Tiny Dungeon Another Story   作:のこのこ大王

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第11章 広がる不安

 次の日。

 朝から学園長室にフィーネと共に入る。

 

マリア「おや、こんな朝早くからどうしたんだ?」

 

フィーネ「ミリスは、一体何をしにきたの?

     和也を殺そうとしてるところしか

     見たことがないんだけど?」

 

マリア「ああ、やっぱりか。

    その件に関しては、何度も注意はしているんだかな」

 

フィーネ「で、ミリスも今朝から見かけないわ。

     ・・・何か隠してるんじゃない?」

 

マリア「おいおい。

    いきなり何の話だ?」

 

 普通に追求しても、恐らく逃げられるだろう。

 魔王妃である彼女に、通用するか分からないが

 カマをかけてみる。

 

和也「ミリスは、昨日『マリア様に報告しなければ』と言っていました。

   とぼけても無駄です。

   『アレ』について何を知っているんですか?」

 

マリア「・・・」

 

和也「ここからは、予想ですが。

   恐らく、魔界にとって都合の悪いことが

   起きているんじゃないですか?」

 

マリア「どうしてそう思う?」

 

和也「まず、ミリスに余裕が無かった。

   彼女があそこまで焦っているということは

   他人に知られてはマズイということ。

 

   そして彼女がそこまで考える件だとすれば

   それは、学園長もしくは魔界そのものが

   関わっている件という可能性が高い。

 

   それに以前にも、彼女が『アレ』と

   戦っていた場面に出会ったことがあります。

 

   以上を総合すると、そうとしか考えられません」

 

マリア「はぁ・・・」

 

フィーネ「どうなのよ、母様。

     何かあったんでしょ?」

 

和也「一応、気を使ってフィーネだけしか

   連れてこなかったんです。

   話しては頂けませんか?」

 

マリア「やはりこうなったか。

    ・・・婿殿。

    鋭すぎるのも考えものだな」

 

和也「では、やはり・・・」

 

マリア「何かあったことは認めよう。

    それが魔界にとって非常に不利だということもな。

    だが、それ以上は言えん。

    理由は、説明せんでも解るな?」

 

和也「それは、理解しています。

   しかし、ある程度は説明頂けませんか?

   現に巻き込まれている訳ですし」

 

マリア「たとえ他言無用だとしても

    言う訳には、いかないのだ。

 

    今回の件は、魔界の恥とも言うべきこと。

    そして魔界の闇の歴史に触れることにもなる。

 

    そんなものに迂闊に触れて貰っては

    下手をすれば婿殿を魔界で

    一生監禁しなければならなくなる」

 

フィーネ「なら、私ならいいでしょう?」

 

マリア「お前は、ダメだ」

 

フィーネ「どうしてよっ!?」

 

マリア「言っただろう。

    この件は、魔界の闇の歴史に触れるものだと。

 

    真っ直ぐすぎるお前では、世界そのものへの影響を

    考えずに動いてしまうだろう。

 

    そうなっては困るのだ」

 

フィーネ「母様・・・」

 

 真剣な『魔王妃』の姿に

 俺達は、それ以上の追求が出来なくなってしまった。

 

 そしてその日の戦闘訓練。

 少し変わったことが起こる。

 

ギル「いや、やっぱりおかしいって」

 

 このギルの発言から、全てが始まった気がする。

 

 

 

 

 

第11章 広がる不安

 

 

 

 

 

和也「何がおかしいんだ?」

 

ギル「あいつらだよ」

 

 ギルは、とあるクラスメイトの集まりを指差す。

 そこでは、数人のグループ同士が訓練をしていた。

 

魔族男生徒「威勢が良いのは、口だけかぁ?」

 

神族男生徒「くそっ!!」

 

 魔族生徒が、ほぼ一方的な展開で神族生徒を

 追い詰めている。

 

亜梨沙「アレが、どうしたんですか?」

 

ギル「おかしんだよなぁ」

 

和也「だから何がおかしんだよ」

 

ギル「あいつ、あんなに強くなかったはずなんだよ」

 

 指を指すのは、一方的な展開で攻撃している魔族生徒。

 

