「さてと……」
ホテルに戻って部屋に入ってアンをベッドへと寝かせる、あれだけのバトルで疲れていたのか眠りについていた。布団を掛けてやりながらもベイリーフ達を出してやる、するとベッドの上で眠っているアンの隣に陣取るアシマリとラルトス、ベットのヘッドの上に留まって見張りのような事をするスピアー、ベッドの傍で同じく見張りのような事をするホルビー、ベッドに寄りかかっているモココ、そして自分が乗ると重いかなぁ……邪魔かなぁ……邪魔だよね、でも……と自分の大きさの事を考えつつもベッドになるか乗らないかで迷っているベイリーフと中々に見ていて面白い事になっている。
「お前さん達今日はご苦労さん、よく頑張った、というかスピアーお前に関しては頑張り過ぎだ。どうやって逆鱗習得してんだよ」
「スピ~……ピ?」
「さあ?じゃねぇよ」
考え込んだ末に両手を上げてのさあ?と言われても困る、惚けているというかなんというか……そしてこのスピアーはとんでもない大飯喰らいでもある。まああのバトルの実力を見せられると喰った分はバトルで発揮しているとも言えるのが……自分のスピアーの4倍は飯を食うのは喰い過ぎだとは思うのだが……。
「ンでまあ……アシマリとラルトス、お前さんら今回相手甘く見てたろ」
「……しゃま」「ル、ルゥッ……」
小さくはい、と消え入りそうな声で頷くアシマリとラルトス、この二匹は相対的に見ても手持ちの中で断トツの能力を持っていた筈なのに今回活躍で来ていたかと言われたら全くだった。
「これまでは俺のポケモンが相手をしてて多少なりとも相手は出来ていた、だがそれだけだ。これからの相手は確実にお前らを倒しに来る、身内のノリで転がしてくれる程度に収めてくれるわけじゃない。アシマリ、お前これがあいつにバレたら拳骨制裁コースぞ」
「しゃま!!?」
『きゅううううんぬぅ~?』
「しゃまままっ……!!?」
脳裏でアシドンナ様が拳を作って音を鳴らしているのが浮かんだのかアシマリは真っ青になっていた。アシレーヌは相手が格下で本気を出さない事はあっても相手を決して侮らない、基本的に相手が自分を倒しうる可能性を考慮しつつ戦う、その上で相手をバカにする事はあるが……。
「ラルトスは……まああの夫婦なら責めはしないか……エルレイドの方は少しだけ渋い顔しそうだけど」
「ル、ルゥ~……」
「兎も角だ、お前らは色んな意味で素直になれ。目の前の事を素直に受け止めてマジで勝ちにいけば良い、その甘えを育てちまった要因は俺とも言えるから何とも言えんが……」
二人は顔を見合わせながらも頷き合い、アンを見ながらも何かを誓い合っているかのよう。これから一緒に頑張るぞと言いたげ。
「兎も角多分明日からは特訓開始だぞ、気をつけてな」
「特訓……な、何をしたらいいのです?」
「ああまあ、そうなっても可笑しくはないか……」
ヌーヴォカフェで朝食を取っているとアンがこれからの抱負を語る、一週間後のリベンジマッチに向けての特訓をするぞ~!!と張り切るのは良いのだが……どういう風にしたらいいのか全く分からない。
「お、お兄様はそういう経験あるのでしょ!?教えて欲しいのです!!」
「あるにはあるが……」
「アン嬢ちゃん、アンタそれ兄貴の失敗談をほじくり返してるようなもんだぜ……?」
「あっ……で、でもアンにはそれが必要なのです!!」
グリーズが呆れたような声で諫めるが、アンはあの敗北がかなり効いたらしく、立ち直り前を向き進む為の糧として望んでいる。兄役として語るべきなのか、それともこのままアンに自力で探らせ他方がこれからの為になるのか……と思案を重ねていると―――
「おや、またお会いしましたねレイブン殿」
「んっなんだやたらでけぇ声が聞こえてきたと思ったらシローか」
「はい、ジャスティスの会のシローです!!」
以前バトルしたシローが声を掛けてきた、当人はトレーニングがてらミアレシティを3周して来たとの事。その休憩としてカフェでティータイムでも……と思ったら自分達を見つけたのでやって来たと語る、シローは火の粉ローストモカとクロワッサンを頼みつつも席に着いた。
「それで何やらお悩みのご様子ですが、自分で宜しければ相談に乗りましょう。相談は自分で抱えるのではなく、聞いて貰うだけでも好転すると聞きました」
「……まあ正論だな、実はな……」
シローにアンがポケモンバトルでの初めての敗北、そして1週間後にリベンジマッチを行うのでその為の特訓についてどうするべきで悩んでいると素直に伝えてみる事にした。意外と言ったら失礼かもしれないが、シローは真剣かつ真面目に聞き耳を立て、話を聞いてくれていた。
「成程……メガジジーロンが相手ですか……」
「そういう事だ、如何するべきかと思ってな」
「……それならば、自分に任せて頂けませんか?」
「シローさんに、です?」
火の粉ローストモカを飲み干しながらもシローは胸を張りながら言う。
「自分に、というよりかはジャスティスの会に、ですね。そこでバトルの特訓を行ってみませんか?」
「お前んとこってそういう事していい所なんか?」
「問題ありません、何せ道場主ですから!!」
「う~ん道場主の一言で振り回されるのがいまいち気になる」
と言ってみるが、案外悪くはないかもしれない。ZAロワイヤルにも通じているであろう現地民の協力を得る事が出来るのは中々に行幸かもしれない。
「それでは後でお越しください、場所は此処ですので」
「分かった……ってなんで手書きのメモなんだ?」
「恥ずかしながら、自分がスマホを使うと何故かスマホが耐え切れずに壊れてしまいまして…‥」「どういうパワーしてんだお前……」
そんな事がありながらも去っていくシローの後姿を見送り、一先ずはホテルに戻って準備でもしようかと思いながらホテルへと入った時の事だった。タウニーが何やらニコニコしながら受付をしていた。
「あっレイブンさんにアンちゃんお帰り~みてみて新規のお客様来たんだ~!!」
と喜んでいるタウニーの傍にいたのは黒いアウターに青いシャツに黒いズボン、そしてサングラスというメガリザードンXを連想させるファッションをしている人物だった。まさかそんな服で来るとは……一先ず、一緒にエレベーターに乗り、エントランスが見えなくなった段階でレイブンは溜息交じりに言う。
「もうちょっとさ、無かったの?」
「これでも俺なりに精一杯の変装なんだが……」
「いや変装にはなってるけどさ……なんでこう、怪しい感じになってんの―――アラン」
「……そ、そんなにダメかこれ?」
「へ、変装なのにアランさんを連想させるのはマズいんじゃないです?」
「……しまった盲点だった……!!」
「大丈夫かおい」
サングラスを外しながらも自分の変装センスがそんなにマズいのか……?首を傾げているのはカロスリーグの優勝経験があり、PWCS本選トーナメントにも出場した傑物……メガリザードン使いとしても知られるトレーナー……アランであった。