「なんかしなくてもいい苦労してたって感じだよなぁ……」
そんな風に飛び出してしまったキョウヤの言葉にはどうしてもなく同意するしかなかった。何故ならばカナリィとしては工務店の方に来て話をしてくれたのならばランクアップ戦には応じたのだから。普通に考えれば態々クイズ決定戦を勝ち抜くなんて面倒な事をしなくても良かったのだ。
「まあ色々と言いたくなる気持ちは分かる、でもなんだかんだでキョウ兄楽しんでたじゃん」
「いやあれはただ周囲に合わせてただけ、周囲が盛り上がってるのにこっちが何も反応見せないってなんか白けるし気分悪いじゃん」
「まあそれは分かるけどさ」
本当にこの兄は周囲に合わせる事が上手いなぁと溜息が出そうになるが、そこがいい所なのだから致し方ないか。そんな事を言いながらも到着したラシーヌ工務店、此処こそがカナリィとタラゴンがいる場所……若干の緊張を纏って手の動きが鈍っていたら、レイブンがそれよりも先に、極めてあっさり、まるで居酒屋の暖簾でも潜る様な自然さで、工務店の扉を開けた。
「ちぃ~っす、タラゴンの爺様いるかい?」
「おおっレイブンじゃないか、なんじゃどうかしたか」
何やらまるで友人関係にあるかのような気軽さで会話する二人、キョウヤ達を置いておいて状況を説明する、と言っても分かっているだろうが。
「という訳でな、ランクアップをして欲しいんだとさ。にしても爺様何時参加したんだ?」
「いやぁカナリィに触発されてしもうての、参加してみたらぽぽぽ~んとランクアップしてしてもうた、というわけじゃ」
実際はレイブンに敗北してからカナリィの特訓に付き合って利しているうちに、自分も強くならなければと思って思い切って参加してみたら、一気にランクアップしてしまったという事。
「ンでわしの相手がそちらのお嬢さん、という訳じゃな?」
「はっはい、セイカです宜しくお願いします!!」
「おう宜しくな、礼儀正しくてよいじゃないか」
好印象を受けるタラゴンはランクバトルの事情を聞いて納得するのだが……それならば直接来ればよかったのでは?と口にする。
「やめてやってくれタラゴンの爺様、こいつらそれを思いつかなかったんだ」
「ありゃぁ……じゃがしかし、そのお陰でDG4のイベントはたいそう盛り上がったと聞いたぞい、心より感謝するぞい!!」
「そ、そう言われたら悪い気はしませんけど……」
そんな最中、タラゴンの爺様からレイブンは耳打ちを受ける。
「お主、結構バレそうなこと連発しとったぞい。いい加減にワシら以外にも教えた方がいいんじゃないか?」
「……だなぁ、そろそろ増やしてもいい頃合だよなぁ……」
タラゴンに言われてある事を決意する。奥へと進んで行くと内部には資材置き場などを兼ねた広いスペースがあり、中央には堂々とポケモンバトルのスペースがあった。その中央に立つとレイブンは少しだけ笑いながら言った。
「さてお前ら、俺の正体気になってたよね」
「え、ええっまあ……それだけ強いのに全然正体分からなくて……」
「此処にはいないけど、ガイとタウニーもかなり必死になって調べてたのにね」
二人はピュールの看病の手伝いの為にDG4のイベント場に残っている、そして二人も気になるレイブンの正体、それを今こそ明かしてやろう。いい加減に味方も増やした方がいいとは思っていたし良い機会だろう。
「突然ミアレにやって来た謎のトレーナー、アンのお兄様であるこのレイブンの正体は―――って服脱いで正体は現したりはしないが、その正体は……」
ワザとらしくサングラスを外しながらもとあるポケモンを出した、そのポケモンとは―――
「ケエエエエエエエンッ!!!」
「ダ、ダイケンキ!!!?」
「エ、えええっじゃ、じゃあもしかして!!?」
「そう、レイブンとは世間を忍ぶ仮の姿、その正体は―――はい、週刊エンジョイポケモン放送局のイラストレーターのラビです」
刹那、音が世界から消えたように硬直した。そして直後に―――
「「ええええええええええええええええええええええええええええっ!!!!???」」
爆音染みた悲鳴があった。タラゴンはまあそうなるじゃろうなぁ……と分かる、超分かると言いたげに頷いた。
「じゃ、じゃあアンちゃんは!!!?」
「ああそっちはカルネさんの娘のアンシャ」
「なのです」
「「「えええええええええええええええええっっっ!!!??」」」
「タラゴンの爺様も驚くんかい」
「当たり前じゃろうがチャンピオンの娘さんじゃないか!!!?」