Tiny Dungeon Another Story   作:のこのこ大王

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第14章 黄金の翼

和也「ヴァイス・・・お前、何やってるんだ?」

 

 ゴーレム達に囲まれて、俺達の目の前に現れたのは

 魔王の血族、ヴァイス=フールスだった。

 

?「おや?

  この素材の知り合いでしたか。

  それでは、ややこしいですので

  自己紹介をさせて頂きましょうかねぇ」

 

 俺は、ビックリした。

 普段から尊大な男が、こんな奇妙な話し方をするところを

 見たことがないからだ。

 

ダレス「私の名前は、ダレス=ドーレ。

    人は、私を天才魔術師と呼びます」

 

 ヴァイスそっくりの姿形に声をした男が

 そう名乗った。

 

和也「・・・どういうことだ?」

 

ダレス「ああ、そうでした。

    実はですね。

    この肉体の持ち主である魔族と融合して

    この身体を貰った訳ですよ」

 

リピス「融合・・・だと?」

 

ダレス「聞いて下さいますか?

    私の苦労話を・・・」

 

 

 

 

 

 

第14章 黄金の翼

 

 

 

 

 

 

 

 咳払いをしてからダレスと名乗る男は、語り始める。

 

ダレス「初めは、強化兵計画という実験をしていたんですよ。

    人工的に強い兵士を作ろうって話だったんですけどね。

 

    しかし、失敗続きで上手くいかなかったんですよ。

    どうしても人の姿を保ったままというのが

    上手くいかなかった。

 

    でも、そこに拘らなければ素晴らしい作品だったんです。

    なのに上の連中は、あろうことか研究そのものを封印したっ!!

 

    もう少しで、もっと完全なものが出来そうだったんですよっ!

    だから私は、こっそり計画を続けました。

 

    そしてたどり着いたんですよっ!」

 

 男は、天を仰ぎながら両手を大きく広げた。

 

ダレス「初めから完璧な生命体が作れないのなら

    既存の生命体をベースにして、より良いものにすればいいとっ!!

 

    人をベースにして、まずは強化兵計画の成果を利用した

    強化したゴーレムを生成する。

 

    そしてその魔力コアに、制御用の魔法石を埋め込み

    あとは、マジックマテリアルを利用した

    吸収元素を生み出すだけっ!!

 

    これでゴーレムは、喰らった相手の能力や経験を吸収して

    自動進化するっ!!

    そして魔力コアとして利用している魂の一部を刺激して

    強制的に魔法を発動させることも可能となったっ!!

 

    そう、彼らは喰えば喰うほど強くなるっ!!」

 

 非道な研究成果を、誇らしげに語る男。

 その満面の笑みに狂気を感じる。

 

ダレス「しかも、最近になって吸収元素の操作が可能になりましてね。

    なんとっ!!

 

    こうして吸収した相手の姿形を真似ることも

    出来るようになったんですよっ!!」

 

和也「・・・じゃあヴァイスは」

 

ダレス「はい。

    私が喰らいましたよ」

 

和也「お前・・・」

 

ダレス「おっと、勘違いなさらないで下さいよ。

    この魔王の血族様は、自分から実験体に志願なさったのですから」

 

和也「どういうことだ?」

 

ダレス「何でも、もっと力が欲しいとおっしゃっていましてね。

    それでご協力して差し上げたのですよ。

 

    現にほら、私と共に彼の力が・・・。

    魔王の血族という血の力が、吸収元素によって

    最高の状態になっています」

 

和也「・・・あいつ。

   何てバカなことを」

 

 あれほどの力を持ちながら、安易な力に頼ろうとするなんて

 俺には信じられなかった。

 

リピス「では、このバカ騒ぎも

    お前の仕業ということか」

 

ダレス「はい・・・そうですよ、竜王女様。

    全ては、我が研究のためです」

 

フィーネ「ふざけないでっ!!

     アナタのおかげでどれだけの人が死んだと思ってるのっ!!」

 

ダレス「これは、姫様。

    勘違いをなさっては困ります。

 

    これも全ては、魔族のため。

    世界を魔族が制するための、まあちょっとした犠牲ですよ。

 

    この研究で、アナタの翼だって蘇るんですよ?

