「この子が私の相棒、エンブオーです!!」
「ブンオオオオオオオオオオオッ!!!」
顎髭の炎をたぎらせながらも闘志を燃やし上げらせるエンブオー、これは中々に強敵だ、タラゴンは思わず笑う、ハッキリ言って先程のカメール、いやカメックスも相当なものだったが相棒ではなかったとは……だがそれこそ面白いというものだ。
「こりゃぁ油断ならんぞドリュウズ、気合入れ直せ、来るぞい」
「リュウウウズッ」
ドリュウズも決して気を抜いていたわけではない、何故ならばカメックスと同じ自分の弱点を突く事が出来るポケモンが相手、だが逆に自分も相手の弱点を突く事も出来る訳だが……それが逆に油断と攻め気を増長させて致命傷を招くかもしれないとタラゴンは警告し、ドリュウズもメガシンカで高揚している自分の精神を引き締め直した。
そしてその予感は正解だと言わんばかりにセイカはキーストーンを取り出し、エンブオーは拳を開いた。そこには掌にメガストーンが来るように合わせられているアクセサリーがある。
「こっちも行くよエンブオー!!」
「ブウウウウオオッ!!!」
キーストーンに触れる、自分の心とそれが結びつく、同時にエンブオーのメガストーンも共鳴し、虹色の光を生み出していく。キーストーンの光とメガストーンの光が互いを引き合い、結びつくと激しい閃光のような光を生み出していく。
「猛れ荒ぶる魂!!我らは共に歩む者、人とのポケモンの絆を纏い!!天下無双、国士無双の将となれ!!メガシンカァアアアアアア!!!」
メガシンカの繭がエンブオーを包み込み、進化を越えた進化、メガシンカを引き起こす。繭の突き破って飛び出したのは炎の顎髭はプロテクターのように上半身を包み込んでおり、更に厳つく勇ましくなっているがそれだけではなく筋肉によって大きくなった胴体、牙、頭頂部の黒い眉や髷など、従来のエンブオーより更に豪華で威圧感のある姿。そしてその手には炎で作り出した蛇矛が握り込まれており、炎の武将を思わせる。
「ブウウウウオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
あげられた雄叫びと周囲に熱波が放出される、膨大な熱エネルギーをエンブオーが発している。思わずメガドリュウズが顔をしかめる程の圧倒的な熱量だ。
「―――いや、待て」
ラビが僅かに目を細めた。エンブオーの呼吸の仕方が明らかに可笑しい、肩で息をしている、メガシンカの制御に集中している?いや違う、あれは……エンブオーはゆっくりと振り向いた。その瞳には理性を感じさせるものはなかった。ラビにとってそれは覚えがあるものだった、サザンドラの暴走など数多くのポケモンの暴走を目にして来た、その中でも連想したのはサトシのゴウカザルの猛火を越える猛火、通称劫火。ヒコザルやモウカザルでは制御出来ずに暴走し続けたそれを連想、してしまった。
「……」
「待ってくださいラビさん」
「キ、キョウヤさん?」
「……うちの妹を信じてあげてください」
振り向いたエンブオーはゆっくりとセイカの方へと歩み始めた、一歩、一歩と踏み締める度に地面が赤くなり、所々熔解している。それほどの超高温を放っているという事にタラゴンは喉を鳴らしつつ、ドリュウズに目配せをしいざという時はバトルは中止にし、助けに入るという事を伝える。キョウヤの言葉を、此処は信じてみる事にする。
「ラ、ラビさん……メ、メガエンブオー怖いのです、エンブオー自体が怖いんじゃありません……あの目……闘いにのみ全てを注いでる戦士の目なのです」
「ああ、それがセイカに向けられている」
ラビもプラターヌ博士から託されたメガストーンの中にはエンブオーの物もあった、そして試した結果として、分かった事は、メガエンブオーの性格は豪快な豪傑で、極めて怒りっぽい暴れん坊。メガシンカの影響で常に高揚しているのか、戦闘が始まると目の前にいる敵に見境なく戦いを挑んでしまう戦闘狂、しかもラビのエンブオーですら個人プレーが多くなり、本来しない筈の深追いをしそうになることが多かった、メガエンブオーを導くトレーナーには要求されるのはポケモンとの信頼と絆だけではない、時には強い指示を出す事が出来る技量がを持ったトレーナーという事。
「エンブオー」
「―――……」
「私が分かる?」
「……」
また一歩、近づいた。肌を焼くような熱が伝わる、全身を突き刺すような熱が……だが一歩も引かない、顔を可能の限り、いや歪めないのではだめだ、偽るな、自分の思っているものは素直にしつつも拒絶しない……
『トモダチを理解する事、それが大切だと思ってる』
「……思いっきり戦いたいんだよね、戦っていいよ―――だから、私も一緒に戦うからね」
そう言いながらも一歩を踏み出してみせた、格段に皮膚を突き刺す熱が強まった、たった一歩なのに此処までの熱量―――と思うよりも早く笑いがこみあげていた、自分のエンブオーを強くしたのはメガシンカ、そしてそのメガシンカにはそれを引き起こせるだけの信頼関係がいるという事を……それがどうしようもなく嬉しい。
「貴方だけには戦わせない、暴走メガシンカも、ZAロワイヤルも、全部一緒に戦うよ!!」
「―――……ブウウオオッ!!」
雄叫びを上げながらも振り返るエンブオー、数歩前に出てから全身から更に激しい炎を滾らせていく姿にセイカは力強くなってまぁと母性と寂しさの二つを感じてしまった。
「メガエンブオーは素直にいう事を、いやこっからだ、戦闘中に全てが出る」
「行くよエンブオー!!相手はメガシンカドリュウズ!!相手にとって不足無し!!!だけど小細工無用!!!貴方の全パワーで正面突破あるのみ!!!」
「ブウウウウオオオオオオッ!!!」
「カッカッカッ!!!いうじゃないか嬢ちゃん!!ワシのメガドリュウズ相手に正面突破ったぁいい大見えを切ってくれるもんじゃわい!!ならばそれに応えてやるのが男の意地、男の生き様、男の花道ぃ~……!!!飾って見せよう、掘り抜いたトンネルの花道を、そしてそこから見える青空を!!行くぞいドリュウズ!!」
「ドオオオオリュウウウウウウッ!!!」