「……」
「どったのよラビ」
「これ、どう思う?」
リビングでノートパソコンを叩いていたラビだが、そんな彼が難しい顔をしているので隣に座って尋ねるサザレに画面を向けて来た。そこには個展やりません?という内容のメールがそこにあったのである。
「え~っと何々、イラストレーターとして日頃よりご活躍しているラビ様、私は普段より貴方の描かれる絵を楽しみにし、日頃の楽しみとさせて頂いております。その魅力を多くの人に知って頂く為に個展を開きませんか?カロス地方のミアレ美術館にて、イラストの展示を行いませんか、だね要約すると」
「イラストレーターって個展するものか?」
「う~ん……個展を開くっていうのは基本的に芸術家っていうか画家さんなイメージはあるけど……一応イラストレーターが個展を開くっていう前例はあるよ、単純に画家とかに比べて少ないだけの話で」
珍しいだけでイラストレーターも個展を開く事自体はある、だが……ラビには気になる部分があった。これがあのメイドの話を蹴った翌日に来たという事である。メイドのハルジオからの連絡を受けてやり口を変えて来たかという印象が拭えない。
「ンで受けるの?」
「絵を評価して貰えるのはイラストレーターとしては嬉しい、嬉しいが……別に俺、絵を褒めて欲しくて描いてる訳じゃないからな……それに、これやったとしても集められるのは俺がPWCSチャンピオンだからだろ?そんなので集めた客に俺の絵を評価された所で全然嬉しくないからな」
「あ~……それはあるだろうね」
これがPWCSチャンピオンになる前だったら受けていた可能性は高い、自分はイラストレーター、という認識を持たれたい気持ちもあったので十分にあり得た。だが現状では確実にチャンピオンの方に目が行く事間違いなしである。
「明確に切り口を変えてきたって感じだね、どうしてもラビと会いたいor単純にバトルしたいか」
「どっちにしろ迷惑な事この上ない……まだ直接乗り込んで来た方が良いとすら思える……しかもあのハルジオ、竜の里出身者だ」
「えっそうなの?」
「ああ、ウチの爺ちゃんの弟の嫁のいとこの祖父のはとこの孫だった」
「えっ何、なんて?」
要するに血は繋がっていないという事である。なんかハルジオという名前に聞き覚えがあると思ったら、随分昔に竜の里に行った際に里の悪ガキとして名前が上げられていた中にあった気がする。確かドラミドロを相棒にしており、かなりの腕自慢だと聞いた覚えがある。
「そんなのをメイドにしてる……主ってのは随分酔狂で物好きって事だな」
「なんだラビと一緒だね」
「お前、一日だけじゃなくて数日からマジで動けなくしてやろうか」
「ちょばっ!?」
咄嗟にラビの口を塞ぎながらも、真っ赤になりながらも視線を向けた先にはお昼寝中のアンシャがいる。ムーランドが呆れた顔で安心しろ、ちゃんと寝てるぞ、と言いたげにブースターとアンシャの顔を突くと揃って顔を擦りながらしゅぴぴぴ~と声を出す。
「そういう事言いますかねあの子いるのに!!?カルネさんに質問されたらどうする気なの!!?」
「知らん、そんな事は俺の管轄外だ」
「管轄内でしょうがどう考えても!!?」
変な想像したお前が悪い、何の事だか分からないな~としらを切ればいいのに馬鹿正直に反応するのだから……しかし、この個展開催関連の物……。
「思った以上に面倒な相手かもしれないな」
「その送り主さんがって事?」
「最初は明確に真っ向からこっちを誘いに来た、それが拒否されたならば俺の職業を利用する事を考えてる。そこから個展のスポンサーをしている何々です、是非お話をさせてくださいからバトルに繋げようとしてるな……強かだ」
同時にノートパソコンにハルジオが言っていた名前を打ち込む。MSBCを打ち込んでみると……そこに出てきたのはミアレシティで活動をしているミアレソシアルバトルクラブ、そしてその代表である女性、ユカリについても書かれてあった。
「MSBCの代表、ポケモントレーナーのユカリ……カロス地方でも有数の資産家であり、ポケモンバトルを愛していると言っても過言ではない程の熱を向けている。同時にポケモンに関する企業やポケモンセンターなどへの投資も大きい……地方内外からの評価はそれなり……ダンデがゲストとして出向いた事もある……よく行けたな」
「あっそこなんだ、よく呼べたとかじゃなくて……」
「MSBC、主にセレブの子息たちによるポケモン勝負を愛でる集いであり、ポケモン勝負を通じてポケモンとトレーナーが理解しあい互いを研鑽しあうことを目的にバトルの場を設けている……ねぇ……行動力と金を使う事に躊躇しないネモかな」
「酷い言われようだ……」
ラビが感じたユカリの印象はそんな所なのが正直な所、正直MSBCの説明文に書かれている事はぶっちゃけ今の時代のポケモンバトルをする集いとして定型文となっているような事なので別に珍しさはない。
「こりゃその内、またなんかアクション起こされるな……」
「招待状とか?」
「そんな可愛いもんならいいが……オモダカさんにこういう事がありましたって話だけは通しておく事にするからちょっと行って来る」
「えっそこまで!?」
「多分だけどこのお嬢さんは自分のやりたい事の為なら全力出せるタイプだと思う。あの時のハルジオさんの反応からしてこの勘は合ってると思う、外堀埋めるとか多分平然とやるな」
そう言うとラビは直ぐに準備を整えるとカイリューを呼んでその背中に飛び乗って出発した。それを見送りながらもサザレはその後姿を目で追った。
「大変だなぁ……今度はカロスに行く羽目になるのかな……」