Tiny Dungeon Another Story 作:のこのこ大王
次の日の朝。
いつものように学園に登校していると
校門の辺りで神妙な顔をしているリピス達に出会う。
和也「おはよう、リピス」
亜梨沙「おはようです」
フィーネ「おはよう」
リピス「ああ、和也達か。
おはよう」
メリィ「皆様、おはようございます」
亜梨沙「どうしました?
何か考え事ですか?」
リピス「ふむ・・・。
いや、今解決した」
そう言うと強引に和也の腕を掴むリピス。
リピス「悪いが、少し借りていくぞ」
和也「おい、ちょっとっ!
どういうことか、少しぐらい説明してくれっ!」
リピス「ついてくれば勝手にわかる」
ズルズルという感じで
和也を引っ張って学園内に入っていくリピス。
フィーネ「・・・何、あれ?」
亜梨沙「・・・さあ?」
メリィ「ここは、リピス様にお任せ下さい」
突然のことに、一礼するメリィが視界に入らないほど
呆然となる2人だった。
第12章 四界会議
そして引っ張られていた和也は
学園長室へと向かう一本道の廊下に入る。
その廊下で、和也は驚く。
オリビア「あら、和也くんじゃない」
そこには、いつもの管理人としてではなく
立派なドレスに身を包んだ『神王妃』が居た。
しかも隣には、軍服の上から鎧を着た
立派な騎士も居る。
オリビア「こっちは、カイン君。
神界で頑張ってくれてる子なの」
カイン「貴方が藤堂 和也くんですか。
私は神界で宰相をしている
カイン=ライトという者です。
どうか、お見知りおきを」
カインと名乗った騎士は
丁寧な挨拶と共に、こちらの手を握って握手をしてくる。
和也「あ・・・どうも」
目の前の騎士から気迫というか、そのやる気に満ちた覇気というべきか
そんな見えない力というべき何かに押されて
少し間抜けな返事をしてしまう。
リピス「わざわざご足労願って申し訳ない」
オリビア「いえいえ。
こちらも近日中に同じようなことを
言っていたと思いますから。
・・・それにしても、どうして和也君を?」
リピス「これで形だけだが『全て揃った』訳だ。
和也なら、十分だろう」
オリビア「・・・確かに。
『条件』は整ったことになるわ」
主語が見えない会話をされているが
何となく関わり合いになるべきではないと
俺の感が告げている。
和也「とりあえず、トップ同士の会話をするなら
俺は、向こうへ行きたいんだが・・・」
リピス「まあ、そう急ぐな。
それに和也が居ないと始まらないんだよ」
そう言って学園長室の扉を開く。
そこには、大きなテーブルが置いてあり
学園長が既に座っていた。
マリア「竜王女どの・・・。
話があるとは聞いていたが
まさか神王妃まで一緒とは、聞いていないが?」
いかにも不機嫌だというような強めの口調。
まるでリピスをけん制するかのように
先に言葉を発する学園長。
リピス「いや、先ほど丁度そこの廊下で出会った。
神王妃どのも何やら魔王妃どのに話があるらしくてな。
せっかくだから一緒に来てもらった」
オリビア「ええ、そうなんです。
だから同じテーブルに着かせて頂くわね」
そう言うと、2人はさっさとテーブルに座る。
カインさんは、オリビアさんの少し後ろで立ったままだ。
俺も、リピスが促す席に座らされる。
4人が、綺麗に向かい合うような位置に座った瞬間
魔王妃であるマリアは、その意味に気づいた。
リピス「これより、四界会議を執り行うっ!」
その言葉に、学園長は『しまった』という顔をして
苦しい顔をしていた。
俺は、何の話かまったくついていけずに
呆然としてしまう。
マリア「竜王女どのっ!
それは―――」
リピス「なお、今回の開催は
竜界と神界からの要請によるもので
開催規定に準拠したものであるっ!」
マリア「人界側の代表者が居ないではないかっ!」
リピス「そこに居る藤堂 和也が人界の代理だ」
和也「はぁっ!?」
オリビア「人界の代表者の規定には
『風間の直系または、風間流における
師範以上の者とする』とされてるわ。
和也くん。
貴方、風間流で師範なのよね?」
和也「・・・ええ、まあ一応ですが」
リピス「だから問題ない。
人界の代表者が代理を立てた。
それだけの話だ」
マリア「強引すぎるではないかっ!
