思えば自分は呪われていると言われたら妙な得心が行くから困る。これもその地方に行く旅に折角だからとクソ丁寧に権威に会いに行ったせいなのだろうか……などと考えてもこの状況は全く変化する事はない。隣で必死にお茶を淹れているサザレの緊張もなくなることはない。
「……お前、部屋に戻ってても良いんだぞ?」
「い、いやでもその方が、で、でもシャッターチャンスが……」
理性と職業の誇りの間で揺れ動いているサザレに優しく肩を叩きながらもポットを持ってリビングへと行く。今、来客が来ている。その来客の凄さに真っ青に近い顔色になっている、まあしょうがない……何だったら自分だって緊張しているんだ。
「お待たせしました、お茶が入りましたよ」
「あっどうも」
「……」
「ピッカ!!」
我が家のリビングにいる二人のトレーナーと一匹のピカチュウ、どうしてこうなってんのかなぁ……と素直に言いたくなってくる。そこにいるのはポケモントレーナー界のレジェンドとも言うべきレジェンドチャンピオンマスターのレッド、そしてそんなレッドとの死闘は最早伝説として、未来永劫語り継がれるであろう……ピカチュウを相棒とするサトシ。ホントなんでこの二人が自宅にいんだよと先程から脳内でのツッコミがやめられない。
「しかし、まさかお二人が私の家に来るとは……想像もしませんでしたよ」
「……迷惑、だったかな」
「いいえ、ですけどおもてなしの事もあるんですから前以て連絡が欲しかったですね」
正直、レッドだけならば問題はなかった……いや大問題だけどまだ何とかなったのだ。だがしかしサトシも一緒となると問題の次元が跳ね上がるのだ。何故ならば一方はレジェンドチャンピオンマスター、一方はその伝説を打ち破って新たな伝説となったPWCSの新王者。その証拠に今サトシが被っている帽子はレッドの帽子なのだ。
「その帽子も似合ってますね」
「……ああ」
「レッドさんにそう言われるとなんか照れるな、なっピカチュウ」
「ピカッチュ」
レッドからトロフィーが授与されると同時に、レッドは自らの帽子をサトシへと託した。そして今のレッドは白と黒の配色の帽子を被っている。
「それでサトシさんは今は何を?」
「俺は今も旅をし続けてますよ、PWCSの王者になったからって俺は夢を叶えた訳じゃないですからね。それで今は色んな地方を巡り直してます」
「成程……貴方らしい言葉だ」
というだけではないらしい。他地方へと出向いて地方のレベルのチェックや四天王やチャンピオンの確認というのも含まれている。サトシからすれば旅をしながら出来るので引き受けているらしい。パルデアに来たのもそれが目的なのだろうか……これは、伝えておいた方が良いのだろうか……面倒だからやめよう。
「そう言えばレッドさんとラビさんは知り合いなんですか?」
「……大切な、友達」
そう言われて益々サトシからすればラビへの興味が尽きない。サトシとレッドは時折非公式の場でバトルをしているらしく、互いに勝ったり負けたりを繰り返している。そんなレッドとの触れ合いの中で無口なレッドが口にする数少ない名前の一つがラビだったからである。
「と言っても私からしたらあれは完全に巻き込まれただけなんですけどね……レッドがロケット団の残党に襲われている所に私が巻き込まれて、それで共闘して、そこで仲良くなったんですよ」
「へぇ~ロケット団に、俺も良く襲われるからテレパシー感じるな」
「シンパシー……」
「あっそうでした」
「ピカピ……」
まあ、あの時はサトシのあの三人組のような可愛げは皆無だった。
「それでサトシさんのお使いというのは?というかオーキド博士もお二人を顎で使うとは恐ろしいですね……」
「そうですかね、俺昔からよくお使い頼まれてましたから気にしてませんよ。えっとこれですよ」
リュックからとあるものを取り出したサトシ、それは小さな箱でラビが開けてみても?と尋ねると自分宛なんだからと促してきたので開けてみると……そこにあったものを見て驚いた。
「ピートブロック……!!有難う御座います、ずっと探していた物なんですよ」
「皆さんこんにちは、今日もポケモン育ててますか?まだまだな貴方もこれからの貴方も、此処をきっかけに一歩踏み出して行きましょう。今回紹介するのは此方」
「ボォオオオオマァァァァアアアアアア!!!!」
「ボーマンダです、つうかうるさい」
「ボマ」
| ・またスゲェのが出てきた…… ・ボーマンダだぁぁ!! ・なんでこうも凶暴で有名なポケモンが連続で出るんですかね。 ・しかも制御出来てるし ・サラッと一言で黙らせてるしな。 ・マジで何なんこの人……。 |
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「ボーマンダはドラゴンと飛行の複合タイプです。進化前のタツベイさんが空を飛ぶ事を夢見続けた思いが長い年月をかけて体の細胞に影響して突然変異を起こし見事な翼が生えてくるというミラクルが発生したのです。実際に本当に突然変異で翼が生まれているらしいので夢は何時か本当になるって誰かが歌っていましたけどマジなんですね」
