サメハダー、ある意味このバトルで最も警戒しなければいけない相手。それは相手が気合溜からの辻斬りのコンボを成立させる事が出来るからである。モココのモコちゃんはコットンガードで一気に防御を高める事が出来るのだが……急所に当てられてしまうとそれらも貫通したダメージを与えられてしまう。
「さて始めましょうか、気合溜め!!」
「早速……!!」
うっかり抜けてしまったが故に対策が出来なかった気合溜による確定急所コンボ、これで前回は痛い目を見た。だが今回は負けるつもりはない。
「高速移動なのです!!」
「サメハダーにスピード勝負を挑もうとは良い度胸ですな、アクアジェット!!」
サメハダーの超高速戦術は極めて有名だ、それに対して真っ向から高速移動で対抗しようというのかと笑止千万、とは言えない。どんな風に立ち向かって来るのか楽しみになっている。勢いよくアクアジェットで迫って来るサメハダーに対して高速移動でスピードを上げた筈のモココは動かない。ジッとしながらも待ち続けている。
「動かない、サメハダーそのまま行きなさい!!」
「サッデェェェェエ!!!」
ジグザグと移動しながらも迫って来るサメハダー、だがアンとモココは落ち着いていた。シローから言われた事が確りと聞いている。
『宜しいですか、昨今のバトルで重要なのは観る事です。と言っても自分もこれはレイブン殿に言われて改めて意識するようになった訳ですが』
『見る、なのです?』
『ただ見る、ではなく観察するという意味です。例えば相手が高い素早さで回避をしながらも迫って来る、これを迎撃するには相手のスピードとコースを先読みしなければいけませんが……それよりもずっと簡単な事があります。相手が技を此方へとぶつけようとする瞬間、即ち直撃の瞬間を、カウンターとして使う事です』
『……あっ成程なのです!!相手が来るタイミングを測るのとスピードとコースを踏まえた先読みだったらそっちの方が楽なのです!!』
『その通りです!!流石呑み込みが早いですな!!』
「―――今なのです!!雷パンチぃ!!!」
「メエエエッモッコオオオンッ!!!」
「サッデエエエエエエッ!!!!???」
「なっ!!?」
アクアジェットが直撃する瞬間、モココは雷パンチを繰り出してサメハダーの顔面をぶん殴った。アクアジェットというサメハダーの生態ともマッチしていた技、それは通常のそれと違って威力は数倍にも跳ね上がっている物、その勢いのまま雷パンチが突き刺さった。
「ンメエエエエエエエエエッ!!!!」
更に拳を振りぬいたモココ、その一撃はサメハダーを完全に吹き飛ばしてバトルコートの仕切りである金網に激突させた。辛うじて戦闘不能にはなっていないが、サメハダーの自慢の一つである歯が砕けており、砕けている部位は早速抜け始め、新たな歯が見え始めているが……マスカットは言葉を失った。
「インパクトの瞬間に合わせた完璧なカウンター……!?到底、トレーナーになったばかりで出来る芸当なのではないのに……!?」
「こればっかりはシローの奴に感謝だな……格闘タイプって奴は本当に助かるわ」
格闘タイプはパワーだけが取り柄と勘違いされがちだが、実際はかなりのテクニカルなタイプでもある。その技術面と持ち前のパワーを組み合わせて相手を倒すが、見た目が分かり易くパワー型なのでそう思われるだけでしかない。
「サメハダーまだいけますか!!?」
「サ、ッデェェェッ……サデ!?」
「畳掛けるのです!!電撃波!!」
「メエエエエエエッ!!!」
今度は遠距離から必中の電撃波が襲い掛かってサメハダーを痺れさせていく、苦しみもがくサメハダーが声を上げるが、モココは一切の加減をしない。そしてサメハダーはそのまま目を回して動けなくなってしまった。
「サメハダー戦闘不能、モココの勝ちだ」
「まさか、あそこでパーフェクトなカウンターを決められるとは……」
「いっぱい練習したのです!!」
「それで出来たら苦労はしないのですよ、矢張りあなたは素晴らしい……サメハダー、貴方も素晴らしかった。そしてミミロル、行きましょう!!」
「ミンミィィッ!!」
「ミミロル……モコちゃん、戻ってください!!ル~ちゃん、リベンジマッチなのです!!」
「ルルラ~!!」
今度はミミロルに対してのラルトスのル~ちゃん、徹底的に前回の自分を超えに来ているのがよく分かる。だが同時に明確にアンが大きな成長を遂げている事が本当に理解出来る。1週間という時間ではそこまでの成長はないと思っていたが……実力は十分にあった、大きくなったのはそれを活かす為の内面だと思い知らされる。
「ル~ちゃん、行くですよ……身代わりなのです!!」
「ルル~……「「ルルッ!!」」
「身代わり……ですがミミロルはこれあるのみ、飛び跳ねる!!」
軽快なジャンプで跳びはね始めるミミロルだが、直ぐに驚く事になった。身代わりのラルトスが手を組んでその上に本体のラルトスが飛び乗ると思いっきり上へと投げてミミロルの上を取ったのである。
「何ぃぃぃっ!!!?」「ミミロオオオ!!!?」
「冷凍パンチなのです!!」
「ルルルウウラアアアア!!!」
まさかの行動に驚いて動きが止まったミミロルに冷凍パンチが炸裂して撃ち落される、それとは対照的に念力を使ってゆっくりと降下して来るラルトスにマスカットはサングラスがズレる程の衝撃を受けた。
「ま、まさかラルトスが殴り掛かって来るとは……」
「ああそうか、前回は冷凍ビームから上手く繋げていったからラルトスの本領を知る前に倒しちゃったんだっけ……」
これは思いもしなかったアンの有利、しかしラルトス生き生きしてる感じがする……格闘メインの道場の体験は想像以上の効果があったらしい……本当にサーナイトになる気、あるんだよな……?と思ってしまった。