人界側への配慮が、まったく無いっ!」
リピス「これでも最大限の配慮をしたつもりだが?
それとも今更、人界の扱いに関しての議論が必要か?」
和也「ちょっと待ってくれっ!!」
リピス「・・・どうした?」
和也「どういうことか、ちゃんと説明をしてくれ。
話についていけない」
リピス「簡単な話だ。
・・・和也。
キミが人界を代表して四界会議に出てもらう。
ちなみに拒否権は、無いと思ってくれて構わない」
和也「だから、どうして俺なんだよっ!
それに人界の代表なら、クソ爺が居るだろうっ!」
リピス「風間 源五郎どのを呼んでいる暇がない。
それに、先ほど言ったように条件的には
和也は問題ないんだよ」
和也「だから、そういう話じゃ―――」
オリビア「和也君。
ちょっといいかしら?」
話を静観していたオリビアさんが、突然話に割り込んでくる。
オリビア「言いたい気持ちも解るけど、もしも代表を辞退すれば
私達3人で、四界会議を継続することになるの。
まずは、それを知って欲しいわ」
和也「・・・どういうことでしょう?」
オリビア「人界・・・人族の四界での扱いっていうのは
言わなくても解っているわよね?
そして四界会議は、本来それは形だけの形式であって
人界に決定権は、何もないのよ」
和也「決定権が・・・ない?」
マリア「形の上では四界による合同決定なのだが
人界は、戦争責任を負わされたことで
会議内での発言は可能でも、決定権は持っていないんだよ。
人界が持っている権利は、たった一つ。
『四界会議を開催する際は
四界の代表者が同じテーブルに座ること』
この開催規定を成立させるために
椅子に座るかどうかだけだ」
オリビア「だから言い方は悪いけど、一度開催してしまった以上
もう『居ても居なくても変わらない』の。
・・・それがどういう意味か、解って貰えるかしら?」
リピス「・・・つまり、ここで四界で協力しなければならないような
世界の命運を賭けたような話であっても
人界を無視して話を進められるということだ。
出来るのは、提案ぐらいで基本的には
ただ聞いているだけなんだよ」
マリア「だから、一度開催された四界会議中に
代表者を辞退して部屋を出ても、もう何の意味もない。
下手をすれば、婿殿が出て行った後
好き勝手に話を進めることも出来てしまう」
和也「そんな勝手な話がっ!」
リピス「・・・悪いが、それが今の現実だ」
オリビア「・・・リピス王女は
アナタを利用したかもしれない。
でも、もう無視していいはずのアナタの声に
ちゃんと説明して、なるべく応えてあげているでしょ。
その気持ちだけは、理解してあげて?」
和也「・・・」
正直、初めて知る残酷な現実に
言葉が出なかった。
種族差別は、未だこんなにも根深い問題なのだ。
その事実が重くのしかかってくるようだった。
俺が無言で椅子に座り込むと
リピスが、改めて宣言する。
リピス「では、四界会議を執り行うっ!」
一瞬、部屋全体が静寂に包まれる。
先に口を開いたのは、やはりというべきか
魔王妃マリア=ゴアだった。
マリア「・・・ここまで強引な開催をした理由を
ぜひとも聞かせてもらいたい」
リピス「それは、魔王妃どのが一番理解していると
思っていたのだが?」
マリア「そもそも心当たりすらないな」
オリビア「・・・2人とも。
余計なけん制は、必要ないでしょう?」
リピス「なら、さっさと本題に入るか。
・・・あの化け物は、何だ?」
マリア「・・・何の話だ?」
リピス「こちらが調べていたのは、既にそちらの部下から
報告を受けたのだろう?
