「という訳で、俺は今そのホテルZって所で住み込みで働かせて貰ってるって訳だ。そのホテルZはまあ……ぶっちゃけ一流とは言い切れないけどさ……逆に言えば疲れた時はジックリ静かに休めるって言うメリットもある訳でな!!」
「寧ろそっちの方が有難い、俺達としてはな」
「なのです」
「そう言って貰えると素直に有り難いぜ、正直言うとな、うちのホテルってオブラートに包めばアンティークっていうか老舗っていうかレトロって言うか……うん、そういう系の感じなんだ」
必死に言葉を探している感じのガイ、話を総合するとこれから行こうとしているホテルZはハッキリ言って豪勢な立派なホテルというのを想定出来ないという事ではあるが……ガイ曰く、客足もそこまで良くないので客引きをしようとしていたらしいので閑散としたホテル、だが自分達にとってはそちらの方が好都合なので案内してもらう事に。
「それにしても二人は兄妹か?あんま似てねぇけど」
「歳が離れてりゃそう見えてもしょうがないだろ、でもほら、似てるだろ」
「う~ん言われてみたら確かに……」
ワザとらしくアンを抱きあげて顔の傍に持って来て似てるだろ、と主張する。アンシャもノリノリでムフゥとドヤ顔。こんなので誤魔化し切れてしまうのもなんだかあれな気分がするのだが……と思っていると何やらアナウンスが開始された。
『まもなくバトルが開始されます、バトルが開始されます。バトルゾーンが展開されます、参加者以外は早急にバトルゾーン予定地点より退避してください』
「な、何なのです!?」
「ゲッそう言えば試験的に早めにバトルゾーン展開するってお知らせがあったような……!?」
「おいなんだ、何事だ」
「とにかく急いでくれ!!こっち!!」
と何やら慌てだしたガイを追ってポカブやワニノコ達も駆け出して行くのだが、こっちは土地勘がない。ラビが旅をしたのは何年も前な上にアンシャもそこまでミアレに強い訳ではない、走られたら追い付きようがない。
「チコ!!チコチコチ~コ!!!」
「あっレイブンお兄様、チコリータが案内してくれるみたいなのです!!」
「よし、頼む!!」
「チコ!!」
蔓の鞭で任しといて!!と胸を叩きながらも駆け出していくチコリータの跡を追いかけていく、街並みを超えて路地に入っていく。徐々に暗くなり始めていく中で建物に自分も家で使っているバリアフィールドが施されていくのが見える。まさかここでバトルをする気なのかと思う中で
「こっちだこっち!!此処の道に入ればバトルゾーン外だ!!」
「よしそこへ―――!!」
とチコリータを担ぎ上げて一気に駆け出すのだが、あと一歩という所で道がフィールドで遮断させてしまう、咄嗟に急ブレーキをかけて激突だけは逃れたが……
「あっちゃぁ……」
「と、閉じ込められちゃったのです……」
「チコォッ……」
「おいガイさんよ、こりゃ何だ?」
ラビは頭を抱えているガイへとこんこんとフィールドを叩きながらも説明を求める。余りにもいきなりすぎる出来事に何とも言えない。
「え~っと簡潔に説明するとだな……そこはバトルゾーンって言ってやばい所だ!!そこは今ミアレシティでやってる大会のバトルエリアで、そこにいるって事は大会に参加の意思がありって事になって問答無用でバトルを挑まれるぞ!!」
「何その無法地帯」
「え~っとえ~っと……あっそっちの道を回ってくれ!!そっちにゾーンの出入り口がある!!俺もすぐに行くけど時間かかるかもしれねぇ!!チコリータ、二人をサポートしてやってくれ!!」
「チコ!!」
「んじゃ!!」
言うだけ言って駆け出して行ってしまったガイ、思わずアンシャと顔を見合わせてしまった。今、ミアレシティはそんな事になっているとは……だからと言ってバトルゾーンに入ったら問答無用でバトルを挑まれるなんて乱暴にもほどがある……というかバリアフィールドで建物をガードしているとはいえ限度はあるんだぞ、ウチの最高品質の物だってゼクロムに破られそうだったし……。
「兎に角、移動するか……」
「なのです、チコリータさん案内を―――」
「おっとそこの貴方たち、バトルを挑ませて貰うわよ!!!」
と移動しようとしていた所へと掛けられてしまった声、ラビは思いっきりあっちゃぁ……と言いたげに其方を見れば、そこにはやるよ今すぐにやるぞさっさとやるぞ!!!と言わんばかりにやる気満々なトレーナーの姿が……。
「悪いが俺達は大会参加者じゃないぞ、バトルゾーンから逃げ遅れて―――」
「問答無用!!ミアレに来たばかりだとしてもその土地で今何が起きていてどんなイベントが起きているかを調べていない方が悪い!!」
微妙に正論を吐きおって……ならばしょうがない此処は……とボールに手を伸ばそうとしたら、チコリータが前に立ちはだかって威嚇をし始めた。自分達を守ると言わんばかりのそれに、アンシャはチコリータの後ろに立った。
「チコリータ、戦いたいのです?」
「チコッ!!!」
「……分かりました、レイブンお兄様、此処はアンシャが行くのです」
「おいおいおい、チコリータが指示に従ってくれるか―――」
「チコ!!」「大丈夫って言ってるです!!」
「……分かった、その前に」
