Tiny Dungeon Another Story 作:のこのこ大王
決闘の翌日。
学校内は、未だに騒がしかった。
その理由は、もちろん―――
ヴァイス「ギル=グレフに頼み込んだらしいな。
『わざと負けてくれ』と」
教室に入るなり、おはようの挨拶より先に
こんな言葉を投げかけられるあたり、まだまだ人族の印象は
悪いままらしい。
和也「一体何の話をしてるんだよ」
ヴァイス「都合が悪くなると、とぼけるつもりか?
人族とは、どこまでも姑息で意地汚い種族だな」
和也「解らないから聞いてるんだろうに。
ヴァイス=フールス様ともあろうお方が
そんなこともお解かりにならないのですか?」
ヴァイス「調子に乗るなよ、人族風情がっ!!」
よほど沸点が低いのか、簡単な挑発でヴァイスは
俺の胸元に掴みかかる。
ヴァイス「王女達の影にコソコソ隠れ
そのおこぼれに群がるアリの如き卑しい種族が
何を思い上がっ―――」
溜まっていた鬱憤を吐き出すような
そんな感情むき出しだったヴァイスが
突如として止まる。
フィーネ「・・・その手を離しなさい」
いつの間にかヴァイスの首元に
フィーネの儀式兵装が突きつけられていた。
彼女は、瞳を閉じたままで
どこか違う場所を見ているかのように
顔の向きもヴァイスの方とは微妙に違っている。
ヴァイス「くっ・・・」
フィーネ「早く離しなさい。
私、気が短いわよ」
フィーネは、閉じていた瞳をゆっくり開ける。
そして顔の角度を変えないまま視線だけが動く。
その眼光がヴァイスを捉えた瞬間
ヴァイス「・・・」
目を合わせた瞬間に放たれた殺気に思わず
ゆっくりと和也から手を離しながら、後ろに下がっていく。
周りのクラスメイトの大半も、先ほどの話を信じてか
疑惑の目を向けていたが、フィーネから発する殺意に
誰もが視線を逸らしていた。
ギル「おはようさん、みんなっ!!」
そんな空気を一切読まない明るい声が教室に響いた。
ギル「あら?何?
何かあった?」
和也「ああ、実はな・・・」
ギルに簡単に今あったことを説明する。
話を聞いていたギルは、話が進むにつれ
段々とジト目になっていく。
ギル「何それ?
あの戦いが、やらせだったってことか?」
和也「どうやら、そうらしい。
俺がお前に頼み込んで勝ちを『譲ってもらった』んだそうだ」
ギルは、思わずため息をついた。
ギル「じゃあ何か?
俺は、頼めば相手にわざと負けるような男だとでも?」
魔族女生徒「わ、私は・・・その・・・。
何か弱みを握られてって・・・」
魔族男生徒「お、俺は、その・・・アレだ。
金を渡されてって・・・」
ギル「あぁ!?」
魔族男生徒「い、いい、いや。
俺が言った訳じゃないぜっ!!」
魔族女生徒「そ、そう。
そんな噂を聞いただけでっ!!」
珍しく怒りの感情を前に出したギルに
声を出した生徒は、自分が言い出した訳じゃないと
早々に会話から逃げ出す。
セオラ「みなさん、おはよ、う・・・。
・・・何があったのか。
そうですわね・・・生徒 和也、説明しなさい」
誰もが言葉を発することなく時間だけが過ぎ
いつの間にかセオラ先生が教室に来る時間となっていた。
指名された以上は、黙っている訳にもいかない。
俺は、簡単に事情を説明する。
話が進むにつれ、先生の目が段々と
ジト目になっていく。
セオラ「いいですか、みなさん。
何の話をなさろうが、みなさんの自由です。
しかし、今後その噂話をした場合
しかるべき処置を取らせて頂きますので
以後、注意なさい」
簡潔に話をまとめる先生に
思わず一部の生徒から不満の声があがる。
魔族男生徒「しかし、先生―――」
だが・・・
セオラ「お黙りなさいっ!」
先生の一喝で、一気に静まり返る教室。
セオラ「あの決闘に不正があったと言うことは
それに気づかなかった私と学園長に対しての
暴言と同じことを意味します。
自分の発言が、どういうことを意味するかも理解せずに
話を拡散するような愚か者や
あの戦いで、2人の実力が理解出来ずに
『不正があった』などと言えるような