    どうです、悪い話じゃないでしょう?」

 

フィーネ「・・・」

 

 フィーネは、魔界では公然の秘密とされているが

 背中に翼を持っていない。

 

 正確には、元々八翼あり将来を期待されていたが

 とある事件で、翼を全て失ってしまう。

 

 そのことで一時は、次期魔王候補から外れたとされる

 声もあったが、彼女は血族が持つ血の力である

 体内にて魔力増幅をする力で、六翼持ちと

 同等以上の魔力量を出せるまでに成長した。

 

 そのためそういった声は、小さくなったが

 未だに『翼の無い魔王など認められない』という

 一部の貴族達からは、良く思われてはいない。

 

ダレス「どうです?

    私に協力して頂ければ

    その願いを叶えて差し上げますよ?」

 

フィーネ「・・・愚問ね」

 

 フィーネが手を上げると、一瞬で炎矢が5本出現する。

 しかも通常よりも大きなサイズだ。

 

 それが全てダレスに向かって飛んでいく。

 しかし―――

 

 バシュ!!

 

 ダレスの目の前で、炎は全て何かにぶつかって消されてしまう。

 

ダレス「やれやれ。

    交渉どころではなさそうですねぇ」

 

 ダレスの周りのゴーレム達が、どんどんと一つに融合し始める。

 

ダレス「では、仕方がありません。

 

    魔王本家のその力。

    そして金竜の能力。

 

    全て私が取り込んであげましょうっ!!」

 

 ダレス本人も、ゴーレム達と融合して

 大きな肉の塊が出来上がる。

 

和也「・・・ちっ。

   やっかいだな」

 

 思わず舌打ちが入る。

 

 肉塊は成長を続け、やがて形が出来上がる。

 

 頭には大きな角が2本生え

 口には鋭い牙がある。

 

 下半身は蛇のようになっていて

 背中には大きな黒い六翼。

 

 手には巨大な儀式兵装の剣。

 周囲の民家が小さく見えるほど大きな巨体。

 

 その圧倒的な存在感に、誰もが言葉を失う。

 

ダレス「どうです、みなさん。

    素晴らしいでしょう、この姿。

    そしてこの力」

 

 そう言うと、下半身部分の後ろの先を

 まるで鞭のように地面に叩きつける。

 

 地面が一瞬揺れて、周囲の民家は崩れ落ちる。

 

フィーネ「ただ大きいだけでしょっ!!」

 

 いつもより魔力を込めた特大の火球が

 ダレスに向かって飛んでいく。

 

 しかし―――

 

ダレス「あはははははっ!!

    その程度では、傷すら出来ませんよっ!!」

 

 火球は確かに命中したが、まったくダメージが入っていない。

 

ダレス「魔法というものは、こうして使うのですよっ!

 

    四属性アローッ!!」

 

 奴が手をかざすと

 

 ファイアアロー

 ウォーターアロー

 ウインドアロー

 アースアロー

 

 これら基本四属性のアロー系魔法が

 全て同時に雨のように降り注ぐ。

 

 しかもアローのサイズが、人と同じぐらいの特大サイズなため

 降り注ぐ範囲全てを破壊し、瓦礫の山へと変えていく。

 

 逃げ遅れた周囲の生徒達も次々と魔法の直撃を受けて

 倒れていく。

 

リピス「これは、無理だっ!!

    生徒達を一度、後ろに下がらせろっ!!」

 

 巻き添えになっている生徒達にこれ以上の被害が出ないように

 一度距離を取らせる。

 

フィーネ「四属性同時だなんて、聞いたことがないわよっ!!」

 

和也「もう何でもありだなっ!」

 

リピス「こうも簡単にありえないことが起きると

    やる気が無くなるな」

 

 翼無しでも圧倒的な魔力で防御するフィーネに

 魔眼を駆使して回避にする和也や

 竜族特有の身体能力で避けるリピス。

 

 ただその場から逃げることしか出来ない

 生徒達からすれば、目の前の化け物も

 リピス達も、そう大差が無いと思えただろう。

 

ダレス「あははははっ。

    逃げ回っているだけでは、私は倒せませんよ」

 

 上機嫌に笑いながら四属性魔法を乱射するダレス。

 

フィーネ「どうしてこんな無茶が出来るのよっ!!」

 

ダレス「なに、簡単なことですよ姫様。

    命と儀式兵装の数です」

 

 化け物の顔が、ニヤっと笑みを浮かべる。

 

リピス「それは、どういうことだ?」

 

和也「・・・まさか」

 

フィーネ「和也、わかるの?」

 

和也「取り込んだ者の能力を奪えるという話なら

   それは何も魔王の血族の力や気麟だけじゃない・・・。

   翼や魔法の属性・儀式兵装も、取り込んでいると考えるべきだ」

 

リピス「・・・なるほど。

    そういうことか」

 

フィーネ「・・・それって」

 

ダレス「いやぁ、人族なのに頭が良いですねぇ。

    ・・・そうですっ!