ある程度の証拠と、それによる仮説がある。
それが真実になる前に、話して貰えると助かるのだが?」
オリビア「こちらでも、有力な証拠と
ある程度の情報を揃えてるの。
立場的に言い難いことも理解するけど
今、話して貰えないと余計に立場が悪くなるわ」
リピス「今、話してもらえるのなら
今日まで情報を隠していたことに関して
一切の追求をしないことを約束しよう」
オリビア「ついでに、この件に関して
魔界側への責任追及も一切しないわ。
・・・だから、話して貰えないかしら?」
マリア「・・・」
リピス「だが、ここで話さないようなら
その時は、こちらにも考えがある」
オリビア「その時は、竜界と神界は合同で
今回の件に関して魔界側へ
全ての責任追及をすることになるわ」
リピス「場合によっては、戦争も覚悟してもらうことになる」
オリビア「もう一度、大戦争を起こさないためにも
協力して貰えないかしら?」
世界を想っての強烈な脅しと、友人を思う提案。
これが種族を代表する者達の話し合いなのか。
事情もわからなければ、何をどう話していいかも
わからず、ただ本当に参加しているだけだ。
それが少し悔しかったりする。
マリア「・・・はぁ、負けたよ」
オリビア「じゃあ、話してくれない?」
マリア「発端は、大戦争の終結にある」
もう隠すことが不可能だと察した学園長は
この事件全てを話し出す。
マリア「戦争終結の際、やはり徹底抗戦を唱える集団が居た。
そいつらは、特に戦時中から色々と問題の多い
連中でもあったわけだが、彼らを説得し
何とかまとめたと思っていたが、どうやら一部が
裏では、コソコソと何かをしていたようでな。
それが解ったのが、つい最近だ。
『アレ』が出始めて調査した結果というやつだ」
リピス「あの化け物は、一体何なのだ?」
マリア「マジックマテリアルという物質を知っているか?」
オリビア「確か、魔力増幅が可能と言われている魔力石
・・・だったかしら?」
マリア「そうだ。
そのマテリアルを奴らは、とんでもないものに
利用しようとした」
オリビア「とんでもないもの?」
マリア「・・・強化兵計画。
かつて人工的に強力な兵士を作り出そうという
実験があった。
だが、あまりにも非人道的なものであり
実験で出た犠牲者は、数え切れないものだった。
だからこそ終戦後、真っ先に凍結された計画だ。
それを連中は、掘り返した」
リピス「・・・まさか」
マリア「そう、まさか・・・だ。
連中は、そのマテリアルを凝縮した独自の薬を
開発して、人体投与している。
その産物が・・・あの化け物だ」
和也「・・・じゃあ、あいつらは」
マリア「元、人間・・・ということになる」
その言葉を聞いた瞬間、全身に衝撃が走った。
アレが、元人間なんて何の冗談だ。
そんなことがあっていいはずがない。
マリア「一度、投与された人間は、一時的にだが魔力が増える。
しかし、それを何度も大量に摂取し続けると
数日から数週間の猶予期間を経て
あのゴーレムに変化する。
そして一度、ゴーレム化が始まれば
止めることは出来ない。
そのままゴーレムとなり
二度と人間に戻ることは出来ない」
オリビア「・・・解除する薬とかは、無いのかしら?」
マリア「ミリスに調べさせたが、奴らの資料には
元から人間に戻すことなど考えていない理論で
薬が作られている。
少量なら問題無いそうだが
大量に投与された者は、魂の一部を媒介にして
身体の中心に魔力コアを形成する。
そのコアが拳ほどの大きさになった瞬間
身体をゴーレムの強化外殻として再構成し始める。
そうなったら後は、そのままゴーレムと化す。
ただ、普通のゴーレムと違うのは
魔力コアがで魂の一部出来ているという点だ。
魂の一部。
つまり儀式兵装または、その元となるものを
利用しているため理性が無くなっても
儀式兵装としての機能までは、無くならない。
本来なら、それだけで魔法を発動させることは
不可能なのだが、どういう訳か
研究の結果として魔法が発動出来るらしい。
魔力コアさえ潰されなければ何度でも再生可能で
魔法による攻撃力の飛躍的上昇。
そして外的要因によって人間に戻らぬよう
完全に肉体をゴーレムとして再構成するために
非常に強力で解除不能な術式を実現するための
媒介として、マジックマテリアルは
非常に優秀である。
・・・そう書いてあったとな」
リピス「・・・そのマジックマテリアルとやらは
どんなものなのだ?
