Tiny Dungeon Another Story 作:のこのこ大王
第10章 再び戦争を行わないために
俺は、大きく深呼吸をした。
そして―――
?「邪魔です。
ちょっと退いて―――
いえ、そのままでおっけ~ですっ☆」
あまりにも場違いというか、緊張感の無い声に
一瞬思考が停止しそうになるが
危険を感じて、その場を離れるように大きく跳躍する。
?「フレイム・レディアントッ!!」
漆黒の闇を切り裂くような赤い炎の波が
辺りを相手ごと焼き尽くす。
火属性魔法のテンプレでは、上級と記載され
5階級でも使える者は、数人ほどの高度な魔法だ。
魔法に耐性を持つゴーレム達ですら
炎の波からその身を守ることは出来なかった。
全てを焼き尽くした炎が消えた瞬間。
姿を現したのは、紅の死神と呼ばれる少女。
ミリス=ベリセンだった。
第10章 再び戦争を行わないために
ミリス「そのままでおっけ~ですっ☆
って言いましたよね?」
和也「そのままだったら死んでたじゃないか」
ミリス「ミリス、余計な労働って嫌なんですよね。
何事も効率重視です」
和也「まあいいや。
とりあえず助かった」
ミリス「え?
何を言ってるんですか?」
和也「いやまあ。
そっちには助けた覚えはないだろうが
こっちは助かったからな」
ミリス「当然です。
助けた覚えはありません。
だって、これから死んでもらうんですからっ♪」
そう言うと、巨大な大斧をこちらに向かって振り下ろしてくる。
咄嗟に避けると大きな音と共に、さっき居た場所の地面が抉れていた。
和也「そんなことしてる場合じゃないだろうっ!
この化け物どもが何なのか、調べる方が先だっ!」
ミリス「いえいえ。
こちらの方が、よほど重要です。
何しろ『見てはならないもの』を見た訳ですから」
以前の時とは、明らかに違う本物の殺気が
彼女から出ていた。
和也「『見てはならないもの』って―――」
ミリス「余計なおしゃべりは、ここまでですよっ♪」
身体を一回転させ、遠心力を載せた強力な一撃を放つ。
そんなもの防げる訳が無いので、後ろに下がって回避する。
地面に当たったミリスの一撃で、周囲に小石が飛び砂が舞う。
正直、こんな攻撃をまともに喰らったら
即死するだろう。
どうするべきかと思案している間にも
ミリスは、まるで細い棒きれでも拾い上げるように
大斧を軽々と持ち上げた。
その瞬間―――
軽い爆発音と共に、ミリスの大斧に炎矢が直撃する。
しかし、さすがは『紅の死神』と呼ばれる戦士だ。
普通なら衝撃で武器を手放したであろう一撃でも
少し体勢が崩れた程度で、斧を手放すことはなく
体勢もスグに元に戻った。
そして炎矢が飛んできた方から
足音と共に殺気が放たれる。
フィーネ「返答次第では、容赦しないわよ」
暗闇を従えた闇の王女とでも言うべきか。
そんな風に見えてしまうほどに
今の彼女は、殺気立って居るようにも見える。
ミリス「相変わらず、そこの人族が関わると
冷静さは、ゼロですか。
仕方の無い人で―――」
話の途中にも関わらずフィーネの振り下ろしてきた
黒刃の薙刀型儀式兵装に、後ろへ跳躍して回避するミリス。
ミリス「・・・はぁ。
こちらは任せるとしましょう」
ため息をつきながら、ミリスは逃げるように
飛び去っていった。
当面の危機が過ぎ去り、ようやく一息つけるようになる。
紅を片付けると、周囲を見渡す。
既に奴らの痕跡は消滅し、焼かれた一部の草むらだけが
ここで戦闘があったことを示している。
ふいに身体に何かがぶつかる。
フィーネ「ごめんなさい。
肝心な時に限って傍に居れなくて・・・」
抱きつきながら、泣き声でそんなことを言う彼女を
優しく抱きしめる。
和也「そんなことはないよ。
フィーネのおかげで俺は、凄く助かってる。
だから、笑顔で居てくれる方がいいな」
フィーネ「・・・ホント?」
和也「ああ、本当だ。
前にも言ったが、俺はフィーネに会えて嬉しいんだぞ」
フィーネ「・・・私も、嬉しい」
和也「それにちゃんと来てくれたじゃないか。
だから、気にしなくていいよ」
フィーネ「うん」
そっと離れたと思えば、今度は腕を組んでくるフィーネ。
フィーネ「だから、しばらくは一緒に居るからね」
この発言を、『寮に帰るまで』と勘違いした和也だったが―――
亜梨沙「・・・で?