バトルの前にスマホロトムのポケモン図鑑機能でこのチコリータの技をサーチする。
「これが使えるワザみたいだ、気を付けてな」
「はいっ!!」
「準備は良いわね、行くわよミネズミ!!」「ッズミミイミ!!」
出てきたのはミネズミ、そこまでレベルは高くないしチコリータと同レベル帯……となると決め手はトレーナーの質という事になる。だが問題はアンシャがほぼ初見のチコリータで上手く戦えるかという事になるのだが……。
「シンプルオブザベストで行くわよミネズミ、体当たり!!」「ミィィィッ!!!」
シンプルが一番と突撃して来るミネズミ、それに対してチコリータはアンシャの指示を確りとまっている。この辺りは既にトレーナーのポケモンだったから故だな、と思っているとアンシャは目を鋭くさせながら指示を飛ばした。
「蔓の鞭なのです!!ミネズミの背中を叩きながらジャンプなのです!!」
「チィィコオオオッ!!」
伸ばされた蔓の鞭、それでミネズミの背中を捉えてチコリータは大ジャンプ、その際にミネズミは体勢を崩して地面にしこたま身体を打ち付けてしまった。
「そこで葉っぱカッターなのです!!」
「チコチコチコォォ!!!」
上を取ってからの葉っぱカッターによる遠距離攻撃、ミネズミは身動きが出来ずにそのまま諸に攻撃を受けて既にグロッキー。
「こうなったら切り札よ、催眠術よ!!!」「ズミィィィィィッ……!!」
「自分に向けて悩みの種!!」「チコッ!!」
切り札と称して出されたのは催眠術、ミネズミが自力習得可能な極めて強力な技、確かに切り札。だがアンシャはそれを妨害するのではなく無効化する手段を選んだ、自らに向けての悩みの種を放って特性を不眠へと変更。これによって催眠術を受けても眠りにならない。
「な、なんですってぇ!!?」「ズ、ズズミミィッ!!?」
「今なのです、トドメの体当たり!!」「チコチコチコチコチッコォオオオ!!!」
加速を付けた体当たりがクリティカルヒット、ミネズミは吹き飛ばされて壁に激突して目を回してしまった。戦闘不能な状態へとなった。それを見て相手のトレーナーは大慌てになりながらもミネズミを抱え上げる。
「うううう~ごめんなさいねミネズミ、私がちゃんとしなかったばっかりに~……私の負け、だけど勘違いしないでよね!!貴方が強かっただけで私のミネズミが弱かったんじゃないんだからね!!」
そんな捨て台詞を吐きながらもミネズミを抱いたまま走り去っていく、まあレベルの割に強い技を覚えているのでこれからが楽しみなミネズミだ。
「やったやったなのです!!チコリータ凄いのです~!!」
「チコチコ~!!」
「いや、本当にお見事、凄かったよ」
「えへへへ~お母様とラビさんのバトルを見てお勉強してたのです!!」
えっへんとドヤ顔をするアンシャだが、確かにラルトスとアシマリでバトルの練習はしていたが、今回は初めてのポケモンであそこまで戦うのは流石カルネの娘と言わざるを得ない。
「取り敢えず二人ともお疲れ様、早く此処から脱出だ」
「はいなのです」「チコ!!」
改めて脱出を目指そうとしたのだが……何処の世界にも悪い考えをする奴はいるのか、バトルゾーンの出口と思われる部分を完全に塞ぐように待ち伏せているトレーナー達がいた。悪質な奴らは、どこでもいると思っていると、全員がポケモンを出して来た。ワルビルにアーボック、ロズレイド……それらにアンシャは思わずチコリータに指示を出しそうになったが、それを止める。
「邪魔だ、退け」
そう言いながらもラビはポケモンを繰り出した。それへと襲い掛かろうとしたトレーナー達だったが……それはラビの背後に繰り出されたポケモンを見て膝が崩れ、ポケモン達はトレーナーに抱き着くようにしながらも震え始めた。何故ならば……
「ギャァァァァッ……!!!」
唸り声をあげて威嚇を行っているギャラドスがいたからである。その迫力に完全に負けており、ギャラドスがわざとらしく、ワザのチャージを行うような動作を行うと情けない悲鳴を上げながらも逃げ出して行ってしまった。
「悪いギャラドス、下らん仕事をさせた」
「ギャアアアッ」
「ああ、さっ今のうちに出るぞ」
「は~いなのです」「チ、チコォ~……」
邪魔者もいなくなったので問題なくバトルゾーンを出る事が出来た、そこまで来たらギャラドスを戻すとそこへ慌てた様子のガイが漸くやって来た。
「わ、悪い遅くなっちまった……バトルゾーンの配置があれで、通れない道があって遅くなっちゃった……二人とも怪我とかないか!?」
「大丈夫なのです、チコリータと一緒にバトルして勝ったのです」
「へっ!?い、いや初めてのポケモンでか!?」
「それには俺も驚いてるよ、如何やらうちの妹にはトレーナーとしての素質がありまくるらしい」
「はぁ~……なんかチコリータもすっかり懐いちゃっててまぁ……兎に角、ホテルに案内するぜ。そこで一息つこう」
ミアレ到着早々にこんな事になってしまい、ラビはこれからの事に不安を抱かずにはいられなかった。ミアレで行われている大会、これは単純な参加者のモラルの問題なのか、それとも大会の開催形式の問題なのか……。
「何はともあれ、平穏とは無縁なカロス生活になりそうだ」