ギル「あいつ、少し前までは今戦ってる奴に

   一度も勝てないぐらいのレベルだったんだよなぁ」

 

亜梨沙「・・・頑張って訓練したんじゃないですか?」

 

ギル「いやいやいや。

   たとえ訓練を頑張り始めたからって

   あそこまで急激に強くならないでしょ」

 

和也「悪いが、あいつの元々の実力を知らないから

   何とも言えないな」

 

ギル「いや、見ててくれれば多分わかるって」

 

 そう言われて試合を集中して見る。

 

神族男生徒「ウォーター・アローッ!」

 

 水の刃が出現し、魔族生徒に向かって飛んでいく。

 

魔族男生徒「そんなもの、飲み込んでやるぜっ!!

      ファイア・アローッ!!」

 

 アロー同士をぶつけるつもりだろうか。

 炎矢を出現させ、水の刃にぶつけ・・・。

 

和也「・・・おいおい、冗談だろ?」

 

 思わずそう呟く。

 

神族男生徒「・・・そんなっ!?」

 

 誰もが衝撃を受ける。

 出現した炎矢は、10本。

 

 しかも目の前の魔族男生徒は、翼を開いていない。

 翼を開かずに10本なんて魔王の血族である

 ヴァイスでもギリギリぐらいの本数だ。

 

 出現した炎矢は、水の刃を軽々と飲み込み

 残った矢が、神族生徒に降り注ぐ。

 

神族男生徒「ぐあぁぁぁぁ!!」

 

 避けきれない矢の雨に

 数本の直撃を受けて倒れる。

 

 判定ネックレスが発動して、勝敗が決する。

 

 勝負が終わると、魔族生徒は

 後ろに控えていた仲間と勝利を噛み締めていた。

 

 その姿を見ていた俺達だったが・・・。

 

ギル「・・・な?

   おかしいだろ?」

 

亜梨沙「意味が解りません。

    あんなに魔法制御が出来る魔族とか

    普通居ませんよ?」

 

フィーネ「彼、魔王の血族でもないわ。

     どうしてあんなに魔力があるのかしら?」

 

和也「知ってる奴なら、ギルが直接聞くのが早いんじゃないか?」

 

ギル「いや、もう聞いたんだが

   教えてくれないんだよねぇ」

 

亜梨沙「まあ普通は、切り札になるようなことは

    言いませんよね」

 

ギル「そういう訳でもなさそうなんだよねぇ。

   何か隠してるって感じでソワソワしてさ」

 

フィーネ「一時的に能力を上げるような魔法アイテムとか

     そういった特殊なアイテムってことはない?」

 

和也「まあ否定は出来ないけど、そんなのがあるとか

   聞いたことがないなぁ」

 

 どこまで言っても俺達の話は、推測でしかない。

 結論の出ない問答をしてる間にも、彼らの訓練は進んでいた。

 

魔族女生徒「あはははっ!

      日頃の恨みを晴らしてあげるっ!!」

 

神族女生徒「な・・・なんでこんなに強くなってるのよっ!!」

 

魔族女生徒「これで終わりよっ!

      ファイア・ボールッ!!」

 

 魔族生徒の放った火球は、平均より大きめだった。

 

神族女生徒「ウォーターシールドッ!!」

 

 ガチャンッ!と弾装が排出され、二翼開いた全力の防御。

 しかし―――

 

 パリッ!

 メキメキッ!

 

 火球と水盾が衝突して魔力が拡散して光を放つ。

 だが、火球は水盾を押し始めて

 水盾を構成する魔力壁に亀裂が入る。

 

神族女生徒「そんな・・・押さえ切れないなんてっ!?」

 

 火球が水盾を半分ほど貫いた瞬間、火球が破裂して

 大爆発が起こる。

 

 煙が風によって、かき消されると

 そこには倒れこむ神族女生徒と、彼女を包む

 判定ネックレスの光があった。

 

魔族女生徒「ははっ・・・あはははっ!

      やったわっ!