レベルの低い生徒は、学園に不要です。
もし今後、同じような噂を聞いた場合は
徹底的に調べ上げ、噂を流した生徒を特定して
しかるべき処分を行うよう、学園長には
伝えておきますので、そのつもりでいなさい」
ヴァイス「ちっ」
セオラ「生徒 ヴァイス。
何か言いたいことでも?」
ヴァイス「・・・いえ」
それ以上、誰も何も言えなかった。
もし不用意に触れてしまえば、それは処罰を意味するからだ。
逆にヴァイスは、面白くない。
そう、フィーネが来てからだ。
彼女が常に和也の隣に居るせいで
『人族風情が』などと罵倒出来ない。
授業でも必ず一緒のため
偶然を装って襲うことも無理だ。
間違いなく返り討ちにされてしまう。
そして一番腹立たしいのが
人族が調子に乗っていることだ。
偶然、勝ちを何度か拾っただけで
最近特に態度がデカイ。
常に姫様と一緒に居て守って貰えるからと
まるで王様にでもなったかのように
学園内を歩いている。
姫様達さえ居なければ・・・。
そう、昔は
もっと目立たずに教室の隅にひっそりと居るような
存在だったはずだ。
そうだ。
姫様達さえ居なければ。
そうすればあんな人族なんぞ
簡単に捻り潰せるはずなのに・・・。
教室では、既にセオラ先生による講義が始まっている。
ヴァイスは、つまらなそうに教科書を机の上に投げ置くのだった。
第9章 分岐路(わかれみち)
その日の昼休み。
亜梨沙「そう言えば、兄さん」
和也「ん?」
亜梨沙「いつの間に『師範』になってたんですか?」
突然のことだから一瞬何の話かと思えば
実に、どうでもいい内容だった。
エリナ「師範?
確か・・・風間流?だっけ?」
セリナ「流派・・・とか言う剣の技ですよね」
リピス「確か、亜梨沙が師範代だと言っていたな。
そのひとつ上になるのか」
和也「まあ、そうなんだが・・・。
何でそんなに風間流に興味があるんだよ」
エリナ「前から気にはなってたんだよ」
セリナ「でも、聞く機会が無かったというか・・・」
リピス「そもそも、和也も亜梨沙も
人界の話をしないからな」
ギル「そもそも人族自体と会う機会も無いからねぇ」
和也「そうだっけ?」
亜梨沙「まあ、あまりする必要性もないですから」
リピス「せっかくだから、風間流の話を聞かせてくれ」
エリナ「おお、いいね。
私も気になる」
セリナ「たまには、そういう話もいいですよね」
ギル「そうだな。
俺も風間流には、興味がある」
和也「そんな良いもんでもないんだけどなぁ」
亜梨沙「ぶっちゃけ、つまらないですよ」
メリィ「まあ、そう言わずに
お話してみては、下さいませんか?」
和也「・・・と、言う訳で
ちびっ子相手にそういう説明をよくしている
師範代に任せよう」
亜梨沙「・・・さっそく逃げましたね、兄さん」
和也「だって、めんどい」
亜梨沙「妹だって面倒ですよ」
もう、仕方が無いですねと前置きを入れて
諦めた亜梨沙が、話を始める。
亜梨沙「それは、もうずっと昔。
風間なんとか~って人が編み出した風間流という
武術がありました。
この人は、とても変わった人で
自分以外の門下生が編み出した技とかも
積極的に採用していく人で
いつの間にか、殴る・蹴る・投げるなどの
体術も大量に入ってきました。
実戦では、とりあえず勝てばいいから
何でもありだぜってノリだったらしいですよ。
その後、あの大戦争が始まります。
その大戦争中に、我らが開祖と呼んでいる
『風間 一刀斎』って人が現れます。
この人が、今の風間流を創設しました。
すなわち『儀式兵装』という『魔法』を取り入れたわけです。
だから昔からの体術や剣術を残しながらも
魔法による新しい攻め方を取り入れた、どこにもない
変態的武術が誕生しました。 ぱちぱちぱち~。」
拍手すら声で済ますあたり
あまりやる気のない調子ではあるが
亜梨沙らしいと言えば、亜梨沙らしい説明をする。
エリナ「変態的って・・・」
亜梨沙「変態ですよ、色々と」
『面倒ですねぇ』と、ため息をつきながら
亜梨沙の解説が続く。
亜梨沙「まず風間流には、防御がありません。
