「ラッ……レイブンさん、アランさんとはいつ合流するのです?」
「そうだな、今他地方でメガシンカのバトル大会に出てるから数日後になる予定だそうだ」
飛行機に長時間揺られた事による疲労を心配していたが、アンシャは想像以上に強かだった。というか、飛行機に乗っている間普通に寝ていたので疲れていないだろう。これでは疲れているのは此方ばかりか……まあ自分も9時間は寝ていたのでそこまで疲れていないが……そこから電車に揺られる事1時間半、ミアレシティの駅へと到着したアンシャとレイブンことラビ。此処に来るまでミアレシティの流行りや現状なんかを調べてみたが……ワイルドゾーンの事を踏まえるとよくもまあ平然と街として機能していると思わずにはいられなかった。
「さてと改めてアンシャ改めてアン、俺達の設定を再確認だ」
「はいなのです。アンはレイブンお兄さんの年の離れた妹なのです」
「よし、俺はアンの兄って事だから気を付けてな……にしてもまた妹が増えるとは……」
偽名に合わせて一応アンシャにも偽名を設定した、別にいいかと思ったのだが……アンシャが偽名がアニメのスパイが使うコードネームみたいでカッコいいという事で自分も欲しいのです、と言われたのでボロが出る事も考えて、本名から抜き出したアンという事にしたのだが、アンシャはこれに大喜びなのが何とも言えない気分になった。
「さてとアン、ミアレシティではル~ちゃんとあしゃまちゃんのレベル上げも一応予定には入ってる。ワイルドゾーンのレベルを調べてみたが、ハッキリ言って低レベル帯だ。だから練習にも持って来いって事だ」
「お~頑張るのです!!」
「よし、んじゃ元気よく行こう」
「お~なのですお兄様」
と元気よく答える手を取って一緒に歩き出すと周囲からは仲良し兄妹だなぁ~という微笑ましさを感じている視線が送られるのだが、同時にそれはラビの狙い通り且つ複雑な心境にもなっていた。
「……何これ」
「何ってミアレシティで使う服だよ?」
出発前、荷造りをしつつオモダカにも連絡を取って許可を取っていたラビへとサザレが差し出して来たのは普段の服ではなく何処か若さを感じさせるような感じのコーディネートがされている物が出された。
「だってアンシャちゃんのお兄ちゃん設定なんでしょ?」
「いや、歳離れてるって言ったじゃん」
「それでも普通は20歳以上も離れてるなんて想定しないってラビの家族じゃあるまいし」
「……そうだったぁ……」
ラビの想定している歳の離れている兄妹というのにはかなりギャップがある、世間の感覚的には4~5歳は離れていればそう見なされるが、ラビ的にはもっと離れているという認識があった。30超えてるのに赤ん坊の双子の弟妹がいる男は色々と普通ではなかった。
「それで、この服……?」
「うん。ラビなら多分それで実年齢から10歳は行ける!!」
「……これで上手く言ったら喜んでいいのか嘆いていいのか分からねぇな……」
「はい大丈夫です、おっお兄ちゃんと旅行かいお嬢さん」
「はいなのです、楽しい楽しい兄妹水入らず旅行なのです」
「ははっそりゃいいな、お兄さんも楽しんでね」
「ええどうも……」
駅員からの言葉を受け取りながらも駅を出る、本当に上手くいってしまった……狙い通りとはいえいまいち釈然としない気分になるのはなぜなのだろうか……。
「一先ず、ミアレシティに到着……」
「お久しぶりな気がするのです~」
こうしてカロス地方に来るのも本当に久しぶりな気がしてならない……以前の旅はそこまでトラブルも無く、平穏に終わったものだが今回はどうなる事やら……と思いながら駅の外に出ると電光掲示板ではワイルドゾーンに関する注意喚起と現在それらを活かした共存への道をミアレは歩んでいるという事、これを機にミアレシティはメガシンカする云々という事を女性が語っている。
「さてとこれからどうするか……」
「そう言えばお宿は如何するのです?」
その辺りはカルネが自分の名前を出せばいい所を取れるからと、紹介状を貰っている。だから良い感じのホテルを見つけて―――と思っているとポカブ、ワニノコ、チコリータが駆け寄って来た。
「カブ!!」「ワニワ~」「チコッ!!」
「わっ可愛いポケモンさんなのです!!」
「ああっ悪い!!悪い俺のポケモンが……!!」
ポカブたちとアンシャが戯れていると、そこへ朱色のグラデーションがかかった金髪に青い瞳を持つ少年が慌てたように駆け寄って来た。如何やら彼のポケモンのようだ。
「コラコラお前達、確かに客引き頑張ろうとは言ったけど強引なのはダメだぜ?」
「客引きなのです?」
「ああっえっと、アンタたち観光客、って事でいいんだよな」
「そんな所だ」
「俺はガイ、ホテルZっていうホテルで働いてるんだけど、そのホテルの宣伝をしようと思ってたんだけど……ポケモン達にも協力しようと思って話をしてたら、アンタらをみつけて駆け寄っちゃったみたいで……悪い、びっくりさせたかな」
「全然なのです、悪いことされてないのです。そうだお兄様、折角ですからこの人のホテルにお泊りするっていうのは如何なのです?」
思わぬ発言に目を白黒させてしまった、カルネからの紹介状を持っているのに良いのだろうか。その一方でガイはマジで!!?と言わんばかりに目を輝かせている。
「良いのか?」
「お母様が言っていました。時には道草も大切だ、大切なものは意外とそっちにも転がっている……ってだからこういう事も冒険なのです!!」
「なぁんかどっかで聞いた事あるような気がするんだよなぁ……」
「兎も角、ウチに泊まってくれるのか!?よっしゃざっオーナーも喜ぶぞ!!今日は腕によりを掛けて上手い料理にするから楽しみにしてくれよな!!んじゃホテルまで案内するぜ、こっちだ!!」
笑顔で案内をするガイ、そしてそれに続いていく御三家たちを見ながらもアンは手を引いて行こう!!と言って来るのだが、どうにも不安が拭えないというか妙な胸騒ぎがしてならなかった。
「何か不安だ……色んな意味で」
こうしてラビとアンシャ、もといレイブンとアンのミアレシティでの日々が始まろうとしていた。