言い訳は、それで終わりですか兄さん?
随分と命知らずになりましたねぇ♪」
笑顔だが、怒っている感が凄く出ている亜梨沙に
問い詰められる和也。
和也「いや、俺もこうなるとは・・・」
理由は、横にくっついているフィーネだ。
彼女の『しばらく』は、当面常にという意味だったようで
こうして部屋までついてきていた。
亜梨沙「私の隣のベットで、2人仲良く寝るとか
ど・う・い・う・つ・も・り・で・す・かっ!!」
フィーネ「そのうち、ここは『私と和也』の愛の巣になるんだし
いいかなと思って」
亜梨沙「ここは、『妹と兄さん』の愛の巣なんですっ!
部外者は、さっさと帰って下さいっ!」
和也「どの道、愛の巣とやらは確定なのかよ・・・」
こうして好意を全面に出してくれるのは、嬉しい反面
どう応えていけばいいのか、今の俺では解らないため
少し困ってもいたりする。
フィーネ「和也。
私、邪魔なの?
もしかして・・・嫌い?」
和也「さっきも言ったが、俺はフィーネに会えて嬉しい。
だから邪魔でもないし、嫌いでもないよ」
フィーネ「じゃあ・・・好き?」
和也「あ、ああ」
フィーネ「―――ッ!!」
これ以上無いほどの笑顔で和也に抱きつくフィーネ。
亜梨沙「そこでイチャラブ空間作ってるバカップル。
腹が立つので塩投げますよ」
そこには、すっかり拗ねた妹が居た。
それを見たフィーネは・・・
フィーネ「じゃあ、亜梨沙も一緒に寝ましょう」
和也「え?」
そして俺は、亜梨沙とフィーネに挟まれて
寝ることになった。
・・・・・・・。
・・・・・。
・・・。
・・・って、寝れるわけがねぇーーーー!!
和也達が、そんなことになっている時。
世界が動き出していた。
同時刻―――
学園長室では、ミリスの報告を聞くマリアが居た。
ミリス「―――以上が、本日までの結果です」
マリア「・・・そうか。
状況は、悪くなる一方か」
ミリス「もはや、事実を隠す方が難しくなっています。
せめて軍の一部を動かされては?」
マリア「それがな・・・。
どうも軍も下手に動かせなくなった」
ミリス「それは、どういう―――」
マリア「これを見れば解る。
確認後、国境まで行って欲しい。
理由は、解るな?」
マリアから手渡された報告書に目を通したミリスは
はっと目を見開くと―――
ミリス「至急、向かいますっ!」
学園長室を飛び出していった。
そして一人になった学園長は
ふと窓から外を見る。
マリア「これは、魔族が今までに行ってきたことへの
『報い』なのかもしれないな」
その顔は、種族の未来を憂う長そのものだった。
二時間後―――
暗闇に灯る明かりが
そこに人々の生活を映し出す。
ここは、人界領。
魔界との国境近くに、1つの集落がある。
いつもは、静かな夜なのだが
今日は騒がしかった。
?「師範っ!
師範っ!」
大柄の男が、勢い良く襖を開ける。
そこには、優しげな顔をした男と
いかにもという覇気を纏った初老の男の2人が居た。
?「おおっ!
探しましたぞ師範っ!
最高師範も、ご一緒でしたかっ!」
?「相変わらず元気な男じゃのぅ」
?「それで、大吾さん。
どうしましたか?」
大吾「おお、そうだったっ!
一大事だぞ、早雲どの! 源五郎どの!」
そう・・・ここは、亜梨沙の故郷。
風間流の総本山である、風間の里。
そしてこの場に居るのは、亜梨沙の父親である
風間 早雲と、亜梨沙の祖父である風間 源五郎。
そして大吾と呼ばれた大柄の男は
亜梨沙と同じ師範代の1人で、近藤(こんどう) 大吾(だいご)。
大吾「見回りの門下生が、魔族側から化け物の群れが迫ってくると
報告してきたぞっ!」
早雲「化け物の群れとは?」
大吾「どうもよく解らんのだが
どうやら『ゴーレム』とやらに似ているらしい」
早雲「それが本当なら、やっかいですね」
源五郎「うむ。
我々だけで、様子を見てくるかのぅ」
大吾「では、さっそく行きましょうっ!」
そして二十分後。
国境が近い森の中で、彼らは『それ』を見つける。
そこに居たのは人の型をした『何か』だった。
頭のような部分に目は無く、口らしき部分には鋭い牙。
むき出しの筋肉のようなものが全身を覆っていて、まるで肉塊のよう。
3mほどの大きな巨体を引き摺るように、ゆっくりと歩いている。
その数、百匹ほど。
時折、草むらから飛び出す動物に
腕を魔導砲のように変形させ、炎矢・氷矢など
様々な属性の魔法を放っている。
早雲「何でしょうね、アレ。
ゴーレムとも違うようですが・・・」
源五郎「魔法を使うゴーレムなんぞおらんからな」
大吾「どの道、国境を越えてきた以上
魔族側の明確な侵攻だっ!」
早雲「声が大きいですよ、大吾さん。
それにまだ、これらが魔族側の手先だと
決まった訳じゃありません」
大吾「だが、自然にこんな化け物が生まれる訳がない」
源五郎「とりあえず、まずは片付けるとするかのぅ」
早雲「はい。 わかりました」
大吾「先鋒は、お任せをっ!」
そう言うと、勢い良く飛び出す大吾。
手には、儀式兵装の巨大な棍棒。
大吾「さあ、化け物どもっ!!
