「ドオオオオオオオンンッ!!!シリュルルルルルルルゥゥ~……!!!」
メガシンカを果たしたシビルドン、両腕には何か白い粘液にもゼリーにも似た何かが進化前のシビビールのような形を成している。シビルドンの左腕に+、右腕に-という記号も刻まれている。
「メガシビルドン、面白い。やるぞライチュウ」
「ライライラアアイッ!!!」
メガシビルドンはプラターヌ博士から貰ったメガストーンの中にもあった。中々に強力だったが……特性が最近になって漸く理解出来た……仮称鰻登り、浮遊の効果に加えてビーストブースト、相手を倒した時に一番高い能力値を上昇させるという物だった。自分のシビルドンは攻撃が高い上に基本的に蜷局を巻くを使うので自信過剰だとばかり思っていたが……メガムクホーク張りに頭が可笑しい事になっていると思ったものだ。
「噛み砕く!!」
「砕けるなよ!!」
真っ向勝負と言わんばかりに突撃するシビルドンとライチュウ、メガシンカ同士の激突は単純な力勝負としても異様なぶつかり合いとかす事がある。両者のメガシンカエネルギーがぶつかり合って力場のようなものが発生し、周囲の空気を押し出していく。
「ライラアアアイイッ……!!」「シイイビアアアア!!!」
噛み砕かんとするシビルドンの牙を顎を掴んで止めるライチュウ、更に偽シビビールとも言うべき両腕のそれらも尻尾で押さえ付けるという器用な真似をする。
「パワーじゃ負ける、ならっ小細工で上回る!!ボルトチェンジ!!」
「何?」
レイブンは思わず声を出してしまった、ボルトチェンジ?既に5体失っているこの状況で?そう思ったが、シビルドンは電撃を纏い、それを自らの粘液で纏め上げ実弾のように発射した。それでライチュウを無理矢理に引きはがすと一気にカナリィの前へと後退してみせた。
「そう来るか……!!」
「よし、やっぱりこれは知らないか!!電磁砲を連打!!」
「シビイイイイドン!!ドンドン!!」
「雷パンチで弾け!!」
後退しながらも電磁砲で牽制、シビルドンは両手の偽シビビールから猛烈な勢いで電磁砲を放つ事が出来る、これならば命中率が低かろうが数でカバー出来る。何より、レイブンが感心したのは、ボルトチェンジの活用法である。手持ちへの交代ではなく攻撃を行いながらの急速な後退を可能とするあの芸当には様々な可能性を感じずにはいられない。蜻蛉返りやクイックターンでも使えるかもしれない。
「10万ボルト!!!」
カナリィは思わず笑っていた、最近ミアレシティで流行っている戦術の一つ。本来は交代技であるそれを距離を取る為だけに使う、狭い路地や街中での戦闘では手持ちへの交代は決して良策とは言えない、場合によってはそのまま続投する事が望ましいのだが……そこで取られているのが交代ではなく後退するという選択をする事である。
「こういうのは慣れてないっしょ!!岩石封じ、からのエレキネットぉ!!!」
繰り出された岩石封じはフィールドに突き刺さり障害物となって居座る、だけではなくそこへ繰り出されたエレキネットは各所に巣を張って行動の阻害を行う。
「岩雪崩!!名付けて落ち物パズルノック作戦!!いっけええええ!!!」
「こいつはっ!!」
降り注ぐ岩雪崩の標的はライチュウではない、先程張ったネットである。それらにぶつかった岩雪崩はネットによって勢いよく弾かれて向かって来る。それに一瞬足を止めるライチュウだが、レイブンはそれを叱咤する。
「俺にかまうなライチュウ!!突っ込め!!!」
「ライライライアアアアアアイッ!!!」
迷う事も無く突っ込んでいくライチュウ、ギリギリで岩を見切って回避するが、それらはレイブンにも向かっていく。ZAロワイヤルで承知していたつもりだが、最近のミアレはトレーナーを巻き込もうとも気にしないのか……悉く野生に近いバトルスタイルが要求されると思いながらもそれらを回避する。
「うっそでしょこの弾幕避けられんの!!?」
「俺のライチュウを舐めるなよ!!」
「いや僕アンタに言ってんだけど!!?」
避けに徹すればポケモンの状況把握に支障が出来る、故に隙も生まれるだろうと思っていた。そうでなくとも岩雪崩の加害範囲から脱出するまでは指示が御座なりになる事を期待していたのに……レイブンは可能な限り視線をライチュウに向けたままで回避を続けている。
「ライチュウ、ボルテッカァアア!!!」
「嘘使えんの!!?」
「ライラライライライラライライッ―――!!!」
「えっちょまっか、影分身!!?」
此方に突撃して来るライチュウは回避の最中に影分身を行って無数に分身した、そしてその状態のままボルテッカーを発動させてボルテッカーの津波となってシビルドン諸共カナリィを飲み込んでしまった。
「ライラライ~……ライライ~!!」
「シ、ビビ~……ビ……」
そこには倒れ込んでメガシンカが解除されているシビルドンが目を回しており、それをカナリィがへタレこみながらも見つめていた。ボルテッカーに飲み込まれて本気で肝を冷やしたという所だろうか……それにタラゴンが言葉に詰まりながらもジャッジをする。
「し、シビルドン、戦闘不能じゃ……ライチュウの勝ち……!!」
「ライライライラ~イ!!!」
「お疲れさんだライチュウ、どうだメガシンカは」
「ライライ~」
肩を回しながらも楽しかったよ、と言いたげなライチュウにカナリィはシビルドンの頭を撫でてやりながらも静かに笑う。
「僕達、まだまだ弱いねシビルドン……いや強くなれるって前向きに考えようっか」
「シビィ~……」
「分かってる、最高のシビルドン」
そう言いながらもボールに戻してやる、此処まで完膚なきまでに叩きのめされると苛立ちも何も湧かずに清々しさすらあるのが不思議なものだ。
「負けたよレイブンさん、強いね~いったい何者なの?」
「ワシも吃驚じゃ、もしや他地方のリーグで名を轟かせたとかか!?」
「あ~……いや別にそういう訳、でもないが……」
如何にも目を輝かせている二人、年齢云々で軽くムカついてメガシンカまで出して叩き潰してしまった手前何とも言い難い……寧ろ数人程度は正体を明かしておいた方が動きやすいか……と思いながらもレイブンは溜息交じりに告げる事を決めた。
「すまんな、レイブンっていうのは偽名なんだ」
「偽名?えっ何お忍びするとかそういう立場なん?」
「まあそんな所だ……驚かないでくれると有難い」
「何じゃ何じゃ?自慢じゃないがワシらは滅多な事じゃ驚かんぞ!!」
「そうそう、ワイルドゾーンが出来ても大して動じなかったんだから」
と祖父と孫は胸を張るのだが、どうなる事やら……と少しだけ覚悟を決めて告げる。
「改めて、俺の名はラビ。パルデア地方でイラストレーターをしている、ああいや、こういった方が通りは良いか?PWCS優勝者のポケモントレーナーのラビだ」
「「―――えええええええええええええええええええっっっっっっっっ!!!!????」」
「……驚かないんじゃなかったのかよ」
「ぜ、前言撤回じゃ!!驚いたわい!?」
「限度があるっしょ限度ってもんがぁ!!?」