「シャンデラ、メガシンカで勝つよ」
「シャアアアアンッ!!」
帽子に埋め込まれているキーストーンへと指を添える、その姿になんか光線でも撃ちそうだなと思ったレイブン。だがそれらとは裏腹に輝きがシャンデラへと注がれていく、メガシンカの繭から孵ったシャンデラ、名が体を表すと言わんばかりの姿となっていた。身体が一回り大きくなり、ランプ状の腕の数が増加した為に豪華絢爛な城にあるであろう巨大なシャンデリアのような姿に変容を遂げた。そしてよく見るとオッドアイとなっており、左目の光が消えているような色になっている……あの瞳を見つめていると奇妙な事に力を奪われているかのような錯覚を覚える。シャンデラの事を踏まえるとあれは冥界に繋がる窓なのかもしれない。
「此方も行くぞゲンガー!!」
「ゲヒャヒャヒャヒャ!!!」
「ルールに縛られる事も無く、ただ気儘に漂う亡霊、世界を見下せ、邪悪に好き勝手に笑え!!至れ、メガシンカァ!!!」
「ゲンガアアアアアアアア!!!!」
メガシンカを行ったゲンガー、その姿は異様なものと言える。頭の角や両腕、尻尾が大型化し、非常に鋭角的でワイルドな姿へと変化しているが、それ以上に脚が無い。正確に言えばあるのだが、メガゲンガーの足は常に異次元空間へと沈み込んでいる。そんな空間と接続されている為かメガゲンガーの身体には不可思議なエネルギーで満ち満ちており現在も研究の対象とされている。そんな空間を観測する為か、額には第三の目が浮かび上がっている。
「メガ、ゲンガー……!!」
ムクはその存在を極めて警戒していた、これまでのゴーストタイプ性質の力を鑑みてというのもあるが……それ以上にメガゲンガーのパワーはメガシャンデラにこそ及ばないと言われているが、それでもメガシンカポケモンの中でも上から数えた方が早い。事実、メガシャンデラの特攻種族値は175、これより上はデオキシスのアタックフォルムの180しかいない。そしてメガゲンガーのそれは170。ムクの警戒は極めて正しい。
「様子見は無し、全てを注ぎ込むだけ!!火炎放射!!」
「シャアアアラァァァ!!!」
その火炎放射は青白かった、メガシンカの影響か温度が極端に高まっているのがよく分かった。猛火の特性を持つポケモンが放つそれと変わらぬ威圧感を放つが、ゲンガーはそれを嘲笑うように声を上げながらも片腕を、まるで砲門のように差し向けた。
「シャドーボール!!」
その指示と同時に指に紫が重なったような黒いエネルギーが指へと集められていく、それは異空間空間と接続されている故か。集められたエネルギーを人差し指へ収束、それを銃のハンドサインのように構える。そしてボンッ、とまるで子供が遊ぶような声で放たれた。が、それとは裏腹に放たれた瞬間に周囲に爆風が巻き起こって思わずアンがアランの足に捕まってしまう程の凄まじい風圧を生み出していた。
真正面から激突する火炎放射とシャドーボール、が、シャドーボールは火炎放射を一瞬たりとも拮抗を許さずに押し込んでいく。
「シャ、シャン!?シャアアアアアッ!!!」
だがメガシンカの意地がある、と言わんばかりに火力を上げて大量の炎で包み込んで強引に誘爆を招くのだが……シャドーボールは内部に幾つにも爆薬が仕掛けてあったと言わんばかりに連続で爆発して火柱が天へと伸びた。まるで死者への手向けの十字架のように伸びたそれを見たシャンデラはふざけた事を……!!!と怒りをあらわにする、が
「ゲヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!ゲ、ゲンガガガガガ、ヒャヒヒャヒャ!!!」
涙すら浮かべながらもシャンデラの様子を見て爆笑するゲンガー、どうだよお前に手向けてやった炎の十字架だぜ、綺麗なもんだろ、ギャハハハハ!!!と言っているようにレイブンには感じられた。相変わらず相手をおちょくるのが大好きな奴だ、ゴーストタイプ相手に十字架を送るとか……しかも炎で。
