Tiny Dungeon Another Story 作:のこのこ大王
この第13章は、特に残酷な描写が
かなり使用された章となっておりますので
苦手な方は、ご注意下さい。
市民「や、やめてくれっ!
あ・・・ああ、ああぁぁぁーー!!」
ゴーレムが市民を生きたまま喰らう。
骨を砕く生々しい音が周囲に響く。
魔族男生徒「くそっ!
間に合わなかったかっ!」
魔族女生徒「とりあえず倒すわよっ!」
2人同時にゴーレムの背中から斬りかかろうとした時だった。
こちらに振り返ったゴーレムを見て2人は、攻撃を中止して
後ろに下がり距離を取る。
魔族女生徒の方は、口に手を当て苦しそうな顔をしていた。
魔族男生徒「・・・ちぃ」
思わず舌打ちする魔族男生徒。
振り向いたゴーレムは、口に食べかけの人の頭を銜えたままで
足元には、頭の無い死体が転がっていた。
半分砕けた頭から、色々なものが出ている。
2人は、その衝撃的な光景に思わず怯んだのだ。
魔族男生徒「くそ、化け物め」
魔族女生徒「しばらく夢に出てきそう・・・」
ゴーレムは、食べかけの頭を完全に飲み込むと
魔族生徒達に飛び掛る。
しかし―――
魔族男生徒「舐めるなよっ!」
飛び掛ってきたゴーレムを炎盾で受け止める。
魔族女生徒「確か身体の中心にある魔力コアだったわよねっ!」
炎盾にはじかれて後ろに下がるゴーレムに
炎矢を3本放つ。
ゴーレム「グルァァ!!」
ゴーレムの左腕が魔導砲の形になると
そこから大量の炎矢が放たれる。
魔族女生徒「聞いてた通りだけど・・・ふざけすぎでしょっ!」
自身の炎矢は、一瞬で相殺され
相手の攻撃だけが大量に降り注ぐ。
たまらず2人は、横にあるカフェのガラスを破りながら
店の中に逃げる。
今回渡された手書きのメモには
ゴーレムの特徴と共に、人間をゴーレムに変えて操り
世界への反乱を企てる集団という話の流れで
ゴーレムが元は、人であるということや
魔法が使えるなどの情報を支援に出た生徒達には伝えていたのだ。
黙っていても不完全なゴーレムが出現する以上
いずれバレることになる。
だから先に断片的な事実を公開することで
表に出ては困る真実のみを上手く伏せることに成功していた。
種族を代表して様々なことを取り仕切っていた王妃達の
情報操作の上手さに、誰もが真実に気づくことはなかった。
ガシャ!
ガシャ!
割れたガラスの欠片を踏みながら店内に入ってくるゴーレム。
すると、机の下から外へ向けて何かが飛び出そうとする。
ゴーレム「ガァァ!」
魔導砲となっている腕を外に向け、その飛び出す何かに向けて
炎矢を3つ発射する。
外には、炎矢が全て命中して燃えるカフェの椅子があった。
魔族男生徒「うおぉぉっ!!」
奥のカウンターから魔族男生徒が飛び出して
ゴーレムに斬りかかる。
しかしゴーレムは、反対側の腕を剣状にして受け止める。
魔族女生徒「もらったっ!!」
魔族男生徒の後ろから飛び出した魔族女生徒が
ゴーレムの胸に向けて剣を突く。
魔族女生徒「パワー・ファイアッ!」
炎の強化魔法を付与した突きで、ゴーレムの強化された外殻を貫く。
ゴーレム「グォォォォッ!!」
叫び声と共に魔力コアが破損して
崩れ落ちるゴーレム。
魔族男生徒「・・・後味が悪いな」
魔族女生徒「・・・ええ。
人を殺すために訓練してきたはずなのに
いざとなると、こんなにも気分が悪いなんてね」
学園フォースでは、確かに戦争がもし再開された場合でもという
想定も考慮され、実戦が中心となっている。
もちろん、生徒同士の戦いも『いつか友人相手でも戦うことがある』と
意識させるためではあるのだが、やはり判定ネックレスがあるせいで
『相手が死ぬことはない』という安心感が『死』という概念から
生徒達を遠ざけてしまっている。
実際にこうして『死と隣り合わせの戦場』になれば
今までの訓練なんてお遊びだったと誰もが感じることだろう。
魔族男生徒2「おい、大丈夫かっ!?」
魔族男生徒「ああ、こっちは大丈夫だ」
魔族男生徒2「なら、こっちを手伝ってくれ。
ゴーレムが集団で行動していて突破出来ないんだ」
魔族男生徒「ちぃ、やっかいだな」
魔族女生徒「じゃあ、行きましょう」
応援要請を受けた魔族生徒達は、仲間の元へと走っていった。
街中にバラ撒かれた薬のせいで、様々な場所から
ゴーレムが出現する。
結果的に学園都市全体が戦場と化し
生徒達は命がけの戦いを強いられていた。
第13章 それぞれの戦い
神族男生徒「よしっ!
