「ホビちゃん、穴を掘るなのです!!」
「ホッビィィィィィ!!」
早速決めさせてもらうと言わんばかりに地面へ潜るホルビー、これならば特攻の上がった攻撃も通用しないとアンは考えた訳だが―――
「ならば、ヘルガー穴に顔を突っ込みなさい!!」
「えっ!!?」
「そしてバークアウト!!」
「ルガァ!!ルルウルガアアアアアアアアアアアアアオン!!!」
ホルビーが空けた穴へと頭を突っ込むという何ともシュールな光景が生まれるが、レイブンは即座にやばいな、という声を出してしまい、アンもそれを聞き取ってホルビーの身を案じた。
「ホンビィィィィッ!!!?」
「ホ、ホビちゃん!!?」
「穴を掘る、いい作戦ですね。ならばその掘った穴の中に音を叩き込んで反響させて威力を上げるまで」
「エゲツねぇ手を取るもんだ……」
ホルビーは地面を掘る事に慣れている、そんなホルビーが作り出す穴は見事なトンネルのような形になり、そこに音を叩き込んだらどうなるか?内部で反響しまくる。それが悪巧みで威力の上がったバークアウトならば当然……地面から叩き出されたホルビーは地面に叩きつけられるが、まだ動けるのか立ち上がろうとしている。
「ニトロチャージ!!」
「ルルルルウウウウガアアアアア!!!」
「ホンビィィィイイッ!!!」
ニトロチャージをまともに受けたホルビーは空中に跳ね上げられるが、マスカットは狩り取れると思ったが、ホルビーはギリギリの所で踏ん張った。雨の効果で威力が落ちているのもあるが、いい根性をしている。
「マッドショット!!」
「ホオオオビイイイイッ!!!」
「バークアウト!!」
「ルウウウガアアアアアアアアア!!!」
泥の塊を周囲に展開しながらも放っていくホルビーと雄叫びをぶつけるヘルガー、ホルビー渾身のマッドショットだが……流石にヘルガーのバークアウトを押し切る事が出来ずに巻き返され、ホルビーは再び地面に転がって目を回す。ホルビーの戦闘不能がレイブンによって告げられる、が同時にヘルガーも膝を折り身体を下ろしてしまった。
「ル、ルガァァァア……」
「流石に限界ですね……此方もヘルガーを戦闘不能扱いに致します」
実質的にヘルガーを二体で落とした事になるが、アンはこれを全く良しとはしなかった。これは極めてマズい状況、悪巧みをしたヘルガーを落とせたのは良い事だが、ホルビーに至っては全く何もしていないに近い……このままだと確実に削り切られる……!!
「そして此方の二番手は―――サメハダー!!!」
「サッダェエエエ!!!」
「ならばこっちは、モコちゃん!!」
「メエエエエッ!!!」
「おやこれは……色違いのモココですか!?」
そう、繰り出したのは色違いのメリープが進化したモココ、メーちゃん改めモコちゃんである。タイプ上は明確にも此処の方が有利ではある。
「モコちゃん電磁波なのです!!」「モ~メエエエ!!」
「アクアジェットで回避!!」
麻痺を狙う電磁波をアクアジェットの超スピードで回避するサメハダーが迫る、その牙の迫力はヘルガーとは比べ物にならないので一瞬怯むアンだが、それに立ち向かう。
「コットンガードなのです!!」
「メエエエエエエッ!!!」
綿で自らを包んで防御力を一気に高めていく、鉄壁を超える防御力を持っているコットンガードで守りを固めるモココに対してマスカットはそう来ますか、ならば……と指示を飛ばした。
「気合溜めです!!」
「サァァアハァァァァ……!!」
「辻斬り!!」
気合溜めからの辻斬り、それはコットンガードの強力なガードを易々と貫通してモココの本体を捉えて吹き飛ばしてしまった。
「モコちゃん!!?コ、コットンガードが利かない訳―――あっこれって確定急所!!?」
そう、気合溜めは急所に当たりやすくする技、そして辻斬りは元々急所に当たり易い技。この二つが組み合わさると本来は狙う事が難しい筈の急所を命中させる事さえ出来れば確実に叩き出す事が可能になるのである。それによって防御力上昇を意味をなさず、モココはサメハダーの辻斬りのクリティカルヒットを受ける事となった。
「メ、メェェェエエ……!!」
「モコちゃん……そうだ、モコちゃん、フルパワーなのです!!今なら間に合う、雷なのです!!!」
「メ、メエエエエエエエエエエエエッ!!!!」
そう、消えかけている雨、それを活かすしかないと思い至ったアン。雨雲はまだ揺蕩っている、そこにモココの声が届いたと言わんばかりに雷が鳴り響く、雨下の雷は必中、これに掛けるしかない!!とモココのフルパワーが注ぎこまれた雷が天から降り注ぐ。
「お見事、ですが、守る!!」
「サッダァァァッ!!!」
「ああっ……!!?」
モココの一発逆転の雷は、サメハダーの守るによって阻まれて届く事が無かった。此処で守る……アンもトレーナーとしては合理的な方ではあるが、マスカットも負けていない。寧ろ社会人としての経験があるが故に最後の一線、最終防衛ラインを確保していると言ってもいい。そこで踏み止まれさえすれば立ち直り、逆転まで持っていく事も可能という臨界点を見定めている……この守るもその一つだろう。
「ま、まだなのです……怪しい光なのです!!」
「アクアジェット!!」
「サッダアアアアアアッ!!!!」
「メッ―――」
怪しい光が灯る前に、アクアジェットがモココへと突き刺さった。先手で潰されてしまったそれによってモココは戦闘不能となってしまう。アンも負けていないがマスカットの方が数枚上手……さあどうするアンと思っているとモココを戻して次をどうするかと思うアンのボールからチコリータが勝手に飛び出して来た。
「ち、ちーちゃん!?」
「チコ、チコココリチ~コ!!」
此処は自分に任せて!!と言わんばかりのチコリータの様子にアンは少しだけ迷った、確かにサメハダーには有利、電気タイプのモココと違って水タイプの技を半減に出来る……出すべきなのでは、でも……これまでのバトルが響いているのか一歩を踏み出せずにいるアンにチコリータは頭の葉っぱから心地よい香りを発した、それはアンの揺れている心を落ち着かせ、平常心へと導いた。
「……分かったのです、ちーちゃん君に決めたのです!!」
「チコ!!」
「サメハダー、油断せずに行きましょう」
「サッダアッッ!!!」