「いいぞチャーレム、その調子だ!!」
「リャチアアアムゥゥッッ……」
「エエェェンォ……」
ラビ、もといレイブンのエンブオーはイッシュ時代からの付き合い。サトシのポカブ程、ではないが痩せている状態で発見し、保護した事から始まった。と言っても地面に落ちている木の洞に頭を突っ込んで抜けなくなっている極めて間抜けな出会いだったが……見た目に似合わぬ技巧派と見た目通りのタフネスを併せ持つ技量タンク型、そんなエンブオーも苦手としているタイプがいる。それがエスパータイプである。
「思念の、頭突き!!」
「受け止めろ!!」
格闘タイプでもあるエンブオーにとってそれは当たり前だろうと言われてしまえばその通りかもしれないが……エンブオーは物理的な激突に対しては絶大な能力を発揮する。だが、それがエスパーやフェアリー系の技は特殊は特殊だが、それ以上に上手く対処が出来ないという欠点がある。現に思念の頭突きは物理技、それを確りと受け止めるが……その顔色は渋い。これはもう根本的に合わないという他無い。
「戻れエンブオー」
「ムッ……」
シローとしては此処でエンブオーを仕留めたいと思っていた、明確に相手はエスパータイプを持っているチャーレムに対して苦手意識を抱き、そこを突けば崩せると思っていたが……容易くはないかと思い直しながらも構えを取る。自分が戦う訳でもないが、ポケモンが戦うのに自分だけ何もしないのは共に戦う者の心構えではないと、シローは考えている。
「仕事だ、ローブシン!!」
「ブッシィィッ……!!」
今度はローブシンで相手をする、チャーレムはローブシンの覇気に警戒しているのか拳を先程よりも強く握り込んでいる。
「力強く―――ドレインパンチ!!」
「チャアアアアムアァアアアア!!!」
ヨガの体勢から一気に跳び上がり、拳を鋭く、力強く振るうチャーレムのドレインパンチ。エンブオーの攻撃も多少なりとも入っていたダメージを回復する為だろう。だが―――
「マッハパンチ!!」
「ブッ―――「チャムァァッ!!?」―――シン」
あと一歩で拳が届くところまで来ていたチャーレムを、一方的に殴り飛ばしたローブシンの拳。ドレインパンチをすり抜けて炸裂した一撃、エスパータイプである筈のチャーレムが地面に転がる程の威力が拳に宿っていた。それでも地面を転がりながらも体勢を立て直したチャーレムの受け身のレベルの高さには舌を巻く。
「何という威力、いや初速の速さ……!!スピードがパワーとなっているのですか、これは早業の習得が楽しみになりますな!!チャーレム、正面から堂々と参りましょう!!気合パンチ!!」
バトルコートでバトルを行う兄の姿を見る妹……シローの妹であるムク、遠巻きにそれを見ているのはレイブンに対して申し訳なさがあったからである。ムクはカナリィと友人関係にあり、時折二人で遊びに行く事もある、今回も誘いを掛けようと思ってカナリィの所を尋ねたのだが……
『マッギョ、エレキネット!!よしさっきの確認するってああゴメンムク?ごめんっいまちょっと特訓中!!』
あのカナリィがバトルの特訓に精を出していた、極めてレアな光景だったがちょうど近くにいたタラゴンに事情を聴いてみると、とあるトレーナーに敗北したのとあのラビとのコラボでバトルに本腰を入れて特訓をしているとの言われたので、そういう事なら今度は差し入れでも持って来ようと思いながらもカナリィを下す相手がいると思って、自分なりに調べてみた結果……
『……これ、かな?』
ZAロワイヤルに参加直後に一気にFランクに昇格しているトレーナーを発見した。カナリィはこのトレーナー、レイブンとバトルしたのではないかという推測を立てた。このレイブンという男、ZAロワイヤル中のバトルを見る限り明らかに手練れ、他地方で暴れまくったと言われても納得するレベルなのに……どれだけ調べても出てこない。
『偽名……ZAロワイヤルでは普通ではあるけど……』
ZAロワイヤルのそれも結局はアカウントでしかない、本名でなければいけない理由も義務もないし顔や名前を隠しているトレーナーも少なくないが……
『気になる……』
『おや、ムク何を調べているのです?』
『レイブンってトレーナー、一気にランクを上げてるからかなり手練れ』
『ほうっ!!それは是非とも仕合を願いたいですね、では早速!!』
『うん……うんっ!!?ちょっちょっとまっ……!?』
「……これ、やっぱり謝らないと駄目かな……」
という訳でシローがレイブンに興味を持つ原因となったのは自分な訳、兄が迷惑をかけたと頭を下げるのは市役所で慣れているが、市役所以外で頭を下げるのはそこまで経験がない。こういう時はどんな感じで謝るべきか……と思ったりしていた思考は、あっという間に兄とレイブンのバトルに魅了されていた。
「シローが、一方的に押されてる……」
兄は端的に言ってトレーナーとしてはかなり上澄みにいると思っている、会員に操作をお願いして大型スクリーンに業の指導動画を流して貰い、それを何度も見ながらも自分のポケモン達と共に、身体を動かして業をその身体に叩き込んでいた。生憎早業こそ未習得だが、力業の習得に成功した時は自分も含めてジャスティスの会全員で喜んだ。
『見てくださいムク、力業―――ジャスティスパンチ!!!』
『いや人間が使うものじゃ』
『自分のジャスティスパンチの威力も大幅に向上です!!』
『……なんで?』
シロー自身も力業を会得するという珍事も発生しながらもシローはそれからも修練に励んでいた。そんな兄が力業を使っても追いつく事出来ない強さ、だがそれ以上に本当に楽しそうな兄の顔を久しぶりに見た気がする……バトルに没頭する姿に思わず笑ってしまう。
「……勝て、シロー……負けるな、ジャスティス!!」
「チャァァァァ……」
「チャーレムご苦労様でした!!次が自分最後のポケモンにして相棒です!!」
「んじゃこっちも三匹目で勝負してやる、これで終わりにしてやる」
「望む所!!行きますよ、タイレーツ!!!」
「ブリガロン、仕事だ!!」