倒したぜっ!」
ゴーレムを1体倒して、ガッツポーズをする生徒。
竜族生徒「上よっ!!」
近くに居た竜族生徒の声に上を見上げる神族男生徒。
神族男生徒「―――え?」
グシャッ!!
何かの砕ける音と共に、民家の屋根から
ゴーレムが1体飛び降りてくる。
ゴーレム「アアァ! ガアアァ!!」
竜族生徒を威嚇するように叫ぶゴーレム。
その足元には、踏み潰されて動かなくなった神族生徒。
竜族生徒「・・・あまり付き合いのある奴じゃなかったけど
一応、敵討ちぐらいはしてあげるわっ!」
竜族生徒が1歩踏み出した瞬間、ゴーレムの片腕が変化して
魔導砲の形状となる。
そしてそこから氷矢が大量に発射される。
竜族生徒「―――ッ!」
儀式兵装の手甲で魔力爆発させないように
器用に氷矢を弾きながら、高速でゴーレムに接近する。
ゴーレム「グルァッ!!」
反対の腕を棍棒のような大きな鈍器に変化させ
竜族生徒に振り下ろす。
しかし―――
竜族生徒「どこ見てるのよ」
ゴーレム「!?」
竜族生徒「はっ!!」
振り下ろした先に、竜族生徒は既に居なかった。
ゴーレムの後ろに回りこんでいた竜族生徒の一撃が
無防備な背中に突き刺さる。
ゴーレム「ガ・・・ガァッ!!」
竜族生徒の一撃は、背中を貫通して内部にある
魔力コアまで達していた。
コアが壊されて形状が維持出来ずに、土塊に戻るゴーレム。
竜族生徒「学園5階級を舐めないで欲しいわね」
ゴーレムだった土塊にそう言い放つと
神族生徒の死体を見る。
竜族生徒「・・・まだ、弔う暇がないの。
ごめんなさい」
そう言うと竜族生徒は、また戦いに戻っていった。
細い路地をひたすら走る人影。
神族女生徒「さあ、こっちに来なさいっ!」
後ろから迫る3体のゴーレムを誘き寄せながら逃げる神族女生徒。
神族女生徒「この先が、お前達の死に場所よっ!」
路地を抜けた先にある広場で
仲間達が待機していて、一斉攻撃を仕掛ける作戦になっている。
だからゴーレム達から完全に逃げ切らないように
調整しながら逃げる。
そして路地を抜け、神族女生徒は仲間の待つ広場に出た。
神族女生徒「―――」
一瞬、神族女生徒の思考が停止する。
仲間が待っているはずの広場が、血に染まっていた。
辺りには肉片が転がっており、上半身だけの死体や
腕や足といった身体の一部が散乱している。
そしてゴーレム達が死体を奪い合って喰らう。
骨を砕く音。
血が飛び散る音。
肉を引き裂く音。
異様な光景が、そこには広がっていた。
神族女生徒「あ・・・あ、あああ・・・」
その場に崩れ落ちるように座り込む神族女生徒。
今までチームを組んできたクラスメイトや友人達が
皆、喰われている光景に呆然とするしかなかった。
ガンッ!
後ろから聞こえる音に神族生徒は、ゆっくりと振り返る。
そこには先ほどまで誘導していたゴーレムが壁を掴みながら
路地から出てきたところだった。
その音に、周囲のゴーレム達が振り返る。
そして・・・。
周囲のゴーレム全てが神族女生徒を見る。
神族女生徒「い、いやぁぁぁ・・・
た・・・たべないでぇぇぇぇ!!」
目が無いはずの顔。
なのに視線を感じて、一気に恐怖が爆発してパニックになる神族女生徒。
恐怖から立ち上がることが出来ずに
手を使って後ろに下がることしか出来ない。
しかし後ろは、無常にも壁だった。
完全に追い詰められた神族女生徒に、ゆっくりと近づくゴーレム達。
神族女生徒「死ぬのは嫌ぁぁぁ!!