 

    様々な者を取り込めば、四属性それぞれの使い手なんて

    スグに集まります。

    そして同時に儀式兵装も手に入ります。

    取り込み続けた儀式兵装を、1つに纏め上げれば

    通常ではありえないほど強力な儀式兵装が完成します。

 

    しかも、気麟や翼といったものも融合させ1つとすることで

    これらも、非常に強力な効果を発揮します。

    なので、四属性同時に魔法を放つということも

    今の私には、造作も無いことなのですよっ!!」

 

 天を仰ぎながら、両手を広げて

 自慢そうに語るダレス。

 

リピス「はぁっ!!」

 

 その隙を突いて、近くにあった大きめの瓦礫を

 ダレスに向かって投げつける。

 

 しかし、ダレスに当たる直前

 何か壁のようなものに当たって砕け散る瓦礫。

 

リピス「・・・やはり、気麟か」

 

ダレス「ええ。

    竜族にも随分と『ご協力』頂きましたからねぇ」

 

 魔法・気麟・翼・魔王の血族の増幅能力。

 

 目の前の化け物は、その全てを持っている。

 

和也「まったく・・・どうするんだよ、これ」

 

リピス「奴とて不死身という訳ではないだろう」

 

フィーネ「でも、防御を抜くだけでも

     かなりの威力が必要よ?」

 

和也「問題は、ダメージを入れたとして

   素直にいくのか、どうかだな」

 

リピス「なら、試してみようじゃないかっ!」

 

 そう言うとリピスがダレスに向かって走り出す。

 

ダレス「何をしようが無駄ですよっ!」

 

 大きな強化儀式兵装の剣をリピスに向かって振り下ろす。

 

 その巨大さと重さは、まるで建物が倒れてきたかのような

 衝撃だった。

 

 リピスは、真横に飛んで回避したものの

 その風圧に押し戻される。

 

リピス「くそっ。

    大きいというだけで、既にやっかいだな」

 

和也「動くだけで周囲の建物を潰してるぐらいだからな」

 

フィーネ「なら、近づかなければいいのよっ!」

 

 今度は、フィーネによる魔法攻撃。

 しかしやはりというべきか、気麟によって防がれる。

 

ダレス「その程度の魔法・・・防御魔法を使うまでもありませんね」

 

 そう軽々とダレスは言うが、先ほどフィーネの放った

 特大の火球は、それだけで上級魔法クラスの破壊力があったはずだ。

 

 これが効かないとなると、かなり面倒な話になってくる。

 

 気麟は、魔法とは違うモノであるため

 魔眼で見切ることも出来ない。

 

和也「本格的に打つ手が無くなってきたなぁ」

 

リピス「全員集まれば、何とか出来るかもしれんが・・・」

 

フィーネ「でも、みんなもゴーレム討伐で動けないでしょ」

 

 そう、ここに集まっていたゴーレムだけが融合して

 このダレスが生まれただけの話で

 学園都市の、その他エリアには、まだまだゴーレムが大量に居る。

 

 逆にもし全員が合流したとしても、学園都市に居る全てのゴーレムに

 合流され融合してしまうと、逆に相手が強化されてしまうという

 ことにもなってしまう。

 

 そのため、あまり迂闊なことが出来ないのが現状だ。

 

リピス「とりあえず、一撃入れてみないと

    始まらないな」

 

和也「確かにな。

   俺とリピスで接近しよう。

 

   フィーネは援護を頼む。

   どちらかが接近出来れば、一撃決めるってことで」

 

フィーネ「了解、援護するわ」

 

リピス「和也、遅れるなよっ!」

 

和也「いやいや。

   竜族の全力に追いつける訳ないだろ」

 

 全力で駆けるリピスについて行こうとするも

 周囲のまだ残っている建物や瓦礫を利用した

 立体的で変則的な動きに、いくら普段から身体を

 鍛えているといっても人族である俺が

 ついていけるはずもない。

 

ダレス「いいですねぇ。

    やはり研究素体は、元気がないと」

 

 巨大な儀式兵装が、リピスに向かって振り下ろされる。

 

フィーネ「させないわっ!

     魔力増幅ッ!!

