!?」
「分かってるよ姉ちゃん!!」
「分かりました、スグリさんは私と共に。3人とも気を付けてくださいね、スマホロトムですぐに連絡が取れるようにはしてください!!」
そう告げるとスグリを抱えてアーマーガアへと飛び乗った。ルカリオを戻すと直ぐにアーマーガアは雄叫びを上げてから飛び上がった。とても人間二人を背中に乗せているとは思えない程のスピードで舞い上がっていく。
「スグリさん確りと私に掴まってくださいよ、アーマーガア飛ばしてください!!」
「ガアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「お、鬼様今行くからぁぁぁぁぁぁ!!!!?わ、わやじゃぁぁぁぁぁぁ!!!?」
スグリの悲鳴のような声が聞こえてきてゼイユは思わず足を止めて空を見てしまった。
「や、やっぱり不安になってきた……」