気合と根性で避けて下さい。
基本的に『避ける』か『カウンター』だけです。
攻撃に関しては、基本的に『何でもあり』です。
適当に相手をぶっとばせば問題ありません。
あとは、自分の好みに合う技を適当に
覚えるだけです」
エリナ「それって、全部の技を覚えなくてもいいってこと?」
亜梨沙「そうです。
相手を圧倒出来るなら、どの技を使おうが
自己流にアレンジしようが、オリジナル技を勝手に
作ろうが、何の問題もありません」
リピス「そこまでまとまってないのに
どうして『風間流』なんだ?」
亜梨沙「何をどうやっても構いませんが
全員、暗黙の了解のように『風間の技』が
原型として残るようなものしか作らないし
使わないからですよ。
まあ逆に原型が残らないような技だと
妙にやりにくいので、誰もやらないだけですけどね」
セリナ「なるほど。
原型は、必ず『風間流』だから
どれだけ派生しても流派として成り立つということですか」
亜梨沙「簡単に言えば、そういうことですね」
会話の流れが少し止まったあたりで
お茶を飲む亜梨沙。
質問が無くなったと判断すると
会話を戻してきた。
亜梨沙「ところで兄さん。
師範の話です。
いつの間に、そんなことになったんですか」
和也「お前の親が悪いんだろうが・・・」
亜梨沙「あの2人が、どうしたんですか」
和也「師範代の時は、お前の親父さん・・・。
早雲(そううん)さんに呼び出されたと思ったら
クソ爺に待ち伏せされて、強制的に師範代の
試験をやらされて・・・。
今度は、それを警戒してたら
この前の夏季休暇の時に一度帰っただろ。
あの時だよ。
夏美(なつみ)さん(亜梨沙の母親)が
『カズ君、ちょっと手伝って欲しいんだけど~』って
言ってくるから道場に行ったら、お前を抜いた
全師範代と早雲さんやクソ爺までが勢ぞろいしてやがって・・・。
『これより、藤堂 和也の師範試験を開始する』とか
クソ爺が、さも当然のように言いやがるんだぞ?
あの時ほど、本気で殺意を抱いたことはないな」
その後、夏美さんに抗議したが
『ごめんなさいね。
お父様に頼まれちゃったのよ~(>з<)』
という、お茶目な謝罪のみだった。
亜梨沙「・・・何、面白いことやってるんですか」
和也「全然面白くねぇよ。
おかげでボロボロだったわ」
亜梨沙「ああ、そういえば
夕食も食べずに爆睡していた日がありましたね。
・・・でも、よかったじゃないですか。
これで師範。
お爺様の最高師範まで、あと1つですよ」
和也「まったく興味がないわ」
亜梨沙「何を言ってるんですか。
これでお爺様から最高師範を譲られれば
風間流の頂点です。
そうなれば、風間の姓をという声も出ます。
ええ、それはもう絶対に。
そして兄は、私と・・・。
・・・えへへっ♪
嫌ですよ~、兄さんったら・・・
もう・・・えっちなんですからぁ~♪」
和也「色々と突っ込みどころが多すぎるわ」
亜梨沙「あぃたぁ!」
バシっと亜梨沙の頭を軽く叩いた。
亜梨沙「何するんですか、兄さん」
和也「とりあえず、謎の妄想から帰ってこれたじゃないか」
『いいところだったのに・・・』とブツブツ言う亜梨沙。
まあ、最高師範に興味がないという話は、本当だ。
別に風間の頂点に立ちたい訳じゃない。
全てを守る力が欲しかっただけで・・・。
ギル「あの『城崩し』だっけか?
あの投げも、流派って奴なのか」
亜梨沙「まあ、一応そうなんですが・・・」
ギル「ん? どうした?」
亜梨沙「すっかり馴染んでいたので気づくのが遅れました。
・・・何で居るんですか?」
ギル「何だ。 そんなことか。
和也、説明よろしく」
和也「そういや確かに。
・・・何で居るんだ?」
ギル「いやいやいや!!
そういう冗談いらないからっ!!
とりあえず儀式兵装出すのヤメテッ!!」
おもむろに儀式兵装を出すフィーネ達に
土下座も辞さない勢いで懇願するギル。
和也「いやまあ。
ついそこで偶然会ってな。
誘ったらついてきた」
ギル「そりゃお前、三界のお姫様達との食事だぜ!?