見本は、ないのか?」
リピスにそう聞かれた学園長は
小さい袋を1つ、机の上に置く。
そしてその袋から、飴玉ぐらいの青い小さな粒が
何個が出てくる。
マリア「・・・これが、そうだ」
リピス「・・・魔王妃どの。
もっと早くこの件を言うべきだったな」
マリア「どういうことだ?」
リピス「今、学園内で生徒達によって妙な取引が
されているのを知っているか?」
マリア「何か、そんな話を聞いたことがあるが
詳しいことは知らないな」
リピス「何でも
付けるだけで魔力量が増えるアクセサリーとか
持ってるだけで制御技術が上がる魔力石だとか
・・・飲むだけで魔力が増える薬、とかな」
マリア「まさかっ!!」
リピス「早急に調べる必要性があるな」
和也「それが本当なら、学園内で化け物が・・・。
いや、生徒達が化け物になるってことじゃないかっ!!」
オリビア「・・・カイン君、例の準備は出来てる?」
カイン「はっ!
恐らく問題ないかと」
オリビア「実は昨日から、神界の特殊部隊をこっそり
学園都市に待機させてあるの」
マリア「何だとっ!?」
オリビア「彼らに、医師団役になってもらいましょう」
カイン「魔王妃様がお持ちの見本を見せて
『飲むと数日後には死ぬ副作用がある』
『しかしスグに治療すれば助かる可能性がある』
とでも言って薬の破棄と使用者が
名乗り出ることを促しましょう。
それで少なくとも、ある程度の被害を防止出来ます」
和也「・・・それで全員が応じるとも思えませんが」
カイン「まあ、そうでしょうね。
ですが、かなりの被害を抑えことが可能です」
和也「その集めた被害者は、どうするんですか?」
カイン「当然、見捨てるような真似はしません。
可能なかぎりの研究と治療を―――」
メリィ「会議中、失礼します」
いつの間に入ってきたのか。
メリィさんが、リピスの隣に立っていた。
ミリス「こちらも失礼します」
メリィさんに気を取られているうちに
ミリスまで、学園長の隣に立っていた。
リピス「四界会議中に、秘密は無しだ。
メリィ、そのまま報告しろ」
マリア「こちらもだ。
ミリス、構わないから報告しろ」
メリィ「わかりました。
では、こちらから。
街の住民に、怪しい薬を配っている集団を
捕縛致しました。
これが、その薬です」
そう言ってメリィさんが机に置いたものは
袋に入った飴玉ぐらいの青い小さな粒。
・・・マジックマテリアルだった。
ミリス「こちらからも報告です。
先ほど、学園内にて例のゴーレム化した生徒を
1名を発見。
緊急だと判断し、その場で『処理』しました」
マリア「・・・そうか」
リピス「これで、調べる必要も無くなったな・・・」
メリィ「捕縛した連中を尋問したところ
主犯格の魔族は、学園都市内に潜伏中だそうです」
リピス「・・・メリィ。
お前のところの部隊は、どれぐらいかかる?」
メリィ「少なくとも、2日は必要です」
リピス「では、お前は部隊を引き連れてこい」
メリィ「スグに動きます」
そう言うと、まるで消えるようにスッと消えた。
マリア「こちらの部隊で一番近いのは、どこだ?」
ミリス「国境警備隊が一番近いですが、彼らでも
最低3日は、かかってしまいますね」
マリア「緊急連絡を送っておいてくれ。
万が一の保険にもなる」
ミリス「解りました。
ついでに周辺に他の部隊が居ないかも
調べておきます」
そう言って、ミリスは部屋を出て行った。
オリビア「こちらは、薬の回収と被害者の隔離。
あと市民の避難も進めていきますね」
カイン「では、準備に取り掛かります」
カインさんも、部屋を退出する。
リピス「こちらは、犯人の捜索と支援を中心に行おう」
マリア「私は、全生徒達への説明と
学園内に各種施設の設置を担当しよう」
和也「・・・俺は、どうすれば」
リピス「和也には、私と共に遊撃に加わって欲しい。
まずは、フィーネ達と合流して
状況を説明してやれ。
あとで、私からそっちに行く」
和也「わかった」
オリビア「じゃあ、これで終了ってことでいいかしら?」
マリア「ああ、私は問題ない」
和也「・・・俺もだ」
リピス「では、これで四界会議を終了するっ!」
その言葉と共に全員が立ち上がる。
オリビア「でもマリアちゃん。
こういう話は、もう少し早くして欲しいわ」
リピス「確かにな。
今回のように、後手に回って被害が拡大していては
本末転倒だろうに」
マリア「・・・以後、気をつけるよ」
その言葉を聞いたリピスとオリビアさんは
部屋を出て行った。
そして俺もそれにつられて出ようとした時だった。
ガタッ!
