つい先ほど娘の入院している病院から陣痛がはじまったと連絡を受け、急ぎ車に乗り込みエンジンを掛ける。
車を発進させながら、娘の妊娠発覚直後に起きた義理の息子の交通死亡事故を思い出す。
あのときの娘の嘆き悲しむ姿は目も当てられないほど酷かった。
それからは体調を崩しがちになり、寝込むたびに娘に気を送りながら、生まれてくる子供のために頑張れと励ましつづけた。
そのおかげか体調も少しずつ良くなり、お腹の子も何事もなく今日という日までこぎつけた。
後は母子共に無事に出産が終わることを願いつつ、病院に向かうのであった。
(和歌山県某病院)
受付にいる看護士に娘(遠野優子)がいる陣痛室の場所を聞き急いで陣痛室に行くと、看護士と話す娘と会うことができた。
「優子、体の具合はどうなんだ?」と聞くと、
「体の方は平気だよ。陣痛も思ってたよりも酷くないし。それよりも分娩室に行くまで10時間以上かかるみたいだから、休憩室で休んでたほうがいいよ。分娩室に移動する前に連絡するよ。」
「わかった。何か少しでも異変があったら連絡するんだぞ。看護士さん、優子のことをお願いします。」
看護士に頭を下げながら娘のことを頼んだ後、生まれてくる孫の性別や名前のことを想像しながら休憩室に向かうのであった。
それから十数時間後、看護師に呼ばれ分娩室の前で待つこと約一時間、分娩室の中から「おぎゃー、おぎゃー」と産声が聞こえすぐさま分娩室に入ると、「元気な男の子ですよ。」と看護師に声をかけられた後娘を見ると、胸元に赤ん坊を大事そうに抱えながら満足げな顔をした娘の元気な姿があった。
「子供共々元気そうだな。そういえば名前は決めているのか?」
「うん。この子の名前は薫(かおる)だよ。どっちに生まれてもいいように、男女兼用の名前に決め手たんだ。」
「そうか。名前も決まったことだし俺にも抱かせてもらってもいいか?」
「もう爺馬鹿モード発動させてるの?抱き方は私で経験してるからしってるでしょ?はいどーぞ。」
娘から薫を受け取りまだ早いかなと思いつつも魔力探知をしてみると、そこそこ高い魔力の反応と仙骨の反応もあった。
仙骨の反応に驚きつつも、先祖代々から受け継がれる夢をこの子なら叶えてくれると爺馬鹿パワー全開で信じる友蔵(45才)であった。