「……不覚」
「まあうん、ドンマイ」
そんな声を掛ける先はムク、順調に進んでいったクイズのセカンドステージ、その問題はカナリィの相棒であるシビルドンの好物のスイーツを持ってこいというもの。答えはミアレガレットなのだが……カナリィのシビルドンは特別に硬く焼き上げたガレットを好んでいるのでそれ以外を持って来てしまった者は失格、ムクもその事を失念しており脱落してしまった。
「最悪……愛を、愛を示せなかった……」
「愛ねぇ……愛っていうのは相手の事を知り尽くしているって事を指すんじゃないぞ」
かなり落ち込んでいるムクにフォローを入れる事にしたレイブン、こう言った事はあんまり得意ではないのだが……アンの特訓ではお世話になった相手を放置する事も出来ないので口に出してしまった。此方を向かれたのでもう逃げられない、頑張って継続。
「愛は色々ある、この場合の愛が相手を知る事っていうのは分かるが……それだけじゃないのが愛の奥深さだ。知るのもそうだけど、この場合は新規を快く出迎えたり、カナ友の輪を広めるのも一つの愛だろ」
「―――……レイブンさん、貴方凄い、こういう配信についての愛も熟知してるんだね」
「まあうん、ある種の一般論だけどね」
自分も配信やってますからとは口が裂けても言えん……取り敢えずムクの元気が戻った所でクイズ決定戦のファイナルステージに進む事になったのはキョウヤとピュール、そして毎度の如く優勝を掻っ攫い続けている会員番号4番を誇りにしているマニー。
『う~ん三人か~……んじゃくじを引いて、同じ数字を引いたもの同士でバトル、その後に違う数字の者とバトルって事で!!』
そんな事になった結果、ピュールとマニーが同じ数字を引き合わせてバトルをする事になった。
「まさかここまでやるとは思いませんでしたぞ、この会員番号4番、マニーが貴方を認めますぞ」
会員番号の4番、極めて若い数字。以前のピュールであれば一桁でもない会員番号になった所で意味などないと吐き捨て、マニーの番号を羨んだかもしれない。今も少しだけその気持ちはある、あるにはあるが……
「それは光栄です、ですが会員の番号が若ければ偉いという訳ではありません。番号なんて唯の数字です、それぞれが自分の会員番号にこそ意味を見出すのです。今日、僕はDG4に入ろうと思いますしその番号は貴方に比べれば大きいでしょう―――ですが、僕のカナリィ愛は貴方よりも小さい、何てことは無いと断言致します!!」
その力強い言葉に周囲からはおおっ……という声が漏れ出した、そしてそれに拍手が起きる。それを行ったのはムクだった。それに続いてマニーが、ホロのカナリィが、周囲から拍手が起きていった。その拍手にまるで正気に戻ったかのようにピュールは困惑したように周囲を見回す。
「いや、その通りで御座った。吾輩は大切な事を忘れ、マナーを重んじないカナ友となる所で御座った……その通り、人にとって会員番号はその物が大切……吾輩にとってこの4番が大切なものであるように……改めて、其方の名前をお聞きしたいのである!!」
「僕はピュール、これまで斜に構えるだけ構えてDG4に入る意味など見出す事も出来なかったバカな男です」
「フッ、自分をバカという男がバカである事など極めて少数派、そしてそういう思いっきりは吾輩も好きである!!吾輩はマニー、数字マウントという愚かなマナー違反をしていたマニーである!!」
互いに挨拶をすると、自然に二人はガッチリを握手を結んだ。そして互いの瞳を確りと見た後、同時に手を離しながらもバックステップで距離を取った。
「マニー、出会ったばかりですが勝たせて頂きます!!」
「それは吾輩もであるぞピュール氏、勝つのは吾輩である!!」
「な、なんか凄いピュールが燃えてる……」
「燃えてるのです」
置いてけぼりになっているセイカとアン、見学の身であるので致し方ないとも思うのだが……なんなんだろうかこの謎の熱量は……だがキョウヤとレイブンは理解を向けている。オタクとは確かに面倒臭い生き物だ、妙な事で意地を張ったり拒絶したりする、だが一度分かり合えたり、相手の凄さを見たら素直に認めて、自分も同じ事が出来る可笑しな生態があるのである。それが分かってしまう自分達も同類なんだろうなあ……と思ってしまう。
「……あいつ、良い事言うじゃん……ちょっと見直した」
と、隣のムクもピュールを見直したように頷いていた。DG4のメンバーたちもこのバトルを本気で楽しみながらも声援を送っている。それはカナリィも同じなのか、二人とも頑張れ~とエールを送っている。そんな二人にとってカナリィの応援は至上の喜びに等しく指示にも気合が入る。そんなトレーナーに応えようとポケモン達にも気合が入る。そして―――
「マニー、今日は僕の、勝ちです……!!!」
「素直に敗北を認めるで御座るぞピュール氏、だが次は負けないのである」
勝利を勝ち取ったのはピュールであった、だがマニーもそれを素直に受け止めながらもピュールを祝福しながらもリベンジを誓っている。その光景に思わず再び拍手が起こる、のだが―――
『……あっそうだ、これまだバトル残ってるじゃん、いい雰囲気過ぎてラストかと思ったわ』
「「「「「それな!!」」」」」
ぼそっと呟いたカナリィの言葉に全員が同意し、次には大きな笑い声が生まれたのであった。そしてピュールはDG4の面々から祝福されながら、カナ友の一人であるジョーイさんが持っていた救急キットでポケモンの治療を行い、簡易診断を行って次のバトルも十分できると診断された上でピュールはキョウヤに立ちはだかった。
「ピュール氏~吾輩の分まで頑張るのでありますぞ~!!!」
「キョウヤ、悪いですが僕にも負けられない理由が出来ました、勝たせて貰います!!!」
「ああ、全力でお前を超えてやる!!!」
「なあセイカ、ピュール完全にキョウヤのアシスト忘却の彼方だよねこれ」
「完全に忘れてるねこれ……キョウ兄、こういう一面、あるって初めて知ったよ……」
「でも楽しそうなのは良い事なのです」
「アンに激しく同意」