「バトル……何だったら、それ拒否して妹連れてこっから自力で出ていく、っていう選択肢もある訳だが?」
「人の親切は素直に受け取るもんやで?」
「周囲を取り囲んで逃げられないようにする親切があるとは驚きだ、これは新しい辞書が必要になりそうですなぁ」
気付けば此方は組員と思われる連中に完全に包囲されている、バトルをするまで此方を逃がす気はないと言わんばかりの体勢。側近と思われる男は此方を見続けて威圧しようとしているのだろうが、生憎そんなもんは受け慣れているので利かない。伊達にキバナに特性マイペースとか言われてないのだ。
「良いだろう、付き合ってやるよ……その親切心を敗北感で満たしてやる」
「ええな、凄い気に入ったでお兄さん。ええ度胸しとる、楽しいバトルになりそうや」
互いに距離を取りながらもボールを構えた。
「行くで……ギャラドス!!」「ギャアアアアアアアアッ!!!」
「仕事だ、ギャラドス!!!」「ギャアアアアアアアアアアア!!!!」
お互いに繰り出したのは何とギャラドスだった、レイブンとしてはバトルゾーンに巻き込まれた時の脅し目的で入れていたのだが、まさかのミラーマッチになるのは予想外だった。
「ええやんギャラドスのミラーマッチ!!氷の牙!!」
「龍の舞」
かなりの勢いで迫って来る相手のギャラドスを一蹴するかのようにうねる様な舞を行いながらもそのうねりを活かして尻尾を相手の顔へと叩きつけて技を妨害する。唯の変化技で此方の技を妨害してきたレイブンとそのギャラドス、男は益々面白そうな物を見つけたと言わんばかりの顔をする。
「ドラゴンダイブ!!!」
「ギャアアッ!!!」
空へと一気に飛び立つギャラドス、そこから急降下爆撃のように降下して押し潰してくる気なのだろうが……生憎、そういうのはシロナのガブリアス相手にやられ慣れているので珍しくない。
「アイアンテール、狙え!!」
「ギャアアアッ……!!」
尾にパワーを収束させ、鋼へと変貌させながらも落下してくるギャラドスを真っ直ぐと見据える。十二分に上昇したギャラドスは轟音と共に落下してくる、ドラゴンタイプのエネルギーを纏いながらのそれは重力の加速を踏まえると隕石のような破壊力を生む事が出来る―――が
「今だ!!」
「ァァァァッ……ギャアアアアオオオンッ!!!!」
「ギャアアアッ!!!?」
「なんやて!?」
龍の舞を行っている為に攻撃が上昇し、素早さが上がった一撃は的確かつ素早くドラゴンダイブを行っていたギャラドスの顎を捉えた。その一撃はギャラドスの脳を揺るがし、そのまま地面へと激突してしまった。
「あ、あのギャラドスを……」
「まるで赤子の手をひねるみたいに……」
「な、なんなんだあいつ……」
と周囲を取り囲んでいた者たちもレイブンとそのポケモンの強さの異常さから戸惑う声が溢れ出している。唯一冷静なのは側近と思われる男、と言っても彼も彼で目を大きくしているのだが……ゆっくりと、だがふらついているギャラドスが身体を起こした時に目に入ったのは―――
「電磁砲」
「電磁砲やと!!?」
電磁砲であった。まさかの電気タイプの技、しかも電磁砲を覚えるなんて流石に思っていなかったのか、驚愕の声が聞こえる。大口を開けて電気エネルギーを収束させたギャラドスはそれを吐き出すように打ち出した。ゆっくりとした弾速ではあったが、既にグロッキー状態のギャラドスはそれを回避しきれずに……まともに受け、倒れ込み、戦闘不能となった。
「ギャラドス、戦闘不能だ―――まだやるかい」
戦闘不能となったギャラドスを見下ろしながら固まってしまった男、だが次の瞬間には天を仰ぎ額を抑えて大声で笑いだした。心の底から愉快そうな声を上げながら。
「こりゃ参ったわ!!俺のギャラドス手も足も出えへんやん、ほんまに強いなぁお兄さん、文字通りの完敗って奴やな。久し振りに笑わして貰いましたわ、おおきにな、さてと約束果たさなな。さあ皆で送るで」
「「「「「ヘ、ヘイッ!!!」」」」」
バトルに勝利した……という事でいいのだろう、ギャラドスを戻しながらもアンと共に彼らにまるで護衛されるようにバトルゾーンからの脱出を行う。彼らは周囲に名が轟いているのか此方を発見したトレーナーはそれなりにいたが、誰も挑むことなく見てみぬふりをしていた。そのままバトルゾーンから出られると、男はそれじゃあこれでと去ろうとする。
「ほなこれで、また会えること期待してんで」
「御免蒙る」
「ははっ嫌われてもうたかな」
そんな事を言いつつも笑って去ろうとするのだが……何かを思い出したように振り向いた。
「あかんわ、うっかり名乗り忘れとった。俺の名前はカラスバ、ミアレシティ、サビ組のボス、やってるカラスバっちゅうもんや」
サビ組……その名前はミアレシティに探りを入れた時に見つけていた。所謂ヤクザだ、と言ってもサビ組は警察などの面倒になる事が無い組織であり、警察ではカバーしきれない面を担っている、という情報もあった。まあ好んで仲良くするべき相手ではない事は確かだろう。
「レイブンだ、こっちは妹のアンだ」
「レイブンはんにアンちゃんやな、その顔と名前、確りと覚えさせてもろたで?ほな本日はこれにて……また何時か、会いましょうな。いくでお前ら」
「「「「「ヘイッ!!!」」」」」
組員を引き連れ、先程捕縛したトレーナーも連れて行きながら去っていくサビ組の後姿を見送りながらも思わずアンの力が抜ける声がした。
「ビ、ビックリしたのですぅ……」
「怖かったか?」
「怖くはありませんでした……お母様の撮影について行った時に、もっと怖いヤクザの演技をしてた役者さんがいたのです」
「本職顔負けって奴か……」
やっぱりこの世界でもそういうのあるんだ……と思いながらもアンの頭を撫でてやる。自分の知っている悪の組織、とはまた空気が違うような印象を抱いたサビ組……ミアレシティは本当に大丈夫なんだろうか……と改めて思ってしまった。