「……おい、一言良いか」
「何ぞ」
「いい加減倒れろよ!!!?」「ガアアアブァアアア!!!?」
「んな事言われましても……ねぇ?」「リイイガン」
ガブリアスのスピードを活かしたハイスピードヒットアンドアウェイ戦法で徐々にクリムガンの体力を削り取っていく戦術を取ったハルジオ。先程のオンバーンとのバトルでクリムガンの異様なパワーを有している、その為に有効手段として徐々に体力を削り取っていく戦術を取る事にした。それが見事に型に嵌ったが如く、クリムガンの対応しきれないスピードによる連続攻撃が次々と決まっていた。のだが……
「だってぶっちゃけ……速いだけだし……ウチのガブリアスに比べたら……ねぇ?」
「リイイガン」
「く、くそぅっ……!!」
クリムガンは三馬鹿ほどではないが、基本的にバトルをして過ごしている。その中でも自分の持っているドラゴンタイプの中で頂点を目指しており、常に他のドラゴンタイプに対する対抗策を講じ続け、その為に努力を欠かさない努力家。特にガブリアスなんて目の上の瘤、尚、一番上はキュレム……は流石に難しい事は当人も理解しているのか、ラティオスにしている模様。
そして仮にもレイブンであるラビは世界王者にもなってしまっているトレーナー、そんなガブリアスと戦ったりもする訳で……ラビのガブリアスが基本起点作成メインの防御型といっても攻撃面はレッドのピカチュウを下す程度には高いのだ。そんなのを攻略対象にしているのだから並の鍛え方ではない。
「だがダメージは確実に蓄積してる筈だ、ドラゴンクロー!!!」
「ガアアブァァアアア!!!」
既にこれだけの攻撃に成功している、クリムガンでは此方の動きについて来れないと確信しているハルジオ。その指示を受けて突撃するガブリアス、その一撃が鳩尾へめり込んだ。急所に入り、初めてクリムガンが苦し気な声を上げたのに歓喜しながらも今度は顎への一撃を放つと頭が跳ね上がった。これはチャンスだと引こうとした時だった。
「ガ、ガバァッ!!?」
鳩尾へとめり込んでいる筈の爪が引き抜けなくなっていた、よく見るとクリムガンの爪がガブリアスの爪をガッチリと掴みこんでいた。
「あんだけ超スピードでヒットアンドアウェイをしてくれたんだ、いい加減目も慣れる……それにそもそもこいつがガブリアスに嬲られ続けるなんて事に耐えられるわけがない、嫌でもお前のスピードに適応する」
「リイイイガアアアアッ……!!」
実際、ハルジオのガブリアスのスピードの使い方自体はかなり上手い。時折、意図的にスピードを緩める事でスピードになれる事を防ぐ為の工作を行ったりフェイント混ぜて来たと身構えた時には攻撃を与えず、相手の焦りを誘発したり、意図せぬタイミングで攻撃を浴びせたりもして来た。戦術的には極めてうまいガブリアスだ、ハイパーボール級でも通用するテクだ―――だが、基礎的な能力としては生憎まだまだ発展途上である。
「ガアアブァア!!!」
再び、顎へと攻撃がヒットするが今度は僅かに頭が浮いただけで先程のように弾かれるような事はなかった。先程の物はワザと、良く効いたように見せる為の演技、こうすればガブリアスの中には明確に高揚が生まれ、隙が生じる。勝つ為には全ての手段を取るクリムガンはそういった心の隙すらも狙って来る。
「ドラゴンクローってのは、こうやって打つんだよ……やれ!!」
「リイイイガアアアアアウウウオン!!!」
片手を掴んだままで逃げられなくなったガブリアスへと炸裂するドラゴンクロー、余りの破壊力にガブリアスの身体が吹き飛ばされようとするが、それを許さぬように握り込み続けていた。そして引き込むように手を引いた所に再度の一撃が放たれ、ガブリアスの顎を捉える。
「ガァ……バァッ……!!?」
「リィィィィグアアアアアアアアアアア!!!!」
クリムガンは自分よりも強いドラゴンポケモンへの強いコンプレックスを抱いている。それは自分を馬鹿にされただけではなく、ゲットするでもなく、唯々自分を蹂躙し、技の実験体にされたという経験がある。ラビにゲットされる前にそれをされたのが―――ガブリアスだった。
「リイイガアアアアアアア!!!!」
「ガァバアアアッ……」
最早意識を保つ事も出来ずに崩れ落ちてしまったガブリアス、それを無理矢理立たせるかのように上へと引き上げるように腕を上げてまだ戦うように要求するクリムガンだが、既に意識の無いガブリアスの姿を見て我に返った。
「リ、ガア……リムウゥゥク……」
冷静さを取り戻したのが、ガブリアスをそっと地面に下ろしてから可能な限り抱き上げてハルジオの元へと連れて行った。その表情には深い後悔と自分の情けなさを浮かび上がらせていた。
「……気にすんな、ウチとガブリアスが弱かっただけだ。お前は強かった、胸を張れよ」
「……リムゥゥゥ……」
そういうとクリムガンは自らレイブンの元へと戻ると、自分からボールのスイッチを押して、その中へと入ってしまった。
「ク、クリムガン戻っちゃったのです」
「ああ、過去の自分を重ねたんだろうな……」
自分を蹂躙した、嘲笑って来たあのガブリアスと今自分は同じ事をしてしまったんだと理解してしまった。そして自分を許せなくなったのかもしれない、耐える事には慣れていたはずだが……以前のそれと状況が近かったために戦意を喪失してしまったのだろう。ボールが震えて、すまないがこれ以上は無理だという意思を伝えてきた、必ず立ち直るから今はそっとしておいてくれというのも感じ取れた。
「アラン、クリムガンが戦闘不能扱いでいい。戦意喪失だ」
「分かった」
「……色々あるんだなクリムガンにも」
「まあな」
なんだかんだでクリムガンは立ち直りが早い、というか言っては悪いが脳筋思考な所があって、ダメな所があっても割とすぐに復活する。今回のこれも初めてという訳ではない、恐らく一日か二日もすれば元気になる筈だ。
「だけどバトルは続けさせてもらうぜ、ウチは、まだこんなもんじゃ終わらねぇんでな!!轟け!!ガチゴラス!!!」
「ゴラアアアアアアアアアッスッ!!!!」
「仕事だ、カミツオロチ!!!」
「カァアアロッ!!!」