大きな音に振り返ると
机に手を突いて身体を支える学園長が居た。
和也「大丈夫ですかっ!?」
マリア「ああ、すまん。
どうも気苦労が絶えなくてな」
和也「アナタに何かあれば、フィーネも悲しみます。
・・・それに、今回の件を大事にしないと
竜界も神界も言っていましたし、あとは今の状況を
抜け切るだけです」
マリア「・・・婿殿は、真っ直ぐなんだな」
和也「どういうことです?」
マリア「今回の件。
黙認するということは、これは大きな借りとなる。
それはいつか、必ず魔界の不利に繋がる。
・・・それが、交渉というものだよ」
和也「でも、オリビアさんとは友人関係だと聞いています。
そんな友人を疑うような―――」
マリア「だからだよ。
オリビアは、公私を決して混同しない。
神界の代表として必要なら、私を敵に回すことも
厭わないだろう」
和也「・・・学園長」
マリア「もちろん、この私も同じだかな」
不敵な笑みを浮かべる学園長を見て
少しだけホッとする。
マリア「さて、婿殿。
娘達を頼む」
和也「はい。
必ず守ってみせます」
その言葉と共に2人とも学園長室を出る。
そして俺は、フィーネ達の所へと向かった。
それから30分後。
学園の闘技場内に、全生徒が集合していた。
セオラ「それでは、これより魔王妃様並びに神王妃様から
重要な話がありますので、静かに聞くように」
その言葉で、闘技場内のざわめきが消える。
マリア「皆にまず、伝えなければならないことが2つある。
まず1つ。
これを見て欲しい。
この青い粒は、一時的に魔力を増大する効果を持つ薬だが
同時に、薬を飲んだ者の身体を蝕んで、数日から数週間後には
死に至る非常に強力な毒物だ。
これが学園内で広まっていることは知っている。
もしこの薬を飲んだという者が居れば
この後、専門の医師が来るので、その指示に従うようにっ!」
この話を聞いた一部から、ざわめきや動揺が広がる。
魔族男生徒「それは、本当ですかっ!?」
神族女生徒「使用禁止のための嘘じゃないの?」
誰もが突然の話に疑う意見が多くなる。
マリア「疑うのなら、それでもいいが
何もせずに放置すれば確実に死ぬ毒物だ。
治療を受けないという選択も構わないが
その場合、発作が起きてどれだけ苦しんで死のうが
学園は、一切責任を負わないっ!
そして、専門の医師に見てもらえるのも
今回が最初で最後だ。
何故なら、今後は治療に専念するため
新たに患者が増えても対応できないからだ。
もし薬を飲んだ者が居るのなら
自分の命に関わることだ。
よく考えてから自分で判断するようにっ!」
ざわざわと声が大きくなる。
それはそうだろう。
そんなものだと知らずに飲んでいた連中は
半ばパニックになりかけている。
マリア「静かにしろっ!
・・・ちゃんと治療さえ受ければ大丈夫だ。
だからちゃんと全員申告するように」
その言葉で、ようやく事態が収集する。
和也「・・・」
安心する連中を見て、思わず胸が痛くなる。
何故なら俺は『場合によっては助からない』ことを知っているからだ。
もしここで本当のことを言えば
パニックになり、避難や防衛なんて不可能だろう。
それが必要な嘘だとわかってはいても、やはり俺には
苦しいものだ。
マリア「次に2つ目だ。
この学園都市に、この薬が毒薬だと知った上で
あえて配り歩く連中が居る。
そんな連中を見逃すことは出来んっ!」
オリビア「危険な薬だと知りながら配るような人達を
これ以上放置しておくことは、出来ません。
この件に対して、先ほど四界会議を開き
全員一致で、この不届き者を処罰することが決まりました。
現在、各軍隊が既にこちらに向かっています。
しかし、少し予定より遅れてしまっているの」
マリア「だから、諸君ら学園生徒の出番だ。
この学園都市に住む全ての人達のためにも
少しでも早く平和を脅かす者を捕まえる。
各軍隊が到着するまでの間、捜索を手伝って欲しい」
オリビア「現在相手は、学園都市内部に潜伏中です。
そして都市内の様々な場所にゴーレムを放って
街を混乱させようとしているの」
マリア「街が戦場になる可能性が高い。
よって一般市民の避難を捜索と同時に行うことになる。
可能なかぎり市民を避難させることが優先だ」
セオラ「皆さんっ!