      最高の気分よっ!!」

 

 そんな彼女の興奮とは裏腹に

 和也達は、言いようの無い不安に駆られる。

 

和也「・・・彼女なら知っている。

   確か、ファイア・ボールは使えなかったはずだ」

 

亜梨沙「それに彼女は、こう言ってはなんですが

    さっきの神族の子に勝てるほどの実力じゃ

    なかったはずです」

 

ギル「急に強くなったって言っても

   色々と限度を超えてるんだよなぁ」

 

フィーネ「確かにこれは、気になるわね」

 

 言いようの無い不安と疑念だけが

 積み重なり、それをどうすることも出来ず

 ただ、彼らの訓練を遠くから見ていることしか

 出来なかった。

 

 

 その日の夜。

 

 フォース内で営業している酒場の1つから

 上機嫌で店を出る男が一人。

 

男「いやぁ~、気分が良いねぇ~。

  給料は上がったし、念願の彼女もやっと出来た。

  俺って人生の勝ち組さ~♪」

 

 ふらふらとした足取りで夜道を歩く男。

 

男「でも、ちょっと遅くなったよねぇ~。

  ・・・近道しちゃおっかなぁ~」

 

 男は、通い慣れた道から裏路地に入る。

 この道も男にとっては、よく通る道。

 いつも通りに歩いている時だった。

 

 ズザッ

 ヌチャ

 ギギッ

 

 聞きなれない音が前方から聞こえてくる。

 

男「なんだぁ?」

 

 おぼつかない足取りながらも

 ゆっくりと近づいていく。

 すると―――

 

男「・・・何だ、こいつはっ!!

  や、止めろっ! こっちに来るなっ!

  ひ、ひぃぃ・・・。

 

  ギャァァァァーーーーーーー!!!」

 

 ズズッ

 バキッ

 ガリッ

 ゴキッ

 

?「モット・・・モットダ・・・」

 

 ズザッ

 ヌチャ

 ギギッ

 

 

 

 ・・・・・・・

 ・・・・・

 ・・・

 

 

 

 次の日。

 

 いつもの昼休み。

 

和也「ああ、セリナ達もか・・・」

 

 セリナ達からも同じような話を聞くことになった。

 

セリナ「そうなんですよ。

    ちょっとおかしいなって」

 

エリナ「ちょっとどころじゃないよっ!

    アレ、絶対にヤバイってっ!」

 

リピス「確かに、私のクラスにも

    そういう奴が居たなぁ」

 

亜梨沙「何が、どうヤバイんですか?」

 

エリナ「だって、どこからあんな魔力を出してるのかも

    わからないし、制御もロクに出来てないのに

    魔力塊にならずに『魔法』として発動してるとか

    何から何までありえないよっ!」

 

リピス「・・・加えて言うなら

    そもそも魔力量そのものをどうこうすることは出来ない。

    つまり何かしらの後天的要素が無ければ

    ああいったことは不可能だ」

 

 魔力量は、生まれ持った才能と同じで

 その容量は、決まっている。

 

 そこに魔法制御技術や翼などによる増幅といった

 要素が絡み合って、最終的な魔力総量というものが決定する。 

 

 だから訓練によって何とかなるのは、制御技術だけであって

 根本的な部分は、どうしようもない。

 

 魔族や神族が、翼を『誇り』とするのも

 その枚数を気にするのも、全てそれらが

 魔力に直結するからだ。

 

和也「本人の魔力量を超える魔力・・・ねぇ」

 

ギル「そういや、変な噂に

   学内じゃ便乗商売なんかも増えてるらしいぞ」

 

亜梨沙「何ですか、それ?」

 

ギル「何でも、付けるだけで魔力量が増えるアクセサリーとか

   持ってるだけで制御技術が上がる魔力石だとか

   あとは、飲むだけで魔力が増える薬だったかな?

