「うちらのとっておき、メガシンカでブチかますぞ!!!」
メイド服の首元、まるで首輪のようになっているそれに埋め込まれているメガストーンを握り込む。そこから溢れ出すメガエネルギーがドラミドロと結合して新たなステージへの扉を開く。メガシンカの繭を破って飛び出して来たのは―――魔女のような巨竜だった。肥大化した頭のカサ、風にたなびく長髪のように全身を覆っている。二股になりつつも巨大化した角は枝分かれ宝玉のような物が付いたそれはまるでティアラの様で美しくも禍々しくなっている。これがメガドラミドロ。
「こっちも行くか、ボーマンダ!!」
「ボオオオオマアアアアア!!!」
メガリングを装着しながらもレイブンはボーマンダと心を一つにする、互いの心から生まれるメガエネルギーは周囲を揺るがす程の出力なりながらも更に巨大となっていく。その波動の強さにハルジオは目を見開いた。此処までのメガシンカの波動は初めてだ……矢張り、凄いトレーナーだ。
「焦がれた空、舞うだけで満足か、どうせなら天界を統べる王となれ。全てを切り裂け、その傷跡が新たな国を示す線となる―――至れ、メガシンカァ!!!」
「ボオオマアアアアアアアア!!!!」
メガシンカの繭を突き破って現れたメガボーマンダ、身体には大きな変化はない、前足を仕舞い込む為のようなコモルー時代の殻が追加されたがそれ以上に翼が大きく鋭角化。戦闘機の前進翼を思わせるような形状へと変化した。これがメガボーマンダ、その翼の影響から血に染まった三日月、ブラッディクレッセントムーンだの厨二臭いニックネームが付けられたりもしている。
「龍の舞」
「ボオオッマアアアアッ……!!」
「早速かよ、ヘドロ爆弾!!!」
いきなりの容赦のない龍の舞に危機感を募らせつつも攻撃を指示するハルジオ、メガシンカした事でドラミドロの毒は更に危険性が増しており、細胞の再生力を暴走させる効果も付与されている。どこぞの武道家の切り札だ、と言いたくなってしまうが、生憎、龍の舞中でも動けるように自分のポケモンは仕込んであるのでボーマンダは悠々と回避するが……ヘドロ爆弾が直撃した地面はドロドロに溶け始めた。受けたら唯では済みそうにないな……。
「当たるな、流星群!!」
「ボオオオマアアアアアアッ!!!!」
「なっこんな所で!!?」
此処はバトルが許可されているエリアではあるが、それでも流星群なんて使えば周辺の民家に被害が出かねないとハルジオは驚くが、レイブンは心配無用と笑う。流星群は散らばり過ぎる事も無く、束ねられている花束のように密集して落ちて来ていた。力業でやる手もあったのだが、研究してみたら収束させて放つ事自体は可能であることが判明した。現状出来るのはボーマンダとガブリアス位だが……
「だが舐めるな!!龍の波動!!」
メガシンカした事でドラミドロのパワーも大幅に上がっている、放たれた龍の波動は最早ビーム染みたそれであり、流星群へと炸裂するとそれらを一斉に爆発させてしまった。収束流星群には驚いたがこの程度―――と思った直後、爆風を突き破るように赤い光が飛び込んで来た。ボーマンダである。
「ドラゴンクロー!!!」
「ボオオオマアアアアア!!!」
それは最早爪とは言えない、余りのスピードで爪に収束する筈のエネルギーが拡散して全身に纏ってしまっており、簡易版ドラゴンダイブと言いたくなるような物になっている。そんなスピードで叩きつけられた一撃にドラミドロは大きく吹き飛ばされながらも、なんとか耐え切っている。
「よく耐えたぞドラミドロ!!流石うちの相棒だ!!!」
「ミォォォドオオッ……!!!」
ハルジオの言葉を受けて当然だろと言いたげな顔をしつつも、ドラミドロは毒を分泌して攻撃を受けた部位を覆っていた。細胞の再生力を暴走させてしまう力こそあるが、調整さえすれば回復にも使えるという事だろう……特性の再生力もこの辺りから来ているのだろうか。
「ヘドロウェーブ!!」
「ドオオロアアアアアッ!!!」
途轍もない量の毒液の津波、モモワロウのそれとも遜色がない。咄嗟にボーマンダが足を伸ばして来たのでそれを掴んで空へと共に逃れるが、途中でドラミドロが龍の波動で狙い撃ちにして来たので手を放して建物の壁の突起に指を掛けて回避する。ボーマンダも当然のように回避する。
「ハッ流石だな!!トレーナーとしてだけじゃなくて、そこまで動けるたぁ驚きだ!!」
「伊達に10年旅をしてないんでな、久しぶりに懐かしい気分にさせてくれる」
レッドも居た頃でロケット団の殲滅をしていた頃はこういう事も日常茶判事だったなぁ……残党に突然攻撃されたり、街中で区画ごと地震や噴火で全滅させようとしてきたり……忘れたくても忘れられない日々だ。
「スケイルショット!!」
「ボオオマアアア!!!」
瞬時に回転し身体の鱗を無数に発射する、それを受けて思わず頭を下げてしまったドラミドロ。それを見逃さかった二人の意志は重なっていた。
「ドラゴンダイブ!!!」「ボオオマアアアアア!!!」
一匹の紅い巨竜となって突撃していくボーマンダ、その迫力は相対した相手は戦意を喪失する事すらあるのにハルジオは寧ろそれを受け止める意思を見せつけてきた。
「負けるなドラミドロ!!!龍の波動だあぁぁぁああ!!!」
「ドオオオラアアアアアアア!!!」
渾身の龍の波動に毒までが混ぜられた一撃、メガボーマンダのドラゴンダイブと激突すると、一瞬の拮抗すらも許されずに押し返されるがそれでもドラミドロは最後の最後まで攻撃をし続けた。その身が巨竜に喰らいつくされる瞬間まで戦い続け、そして……メガシンカが解除された。
「ドラミドロ、戦闘不能。ボーマンダの勝ちだ」
「―――あははははははっうちらの全力も通じねぇか!!!不撓不屈のドラミドロ使いが聞いて呆れるぜ!!うちなんてまだまだ井の中のニョロモだって事か!!」
ハルジオは気分良さそうに笑ってからドラミドロを撫でた、最後の最後まで戦ってくれた相棒には敬意と感謝しかない。
「有難うなドラミドロ、心からいや魂から感謝するぜ、お前は最高の相棒だ」
「ドォォオ……」
「実際そのドラミドロのレベルは相当に高かった、というか毒の扱いが凄いな……ボーマンダっていうスピードとパワーを両立できる奴だから対応できたが……パワーだけだったら確実にやられてたな……」
特に毒がやばい、これほどまでに強い毒は毒専門トレーナーのポケモンでもなかなか出せない。
「いやぁ楽しいバトルだったぜ、有難うなレイブンさんよ」
「気にするな、それと一つ良いか。メガドラミドロの特性、知ってるか?」
「んっいや、適応力じゃねぇのか?」
「それ多分メガシンカで上がったステータス分で勘違いしてるだけだな……成程、それなら最後のポケモンをメガドラミドロに任せた訳だ」
「えっ何か知ってんのか?」
「俺を誰だと思ってる?」