普段から何のために辛い訓練をしてきたのか
思い出してくださいっ!
そして、よりにもよって学園フォースを敵に回すことが
どれだけ無謀なことかを、皆さんが愚か者達に
実力をもって教えてあげなさいっ!!」
初めは不安が強かった声も、次第に熱を帯びてくる。
魔族女生徒「この私達全員を敵に回すなんて、バカじゃないの?」
神族男生徒「まったくだ。
俺達を舐めたことを後悔させてやるぜっ!!」
竜族生徒「そんな奴らを捕まえるぐらい楽勝でしょ。
軍隊が到着する前に、終わらせてやるわっ!」
魔族男生徒「今こそ、実力の見せ所さっ!
ここで活躍して、俺の優秀さを四界中に
アピールしてやるっ!」
最後には、全員一丸となって雄叫びをあげるように
声を上げている。
これで、当面の士気は問題ないだろう。
そして話が終わると同時に
まずは、薬を飲んだ者の隔離が始まる。
薬に手を出さなかった者達は、それぞれ数十人単位で
チームを組むことになる。
チームが出来た順番に、捜索や避難誘導といった
役割分担の書かれた手書きの紙が配られる。
文字は、いかにも急いで書いたという感じで
切迫した状況が伝わってくる。
亜梨沙「・・・で、そろそろ話してくれてもいいと思うんですが」
隣で、ずっと黙っていた亜梨沙が
ついに耐えかねて口を開く。
ギル「確かに、大変なことになってきたな」
フィーネ「私、詳しい話を母様に聞いてくる」
マリアの元に行こうとするフィーネの腕を握って
引き止める。
和也「もう少し待ってくれ。
・・・たぶん、もうスグだ」
セリナ「あっ、和也くん」
エリナ「和也を見っけ」
和也「丁度よかった。
呼ぶ手間が省けたよ」
セリナ「?」
エリナ「?」
さすが双子と言うべきか。
見事にシンクロした動きで首を傾げる。
和也「実は―――」
俺は、四界会議の内容をみんなに伝える。
話が進むにつれて、みんなの顔が険しくなる。
亜梨沙「そんなことが・・・」
ギル「・・・くそっ、何て奴らだっ!」
エリナ「魔法を・・・人の命を何だと思ってるのよっ!」
セリナ「何てことを・・・」
フィーネ「魔族に・・・そんな連中が居たなんて・・・」
誰もが信じられないという顔をしていた。
無理もない。
俺も、そんなバカなことが行われていたという
衝撃を未だに引き摺っている。
リピス「待たせたな」
和也「今、丁度話をしたところだ」
リピス「それは、良いタイミングだったな。
これから私達も、バカ共の捜索と市民の避難支援に出る。
ただし、我々の場合は他の生徒達とは
まったく別の動きをすることになる」
和也「別の動き?」
リピス「これだけの戦力を一箇所に集めるのは
相手の動きが読めない以上は
効率が悪いと言えるだろう。
よって、我々も基本的には
分担作業で活動することになる」
亜梨沙「それだとあまり他のチームと大差ないですね」
リピス「まあ基本は、そうだな。
だが、本命を見つけた場合や
それぞれで対処不能な状況になった場合は
全員が合流して、全力で『処理』する」
ギル「基本は、遊撃で支援中心。
状況によって、一点集中って感じだな」
リピス「そうだ。
学園都市は、意外と大きいからな。
それぞれをカバー出来るようにしておかなければ
いざという時に、間に合わない可能性がある」
セリナ「大体は、わかりました。
それでどういう分担にしますか」
リピス「亜梨沙とギルは、東側の遊撃を担当。
私の護衛をしている竜族3人も連れて行け。
セリナとエリナは、北側へ。
北側は、まだ最前線の指揮が居ないから
前線指揮を任せたい。
和也とフィーネは、私と共に楽しい西側遊撃だ。
一番手薄なエリアになるから、覚悟しておくんだな」
亜梨沙「どうして私が、こんなの(ギル)と一緒なんですか」
ギル「何気に扱い酷いなぁ」