     フレイム・ジャベリンッ!!」

 

 ダレスの一撃が近くに命中するだけでも危険なので

 それをフィーネにけん制してもらう。

 

 血族としての増幅能力を利用した炎槍が

 気麟を抜いて、儀式兵装の横腹に命中する。

 その衝撃で、リピスを狙った一撃が大きく反れる。

 

 それを好機と見たリピスは、正面ではなく側面に

 回り込むために、移動距離を大きく取る。

 必然として相手に立て直す時間を与えることにもなるが

 それを阻止するのが、遅れて駆け込む俺の役目だ。

 

 バランスを立て直そうとしたダレスに

 正面から斬り込む。

 

和也「紅ッ!

   最大出力ッ!!」

 

 大剣と化した紅で、まず気麟に攻撃する。

 

 バチバチッ!っと軽い火花が散ったが

 何とか切り裂くことに成功して

 更にダレスに接近する。

 

ダレス「ほぅ!

    人族の分際で、なかなかやるじゃないですかっ!!」

 

 目標を俺に定めたダレスが

 尻尾を薙ぎ払う。

 

フィーネ「ファイア・アローッ!!」

 

 8本の巨大な炎矢が、ダレスの尻尾の進行方向上に

 突き刺さる。

 

 尻尾で地面に刺さっている炎矢を薙ぐ瞬間

 衝突の衝撃で一瞬、尻尾の動きが遮られる。

 一瞬というべき僅かな時間ではあるが

 それが8回続けば、それは俺にとって

 十分、尻尾を回避する時間となる。

 

 後ろに大きく2度ほど跳躍して尻尾の範囲から

 退避しながら、紅の刀身部分をダレスの尻尾に投げつける。

 

 刀身が刺さり爆発するも

 その一撃を気にしていないかのように

 今度は、自分の背後にまで回り込んでいたリピスの

 迎撃をするために振り返る。

 しかし―――

 

ダレス「ッ!?」

 

 連続で魔法を食らい続けた尻尾が、反転途中に崩れ落ち

 バランスを崩してしまう。

 

ダレス「まだですっ!!

    四属性シールドッ!!」

 

 翼と血族による魔力増幅だろうか

 一瞬で膨大な魔力が集まり

 瞬時に四属性それぞれのシールドが展開される。

 

 そこまでしたとしても、目の前でバランスを崩した時点で

 それは・・・リピスを前にしての致命的な隙となる。

 

リピス「これで、終わりだッ!

    ドラゴン・ブレスッ!!」

 

 竜族が持つ気麟の上位と言われ、金竜しか持っていないとされる

 幻の気麟・・・『金麟』

 

 その金麟を使用したドラゴン・ブレス。

 この威力以上の竜の息吹を放てる竜族など、この世に居ないだろう。

 

 気麟を抜き、翼と血族による魔力増幅をした

 四属性の魔法による盾を吹き飛ばし

 周囲の建物や瓦礫を巻き込み、後ろにあった

 魔法が付与された壁も破壊し、地面すら抉って

 あのダレスの巨体すら宙に舞った。

 

 凄まじい轟音と発光で、目を開けていられない。

 

 そして数秒後、音と光が収まり

 俺は、ゆっくり目をあける。

 

和也「・・・」

 

 そこには街の面影など無かった。

 

 周囲の建物も、瓦礫も、石畳の道も、街の壁も

 すべてが消え去り、目の前には

 土が抉れて大きな穴が開いた地面と

 その場所から地平線へと伸びる破壊の後だけだった。

 

フィーネ「・・・さすが金竜ってところかしら」

 

 さすがのフィーネも、驚いているようだった。

 気麟による竜の息吹なら何度も見たことがあるが

 威力がケタ違いすぎる。

 

 改めて、金竜という存在の恐ろしさを実感する瞬間だった。

 

リピス「はぁ・・・」

 

 よく見ると、大きく開いた穴の前に

 リピスが立っていた。

 

和也「この威力は、凄いな」

 

 俺は、リピスの隣まで移動する。

 

リピス「だからいつもは、使うことが無いのだがな」

 

 さすがに少し疲れたという感じのリピス。

 

和也「しかし、やっとこれで終わったわけだ」

 

?「何が終わったのですか?」

 

 気を抜こうとした瞬間、聞き覚えのある声に

 咄嗟に身構える。

 

 リピスやフィーネ達も、身構えながら周囲を見渡している。

 

 すると、大きな穴の地面からダレスが出てくる。

 

ダレス「・・・さすが竜界最強と呼ばれる金竜。

    素晴らしい力ですね」

 

 左腕を失った上半身だけのダレスが、不敵な笑みを浮かべていた。

 

リピス「まだ生きていたのか。

    案外、しぶといな」

 

フィーネ「でも、そんな姿でどうするのかしら?」

 

ダレス「ふはははっ。

    ご心配には及びませんよ姫様」

 

 あくまで余裕なダレスに嫌な予感がする。

 

和也「フィーネッ!!