「シャアアアアデラアアア!!!」
「シャ、シャンデラ!!?」
シャンデラはムクの指示を聞かずに連続で鬼火を発射、瞬時にゲンガーを取り囲んだ鬼火へと向けてシャンデラは大文字を放った。大文字と鬼火は即座に結合、紫焔の火柱となってゲンガーを飲み込んだ。
「ゲ、ゲンガァッァァッ……ガアアアアアアア!!!」
内部から響いてくる苦しみにもがくようなゲンガーの声にシャンデラは人を馬鹿にするからだ!!と言わんばかりに声を荒げる、ムクとしては指示を聞かずにやったことは咎めなければならないが、悪くない手ではあったとシャンデラを褒めてやろうとした瞬間、地面からニュルンと手が伸びて来るとシャンデラを地面へと引きずり込んだ。
「シャ、シャン!?」
「ガアアアアッ―――ゲンガアアアヒャヒャヒャヒャヒャハ!!!」
「ゲ、ゲンガー!!?どうして炎に飲まれたはず!?」
そう、地面から現れた手はゲンガーのもの。ゲンガーは透過しながらもシャンデラを地面へと引きずり込んだのだ、しかもご丁寧に手だけは透過させずにシャンデラを掴み、本物の地面へと埋まるようにしつつもシャンデラを嘲笑って。
「メガゲンガーの足は異次元空間に沈んでいる、だったらそこに全身を沈めてやる事は可能だと思ってね。俺のゲンガーは意地が悪くてね、喰らってもいない技を受けているようにしてみせる事も大好きなんだ」
「くっじゃあ今の不発だったんだ……!!シャンデラ、地面から抜け出して!!」
「シャアアアンシャンッ!!?シャン、シャアンッ!!!?」
「ど、如何したのシャンデラ!?」
地面に埋まってしまっている身体を透過して引き上げようと試みているシャンデラだが、それが全く出来ないのか混乱の極みの中に陥っている。それもその筈、それをゲンガーが全力で妨害しているのだから。
「ゲヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」
「意地が悪いぞゲンガー、シャドーボール」
「ゲエエエンガアアアアアアッ……ギャアアアア!!!」
両手を合わせると先程の物よりも更に巨大なシャドーボールを生成、そしてそれを未だに動けずにいるシャンデラの目の前へと移動し、笑顔を浮かべてから顔面へと叩きつけた。地面を抉る程の大爆発の中からシャンデラは弾き飛ばされ、メガシンカが解除され、目を回してしまう。
「シャンデラ、戦闘不能!!ゲンガーの勝ち、よって勝者、レイブン殿!!」
「ゲンガァ~ッガ~♪」
メガシンカが解除されながらもイエ~イ勝った~と素直に喜んでいるゲンガー、こういう所は割と素直なのだが……それ以外の所が本当に酷い。ゲンガーを戻しながらもシャンデラを同じく戻しているムクへと歩み寄る。
「悪い、ゲンガーが不快にさせた」
「別にいい、悪戯好きなのはゴーストじゃ当たり前、そしてそれに負けるのは悪戯や悪巧みで負けたも同義、文句を言う権利はない。だけど―――何時かリベンジさせて」
「勿論、何時でもどうぞ」
ムクは少しだけ笑いながらもレイブンの握手に応じる、シローに勝ったのはマグレではなく紛れもない実力……この男、侮れない。と思いつつも
「ゴーストタイプの解釈の拡大って……どういう風にやればいい……?」
「割と簡単だぞ、技が持つ性質を広げていくだけでいい。クッソ分かり易い例だそうか?サトシのリザードンがフィールドを焼き尽くす的なあれ」
「ああ、そういうのでいいんだ……」
「ムクもレイブン殿から学ぶことがありそうですな!!さて、アン殿、次は私と稽古をして見ましょうか。基本を一度強く認識したうえで今度は今できる応用をやってみましょう」
「はいなのです!!あっえっと、オ、オスなのです!!」
「……成程、愛娘が可愛く見えるというのはこういう感覚なんだろうな……(カルネさんの気持ちが少しわかった気がする)」