「流石にこんな所か……」
「ゼ、ゼニィィィ~……」「ダ~ネダネェ~……」
完全に目を回してしまっているゼニガメとフシギダネ、二匹もかなり善戦する事が出来た。だが、まだトレーナーとの連携とバトルの経験が不足していた為に即座にトレーナーの指示に対応しきれずに倒されてしまった。
「だが見込みは十分にありだな……なんで今の段階でハイドロポンプみたいなのが出来るんだよ……フシギダネはソーラービームの前段階が出来てるし……」
改めて先程の戦いを振り返るのだが、ゼニガメは臆病な性格なのか甲羅に籠ってしまう事が多かったが、セイカは途中から戦術を転換して逐一甲羅に戻させて防御を固め、甲羅に籠ったままで水鉄砲を発射、彼方此方に水をばら撒き始めた時はハイドロポンプ!?と驚いてしまった。そしてフシギダネは対照的に酷く度胸のある性格をしており、ダブルウィングで一気に距離を詰めていったのに目を反らす事も無く睨み付け続け、そして当たる直前に回避をする事で攻撃を躱し、更には簡易版のソーラービーム、言うなればソーラーレーザーだろうか、それを放って来てファイアローに上手く対応していた。
正直な事を言うと中々に驚かされたのだが……疾風の翼ファイアローを打倒するには足りずにそのまま瓦解してしまった。やっぱりこいつ無法だよっと思いながらも勝ったよ~と甘えて来るガチゴラスの顎を撫でてやって労う、ファイアローは肩に乗って翼を広げて何やら勝ち誇っている。
「さてと、改めて今回のバトルの趣旨を言うぞ。特例ランクアップ処置の是非だが……まずはキョウヤ及びセイカペア」
「「はっはい!!」」
ゼニガメとフシギダネを抱き抱えていた二人は慌てながらも姿勢を正しながらもポケモンを労うように撫でている。ガイとタウニーに倣って二人も3体ずつの選出をしてきたが、あのまま続けていても面白い事にはなっていただろうに……もったいない事をしたもんだ。
「結果としては俺の勝利だが―――よくリザードンを落としたな、徹底して相手の妨害と体力の消耗を前提にしたバトルの展開は見事という他無い。この前のバトルだと全く指示を聞かなかった奴らも確りと手懐けたな」
「手懐けたっていうか、仲良くなった、だけですよ?」
「うん、仲良くなりはしましたけど多分まだまだ上から目線全開ですよ」
「それでも指示を聞いてくれるだけ良いじゃねぇか、ガン無視より」
「「それはまあうん、はい」」
実際あそこまで無視していたのによく持って行けた物だと感心してしまっているのは事実。頑張ったんだろうなぁ……と言うのが分かる。
「そして最終的にはモミジ所長代理から譲り受けたばかりのゼニガメとフシギダネでよく粘って来た。それらを総合して―――ランクアップを許可します」
「「やったぁ!!!」」
と二人はハイタッチして喜びの声を上げる、例えここで失格になっても少しずつ上がっていこうと思っていたのでそこまでのダメージ自体はない。だがそれでもランクアップが許可されると嬉しい事この上ない。そして問題は……最早死刑宣告を待っている罪人のような青白い顔になっているガイとタウニーである。
「それではガイさんとタウニーさん、ランクアップの結果なのです」
「「は、はい……」」
既に何処が悪かったのかを自覚しているので敢てそこを突く事も無いが、素直な事を言うとアンは迷っていた。最後の最後で二人は悪くないバトルをした、きっと最初からその気になっていれば、合格確実なバトルをしていたのは間違いない。マスカットからも自分が判断していいと言われているが……如何するべきか悩んでしまう。
「アンとしては如何だった?」
「う~ん……確かに最初こそ酷かったですけど最後にはかなりしっかりとしてたのです。だから今回の経験を生かす事が出来るのであれば上位ランカーとしては相応しいとは思うのですけど……お兄様は納得いかなそうな顔です」
「そりゃそうだろ、言い方悪いかもしれないがポケモンバトルに年齢なんて関係ない。アイリス見てみろ最年少でのチャンピオンだぞ、その気になれば子供が大人を打倒するなんてよくある話過ぎるんだ。それなのに相手が小さい子供だから手加減して負けました?笑い話にもならん」
今を見据え、今が出来なければ未来もないと現実的な裁定をするレイブンと、今を見つつもそれを未来への糧にする事さえ出来ればいい未来が来ると思うアン。NOとYESの押し合いだが、どうなっていくのか……と思っている中でアンが手を叩いた。
「それでしたらマスカットさん」
「はい?」
「お二人とバトルをしてくださいますか?以前アンにして下さったみたいに本気のバトルを」
「それでは、私がそれを引き継ぐ、と言う事ですか?」
「はい。私たちとしては平行線に近いですが、これらを踏まえて上でマスカットさんに判断して頂きたいのです。試験官としてのお役目を放棄するに近いですけど、アンとしては二人にもう一回位はチャンスがあってもいいんじゃないかな、と思うのです」
マスカットは顎に指をあてる、確かに本当に見込みがないのであるならばこの場で切り捨てるのも簡単だが、MZ団はクエーサー社が委託している相手、その実力が不足しているとなると此方にも非が飛んできかねないのを自分で判断できると思えば悪くはない。それに先程のバトルを見ても、二人を切り捨てるには勿体ないと思ってしまった自分もいる。
「宜しい、ならば私とバトルです。これが最終ラインです」
「「は、はい!!!」」
間一髪の処で何とか踏み止まった二人は思わず胸をなでおろすがレイブンが釘をさす。
「なんか勘違いしてるようだが、お前ら本来は失格な所をお情けでアンから保留されてるようなもんだからな。今度はちゃんとやらんとマジでアウトだからな」
「はっはい、今度は、いえこれからはもうこんな事は無いように努めます!!」
「全力で望みます、見ててください!!」
「それはマスカットの旦那に見せろ」
そう言いながらもバトルコートの網沿いにあるベンチに腰掛けるとアンがムーランドに咥えて貰って膝に乗って来た。
「厳しいですねお兄様」
「お前さんが甘さを見せるのは読めてたからな、だったら俺は鞭さ」