   ダレスにトドメを刺せッ!!」

 

フィーネ「はぁっ!!」

 

 俺の声に反応したフィーネが、ダレスに炎槍を放つ。

 だが―――

 

ダレス「無駄ですよっ!」

 

 炎槍がダレスを狙うも、ダレスが右腕を犠牲にして

 直撃を回避する。

 

ダレス「これで終わったと思ってもらっては困ります。

    ここからが・・・私の研究の真髄ですっ!!」

 

 ダレスの身体が急に再生を始める。

 しかも物凄い速さで。

 

 3人とも言葉を一瞬失っている間に

 ダレスは、完全な姿に戻る。

 

ダレス「どうです、みなさんっ!

    これこそ、吸収元素の力ですっ!!」

 

 まるでゴーレムの再生を見ているようだが

 その再生速度が尋常じゃない。

 

リピス「・・・ちっ」

 

 思わずリピスも苦い顔をして舌打ちをしている。

 竜の息吹は、その性質上

 一度使用するとしばらく撃てないどころか

 通常の気麟すら一時的に使用出来なくなる。

 そしてそれは金麟も例外ではない。

 

和也「・・・くそ」

 

フィーネ「・・・」

 

 あれだけの再生速度なら、もう奴を完全に消し去る必要がある。

 しかも・・・一撃で、だ。

 

 リピスでも、半分ほど残っていた。

 金麟の回復を待ってフィーネとの同時攻撃で

 はたして、完全に消し去ることは可能なのか?

 

ダレス「金麟を一定時間使えなくなった金竜に

    翼の無い魔王の血族と

    儀式兵装を持たない人族ですか。

 

    そんな者達で、私に勝てるとまだ思っているのですか?」

 

 対してダレスは、余裕な表情に戻っている。

 まだまだ力は、ありそうだ。

 

ダレス「せっかく金竜の一撃を見せて頂いたのですから

    お返しをしないといけませんねぇ」

 

 そう言うと両手を空に向けて大きく広げる。

 

ダレス「さあっ!

    いきますよっ!!」

 

 翼・血族の力で魔力が増幅され

 儀式兵装によって形を得る。

 問題は、魔力量だ。

 これまでのがお遊びだったというような

 ケタ違いの魔力量が集まりだす。

 

 ダレスの目の前に巨大な魔方陣が現れる。

 

和也「―――ッ!!!」

 

 魔眼でそれを確認した瞬間

 胸を握りつぶすかのような魔力量の圧力と

 これから何が起きるかの想像がつく。

 

和也「リピスッ!!

   フィーネッ!!

 

   魔方陣の射程から、出来るだけ離れろぉぉぉぉぉ!!!」

 

 全力の声を出し、そして俺自身も走る。

 リピス達も、俺の言葉で何かを察したのだろうか

 全力で魔方陣の前から逃げる。

 

ダレス「これぞ・・・神の一撃ッ!!!」

 

 魔方陣の中で圧縮され続けた魔力が

 ダレスの声と共に放出される。

 

 その光に音など無かった。

 ただ学園都市のほぼ中央を、分断するように

 駆け抜けていった。

 

 そして、光の通った場所には

 文字通り何も残らなかった。

 

和也「・・・」

 

 まるで何かで綺麗に切り取ったかのように

 その部分だけ消えていた。

 

 運良くフォースに直撃しなかったものの

 フォースの外側の城壁が一部範囲内だったため

 消えていた。

 

 あの城壁は、軍事拠点の城よりも強力だと

 言われているほど強固な壁だったのに。

 

ダレス「あはははははっ。

    そうですっ!!

    私こそが神っ!!」

 

 上機嫌で笑うダレス。

 

リピス「これは・・・どうしたものか」

 

フィーネ「・・・冗談じゃないわ。

     何が神よっ!!」

 

 こいつを今ここで倒さなければ

 俺達に未来は無いだろう。

 

 しかし、こちらの全力で倒しきれなかった以上

 何か対策をしなければならない。

 

 セリナ達と合流するか?