死にたくない死にたくない
死にたくない死にたくない
死にたくない死にたくない
死にたくない死にたくないぃぃ!!」
神族女生徒を囲むゴーレム達の輪が、小さくなっていく。
そして一斉に飛びかかろうとした瞬間―――
?「はぁぁぁっ!!」
掛け声と共にゴーレムが数体、崩れ落ちる。
突然の出来事に、ゴーレム達が周囲を警戒する。
?「後ろが、無防備すぎますね」
一瞬何かが閃くと、ゴーレムがまた崩れ落ちる。
そして最後に残った1体も
?「これで終わりだっ!」
物陰から出てきた人影の一撃に魔力コアを潰されて崩れ落ちる。
アイリス「これで全部見たいですね」
ギル「・・・間に合わなかったか」
亜梨沙「そこのアナタ。
大丈夫ですか?」
神族女生徒「嫌ッ!!
来ないでッ!!
食べないでぇぇ!!」
錯乱している神族生徒が、暴れだす。
亜梨沙「まったく・・・」
そう言うと、素早く距離を詰めて
神族女生徒の頬を平手で叩く。
バチン!と良い音が響く。
神族女生徒「あ、ああ・・・」
亜梨沙「意識はありますか?
こちらの声は、聞こえてますか?」
神族女生徒「みんな・・・食べられたの・・・。
いつも一緒だったのに・・・一緒に学園を卒業しようねって
・・・約束してたのにっ!!」
亜梨沙が無言で、もう一度平手で頬を叩く。
亜梨沙「しっかりしなさいっ!!
アナタは、生き残ったんですっ!!
生き残ったアナタだけが、彼らのことを語り継げるんですよっ!!
彼らの死を無駄にする気ですかっ!?
アナタは、彼らの分まで生きて・・・生き抜くんですっ!!」
神族女生徒「・・・ああ、あああぁぁぁっ!!」
その場で号泣する神族女生徒。
カリン「周囲を調べましたが、ゴーレムは居ないようです」
リリィ「この辺りは、もう人も居ないみたいですねぇ~」
ギル「くそっ!
どんどんと押されてるじゃないかっ!」
アイリス「予想以上にゴーレムが強いのと
大量に居て、どこから来るのかも解りませんからね。
地の利は、こちらにあるはずですが
見通しの悪い市街地戦という状況は、こちらには不利です。
一瞬の判断ミスが、死に繋がるような状態が続くため
実力者でも、そう長くは持ちません」
カリン「私達なら、大丈夫ですっ!」
リリィ「カリンは、元気ですねぇ~」
アイリス「・・・私達も移動した方が良さそうですね」
ギル「賛成だ。
情報も伝わって来ない以上、この場に留まるのは
危険すぎるからな」
亜梨沙「立てますか?」
神族女生徒「・・・ごめんなさい。
もう、大丈夫だから・・・」
泣きやんだ神族女生徒も立ち上がる。
ギル「状況が変化しすぎている。
一度、下がって状況を整理しようぜ」
ギルの言葉で方針を決めた彼女達は、神族女生徒を連れて
一度、中継地点に向かうのだった。
―――北側エリア
セリナ「必ずゴーレム1体に対して3人以上で戦いましょうっ!
決して単独で行動しないようにっ!!」
エリナ「住民の避難が終わるまでの辛抱だよっ!
みんな、頑張ろうっ!!」
戦いながらも周囲への声かけを続ける神族王女姉妹に
生徒達も奮起する。
魔族男生徒「神族ばかりに良いカッコさせるかよっ!」
竜族生徒「私達も、負けないわよっ!」
ゴーレムの予想以上の強さに、いち早く気づいたセリナは
北側エリアのチーム編成を変更して
捜索活動を放棄し、救助活動のみに専念させた。
その結果、北側エリアは目立った被害が出ずに済んでいる。
セリナ「深追いも無用ですっ!
各自、持ち場の防衛に努めて下さいっ!」
声をかけながらも、目の前に迫ったゴーレムの一撃を回避し
隙だらけになった側面から、一撃でゴーレムを斬り裂く。
神族女生徒「くっ!」
ゴーレムの体当たりに、民家の壁に激突して
動けなくなる神族女生徒。
エリナ「させないっ!
