「メガマフォクシーの鎮圧、ご苦労様でした。マフォクシーについてクエーサー社にて医療スタッフが検査後に回復のための処置を行わせて頂きますのでご安心ください」
「だったら、それが終わったら俺のポケモンにしていいかな」
「レイブン様のポケモンに、ですか?」
マスカットに連絡し、直ぐに飛んできたマスカットと専門スタッフのチームが周辺のメガエネルギーの濃度チェックやバリアゾーンのメンテナンスを行っている間に運び込まれていくマフォクシー、一時的な保護に使用するボールへと入っていくマフォクシーを見つめながらもレイブンは言った。
「あいつに俺は俺が受け止めてやるって言った、それを聞いてアイツは押さえ込んでたメガエネルギーを解放した。頭が良い上に優しい奴だ、人間やポケモンを巻き込まないように此処まで来たんだ。そんな奴に俺は受け止めてやるって言ったんだ、だったら最後まで責任を取ってやらねぇと、俺は無責任な奴になりたくはないんでね」
「承知致しました、検査と治療、回復が確認出来ましたらレイブン様にお引き渡し致します」
「そうしてくれ、それとこいつは依頼料として貰ってもいいのか?」
手の中で転がしているメガストーンを見せつける、最近になって漸く精製が可能になってきたとはいえ、それでもメガストーンは極めて希少で貴重な物。世間的には自然的に発生して出土した物しか認めないという馬鹿もいるが、メガシンカ出来ればそれは本物のメガストーンなのだというのがレイブンの持論である。
「構いません、どうぞお持ちください」
「あんがとさん」
これでメガストーン、マフォクシナイトは自分の物になった訳だが……メガマフォクシーの特性は何なのだろうか。箒に乗っていたことを踏まえると浮遊……というのが第一候補だが、この世界にはどう見ても浮いてますけど違う特性ですというポケモンが大量にいるので断定は出来ない。まあ色々と検証していくしかない。
「暴走メガシンカはどのように感じられましたか?」
「暴走の名に恥じないって感じだ、トレーナーっていう一歩引いた視点からの情報がないからポケモンも自分で判断しないといけないし暴走してるからかかなり直線的な動きが多い。後メガシンカを扱い切れていないな……まあ現状のMZ団だとキツいな、最低でもメガシンカポケモンが一匹でもいないと厳しい」
「矢張り……此方でメガストーンとキーストーンの準備をしておいた方が良いかもしれませんね」
「あったとしても扱えるかは別の話になっちゃうけどな」
様々な話をしてからマスカットが本社に引き上げていくのを見送りながらもアンの状態を確認する。今回はアンも居たし周囲に被害が拡散する前に此方に意識を集中させるためにマフォクシーに煽らせてヘイトを集中させこそしたが、余波で怪我してましたなんて事になったらこっちが洒落にならない。
「怪我はないよな?」
「ないのです、大丈夫なのです」
「そうか……良いかアン、別に俺は意地悪で」
「分かってるのです、アンは我が儘言ってたのです。でも、アンはそれでも見たいのです。もっともっと強くなりたいのです、そしてお母様に見て欲しいのです。アンは強くなりました、おっきくなったって胸を張りたいのです」
矢張りというべきか、アンのモチベーションの一つにはカルネが絡んでいる、こうなって来るとこれを諫めるのは容易な事ではない。下手にそれを拒絶してしまうと悪い方向性に向かってしまいかねない……如何したもんかと思っていると着信が入ったので出てみると、相手はモミジであった。
『あっ今お時間大丈夫でしょうか』
「大丈夫だ、如何したモミジ博士問題か?」
『ああいえそうじゃなくて、実はちょっとお願いしたい事がありまして……お時間がある時でいいので研究所に来ていただく事は可能でしょうか……?』
「分かった、これから向かう」
何やら用事があるというモミジ、そして馬鹿に丁寧だったが……まああれこれやったら影響だろうなぁ……。
「モミジ所長が御呼びだ、研究所に行くぞ」
「はいなのです。あっその前にヌーヴォカフェによってチョコクロワッサンをお土産にしていきたいのです!」
「自分が喰いたいだけじゃないよな?」
「ちっ違うのです!!?前に喜んでくれたからなのです!!?」
「ホントかなぁ~……?」
そんな事もありながらもヌーヴォカフェでチョコクロワッサンとコーヒーを調達しながらも研究所へとやって来た二人。エレベーターで上がった先には緊張した面持ちのモミジが待機していた。
「よ、ようこそいらっしゃいました……!!」
「お出迎え有難うな所長、ンでなんでそんなに緊張してんのよ」
「いやだって市長に圧力掛けられちゃうしあのラビさんから寄付が来るとか……タイミング的にレイブンさんがなんか手を回してくれたとしか……」
「その辺りは気にしないでくれ、俺はプラターヌ博士に話を通したらそれが巡り巡ってあのチャンピオンに届いて動いただけだから、そう畏まられるとこっちが困る」
「そ、それじゃあ……」
「あっそうだ、これお土産の珈琲とチョコクロワッサンなのです!!」
「お、おおおっ私の天使……!!」
眼の下の隈が少し薄れてこそいるが、まだまだ大変なのが窺い知れる研究所。資金面は寄付で問題なくなったし市長からの横やりなども減って、最近では漸くまともに布団で眠れるようになったとの事。3時間でも布団で寝られると体調って違うのね!!と笑って言われて何とも言えなくなった。マジでプラターヌを連れ戻した方がいいのではなかろうか……。
「ンで頼みっていうのは?」
「それは―――ほら、あの子ら」
モミジが指さした先にはなんとカントー地方の御三家であるフシギダネ、ヒトカゲ、ゼニガメの三匹がいた。アンは目を輝かせながらも其方を見ている。
「用っていうのはこの子達の事なの。前任者のプラターヌ博士から面白いトレーナーを見つけたら託して上げて欲しいって頼まれたって訳、それでお二人にどうかなぁ~って」
「まあ俺はともかく……」
「カゲカゲ~♪」
「くすぐったいのです~♪」
「ゼニゼニ~♪」「ダネダネ~♪」
そこにはあっという間に仲良くなっていたアンの姿があったのでアンが三匹の内の一匹を受け取る事になった。誰になるかと思ったが、アンはヒトカゲを選んだ。理由としては―――
「サトシさんにアランさん、それにお兄様のリザードンがカッコ良かったからなのです!!」
という子供らしさ全開の発言にモミジは尊い……と尊みを摂取していた。ゼニガメとフシギダネは選ばれなくても気にしていないのか、ヒトカゲに良かったね~頑張れよ~的な応援を送っていた。プラターヌ博士が残して行っただけあって中々いい子達なようだ。
「(ヒトカゲか……確かにバランス的にも炎タイプが恋しくなるところだったしな……さて、どんなパーティになるんだろうな、アンの手持ちは)」
「えっとえっと、ヒトカゲのカゲちゃんなのです!!」
「カゲ~!!!」
「……なんで幼女ってこんなに尊いんだろう……」
「あんたマジで休んだ方が良いぞ」