「「「あががががががががっ……」」」
「おんもしろいレベルで硬直してますね」
正体を明かしたレイブンことラビ、その反応が余りにも面白いのでケラケラと笑ってしまっている。それも無理はない、色々とお世話になったりしていた相手が世界最強のポケモントレーナーとなった属性過多なイラストレーターだと分かればいやでもこうなってしまうという物だろう。タラゴンはタラゴンで別な意味で驚愕しているみたいだが。
「タラゴンさんはなんでそんなにビビってるのよ、もう知ってるでしょうが」
「いや、あのカルネさんの娘じゃぞ!!?ワシなんてカルネさんがデビューした時からの大ファンなんじゃぞ!!?その娘さんが目の前にいる!?頭が沸騰するわ!!?」
成程そっちだったのか、確かにカルネのデビューは最短でも十数年前だと考えると当時から知っていたとしても可笑しくはないのか……と思っているといい加減にキョウヤとセイカが再起動して、綺麗な90度の礼を見せ付けながら、どっからか取り出したサイン色紙を突き出しながらも懇願する。
「「ラ、ラビさんいきなりこのようなお願いするのはぶしつけなのは分かってますけどサインください!!!!」」
「そんなに欲しいですかねぇ……私のサイン」
「欲しいですよ!!イッシュ民としては大スターですよ!!?」
「そうですよ、個人的にはキョウヘイとメイちゃんに並びスーパー大スターです!!!」
「あの二人とはジャンルが違うような気もしなくもないですけど……」
取り敢えず簡単にはサインをしてあげる事にした、いい加減に定めた自分のサイン、氷の結晶をベースにしつつ、イッシュ地方の輪郭を映し出したような形の物の前にダイケンキの角をイメージした剣がクロスさせ、その前に自分の名前をちょっと崩して書く。イラストレーターとしての意地が垣間見えるサインとなったが、これ大量に書く場合には簡略化必要だなと思った瞬間だった。
「か、家宝だ……」
「神棚作ろう」
「やめてください、邪神に祝福されている身としては割とまじでシャレにならない」
「ラビ、それ祝福とは言わん、呪いか祟りじゃ」
どこぞの神が自分の祝福が呪いやたたり扱いされている事に言葉を失っている事はさておき、改めてタラゴンに今回の事情を説明。
「ンで、ワシとのランクバトルじゃったな?やれやれ、ラビのカミングアウトのせいで全部ぶっ飛びそうじゃったわ」
「私のせいですか」
「そりゃそうじゃろ、つうかなんでお主ミアレに来たんじゃ?」
「あれ、言ってなかったっけ」
「聞いとらんぞ」
改めてこのミアレに来た理由としてはワイルドゾーンの調査、必要であればこのミアレから住民の避難が必要であることを勧告する為、ついでにミアレの観光の為である。アンシャはその観光案内の為についてきたという事である。
「なんで警告ついでに観光なんじゃ……」
「いやただの杞憂だった場合には適当に過ごそうかと思ってて」
「あっもしかして研究所に資金寄付したのって……」
「そ、レイブンの状態で研究所の状態聞いて、そのまま寄付したって訳。思いの外レイブンってのが動き易くて個人的には楽しんでたっていうのは否定出来ませんけどね……こうやって偶にうろつくか……」
「完全にしがらみから解放されて快適だって顔してるよラビさん……」
「やっぱり世界大会で優勝しちゃったから色々と大変なんだよ……」
当人の苦労を察して色々と同情するキョウヤとセイカであった。そんな苦労はさておいて、タラゴンはハッとしながらも咳払いをする。
「さてお嬢ちゃんはワシとのランクアップ戦で、そちらの小僧っ子がカナリィとのランクアップバトルじゃったな?」
「はっはい!!セイカの兄のキョウヤと申します!!」
「よしよし、ちゃんと挨拶が出来る若者は嫌いじゃないぞ。じゃが一言だけ言っておくぞい、カナリィはワシなんかよりもずっと強いぞ?」
不敵に笑うタラゴンの言葉に思わず喉がなった、タラゴンだって同じくFランクではあるのだが、カナリィはずっと前からFランクで戦っている上に現在はラビとのバトルを得て特訓を重ねているので以前よりも格段にレベルアップしている。それを打倒するのはハッキリ言って容易くはない。
「望む所ですよ、例え負けた、いや負けるなんて考えませんよ俺は。寧ろ負かしてやるつもり出来てるんですよこちとら、電撃に痺れて瞬殺?やれるもんならやってみろ、逆にこっちが瞬殺してやらぁよ!!!」
「かっかっかっか!!強気な事を言う小僧っ子、いやキョウヤじゃったな、気に入ったぞい!!さあじゃあまずはセイカ嬢ちゃん、ワシらのバトルと行こうかの―――不肖タラゴン、若い頃はこれでも貫けぬものなし、一撃必殺のタラゴンと言われたもんじゃ、工期もバトルも一気に、じゃが丁寧に、貫徹モットー!!ポケモンファイト、レディゴーじゃ!!!」
「宜しくお願いします!!!ドリルだって怖くない、私達の炎は決して砕けない!!そもそも炎だから砕くとか無理だし!!」
「かっかっか!!言うてくれるわい!!」
何だかテンションの上がっているキョウヤとセイカ兄妹の宣言を見つつも、遠くの奥からチラリーと顔を覗かせているカナリィに向けて笑顔で手を振ると、恥ずかしがりながらもノートに文字を書いて見せてきた、そこには可愛らしい文字で
「既に配信の準備してたけど直ぐ閉じるから待っててね!!?」
と書いてあった。如何やら配信中だったらしいが、配信スペース入り口が閉じられていないのに此方の声とか入っていない辺り、自分の知らない配信機材があるのかもしれない。そう言えばシトロンが電気タイプ繋がりで超高性能なノイズキャンセリング機材をプレゼントしたと聞いた、その気になれば指定した範囲内には外の音が入らなくなるとか……それなのに此方からは外の状況が分かるという意味不明な発明をしたとか……
「なんでもありだなアイツ、黄色いドラえもんかよ、ダメだそれだとケロン人になる」
「ケロン人、なのです?」
「いやこっちの話」