アイスジャベリンッ!!」
ゴーレム「グオオォッ!!」
動けなくなった神族女生徒に近づくゴーレムを
エリナが放った氷の槍が貫く。
神族女生徒2「手を貸すわっ!」
起き上がることの出来ない神族女生徒を、別の生徒が起こす。
神族女生徒「・・・ありがとう」
神族女生徒2「お礼なら、エリナ様に言うべきね」
エリナ親衛隊A「おい、そこの2人っ!
俺達が抑えている間に下がれっ!」
神族女生徒2「遠慮なく、そうさせてもらうわ」
そう言うと、怪我をした神族女生徒と共に
後ろに下がっていく神族女生徒2。
エリナ親衛隊B「俺達が居るかぎり、ここは通さんぞっ!」
エリナ親衛隊C「エリナ様親衛隊の実力を見せてやるっ!」
ゴーレム「ゴガァァッ!!」
ゴーレムの1体が、こちらに向けて突進してくる。
エリナ親衛隊A「いくぜっ!
デルタフォーメーション!」
その掛け声と共に、ゴーレムを3方向から囲むように立つ3人。
エリナ親衛隊B「フォーメーションアタァァァック!!」
一斉に3方向からの攻撃を防ぎきれず
1人の攻撃が魔力コアを捉える。
コアを砕かれたゴーレムは、その場で崩れ落ちる。
エリナ親衛隊C「離脱ッ!!」
そして離脱という掛け声と共に3人は、それぞれに姿を消した。
ゴーレム「ウガガァァッ!!」
また別のゴーレムが、こちらに向けて歩いてくる。
そして先ほどのゴーレムが崩れ落ちた場所まで来た瞬間
エリナ親衛隊A「いくぜっ!
デルタフォーメーション!」
エリナ親衛隊B「フォーメーションアタァァァック!!」
エリナ親衛隊C「離脱ッ!!」
彼らが去った後には、崩れ落ちるゴーレムの姿。
ゴーレム「グルルルゥッ!」
周囲のゴーレム達が集まり、少しづつ警戒するように進んでくる。
今度は、3体のゴーレムがまとまって迫ってくる。
すると、ゴーレム達の目の前に転がる小さな塊。
バンッ!!っという音と共に煙が周囲に広がる。
ゴーレム「ガァァァ!!」
ゴーレム達が殺気立ち、周囲の建物を壊すように暴れる。
そんな中―――
エリナ親衛隊A「デルタフォーメーション!」
エリナ親衛隊B「フォーメーションアタァァァック!!」
エリナ親衛隊C「離脱ッ!!」
彼らの声が聞こえたと思えば、何かの崩れ落ちる音。
周囲の煙が消えた時、ゴーレムの数は2体になっていた。
ゴーレム「ギギィィッ!!」
ゴーレム達は、周囲の建物の中を調べ始める。
だが、それぞれに分かれた瞬間―――
エリナ親衛隊A「デルタフォーメーション!」
エリナ親衛隊B「フォーメーションアタァァァック!!」
エリナ親衛隊C「離脱ッ!!」
その掛け声に、反対側に居たゴーレムが
突進してくる。
しかし、現場に着いた時には
既に土塊があるだけだった。
最後のゴーレムが周囲を警戒しながらゆっくりと後ろに下がる。
そして細い路地に入ろうとした瞬間だった。
エリナ親衛隊A「デルタフォーメーション!」
探していた声の主。
神族3人が姿を現す。
エリナ親衛隊B「フォーメーションアタァァァック!!」
3方向からの同時攻撃に、為す術なく魔力コアを破壊される。
エリナ親衛隊C「離脱ッ!!」
そして彼らは、また姿を消した。
魔族女生徒「・・・優秀、と素直に認めたくないなぁ」
竜族生徒「・・・同感」
そんな彼らの活躍を後ろの仲間達は
微妙な笑みを浮かべながら見ているのだった。
竜族生徒「はぁ、はぁ」
何度も後ろを確認しながら走る竜族生徒。
竜族生徒「あっ」
曲がり角にある小さな花壇に足を引っ掛けて
倒れてしまう。
竜族生徒「いったぁ~」
フラフラしながらも立ち上がろうとした瞬間だった。
ドスンッ!という大きな音と共に
目の前に何かが落ちてきた。
ゆっくりと視線を上に上げる。
ゴーレム「ゴガッ! ギィ!」
1体のゴーレムが目の前に居た。
竜族生徒「あ・・・ああ・・・」
突然の恐怖から、思考が止まり
その場から動けなくなる竜族生徒。
ゴーレムは、大きな口を開けながら
竜族生徒に迫る。
?「させませんわっ!!」
その言葉と共にゴーレムの身体が真っ二つになる。
竜族生徒「・・・え?」
アクア「何をボサっとしているのかしら?