 

   そんないかがわしい物が、最近みんなの間で

   取引されてるらしいぜ」

 

リピス「・・・下らないな」

 

エリナ「そんなもの、あるわけないじゃん。

    古代遺跡から出てきたものなら

    ありえなくもないけど、普通に出回る物じゃないし」

 

セリナ「確か、魔力石の中にそういう可能性があるって話なら

    聞いたことがありますね」

 

エリナ「でもアレって、可能性があるってだけで

    誰も成功させれてないよ」

 

亜梨沙「それで、噂って何ですか?」

 

ギル「何でも最近、化け物に襲われる事件が起きてるらしい。

   何でも夜にだけ現れて、人を喰うんだとよ」

 

亜梨沙「その噂と商売の関連性が解かりません」

 

ギル「自分の身は、自分で守ろうってことさ」

 

亜梨沙「ああ、そういうことですか」

 

和也「まあ商売の方は、どうでもいいが

   その化け物ってのは、どんな奴なんだ?」

 

 化け物という単語に心当たりがあった。

 でもまさか、アレが街中をウロウロしていたら

 嫌でも目に付くだろうし、それは無いか。

 

ギル「それがよ、肝心の化け物の姿は

   誰も見てないんだよねぇ」

 

リピス「それならどうして『化け物の仕業だ』などと

    言われるのだ?

    誰も見ていないのだろう?」

 

ギル「・・・それが、ここだけの話なんだがな」

 

 急に小声になるギルに

 自然と皆が近くに集まる。

 

ギル「どうも現場には、大型の獣らしき爪痕が

   その場で暴れたように地面や壁に残ってたんだとよ」

 

亜梨沙「・・・それが、どうしてここだけの話なんですか?

    そんなの現場に行けば誰でも見て確認出来ますよね?」

 

ギル「そう思うだろ?

   ところが調査に来た連中が、全部綺麗に

   痕跡を直していくんだとよ」

 

メリィ「・・・興味深い話ですね。

    もう少し詳しく話して頂けませんか?」

 

 普段は、一歩下がってリピスの世話をしているだけの

 メリィさんが、珍しく会話に食いついた。

 

ギル「俺もあくまで噂話として聞いて回っただけだぜ」

 

和也「何でそんなこと聞いて回るんだよ」

 

ギル「いや~、初めは魔力増幅関係で

   俺もそんなものがあるなら見てみたいなと

   思ってたんだが、聞いてるうちに

   こっちの噂の方が面白くなってきてな。

 

   気づいたら、こっちの話ばかり聞いて回ってたよ」

 

 そう言いながら笑うギル。

 

亜梨沙「何だか、本末転倒どころじゃないですね」

 

ギル「まあまあ。

   おかげでこうして色々と面白いこともわかった訳だし

   良いじゃないか」

 

メリィ「ギル=グレフ様。

    その痕跡を消していった方々ですが

    もう少し具体的な特徴なりを教えて貰えませんか?」

 

ギル「ああ、いいぜ」

 

 そう言うとギルとメリィさんは、少し離れた場所に移動して

 詳細な話をし始める。

 

セリナ「でも、どうして皆さんそんな安易な方法に

    頼ろうとするのでしょうか?」

 

エリナ「だよね。

    それが便利だとしても、そんなアイテムに頼ってばかりじゃ

    実力がつかなくて、いざって時に困るのに・・・」

 

亜梨沙「・・・でも、それはあくまで

    『出来る人間側』の理論ですよ」

 

セリナ「出来る人間側?」

 

亜梨沙「この世界には、どれだけ訓練しても

    埋められない圧倒的な差というものも

    存在するということです。

 

    才能のある人は、才能の無い人の努力や苦悩というものを

    決して理解することは出来ませんからね」

 

リピス「確かにな。

    我々からすれば、ちょっと頑張れば出来ることであっても

    他人からすれば、死に物狂いで努力しても

    出来ないという場合もある。

 

    そういう連中からすれば、簡単に強力な力が手に入るという

    アイテムがあれば、喉から手が出るほど欲しいだろうさ」

 

エリナ「・・・そういうもんかなぁ」

 

セリナ「出来る側・・・出来ない側・・・」

 

 エリナは、やはり天才側なんだろう。

 よく解らないという感じだ。

 

 対照的にセリナは、何やら考え込んでいるようだ。

 

 

 そしてその日の夜。

 