 いや、北側に移動したら

 今度は北側の連中を巻き込むどころか

 あっちのゴーレムと合流されてしまう。

 

 亜梨沙達では、正直火力が足りない。

 火力で言えば、王妃達か?

 いや、2人が同じ場所に居てくれればよかったが

 2人は位置的にも大きく離れている。

 

 どの道、俺達がこの場を離れれば

 目の前の化け物による都市の破壊が加速する。

 

 援軍が来る様子もない。 

 正直、打つ手が無い。

 

 ここまでなのか?

 そんな想いも過ぎるが、諦めるつもりはない。

 俺は、皆を守るために努力してきた。

 それを自分で否定することだけは、絶対にない。

 

 あるはずだ。

 この状況をひっくり返せる何かが。

 

 ・・・どこだ。

 

 考えろっ!

 探せっ!

 

 お前の力は、こんなものかっ!!

 そう自分で自分を励ましていた瞬間だった。

 

和也「・・・俺の・・・力・・・」

 

 そのワードに何かが引っかかる。

 

 ・・・・・・・・。

 ・・・・・。

 ・・・。

 

 懐かしい記憶と共に思い出される過去。

 そして・・・

 

 フィーネと目が合うと彼女も同じことを

 考えていたのだろうか。

 こんな状況にも関わらずこちらに笑顔を向けた。

 

 そして俺の目の前まで来ると、俺の両手を

 握り締めてきた。

 

フィーネ「やっと、アナタの役に立てるのね」

 

和也「・・・俺は、そんなつもりで

   君を助けた訳じゃない」

 

フィーネ「・・・違うわ。

     これは、私がしたいことなの。

     大好きなアナタのために、やりたいことなの」

 

和也「・・・フィーネ」

 

フィーネ「お願い、和也。

     私に力を貸して」

 

和也「・・・はぁ。

   絶対に無理だけはするなよ」

 

フィーネ「ええ、もちろん」

 

 そしてフィーネは、こちらに背中を向ける。

 

 俺は、その背中に手で触れる。

 手に『懐かしさ』と『熱さ』が伝わってくる。

 

和也「我が手に力を」

 

 俺がそう呟くと、フィーネの背中が一瞬だけ光る。

 

フィーネ「じゃあ、行ってくるわ」

 

 そう言ってフィーネは、ダレスの正面に出る。

 

ダレス「ふはははははっ。

    そろそろお遊びもここまでです。

 

    姫様方を揃って吸収し

    私は、より完全な神へとなるのですっ!!」

 

リピス「・・・ふん。

    神とは、愚かだな」

 

フィーネ「ええ、そうね。

     ダレス、貴方はただの化け物よ」

 

ダレス「何とでも言って下さい。

    どの道、姫様方は、ここで終わりなのですから」

 

フィーネ「終わるのは、貴方よ」

 

 フィーネの足元に巨大な魔方陣が展開される。

 周囲に膨大な魔力が集まりだす。

 

 その量が急速に増加し続け、やがて先ほど

 自分が使用した魔方陣の魔力を超えもなお

 魔力の集まる速度も、その量も衰えるどころか

 更に加速している現実に、ダレスも驚愕の顔をしていた。

 

ダレス「・・・一体、何なのです。

    この力は、どういうことですかっ!」

 

リピス「・・・魔王の血族としての力だけではない。

    何だ、この魔力量は・・・」

 

フィーネ「これが、私の本当の力」

 

 フィーネの背中から、ゆっくりと『何か』が出てくる。

 

ダレス「バ、バカなっ!!

    姫様は、確かに失ったはずっ!!」

 

リピス「しかも、あの色は・・・」

 

 フィーネの背中に現れたのは

 彼女が失ったとされる八翼。

 

 しかも、黄金に輝く光翼だった。

 

 

 

 

 

 

 

第14章 黄金の翼 ―完―

 

 

 

 

 

 




まずここまで読んで頂きありがとうございます。

フィーネ編も残すは、後1話となりました。
最後は、連続で投稿したいので
数時間後には最終話も投稿させて頂く予定です。

・・・間に合うと良いな(切実)。

あと、違う場所から前回までの感想を頂きました。
『死んでいったキャラ達に救いを』というお便りですが
これに関しては、既に考えていることがありますので
今後続く物語と共に、お待ち頂けるとその内に・・・。

それでは、大至急製作に戻ります。。。
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