化け物に食べられる趣味でも?」
竜族生徒「そ、そんなのある訳ないじゃないっ!」
アクア「なら、さっさと後ろに下がりなさい」
竜族生徒「・・・ありがとう」
小さな声で、感謝の言葉を言うと
そのまま後ろに走っていく竜族生徒。
アクア「まあ、素直ではありませんわね」
ため息をつくアクアは、気配に気づいて上を向く。
ゴーレム「グヴァァァ!!」
大きな建物の屋根から、ゴーレムがアクアに向かって
飛び降りてくる。
?「ウインド・クローッ!!」
何処となく聞こえてきた声と共に
まるで風で出来た槍のようなものが、落下するゴーレムに向かって飛ぶ。
そして空中でゴーレムを貫いた。
身体の中央を大きく貫かれたゴーレムは
空中で吹き飛ばされながら土塊になる。
アクア「・・・余計なお世話ですわ。
あの程度なら余裕で対処出来ましたのに」
物陰から出てきた槍を持つ魔族に
アクアは、感謝ではなく苦情を口にする。
アレン「それは、済まなかったな」
アクア「・・・あら?
どこかで見たことがあると思えば
男の人族に負けた槍使いですわね」
アレン「・・・こちらも、どこかで見たと思えば
女の人族に負けた神族だったな」
アクア「・・・あら。
ボロ負けしていた方に、言われたくありませんわ」
アレン「・・・負けは、負けだろう。
そんな些細なことに拘るから、負けたのではないか?」
喧嘩を始める2人に気づかれないように
ゆっくりと近づくゴーレム達。
だが―――
アレン「邪魔だっ!!」
アクア「邪魔ですわっ!!」
2人がそれぞれ別方向に居たゴーレムを一撃で倒す。
アクア「・・・これでは、話も満足に出来ませんわね」
アレン「この話は、ゴーレムどもを片付けた後だ」
アクア「不本意ですが、仕方ありませんわね」
その言葉を最後に、2人は別々の方向へと
走っていた。
―――東側第二門前
東側には、普段は使用されない裏口用の門が存在する。
現在は、ゴーレムの侵入を防ぐために閉ざされているが
東側で逃げ遅れた支援部隊は、この門に居る部隊の支援を受け
この裏門を通って脱出する手筈になっていた。
だが―――
魔族男生徒「くそっ!!
誰も居ないのかっ!?
頼む!! 開けてくれっ!!」
門を叩く魔族生徒。
だが門は、一向に開く気配がない。
?「どうしたっ!?
何故、門が開いてないんだっ!?」
後ろから来た魔族が、声をかける。
魔族男生徒「ああ、レイスか。
・・・見ての通りさ。
返事も無ければ門も開かない」
レイス「誰かは居るはずだろうっ!!
誰か門を開けてくれっ!!
このままじゃ全滅するっ!!」
?「ちょっとっ!!
どうして門が開いてないのよっ!!」
後ろからまた1人、魔族生徒が走ってきた。
魔族男生徒「ファナか。
見ての通りだ。
門に誰も居ないみたいで返事すらない」
ファナ「そんなはず無いわっ!!
ここは、中央拠点にも近いし
何かあればスグに誰か見に来るはずでしょ!!」
レイス「落ち着け。
現に開かない以上、どうしようもない」
レイスとファナ。
闘技大会のチーム戦で活躍した魔族5階級コンビ。
彼らも戦ってはいたが、彼らの居たエリアは
もう全滅寸前だった。
退路も断たれた彼らにとって、唯一の逃走経路となるのが
この門だった。
しかし、この門が開かない以上
彼らに逃げ道は、無くなった。
ファナ「落ち着ける訳がないでしょうっ!?