そんなチャンスに飛びつかないバカは、居ないだろ~」
どうも感覚が麻痺しがちだが、周囲に居るお姫様達は
本来ならこうして一緒に居ることさえ出来ない存在なのだということを
こういう話を聞くたびに思い出すが、麻痺した感覚のせいで
スグに忘れてしまう。
まあ、確かに親衛隊とか居るぐらいだもんな。
亜梨沙「そんなに知りたいのなら、丁度いいです。
実際に見せましょう」
そう言うと亜梨沙は、ギルを少し離れた位置に立たせる。
亜梨沙「ゆっくりやりますから、動かないでください」
ギル「おう、任せろ」
リピス「せっかくだし、近くで見せてもらおう」
体術に興味を持ったのか、リピスが亜梨沙の近くまで移動する。
確かに投げは、竜族に有効ではある。
彼女らの『気麟』は、どういう訳か、投げるということに関してだけ
発動しないという特性がある。
まあ正確に言えば『掴む』という行動に関してだけは
防ごうとしないのだ。
普段全身を覆っている気麟だが、相手が掴もうとして伸ばした腕は
気麟によって弾かれることはない。
逆に掴むつもりで、実はギリギリで殴ろうというフェイントだと
腕は気麟によって弾かれてしまう。
また、殴るように腕を出してギリギリで掴もうというフェイントだと
掴もうとしているため気麟が発動しない。
まるで心理を読んでいるかのように、掴むという点に関してだけは
気麟は、役に立たないのだ。
まあ、それが解っていても腕力が4種族の中でぶっちぎりの竜族相手に
接近戦で懐に入って投げるなんてリスクの高いことが
出来るかと言われると、それはまた別の話なわけで・・・。
亜梨沙「・・・とまあ、普通はこんな感じです。
兄さんのは、参考にしないでください。
あの時兄さんが使ったのは、アレンジされていたので」
2人相手に説明している亜梨沙の言葉が気になってきて
亜梨沙の方を向く。
ギル「確かにあの時、足とかまで痛かったからねぇ」
リピス「それだけの瞬発力と一撃の重さが出せてるってことだな。
和也の動きは、竜族に近い動きだと言えるな」
亜梨沙「まあ、みんなが魔法制御とかの練習してる時は
いつも筋トレしてますからね。
身体能力は、普通の人族を軽く越えてるはずですよ」
ギル「魔法が使えると、どうしても強化魔法とかで
補えるから、魔法優先になるよな」
リピス「魔法制御の技術が上がれば、他の魔法も強化されるからな。
そう考えれば、魔法優先になりやすいのは当然だろう」
亜梨沙「という訳で、以上で終わりです」
リピス「・・・亜梨沙」
亜梨沙「何ですか」
リピス「普通の城落しをしっかり決めてることをが見たいんだが
亜梨沙でも出来るのか?」
亜梨沙「・・・めんどくさいですねぇ。
力技は、あまり好きじゃないんですが」
その言葉とは裏腹に、亜梨沙の構えが真剣だ。
ギル「え? ちょっ!?」
亜梨沙「はぁっ!!」
いくら学園屈指の実力者といえ、不意を突かれた状態で
かつ相手が風間の師範代ともなれば、結果は当然といえる。
お手本通りの綺麗な城崩しが決まった。
リピス「なるほど、非常に参考になったよ」
亜梨沙「それは、よかったです」
ギル「ぐぉぉぉぉぉ・・・!!」
和やかに話す2人とは対照的に、地面を転がりながら
頭を抑えるギル。
頭部を狙う技なだけに、たとえ手加減されても
かなり痛いはずだ。
セリナ「隙の無い投げですね」
フィーネ「一瞬で懐に入る技術そのものが
技の要でしょうね」
エリナ「体術って色々あるんだねぇ」
食事をしながら適当に見学していたメンバーでさえ
誰一人としてギルを心配していなかった。
少し可哀想になってくる。
しかし、苦しんでいたギルだったが
ふと空を見上げるような大の字で止まると
真剣な眼差しになる。
ギル「・・・天国ってのは、あるもんだな」
リピス「ふむ。
哲学的な話だな」
亜梨沙「頭の打ち所が悪かったのでしょう」
何気にひどい会話ではあるが・・・。
そもそも会話が成立していると言えるのか。
ギル「竜王女に妹ちゃん。
どっちもナイスだぜっ!」
ぐっと親指を立てて非常に良い顔をしている
さわやかな青年風のギル。
亜梨沙「?」
リピス「?」
2人とも、何の話だという感じだ。
ちなみに俺もさっぱりわからない。
ギル「妹ちゃんは、王道!
白とピンクは、やっぱり男に人気だからな。
白地にピンクのボーダー柄とは、さすがだぜっ!
