「それで如何だったんだ、件のMZ団ってのは」
「正直な話、あれで暴走メガシンカを止めるってのは無理がある。レベル的には地方のジムの2番目にこれから挑みますっ的な領域だぞ。あれでメガシンカに挑む?唯の飛び降りだろ」
「……後一人ぐらい、呼んだ方が良いかもしれんな」
「その場合誰呼びますよって話になるけどな」
バトルコートの近場のパラソルセットの下でアランとコーヒーを飲みながらも駄弁るレイブン。MZ団に関する情報を共有しながらもこれからの出方を考える。
「呼ぶつっても誰呼ぶよ、最低でもメガシンカ使えて実力もある奴だぞ」
「お前なら幾らでも呼べるだろ」
「そうでした」
パッと思いつくだけでもレッド、サトシ、シロナ、ダイゴ、ワタル、ダンデは無理だから除外、兎に角候補は幾らでも思いつく事を完全に忘れていた。
「と言ってもすぐに来れる訳じゃないからなぁ……コルニはコルニで重要な仕事を頼んじゃってるし……」
「まあ俺達で可能な限りは何とかするしかないだろうな……」
「だな……アンはやる気いっぱいだが、あいつを出す訳には行かないし」
「当然だろ」
「ベイちゃん、蔓の鞭から原始の力なのです!!」
「ベエイイイッベエエイッ!!!」
「げ、原始の力を蔓の鞭に纏わせてる!?こんな事が……」
「バオオオオオッ!!?」
「バ、バオッキイイイイ!!?」
バトルコートではランクFとしての初バトルを行っているアンシャの姿があるのだが……矢張りというべきか、既に実力は上位ランカーとも並び立つ程の物になっている。マスカットとのバトルが本当にいい方向性に利いているようで何よりだ。
「それと、俺の公表する日取りが決まったぞ」
「なんだもうしちゃう訳?」
「どうにも市長が乗り気になったらしくてな……だが代わりにドでかい釘を刺しておいた」
「何したのよアンタ」
「正当な評価と調査をしないままロクな指示を出さないなら……世界チャンピオンがミアレシティはロクな街じゃないって宣伝するぞ、と言ったら快く理解してくれた」
「それ理解とちゃう、恐怖による制圧や」
何サラッと無許可で人を脅しに使ってる訳?と言いたいがこの程度なら問題ない、実際に市長がしっかりすればこういう事をしなくて良いのだから……と思っているとアンが戻って来た。
「勝ったのです!!」
「そりゃよかったが……なんで対戦相手の人、地面に手をついてるの?」
「凄い絶望の仕方だな……」
見事なorzのポーズだ、これほどの物は中々見れない。新鮮且つ深い絶望によって自己の存在感が崩れているのが分かる素晴らしい構図だったのでロトムにパシャリと撮らせてしまった。安心しろ、お前の絶望は俺の絵として残り続ける。大丈夫だ、顔とか身なりとかちゃんと変えて分からないようにするから、唯参考にするだけだから、イラストの。
「何やったんだよお前」
「ただ勝っただけなのです、でもその後トレーナー歴を聞かれましたので、ミアレに来てからって答えたらああなっちゃったのです」
「「ああっ……」」
つまり、あのトレーナーはそれなりの歴があって上位ランカーに上れるだけの実力があった。それなのにこのミアレに来てから本格的にトレーナーとなったアンにアッサリと敗北してしまった事がショックだった。そして一抹の希望をアンが実はそれなりに歴がある事に縋ったのだろうが……物の見事に爆散したわけだ。
「しかし……アンの成長は著しい事を踏まえると、そのMZ団の成長もある事も十分にあり得るぞ。有り得ないなんて事はあり得ないそうだからな」
「どっかで聞いた事があるような台詞なんすけど……だけど、こういうのもなんだけどアンと比べるのはちょっと人が悪いってレベルじゃねぇと思うんだけど」
アンはカルネの娘で、自分の家に長らく居た上に目の前で世界最高峰の戦いをするような連中のバトルを目の当たりにして来た為にそれらの戦術を取り込んでいるし、そのポケモンも自分のポケモンの子供な訳で……それとの成長を同一に語ってしまうのは何とも言えないような気も……。
「だからだろ、ある種の英才教育を受けた子と何も知らずにこの世界に飛び込んで来た奴が同じ成長率で伸びたとしても俺は驚かない。事実として、サトシの旅の最初から知ってる奴はあのサトシが世界チャンピオンになってしまうなんて予想出来た奴はきっといない」
「それを言われたらいまいち反論の余地って奴がないから勘弁して頂きたいんですよねぇ……」
それはある意味禁じ手だろうと言いながらもアンを連れて行きつけのカフェへと案内しようとする。アンとしてもバトル後のおやつとしてチョコクロワッサンが食べたくなっている所、と歩いているとその前に一人の女性が立った。その女性を見て表情を変えなかったのは思わずグッジョブだと自分を褒めたくなった。
「アラン様、ですね?」
「お前は」
「初めまして、私はミアレソシアルバトルクラブのハルジオと申します」
「ミアレソシアルバトルクラブ……」
「お久しぶりですね、レイブン様」
名前を述べてから、ゆっくりと此方を見てから笑うハルジオにレイブンは溜息を吐きそうになるのを堪えながら
「人違いじゃね?」
と言い返す。だがまあ……それが通じそうにない、なんというか、メイド、ハルジオの顔から凄い申し訳なさそうな空気が漂っている……ああこれはもしかして……
「話があるならせめて場所を変えたい、それでいいか」
「勿論に御座います」