足止めしてるみんなが、もうスグこっちに来るのよっ!?」
魔族男生徒「門が開かない以上、俺達にもう逃げ場はない。
今から壁沿いに進んでもゴーレムの群れの中に
突っ込むだけだからな」
レイス「・・・ここで戦うしかない。
門が開くかどうかなんて関係ない。
もう、ここ以上に戦いやすい場所がない」
魔族男生徒「確かに。
狭い通路なんかは、分断されやすくて
散々だったからな。
門前の広場以上の場所なんて、もうない」
ファナ「誰か居ないのっ!?
門を開けてっ!!」
何度も門を叩くが、一向に返事すらない。
そうしている間にも、足止めを終えて門に駆け込もうとする
集団が到着する。
彼らは、開いていない門を見て愕然としていた。
神族男生徒「くそっ!!
どうして開かないんだよっ!!」
竜族生徒「こうなったら、門を破壊しましょうっ!!
それしかないわっ!!」
レイス「・・・この門は
そう簡単に潰せる代物じゃないぞ。
こんなに厳重な魔法が―――」
ファナ「レイスッ!!
ゴーレムが来たわっ!!」
足止めされていたゴーレムの集団が
ゾロゾロとレイス達に迫ってくる。
レイス「くそっ!!
戦うしかないっ!!」
追い詰められたレイス達は
開かない門を背に、懸命に戦い続けた。
そのころ、中央の拠点付近に発生したゴーレムを倒した小隊が
東門の異変に気づいて向かっていた。
神族女生徒「レア、本当なの?
東門が突破されてるかもしれないって」
走りながらも隣に居るクラスメイトに声をかける神族生徒。
レア「ちょっとおかしいのよ。
突破されてるかもってのは、あくまで可能性の話よ?」
イオナ「でも、一切報告してこない以上は
突破されている可能性もありますよね」
レアとイオナ。
闘技大会のチーム戦で活躍したコンビ。
彼女達は、一向に状況報告をしてこない第二東門がおかしいと
周辺のゴーレム掃討後、こうして独自に確認するために
向かっていた。
神族男生徒「だが、独断で向かっちまってよかったのか?
報告を入れてからの方が・・・」
レア「それだと、もし突破されていたら
周辺の部隊を含めて手遅れになるわ」
神族女生徒「アンタって昔から、そうやって『先生~』って
何でも先生に頼ってたよね」
神族男生徒「そんな昔の話を持ち出すなよっ!!」
レア「ああ、そうだったわね」
イオナ「そうだったんですか?」
神族男生徒「ああ、くっそ。
後輩の前で何て話をしてくれるんだよっ!!」
神族女生徒「残念ながら、イオナちゃんは
レアにしか興味ないんだから気にしても意味ないわよ」
イオナ「べ、別に先輩だけってことは・・・」
レア「あら、イオナ。
私じゃ不満?」
イオナ「そんな訳ないじゃないですかっ!」
レア「やっぱりイオナは、可愛いなぁ」
イオナ「からかわないで下さいっ!」
神族女生徒「さて、そろそろ門が見えてきたわ」
神族男生徒「誰かが戦ってるな」
門に近づくにつれ、爆発音や金属音などが
血の臭いと共に伝わってくる。
そしてレア達が門の前についた時だった。
周囲の物陰に隠れるようにして
多数の生徒が、座り込んでいる。
そして門の向こうでは、誰かが戦っている音がする。
時折、叫び声も聞こえてくる。
レア「どうなってるのっ!?
どうして門を開けないのっ!?」
近くに隠れていた生徒の胸元を掴んで引っ張り上げる。
魔族男生徒「―――だよ」
レア「何?」
魔族男生徒「怖いんだよっ!!
だってみんな喰われていったんだぞっ!!
目の前で、何人も化け物に喰われて
『痛い、助けて』って叫び声を上げながら
生きたまま喰われていったんだよっ!!」
レア「・・・ふざけるなっ!!」
レアは、魔族男生徒を思いっきり殴り飛ばした。
魔族男生徒「お前達は、見たこと無いから言えるんだっ!!
耳に残ってるんだよっ!!
骨を噛み砕く音がっ!
肉を引き裂く音がっ!!
血を吸う音がっ!!!」
レア「そんなの、私達だって何度も見てきたわよっ!!
それでも、怖いのを我慢して必死に戦ってるのっ!!
そんな下らない理由で、仲間を見捨てるなぁぁぁ!!!」
レアは、立ち上がろうとしていた魔族男生徒を
また思いっきり殴り飛ばした。
イオナ「・・・先輩」
神族女生徒「レア、もういいでしょ。
そんな奴を殴っても、どうしようもないわ」
神族男生徒「おいっ!