リピス「人手が無いんだよ。
文句なら後でいくらでも聞いてやる」
セリナ「ちなみに南側は、どうなってるんですか?」
リピス「神王妃どのが宰相と一緒に担当してくれている。
また避難場所であり本陣となる学園は
魔王妃どのが居てくれる。
そして本陣と各エリアとの連絡を中継する
中間施設は、セオラが担当することになっている。
ちなみにフォースの教師達も
それぞれの配置に向かっている最中だ」
エリナ「何だか、向こうの方も騒がしいね」
リピス「既に住民の避難が始まっているからな」
ギル「手回しが良いねぇ。
よくこんな短時間で、ここまで準備出来るもんだな」
リピス「魔王妃どのや神王妃どの。
そしてこの私も、大戦争経験者であり
種族の代表としても、色々とやってきたんだ。
これぐらい、やれないことはないよ」
亜梨沙「話が変わって申し訳ありませんが・・・。
いくら避難してるにしても
騒ぎが大きくなりすぎてませんか?」
遠くに聞こえていた声が大きく、そして慌しくなる。
アイリス「大変です、リピス様っ!!」
いきなり駆け込んできたのは
前に紹介されたリピスの護衛を担当しているという竜族生徒。
リピス「何があった?」
アイリス「街中で、例のゴーレムが大量発生していますっ!」
その言葉で、その場に居た全員に衝撃が走る。
リピス「何だとっ!?」
アイリス「また、避難誘導をしていた一部の学園生徒も
ゴーレム化して市民を襲っていますっ!
しかも完全にゴーレム化していないため
現場が大混乱ですっ!」
リピス「完全にゴーレム化していない?」
アイリス「はいっ!
身体の半分だけとか、頭と手だけとか
部分的にゴーレム化しているため
支援部隊も、攻撃を躊躇ってしまい
被害が拡大していますっ!」
リピス「仕方が無い。
話は、聞いての通りだ。
これより分担して、ゴーレムの駆除をする」
亜梨沙「でも、ゴーレムって元は・・・」
リピス「気になる気持ちは理解出来るが
部分的でもゴーレム化してしまえば
助かる見込みは無い。
・・・迷いは、死を招くぞ」
亜梨沙「・・・言われなくても、わかってますよ」
リピス「それでは、一度解散だ。
また全員無事で会おう」
エリナ「当然じゃない。
さっと終わらせてみせるわ」
セリナ「ですね。
被害を可能なかぎり減らしてみせます」
ギル「俺達の街で好き勝手やってくれたんだ。
この借りは、絶対に返してやるぜ」
亜梨沙「・・・兄さん。
絶対に無理しちゃダメですからね」
和也「それは、こっちの台詞だ。
・・・怪我するんじゃないぞ」
そして亜梨沙とハイタッチをして別れる。
フィーネ「アナタは、必ず私が護ってみせるわ」
和也「気持ちは、嬉しいが
それでフィーネに怪我なんてして欲しくない。
だから俺が、フィーネを護る」
フィーネ「和也・・・」
フィーネが、そっと抱きついてくる。
それをゆっくりと抱きしめる。
フィーネ「そんなアナタも、大好き」
和也「俺もだよ」
リピス「・・・そろそろいいかね?」
その声に振り向くと、ジト目でこちらを見るリピスが居た。
和也「あ、ああ。
すまないな・・・」
フィーネ「それじゃ、行きましょう」
リピス「まったく・・・」
少し気合が空回りしたような微妙な雰囲気になってしまったが
それでも現場に向かう俺達の気持ちは、一つだった。
和也「こんなバカげたこと・・・。
今すぐ終わらせてやるっ!!」
第12章 四界会議 ―完―
まず、ここまで読んで頂きありがとうございます。
盆休みブースト最後になる投稿です(笑)
それなりにペースで進行出来たので
まずまずと自画自賛してます。
フィーネ編も、あと少しといった感じとなりました。
これが終わると本作も終了・・・とはなりません。
そのあたりも含めて、次話以降もお楽しみ下さい。