「なんだフローゼルたぁ昔を思い出させるじゃねぇかよ!!なんだお前も引きずってんじゃねぇか!!」
「ンな訳あるか、お前が付き纏って来るから当時のパーティメンバーで意趣返しして付き纏いを防止する為だバーロー」
「さいですか」
ホントつれねぇ奴……と思いながらもオーバはそれを望んでいた。当時と今では全く状況が異なるそれを、オーダイルだけであれだったんだフローゼルもきっと……あのフローゼルは超攻撃特化型、ミクリのイダイトウに似たタイプだった筈……だがフローゼルはフローゼルで凄まじいスピードを攻撃に転化させていた為に油断ならない……。
「さあていくか―――素早く―――雨乞い!!力強く―――ビルドアップ!!」
「ゼルルルァッ!!ゼエエル、ルルァッ、フウウウッルウウウウ!!」
フローゼルの叫びと共に雨が降り出す、その中でまるで踊るようにビルドアップしていくフローゼル。コミカルだが力強いその動きにアンシャはニコニコしながらも楽しげに見ている。フローゼルはそういうバトルを理解しているので観客がいる場合にはバトルに支障が出ない程度に混ぜて来る事がある。
「だがフローゼルは物理型だろ、今のヒードランには物理は効き悪いぜ」
「悪いだけだろ、効かない訳ではない。ならばその道理―――我らが突き崩す!!素早く―――高速移動!!力強く―――アクアテール!!」
「ゼエエエルルッルウラアアアアア!!!」
高速移動を発動させるが、そのスピードは目にも止まらない程に素早い。瞬きをする間に大きく移動するそれにヒードランは困惑するように目を動かす。このフローゼルの特性はすいすい、雨の中でのスピードは圧倒的な物になる。そのスピードを使ってのアクアテール、雨によってその威力も増大している。それが的確にヒードランの顎を捉える。
「ドゥゥラァッ……!!?ドラッ!!!」
「ゼエエエエルウルルルルルルラァァア!!!」
続けての第二撃、そしてそのまま身体を回転させての三、四連撃。素早さの差が顕著に出ているのかヒードランの攻撃を出すよりもずっと早くにフローゼルの攻撃が連続して襲い掛かる。
「(おいおい何だよそのスピードはよぉ!?)噴煙!!」
「素早く―――アクアリング!!力強く―――渦潮!!そこへ入れ!!」
身体にアクアリングを纏いながら頭上に巨大な渦潮を形成しそこへと飛び込んだフローゼル、ヒードランの噴煙はマジモンの火山の噴煙を想起させる程の巨大な物。それをまともに受けながらもフローゼルは平気そうな顔をしながらもアクアリングに渦潮を取り込んだと言わんばかりにアクアリングを巨大化させている。
「おいおいおいアクアリングってそういう技だったかぁ!!?」
「水に決まった型があるとでも思っているのか?爆ぜろ!!」
「ゼエエエルルラァ!!!」
叫びと共にアクアリングが一気に爆ぜて、渦潮を取り込んだ分の膨大な水量がフィールドに溢れ出した。ヒードランは足元は完全に水没した事で不快感を示すのだが、同時に日本晴れが時間切れで消滅し、フィールド全てを雨と水が支配し始める。靴が完全に水に沈むほどの水量、炎タイプにとってこれほど戦い難いフィールドはない。
「アクアフィールド、って所かな……さあフローゼル、凌駕してみせろ、火山の化身を!!」
その言葉通りにフローゼルは一気に駆け出した、すいすいの影響はもろに出ているだろうが先程よりもずっとスピードが上がっている。
「そうか、くそ文字通りの水を得た魚ってか!?だったらこうだ!!素早く―――大地の力!!鋭利に力強く―――火炎放射ぁ!!」
不快感を拭えないヒードランは大地の力を自らの足元に炸裂させ、まるでロッククライムを受けたかのように地面を隆起させて自ら距離を取り、そこから巧業と力業の火炎放射を発射する。広範囲を薙ぎ払うようなそれは水をものともせずに焼き払っていく。流石はヒードランと言いたい所だが……
「マズったヒードラン足元ぉ!!」
「ド、ドラァッ!!?」
「ゼエエエエルルッルルルルル!!!」
お立ち台のようになっている足場、それが水の渦によって取り囲まれている。アクアジェットのフローゼルが駆け巡りながらもフィールドに満ちた水を導いてヒードランの足場を完全に包囲していた。徐々にその水圧が足場を蝕んでいき、ヒードランが足を置いている地面も徐々に湿り始めた。
「ヒードランそっから!!」
「砕け!!」
ラビの指示の下で足場に一気に水圧が掛けられたのか、足場が一気に崩壊していき、ヒードランは重力にその身を引っ張られて落下していく。そこへ瓦礫を縫うようにフローゼルが到達する。
「ゼルルルアァ!!!(灼熱地獄の化身、文字通りの獄炎の身体だな!!!ゆえに敢て、抱きしめさせても貰おう!!)」
「ゴボバァッ!!?(何こいつ!!?)」
ヒードランが思わず怯むレベルに凄い勢いで迫ってくるフローゼル、何せダイケンキが矯正を諦める程度には自我が強すぎる程だ。フローゼルの基本は自己完結している事、それでいてながらも柔軟にラビの指示を聞き入れて戦術を変えられる事。そして基本的に戦術の冴えはラビ以上なので、ラビも基本任せる事が多い。
アクアブレイクを発動させてヒードランの身体を押さえ込むと尻尾を全力で回転させてそのまま地面に向けて突撃を敢行。ヒードランもその狙いを理解したが、フローゼルの力の強さと水圧が自分の身体の動きを封じて来る。なら―――
「ドオオオラアアアアア!!!」
「ゼッルルルアァ!!!?」
瓦礫の中で暴力的なまでの爆発音が響き渡る、そこからフローゼルが弾け、瓦礫を何度も砕きながらも地面に落ちる。水蒸気爆発、ではあるが……その先にいるヒードランの身体は傷ついている。流石にフローゼルの技が効いていると思われる。
「よく脱出したなヒードラン!!」
オーバからもよくぞという声を掛けられるが、ヒードランは既に体力が限界に来ていた。フローゼルのペースに乱された上にこのダメージ、既に限界だと言わんばかりに脚を広げてフィールドに身体を下ろしてしまった。忌々しい筈の水が身体を冷やして来るが、奇妙な事に心地よさすら感じる。自分ごと飲み込むつもりで放ったマグマストームの影響で水が温まっているのか……温泉程度には水が熱を持っている。
「……ゼルル!!!」
炎と水は決して相反するものではないぞ!!と言わんばかりに指を立てて来るフローゼル、あの指を折ってやりたい……と思いながらも、それは次の楽しみに取っておいてやるから覚悟しておけ……という視線をやると何時でも来い!!と再びのサムズアップ、やっぱりアイツ嫌いだ……。
「ヒードラン、戦闘不能!!フローゼルの勝利!!」
「よくやった問題児」
「……ゼル?」
「いや問題児だろお前は」
「よくやったヒードラン、後は休んでくれ」
流石にオーダイルとのバトルでダメージを負っていたのでキツかったか……と言ってもフローゼルは平気そうな顔こそしているが、オーバはフローゼルもかなりのダメージを負っている事を見抜いている。目算で大体4割強の体力があるとみていい……フローゼルは決してタフなポケモンではない、サトシのブイゼルのせいで勘違いされがちだが……なんとかなるだろう、問題は―――
「さあ行くぜ、相棒!!!」
「ゴウウウウウウウッ!!!」
相棒へのダメージを極力抑えて戦えるかどうか、という所だろう。