もうスグ、門が開くぞっ!
準備してくれっ!!」
その言葉に、周囲に隠れていた生徒達は
蜘蛛の子を散らすように、走って逃げていった。
レア「・・・いい?
門が開いたら、周囲の生存者を助けて
スグまた門を閉じる。
門の閉じるタイミングが重要になるわ」
神族男生徒「そっちは、任せとけ」
神族女生徒「いつも通り、レアが突撃。
イオナちゃんがレアの援護。
私は、負傷者の回収ってことで」
レア「それで行きましょう。
じゃあ、お願い」
神族男生徒「よっしゃ、行くぜ!」
掛け声と共に門を開く。
門は、ゆっくりと音を立てながら開いていく。
レア「はぁぁぁぁ!!」
門から飛び出すと、目の前に居たゴーレムを
一突きで倒す。
そのまま戦っている魔族生徒の横からゴーレムに攻撃を仕掛けて
魔力コアを破壊する。
魔族男生徒「・・・あんた等・・・は?」
レア「助けにきたわっ!
急いで後ろに下がってっ!!」
魔族男生徒「・・・遅かった・・・じゃない、か。
俺より、他の連中を・・・助けてやって、くれ」
よく見ると魔族男生徒の身体中に傷があり
大量の血が流れている。
・・・どう見ても助からないことは、すぐにわかった。
周囲には、もう死体ばかりが転がっていた。
全滅かと諦めかけたその時、物陰から門に向かう
人影が現れる。
魔族の1人が、負傷者だろうか、1人を引っ張るように
門へと向かっていた。
途中、神族女生徒が手伝って負傷者を門の中へと
入れることに成功する。
それを見届けると、周囲をもう一度見渡して
生存者が居ないことを確認し、レア達も門の中に避難する。
門が閉まるタイミングも、かなり良かったが
それでもゴーレム達が突進して、滑り込もうとする。
このまま殺到されては、門が閉まるのを妨害されかねない。
イオナが狙撃を続けるも、迫るゴーレム達の数が多すぎて
勢いを止められそうにない。
レアは、決意して門の外に出る。
イオナ「何してるんですか先輩ッ!!」
レア「このままじゃ、この門まで危ない。
だから門が閉まるまで、誰かが外で
あいつらを止めなきゃっ!!」
イオナ「そんなことしたら、先輩がっ!!」
レアを止めようとしたイオナだったが
いつの間にかレアの隣に居た魔族男生徒に
気づいて立ち止まる。
魔族男生徒「これは・・・俺の、仕事・・・だ」
レア「貴方、何を―――」
魔族男生徒「あとは・・・頼む、ぜ・・・」
レアの方を向いて、そう言葉を残すとレアを掴む。
魔族男生徒「うおおぉぉぉっ!!!」
最後の力を振り絞るような声で
レアを門の中へと投げ込んだ。
魔族男生徒「クソ・・・どもめ・・・。
くた、ばり、や・・・がれ・・・」
荒い呼吸のまま、ゴーレム達に向き直る。
いつの間にか手にしていたのは、魔力を込めると爆発する
大きな岩を破壊する時などに使われる魔力石。
魔族男生徒「みんな・・・今・・・逝く、ぜ・・・」
そう呟くと迫ってくるゴーレムの群れの中に飛び込んだ。
その瞬間、魔力石が爆発してゴーレム達ごと粉々になる。
爆風の中、門が完全に閉まる。
レア「・・・結局、ほとんどダメだったじゃないっ!!」
レアは、自分の無力さに苛立っていた。
もう少し早く気づくことが出来れば、もっと多くの命を
助けられたかもしれないと。
神族男生徒「・・・そう自分を責めるな、レア。
お前は、よくやったさ」
イオナ「・・・先輩」
先輩が苦しんでいるのに、どう声をかけていいかもわからず
ただ見ているだけの自分が腹立たしかった。
そんな時、助けた2人の手当てをしていた
神族女生徒が戻ってくる。
イオナ「助かった方は、大丈夫でしたか?」
神族女生徒「・・・イオナちゃん。
今は、行かない方がいいわ」
その言葉と雰囲気に、嫌な予感がして
ふと助けた2人の方を見る。
イオナ「あの2人は、確か・・・」
イオナの見つめる先に、門から助け出せた2人が居た。
しかし―――
ファナ「しっかりしてっ!」
レイス「そんなに・・・騒ぐ、なよ」
レイスの腹部には、大きな穴が開いており
そこから傷口が見えないほど大量の出血をしていた。
起き上がることの出来ないレイスに
ファナが膝枕している状態だ。
ファナ「どうして私をかばったりしたのよっ!」
レイス「・・・好きな、女を・・・護るのに・・・
理由って・・・必要、か?」
ファナ「それでアンタが死んだら、何にもならないじゃないっ!」
レイス「はは・・・それも、そう・・・だな・・・」
ファナ「・・・私も。
私も・・・アンタのことが好き・・・。
・・・大好きなのっ!!