 大小様々な木々に囲まれた森林の中にある遺跡のような建物から

 鮮やかな紅色をした髪をなびかせながら出てきた少女が

 空を見上げる。

 

 夜空は、丁度満月だった。

 いつもよりも明るい夜だったが、少女は思わずため息を吐く。

 

ミリス「まさか、ここまで連中が馬鹿だったなんて・・・」

 

 手にしている紙束を無造作に投げ捨てる。

 風によって空に舞った紙だったが

 その全てが宙で突然燃えて灰になっていく。

 

ミリス「一度、マリア様の元へ帰る必要がありますね」

 

 夜空に浮かぶ満月が、一瞬だけ雲に隠れて

 完全な暗闇が広がる。

 

 そして再び満月によって森が照らされた時には

 既にミリスの姿は、無かった。

 

 

 次の日の夜。

 

 学園都市の人気の無い路地裏に

 数人の人影が動いていた。

 

?「・・・これで最後だな」

 

?「ああ、終わりだ」

 

?「散々暴れてくれたおかげで『処理』に手間取ったな」

 

?「まったく・・・こっちの身にも

  なって欲しいもんだな」

 

?「違いない」

 

?「無駄口を叩いてないで、さっさと撤収するぞ」

 

 人影達が、一斉に移動しようとした時だった。

 その進路上に、もう一人の人影が現れる。

 

?「あなた方に、少々お尋ねしたいことがあります。

  お時間、よろしいでしょうか?」

 

 そう言いながら人影が、月明かりの下まで移動する。

 月に照らし出された姿を見て、人影達は

 一歩後ろに下がる。

 

 若いメイド服を着た女性が、そこには居た。

 頭にある耳が、彼女が竜族であると告げている。

 

?「・・・何者だ?」

 

メイド「それは、私の台詞です。

    まあ、おおよその見当は付いてま―――」

 

 彼女が、最後まで話す前に

 一人の人影が、物凄い速さでメイドに襲いかかる。

 

 だが―――

 

?「がぁっ!!!」

 

 メイドに襲い掛かった人影だったが

 彼女の一撃に吹き飛ばされ、路地の壁に激突して気絶する。

 

メイド「・・・それで。

    お話を聞かせて頂いてもよろしいですか?」

 

 まるで何事も無かったかのように

 話を続けようとするメイドに、人影達は

 儀式兵装を手にして構える。

 

 その瞬間だった。

 フワフワと宙を漂うような感じで

 メイドと人影達の間に火球が現れる。

 

 そして―――

 

?「ブレイクッ!」 

 

 何処からともなく聞こえてきた声によって

 火球は、その場で爆発する。

 

 爆風と周囲を覆う煙で、一時的に視界が無くなる。

 

?「はやく撤退しなさい」

 

?「し、しかしっ!」

 

?「ここであなた方の誰か1人が捕まれば

  それで終わりなんですよ?」

 

?「・・・はっ」

 

 会話が丁度終わった瞬間に煙が晴れる。

 そしてメイドの前に現れたのは、紅の少女だった。

 

ミリス「『破滅の竜』メリィ=フレールさんでしたっけ。

    こんな夜更けに、人気のない場所で

    いったい、どうされたんですか?」

 

メリィ「それは、こちらの台詞です。

    まあ『紅の死神』が出てきた以上

    仮説に現実味が増した訳ですが・・・」

 

ミリス「やはり、貴女は放置しておけないようですね」

 

メリィ「・・・貴女こそ、そこまで魔族にこだわるのは

    どうしてですか?

    こう言っては何ですが、貴女の半分は竜―――」

 

ミリス「それ以上、言えば確実に殺しますよ?」

 

メリィ「・・・まあ、人には踏み込まれたくない話も

    ありますから無理にとは言いませんよ」

 

 急激に高まった殺気。

 それでもメリィは、余裕の笑みだ。

 

メリィ「では、私はこれで失礼します」

 

ミリス「簡単に逃がすとでも?」

 

 ミリスの言葉にメリィは、軽くウインクして返すと

 スカートの端を摘んで優雅に礼をする。

 

ミリス「ちょっと痛いですけど、我慢して下さいねっ☆」

 

