「(スゥゥゥゥ……)シィィィイ……」
小枝を煙草のように楽しんでいるマフォクシー、と言っても一応医療機関で確認して貰って煙草のような依存性や身体に対する害などはない。寧ろ火をつけて吸引する事で本来の体調を整えて体力が回復する効果は無くなっており、強いて言えば精神的な高ぶりを抑えるリラックス効果が得られる程度の物でしかなくなっている。
「ワニノコ、電気の通り道を作るぞ!!水鉄砲!!」
「ラクライ続くぞ、電気ショック!!」
「ワニャアアアア!!!」「ラアアクラアァ!!!」
単純な攻撃ではなく、水鉄砲に電気を通すというコンボを早速決めて来る。水を通っていくので効果抜群の水を浴びた直後の感電となると大きなダメージが期待出来る。だがマフォクシーはそれを見ても全く慌てる様子もない、それどころか指先に再び炎を灯した。
「フォウッ」
それを空中で線を描くようになぞると、その軌跡に火の粉が舞った。それは直後に爆発でも起こしたような爆音を響かせながらも火球と化して水鉄砲と電気ショックを一蹴するように阻んでしまった。
「なんだあれ!!?」
「水鉄砲が跳ね返された!?」
「だったらっポカブ、ニトロチャージよ!!」
「ミミロルは跳びはねる!!注意を引くよ!!」
兄二人が真正面から突っ込んで得られた情報をもとに、ミミロルは周囲を跳び回って注意を引こうとし、その隙に今度は炎タイプのポカブを突撃させる作戦。
「成程、ミミロルが環状線でポカブが中央線か。だが通用はせんさ、マフォクシー」
「クス……スァ!!!」
目の前に火球を移動させながらも、そこへ両手をクロスに交差させるような手刀を放つ。まるでクロスチョップのようなそれは、火球を両断しながらも腕の勢いで弾き飛ばされた。炎は跳びはねていたミミロルへと直撃し、もう片方のそれは向かって来たポカブの目の前の地面に炸裂、その爆発に驚いたのかポカブは足を止めてしまった。
「ま、マフォクシーってエスパータイプじゃなかったっけ!!?クロスチョップなんて使えたか!?」
「今のは技ですらないぞ、唯、火球を力で飛ばしただけだ」
「「「「いや普通出来ないと思いますが!!?」」」」
出来てるんだからしょうがないだろう、それにこいつは……アシレーヌ並のバケモンだぞ、と言ってやりたいがそれをグッと我慢する。
「さあ鬼火のサーカス開幕だ」
「フォゥ、スィ~(パチン)」
指を鳴らすと更に火球が空中に発生して燃え滾り始めた、そして自らをサイコパワーで浮かばせるとそのまま火球を勢い良く蹴り出して飛ばした。火球は轟音を響かせながらもワニノコ達へと襲い掛かる。
「ワニノコ水鉄砲!!」「ワ、ワニャアアアアア!!!!」
「ポカブ火の粉!!」「ブウウウウウウッ!!!!」
「ラクライ、電撃波!!!」「ラアアックラアアアアア!!!」
「ミミロル、チャージビーム!!」「ミミミロォォォォ!!!」
力を合わせての一斉攻撃、火球とそれらがぶつかり合うのだが……拮抗する事も出来ずに一気に押し戻されて火球は彼らの目の前で合流すると一気に収縮して大爆発を引き起こした。爆発の後にはワニノコ達が完全に目を回して戦闘不能となっていた。
「ワニノコ、ポカブ、ラクライ、ミミロル戦闘不能だな」
「た、たった一撃で4体を……!?」
先程、自分達はレイブンの挑発が気に入らなかった。自分の方が強いのだから其方は数を揃えて向かって来るのが当然だと言い切るのが、癪に障ったのだ。だから、最低でも一矢報いてやろうと思っていた、上位ランカーでもその位は可能だと―――
「嘘でしょ、ポカブもワニノコも炎タイプの技は効果いまひとつな筈……」
「レベルが、レベルが違い過ぎる、のか……!?」
「さて、もう終わるか?」
「ぐ、ぐぅぅぅぅぅごめん、俺今ラクライしか……」
「わ、私も……他の子はまだまだレベル上げの最中で……」
ガイとタウニーが申し訳なさそうな声を上げてきた、二人もZAロワイアルを戦ってこそいるが、ホテルの経営の手伝いなどもあって自分達ほど参加出来ていない。だからこそ此処は自分達が何とかしなければ……
「だったら、セイカ」
「で、でもこの子ら……」
「あの強さに勝つには自分達すら騙す事だって必要だ!!」
手に取ったボールに入っているポケモンは委託された依頼の中でゲットしたポケモンだが……ハッキリ言って自分達の指示を聞こうとはしない、自分達のレベルが低い、が、確信を持ってワニノコやポカブよりも強い事は断言出来る。敢て、それを此処で出すという決断をしたキョウヤにセイカも静かに頷いた。
「ほう、隠し玉でもあるのかな?」
「と言えるかどうかわからねぇけど……ホルビー!!!」
「ミネズミ!!!」
「ボルルルルルル!!!!」「ネズズズズズズズ!!!!」
繰り出されたのはホルビーとミネズミだが、明らかのそのサイズが違う。一回りも二回りも巨大な身体と僅かに赤みを帯びている瞳の輝き……間違いない、こいつらは親分個体だ。それに反応するようにマフォクシーも僅かばかりに目の色を変える。
「頼むぞホルビー」
「ミネズミ、お願いだから指示を聞いてね……?」
期待を込めて視線を送る二人だが、既にホルビーとミネズミはその言葉も耳に入っていない様子。明確な強者であるマフォクシーと自分に狙いを定めている。その視線と身構える姿にマフォクシーは新しく小枝を取り出し、火をつけて咥える。
「来てみな、試してやろうじゃないか、今の親分の実力をよ」