人界に攻め込んできたことを後悔させてやるわっ!!」
その大きな体を揺らしながら、化け物の群れに走っていく。
化け物「グルアァァァ!!!」
大吾に気づいた化け物達は、一斉に魔法を発射する。
大吾「ファイアシールドッ!!」
炎の盾を張るも、通常なら防ぎようのない量の魔法が
大吾に集中する。
だが―――
バシッ!!
ジジッ!!
バシュ!!
様々な音と共に、全ての魔法が弾かれる。
大吾「ふはははっ!!
根性じゃ!
根性が足りんっ!!」
そんなことを言いながら目の前に居る化け物達を
体当たりで跳ね飛ばしていく。
化け物達が、再び大吾に狙いを集中しようとした瞬間。
一瞬にして十数匹の化け物が崩れ落ちる。
早雲「あまり余所見をしていては
スグに終わってしまいますよ?」
突然現れた早雲に、化け物達が振り向いた瞬間
またも化け物達が、一斉に真っ二つにされる。
源五郎「まあ、こんなもんじゃろうなぁ」
たった3人で、百匹ほど居た化け物が
何も出来ずに倒されていく。
あっという間に全てが倒され
辺りに静寂な夜が戻ってくる。
早雲「それで、どうされます?」
源五郎「う~む。
門下生が見てしまった以上
噂になるのは必死だからのぅ」
大吾「恐らく、里では盛り上がっているころでしょうなぁ」
源五郎「とりあえず、魔族側への確認をせねばならん」
早雲「では、確認が取れるまで
この化け物は、見間違いで押し切りますか」
大吾「それが妥当でしょうなぁ。
直接見た門下生達への根回しは、お任せ下さいっ!」
早雲「それでは、私の方で反発する方々を
可能なかぎり抑えましょう」
源五郎「では、ワシの方で
魔族側へ問い合わせるとしよう。
各々方、よろしく頼むぞ」
早雲「はっ」
大吾「はっ」
昔、人界では人界をまとめていた王家というべき
『天保院家』という一族が居たのだが
大戦争時に、魔族の奇襲によって滅ぼされてしまい
天保院家の補佐をしていた風間家が
今は、人界をまとめることになっている。
彼らは、戦争を回避するため
慎重に動き出す。
次の日。
魔界の領内。
人界との国境にある砦に
一人の少女が現れた。
砦司令官「く、紅の死神が、どうしてこんな場所に」
ミリス「特別な任務の途中です。
ついでに、貴方にも用件がありまして」
砦司令官「わ、私は別に女王陛下に不満なんて・・・」
紅の死神は、粛清する相手の前にしか姿を現さない。
その噂が、司令官をより緊張させる。
ミリス「何を焦っているのですか?
そんなことより、マリア様から伝言です。
人界側から軍隊が国境を越えてきても
決して動かないで下さい。
攻撃されてもなるべく反撃せず
対話による和平を模索するように・・・と」
砦司令官「なっ!?
人界と戦争になるのですかっ!?」
ミリス「あくまで可能性の話です。
ですから、この話を広めてはダメです。
貴方の中だけに留めておきなさい」
砦司令官「はっ!
了解いたしましたっ!」
話を伝え終わると、早々に砦を離れるミリス。
ミリス「さて・・・。
マリア様に逆らう連中を
さっさとぶっ殺しますかっ☆」
小声で、そう言うと
森の中へと消えていった。
第10章 再び戦争を行わないために ―完―
最後まで読んで頂きありがとうございます。
今回は、少し短い話となりましたが
第9章からの繋がりの話なので
短い感じとなりました。
今回から個別編に突入します。
原作を知っておられる方なら、何となく理解出来ると
思います。
原作を知らない方は、これから起きる物語を
より楽しんで頂けると思います。
次話以降、ドンドンと物語は動き出しますので
よろしくお願いします。