| ・そんなミラクルあるんかwww ・まあ実際に生えてますし…… ・感情の爆発ってバカにならんし…… ・思い込みの力ってスゲェ~!! ・それで済ませていいのだろうか |
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「大空を飛んだ喜びの余り火までも吐いてしまいますからね、それで山一つを炎で焼き尽くしてしまう事もあります。ドラゴンタイプらしく、怒らせると我を忘れて大暴れもします。タツベイの頃の純粋さは何処に行ったんですかね、純粋に暴れているって事ですかね」
| ・そこはちゃんとドラゴンらしいのな…… ・嬉しいのは分かったから落ち着いてくれ、マジで。 ・タツベイの頃は本当に空飛びたくてたまらねぇって感じなのにな ・いざ飛んだらこの始末。 ・どないせいっちゅうんじゃ |
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「さてボーマンダの特性は威嚇、夢特性は自信過剰です。自信過剰は相手を倒す度に攻撃力が上がるという特性です」
| ・えっ威嚇な上にそんなのまで隠し持ってるの!? ・ボーマンダなんて乗りに乗ったら止められないポケモンだろ。 ・龍舞だけでも厄介なのに…… ・マジで勘弁してください ・マジで過剰だよ、威力過剰だよ。 |
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「そんなボーマンダは強烈な物理攻撃力も魅力的ですが特殊面も優秀ですので両刀で相手を攻めるのもお勧めです。鬼火にも強いですしサブウェポンも充実していますので様々な戦法が可能です、これに加えて羽休めで回復も出来ます」
| ・何お前回復も出来んの? ・マジでいい加減にしろや。 ・マジでどう倒せと? ・氷で4倍突く ・ああうん、そうか。 ・なおテラスタル。 ・やめろ。 |
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「威嚇である事も踏まえるとサイクル向きなポケモンでもありますね。撃つと特攻が低下する流星群と合わせて高火力をぶつけつつもその後に物理に切り替えつつも交代、その攻撃力を確保しながらも威嚇で確実にダメージを抑えるという戦術も可能です」
| ・これがあるんだよなぁ両刀 ・片方が下がってもカバー出来ちゃうんだもんなぁ…… ・しかもボーマンダは物理の方が強い ・かと言って特殊も高い部類 ・これだから高能力ポケモンって奴は……。 |
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「正直ボーマンダはまだ対処しやすい部類ですけどね。世の中にはもっとやばいのが沢山いますし、まあだからと言っても私のボーマンダはそう簡単には負けませんけどね。威嚇に合わせて鉄壁してさらに要塞化しつつ追い風で加速する事もします」
| ・おいバカやめろ!! ・うわぁぁぁ戦いたくねぇ!!? ・やめてくれアンタの活用法は勉強になるけど怖いんだよ!! ・アンタの知識の鉱脈が尽きる事を毎日祈ってるよ ・でもお前だってその鉱脈を使ってるだろ ・……どうしてだよおおおおおおおおお!!! |
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そんな辺りで配信を切っておく。ちゃんと切れている事が確認できて一息ついていると見学していたサトシとレッドから拍手が送られてきた。妙に照れ臭い。
「毎回こんな感じにやってるんですね!!面白かったです!!」
「……ラビ、バトル」
サラッと流れるようにボールを握り込んで不敵な笑みを浮かべるレッドに顔が引き攣りそうになった。本当にこのバトル狂いは……だが同時にこの二人ならばあのバ鴉を満たしてくれる事も出来るのではないだろうか……と思ってしまう。ディアルガとパルキアを前にしても平気なあのバ鴉……この二人ならばあるいは……。
「それはそれでいいんですけど……折角ですからお二人に庭を案内しますよ。先程のピートブロックの使い道もお見せしたいですし」
「良いんですか!?実は凄い色んなポケモンがいるから気になってたんですよ!!」
「……じゃあ後で」
「その前に―――お昼にしましょうか、オムライスにでもしましょうか」
「ピ!!?」「ピピピカアチュ!!」
オムライスと聞いてサトシのピカチュウの耳と尻尾が大きく立つ一方で近くにいたのか、ラビのピカチュウも声を上げた。
「ピピピカアチュ、ピッカチュ!!」
「はいはい貴方のも作ってあげますよ。お二人もそれで大丈夫ですか?」
「はい、俺オムライス大好物ですから!!」
「ピッピカチュ!!」
「……俺もそれで」