 瞬時に出した儀式兵装の斧を一気に振り下ろす。

 しかしメリィは、それを軽く後ろに跳んで回避する。

 

 そのまま竜族の身体能力の高さで

 一気に裏路地を走り抜け、曲がり角を曲がって森の中へと

 逃げていく。

 

 しかしミリスも、竜族にまったく負けない身体能力で

 追いかける。

 そして曲がり角を勢い良く曲がって

 森の中に入った瞬間―――

 

メリィ「ちょっと痛いですけど、我慢して下さいねっ☆」 

 

 まるで意趣返しのように、まったく同じ台詞が

 後ろから聞こえてくる。

 そんなメリィの声に、ミリスは驚く。

 そしてメリィが左の拳を後ろに引いた構えを

 している姿を見て、ミリスは全力で防御体勢に入る。

 

 弾装を使い魔力をありったけ斧に付与して

 斧を盾代わりに前に出す。

 そして、魔族では使えるはずのない『気麟』を

 正面にのみ展開する。

 

 普通の奴なら、儀式兵装すら出していない相手に対して

 大げさすぎると誰もが思うだろう。 

 しかし、ミリスの判断は正しかった。

 

メリィ「ドラゴンブレスッ!!」

 

 メリィの放ったものは、竜族の切り札と言える竜の息吹。 

 角度を計算し、ミリスを森の奥へと吹き飛ばす。

 

 その威力は、周囲の木々どころか

 地面すら抉って何もかもを吹き飛ばした。

 

メリィ「・・・さて、必要な情報は

    それなりに揃ったので帰りましょうか」

 

 まるで竜巻が通り過ぎたかの如く

 めちゃくちゃになった森の中を

 何事も無く歩いていくメリィ。

 

 

 そのころ、大きく吹き飛ばされたミリスは

 地面に2度バウンドしてから、滑るように地面に落下する。

 

ミリス「・・・っ。

    さ、さすがは・・・竜族No2と、いうことですか・・・」

 

 致命傷にはならなかったものの、かなりのダメージを受け

 ボロボロになりながらも、ゆっくり立ち上がる。

 

ミリス「こうなってしまっては・・・時間の問題です・・・ね」

 

 傷ついた身体に気合を入れ直すと

 マリアに報告するために、学園へと急ぐのだった。

 

 

 同時刻―――

 

 女子寮の管理人室に、その場には不釣合いの男が居た。

 

オリビア「よく来てくれたわね、カイン君」

 

カイン「いえ、神王妃様のためならば

    この程度のことなど苦労の内には入りませんよ」

 

 胸にいくつもの勲章を付けた軍服に

 立派なマントを羽織った真面目そうな、この男は

 大戦争を戦い、いまや神界で宰相の地位を得た出世人。

 

 神界宰相 カイン=ライト

 

 神王妃であるオリビアに絶対の忠誠を誓う騎士である。

 

カイン「オリビア様の仰られていた件につきまして

    至急、お伝えする必要があると判断し

    こうして伺った訳です」

 

オリビア「感謝してるわ」

 

カイン「はっ!

    ありがとうございますっ!!

 

    ・・・では、さっそく報告させて頂きます」

 

 

 そして、その30分後―――

 

男「ギャァァァァーーーーーーー!!!」

 

 深夜の街に、また悲鳴があがる。

 

 ズズッ

 バキッ

 ガリッ

 ゴキッ

 

?「チカラ・・・タリナイ・・・」

 

 ズザッ

 ヌチャ

 ギギッ

 

 何か引き摺るような足音と共に

 何者かが、また動き出す。

 

 今、まさに世界がゆっくりと

 何かに押されるように急速に動き始める。

 

 その結末は、一体どこへ向かおうというのか・・・。

 

 

 

 

第11章 広がる不安 ―完―

 

 

 

 

 




まず、ここまで読んで頂きありがとうございます。

ついに盆休みに突入し、仕事から一時的に解放され
ようやく製作ペースが上がりました。
まあ、盆休みだけですけどね(笑)

物語に関しては、出来るだけ休みのうちに
進めたいなと思っております。
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