「まずは手堅く剣の舞!!」「ヘラクロオオオッ!!」
「ビルドアップ」「エブァァァァ……!!」
攻撃特化と攻撃と防御を両立させた能力上昇を行う、相性だけで見ればエンブオーが有利なのだが……それを言ったらヘラクロスはエンブオーが苦手とする技も覚える事が出来るのでそこまでの不利は感じない。如何に攻撃をし続ける事が出来るかに掛かっている。
「ロックブラスト!!」
地面を踏み締めてそこから無数の瓦礫を跳ね上げさせ、それを角で弾いて発射するヘラクロス。そのスピードはかなりの物、無数の石礫に対してエンブオーは慌てる事も無く、的確に自分に当たる物だけを拳で打ち払っていく。
「やるっ!!なら接近戦です、ヘラクロス、角で突く攻撃!!」
「ヘェエラアアクロォォッ!!!」
エンブオーの力量を理解したのか、此処でシローは突撃を指示した。ヘラクロスが最も自信を持っている角で勝負に出た。技威力ではなく、ヘラクロス自身が最も使い慣れて自信のある技を繰り出す、余程ポケモンとの絆に自信があるらしい。
「炎のパンチ」
「エエンブァッ……オオオオオッ!!!」
拳をぶつけ合った直後、拳所か腕全体が激しく燃え始めるエンブオー、それを見てもヘラクロスは全く怯む事も無く真っ直ぐに突撃していく。観客の中には飛んで火にいるどころじゃないぞ!?と焦る声もある。
「クロオオオオオ!!!」
「エンブォォ……!!」
真っ向から捉えたヘラクロス、燃え滾る腕に角を押し付けながらも足腰を入れて前へ前へと突き進んでエンブオーを押し込んでいく。クロスアームブロックでそれを受け止めながらも、エンブオーはヘラクロスのパワーを計る。その目に宿るのは共に修練を行ったトレーナーへの揺らぐ事のない忠誠、いや友情。ならば―――
「ブッオオッ」
「ヘラクロッ!!?」
身体を捻るようにしてヘラクロスの力を受け流す、全身を使った突進染みた角で突くだった為に、体勢を大きく崩して倒れ込みそうになった所へエンブオーは腕を振るって腕の炎をそのままヘラクロスへと浴びせかけた。一瞬でヘラクロスは炎に包まれて大炎上する。だがシローは全く動じずに叫ぶ。
「力こそパワー!!ヘラクロス、今こそパワーが苦難を打ち砕く時!!」
「ヘラッ!!クゥゥゥロオオオオオオスッ!!!!」
炎に包まれながらもヘラクロスは冷静に地面を踏み締めるとそのまま翅を広げるとそのまま一気に羽ばたき始めた。それによって巻き起こった爆風を使って炎を吹き飛ばしてしまった。虫タイプが最大の弱点の一つである炎を克服している。
「ほう……サトシさんのヘラクロスも似たような事をしてたな」
「正しくっ!!」
ヘラクロスと一緒にポーズを取るシロー、心なしかヘラクロスも酷く自慢げである。
「苦手、即ち弱点は確かに揺るがない弱み、だがそれと向き合い対策し克服する事は可能なのです!!自分はそのまま放置するのではなく、立ち向かうことこそがパワー、そしてジャスティスだと信じております!!故に、このヘラクロスも苦手を克服する為に、特訓を重ねた結果として、炎への対策を身につけたのです!!」
言うは簡単だが、それを形にするのは本当に大変な事だ。特に炎に対する恐怖は炎や岩ポケモンなどを除けば殆どのポケモンは本能的に有していると言ってもいい、それに立ち向かうのは本当に大変なのだ。
「燕返し!!」
「ヘラアアアァァ!!!」
回避不可の効果抜群の一撃を叩き込まんと迫ってくる、エンブオーは慌てる事も無くビルドアップをしながらも攻撃に備える。目論見通りに目の前で姿を消し、真下からの痛烈な一撃を放とうとされるのだが―――
「そこです!!力強く―――気合、パアアアンチ!!!」
「ヘエエラックロオオオオオオオオオオオオツ!!!」
「おおっ」
此処で、ヘラクロスは真下から痛烈なアッパーカットを気合パンチ、しかも力業込みで放った。気合パンチはやりようによって即座に放つ事は出来る、というかそういう風に放つ奴ばっかりだが……それよりもミアレに来て初めて業を用いた一撃を繰り出して来た。その一撃は明確にエンブオーの身体を揺るがし、数歩後退させる。
「よし、成功しましたねヘラクロス!!」
「ヘエエラクロゥ!!!」
思わず喜ぶシローとヘラクロス、力業の形こそ成しているが完成度はそこまで高くない。だが……それでもエンブオーにはそれなりのダメージが入っている、これは将来的に期待が持てるトレーナーとポケモンだ。
「へぇ、ミアレに来て初めて見たな、業を使う奴」
「ええ、沢山練習しましたので!!生憎早業はまだですが、力こそパワー!!の自分としては此方の方が性に合っていますので気に入っています!!」
「態々そこ言わなくてもいいだろうによ、面白い奴だ……良いだろう、エンブオー殴り飛ばせ!!」
「ヘラクロス、もう一度です!!」
真っ向勝負、気合パンチと炎のパンチの激突。翅を激しく動かしながらも迫りながらも拳に気合を溜めるヘラクロスにエンブオーは拳に炎を収束させていく、その炎の色が徐々に赤から青に変じ始めたころ、遂にヘラクロスの一撃がエンブオーへと突き刺さろうという時―――
「ヘエエラッ―――!!?」
「な、なんとっ!!?」
思わずシローも驚愕、というよりも感嘆してしまった。エンブオーは飛び込んで来たヘラクロスに合わせて全身を使って飛び込み、その拳に全体重を集約させながらもヘラクロスの顔面へと拳を叩き込んだのだ。青白い炎が身体を焼き尽くす感覚以上にエンブオーの硬く重い拳が身体の奥へ奥へと突き刺さっていくのを感じながら、振り抜かれた拳によって地面に叩きつけられ、数度バウンドしながらも倒れ込んでしまった。その光景にシローの応援を行っていた同じくジャスティスの会の女性メンバーも悲鳴染みた声を上げる、だがそれをシローは喜びに近い声を絞り出す。
「タイミング、角度、全てが完璧なジョルトカウンター……!!」
「確かにパワーは正義だ、だが技術でパワーなんて増幅させる事も容易いってこった」
その言葉を受け止めながらも、シローはヘラクロスを戻す。そして次のボールを握り込む。
「ならば、自分の持てる限りのパワーを持って貴方に立ち向かいましょう!!」
「見せてみろよ、その正義とパワーとやらを!!」