だから・・・お願い・・・死なないでっ!!」
レイス「なんだ・・・そう、だった・・・のか・・・。
・・・余計な、ことを・・・考えず、に・・・
気持ち・・・言えば、よかった、な」
ファナ「今度、買い物に付き合ってくれるって言ってたでしょっ!!
約束破る気っ!?」
レイス「そう・・だった、な」
レイスは、空を見上げて、ゆっくりと手を伸ばす。
まるで空を掴もうとしているかのようだった。
レイス「・・・ああ。
死に・・・たく・・・ねぇ、なぁ・・・」
次の瞬間。
レイスの身体から、力が抜ける。
伸ばしていた手も、地面に落ちた。
ファナ「・・・嘘でしょ。
ねぇ、返事してよ」
軽く揺すってもレイスは、何も反応しない。
ファナ「い・・・いや・・・。
逝かないで・・・逝かないでよっ!
嘘でしょ・・・嘘って言ってよっ!
一緒に買い物行くって言ったじゃないっ!
私達、お互いに好きだって言えたじゃないっ!
・・・私達・・・これからじゃない・・・。
ああ・・・あああ・・・。
あああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!!!」
レイスを抱きしめながら、ファナは
ひたすら泣き続けた。
―――西側エリア
一番手薄なエリアであり、また運が悪いことに
ゴーレムの出現数も一番多いエリアとなったため
死傷者数も、他のエリアと比べて圧倒的となっていた。
和也「うおおぉぉっ!!」
フィーネ「消えなさいっ!!」
リピス「はっ!!」
倒しても倒しても現れるゴーレム達に
西側エリアに配置された生徒や教師達の大半が
既に死んでいた。
生き残っている者も、その殆どが
怪我をしており、満足に戦えない状態だった。
そんな中、常に最前線に居て
周囲の仲間を助けながら戦い続ける3人が
彼らの唯一の希望であった。
魔族男生徒「我らがフィーネ様に続けっ!!」
竜族生徒「勝利の女神に愛されたリピス様が
いらっしゃるのよっ!!
必ず勝てるわっ!!」
神族男生徒「アイツらの仇は、俺が取ってやるっ!!」
怪我をして前に出れない者達も
必死に魔法で援護をしていた。
和也「こいつら、全然減らないな」
フィーネ「それだけ多くの人が犠牲になってるのよ。
・・・最低な連中だわ」
リピス「本当に気分が良いものではないな。
さっさと本命を見つけ出したいところだ」
文句を言いながらも、周囲のゴーレムを倒し続ける3人。
そんな時だった。
?「これは、これは。
こんなところに貴重な素材があるじゃないですか」
暢気な声に、一瞬何が起こったのかと思ってしまう。
?「これでは、落ち着いて話が出来ませんねぇ」
そう言うと、小さな音が鳴る。
すると周囲のゴーレム達は、一斉に攻撃を止めて
声の主の周囲に綺麗に並ぶ。
そこには、見たことのある男が居た。
和也「ヴァイス・・・お前、何やってるんだ?」
そこに居たのは、魔法の血族であり
俺達のクラスメイトであるヴァイス=フールスだった。
第13章 それぞれの戦い ―完―
ここまで読んで頂き、ありがとうございます。
少し予定外に早く文章が仕上がったので
ゲリラ的に投稿してみました。
フィーネ編も、残すところあと少し。
最後を引っ張られても『早く続きを読ませろっ!!』と
なるだけなので、出来るかぎり早めに上げたいとは
思っています。
単行本とかで、物凄く良い場面で『次回に続く』となると
もどかしくなりますからね(笑)
前にも書きましたが、フィーネ編で本作が終了とは
なりません。
実は、まだまだ続きます。。。
それでは、私は次話製作に入らせて頂きますので
このあたりで失礼します。