竜王女は、一部コアに大人気!
ライトグリーンは、似合う奴にしか似合わないよなっ!」
その発言からきっちり3秒後。
亜梨沙「!?」
リピス「!?」
2人して同時に顔を真っ赤にしながら
慌ててスカートを手で押さえる。
それを見て、俺も何の話か理解する。
・・・いや、わかっても微妙な話なんだが。
周囲の王女様達も、ジト目でギルを見ている。
まあ、今ので周囲の女性を敵に回したってことだけは
確定だろう。
ドゴーンッ!!!
大音量の衝撃音に振り向くと
やはりと言うべきか、2人に追い回されるギルが居た。
リピス「本物の天国とやらに送ってやろうっ!」
亜梨沙「もうこの世に未練なんて無いですよねっ!」
ギル「いやいやっ!!
まだまだ未練ありますよっ!?」
亜梨沙ならともかく、リピスに追われるなんて展開は
出来るかぎり、ご遠慮願いたい。
セリナ「2人とも、可愛らしいものを付けてますね」
エリナ「・・・それをセリナちゃんが言うかなぁ。
自分だって今日、白のレースなのに・・・」
セリナ「きゃぁぁぁーーー!!
和也くん、そこに居るんですよっ!!」
エリナ「まあ別にいいじゃない」
セリナ「・・・そういうこと言うなら
こっちにも考えがあります」
エリナ「ん?」
セリナ「エリナちゃん、今日は黒に赤いリボン付きっ!」
エリナ「ちょっ!?
どうして私まで巻き込むのよっ!」
セリナ「先にエリナちゃんが言うからですよっ!」
謎に始まった乙女達の身を削った戦いに
どうすればいいのか、まったくわからず
ただ静観していると・・・。
クイッ
服の袖を引っ張られて、横を見る。
フィーネ「きょ、今日は・・・。
ピ・・・ピンク、なの」
こちらも顔を真っ赤にしながら
恥かしそうに言うフィーネ。
そんなことを聞かされ、どうすることも出来ずに
ただ余計な妄想のみが捗るだけの状態。
新手の拷問か何かだろうか。
こうして今日の昼休みは、終始カオスな展開だった。
そしてその日の夜。
いつもの丘で訓練をしている時。
後ろから何かが来る気配を感じた。
ただ、それはあまり歓迎出来る部類のものでないのは
前に一度、そいつと出会い、戦ったからだろうか。
俺は、そっと近くの茂みに隠れる。
以前に感じたことのある何かを引き摺ったような足音が
近づいてくる。
ゆっくりと紅を手にすると
予め、魔眼を開放する。
そう・・・勝負は、一瞬だ。
そして足音が、自分の前を通過した瞬間だった。
紅の刀身を展開しながら、目の前に居る『奴』に斬りかかる。
目の前に居たのは、この前倒した人の型をした『何か』だった。
相変わらず目が無いにも関わらず、こちらを向いて牙を見せてくる。
一度戦った俺は、もう迷わない。
こいつは、明確な『敵』だ。
早々に開放した魔眼により、急所を的確に狙った一閃。
雄叫びを上げる間も無く、綺麗に魔力コアごと真っ二つになる化け物。
ズザァ!っと音を立てて崩れていく化け物に
一瞬気を抜きそうになる。
だが、周囲から感じる気配に
一気に戦闘態勢に入る。
和也「(どれだけ居るんだ・・・!?)」
それは、先ほど倒した化け物と同じ気配。
1匹2匹どころではない、大量の数が
こちらに向かってきていた。
とてもではないが、1人では無理だ。
一番近いのは、女子寮。
走って女子寮に向かうか?
そんなことを考えている間も、大量の足音が
近づいてくる。
和也「・・・くそっ」
俺は、大きく深呼吸をした。
そして―――
第9章 分岐路(わかれみち) ―完―
まず、ここまで読んで頂きありがとうございます。
今回は、特に何もない日常回ですが
意外と重要な回だったり・・・。
次の章から後編に突入していきます。
それぞれの個別ルートに入りますので
漆黒の悪魔 フィーネ=ゴア編
金色の竜牙 リピス=バルト編
白銀の女神 セリナ=アスペリア編
どれでもお好きなルートから読んでもらって大丈夫です。
・・・と言いたいところではありますが
上から順番に読んで頂かないと盛大なネタバレに
遭遇しますので、ご注意下さい。
一度、全て読んだ後からなら、どこから再度読み直しても
大丈夫です(当然の話)