Tiny Dungeon Another Story 作:のこのこ大王
第10章 もう一人の金竜
俺は、大きく深呼吸をした。
そして―――
?「なかなか、面白いことをしているようだな」
後ろから聞きなれた声が聞こえ、思わず後ろを振り返る。
そこには、竜界の王女リピス=バルトが居た。
和也「どうして、ここに・・・」
リピス「少し様子でもと思っていたんだが・・・。
どうやら思わぬ当たりを引いたようだな」
第10章 もう一人の金竜
ゴーレム「グアァァ!」
周囲のゴーレム達が集まりだす。
皆、警戒しながらも少しづつ近づいてくる。
リピス「さて・・・。
メリィ、やってしまえ」
後ろに声をかけると、そこにはいつの間にか
儀式兵装を装備したメリィさんが、そこに居た。
左手のみに巨大な手甲が装備されている。
メリィ「では、離れていて下さいねぇ♪」
左手を前へと突き出すと
巨大な手甲が変形して魔導砲形態となる。
メリィ「いやっほ~ぃ♪」
軽い声と共に発射される魔導砲。
ゴーレム達を光が飲み込み、大爆発を起こす。
非常に大きな衝撃と共に
丘が吹き飛んだ。
和也「一撃・・・かよ」
たった一撃で数十体居たゴーレム達が
丘ごと消し飛ぶ、その威力に驚く。
リピス「ちゃんと加減はしろと言っただろうに」
メリィ「ちゃんとしましたよ。
現にほら」
指を指す方向に再生しようともがくゴーレムが
1体だけ居た。
腕が生え、その腕が魔導砲のような形を取ろうとしたが
メリィ「ダメですよぉ♪」
腕を踏みつけて破壊するメリィさん。
そしてそのまま魔力コアだけを取り出す。
リピス「それを徹底的に調べておけ」
メリィ「はい、リピス様」
彼女は、そう返事をすると
特殊な機材をどこからともなく取り出し
魔力コアを封印する。
和也「・・・いつも思うんだが
あの人ってどこから色々出してるんだろうな」
よく何も無い所からティーセットが出てくることがある。
手には何も持っていなかったはずなのにと毎回思う。
リピス「まあ、考えたら負けって奴じゃないのか?」
和也「・・・そんなもんかねぇ。
で、結局あの化け物は何なんだ?」
リピス「よく解らんから、捕まえることにしたんだよ」
和也「なるほど・・・解ったら俺にも教えてくれ」
リピス「確約は出来んが・・・。
まあ可能なかぎり、そうしよう」
結局奴らが何なのかが解らず
うやむやのまま、寮に戻ることになった。
次の日。
実戦訓練で、ちょっとしたイベントがあった。
和也「ランダム戦・・・ねぇ」
今日は、2階級合同で実戦訓練が行われる予定だったが
その内容が、色々と問題だ。
それぞれが、くじを引いて
そこに書かれた番号順に、スタートエリアから
1人で地下迷宮へと入っていく。
途中の広場で別の入り口から来た奴と
出会うようになっていて、出会った奴と
ペアを組んで迷宮を攻略するという内容だ。
そこで問題なのは、俺が人族だという点。
亜梨沙もそうだが、俺達がヴァイスなどと
ペアだったりしたら大変なことになる。
そんな不安と共に、くじを引いて迷宮に入る。
そして広場に出た瞬間―――
?「みつけたっ♪」
気の抜けるような声と共に
何かが飛び込んできた。
迷宮内が薄暗いこともあるが
殺気も気配も感じない、その見事な動きに
思わず避ける動作を忘れてしまい
抱きつかれる。
?「はぁ・・・これが殿方の温もりなのですねぇ」
気づけば、見知らぬ娘に抱きつかれていた。
目の前に彼女の頭があり
そこから耳がピコピコを動いているのが見えるため
何とか彼女が竜族だということは理解出来た。
和也「・・・え~っと。
とりあえず離れてもらえると助かるんだが」
?「ダメですよ。
離れたら、この温もりが無くなってしまいます」
和也「う~ん・・・」
フィーネの時は、彼女だと解っていたからよかったが
今回は、まったく心当たりもない。
それに、まだ顔すら見えない彼女だが、意外と胸が大きいようで
結構な感触が伝わって・・・
和也「・・・おっと。
そろそろ色々ヤバイので
一度、向かい合って話をしよう」
?「もぅ、意外とワガママさんなんですねぇ。
・・・そこも可愛いですけど」
ようやく離れてくれた竜族の娘。
これでやっと彼女の顔が見れた。
・・・とても可愛い娘だった。
和也「(こんな娘なら、一度会ったら忘れないと思うんだがな)」
悩んでいても仕方が無い。
思い切って聞いてみることにした。
和也「・・・こう言っては悪いんだが
キミに会った記憶がないんだよ」
?「それは、そうですよ。
私が一方的に、アナタを知っているというだけです」
その言葉を聞いて、一瞬ホッとする。
とりあえず忘れていたという展開では、なさそうだ。
?「そう言えば、自己紹介がまだでした」
そう言うと彼女は、少しだけ距離を取る。
おかげで丁度、明かりの前に立ってくれる形となり
彼女の姿がハッキリと見えた。
美しいと可愛いの、真ん中と言えるような
綺麗な顔立ちに、金色の長い髪が特徴的だった。
和也「金色の・・・髪?」
竜族は、金竜以外で髪の色が金色になることはない。
だからこそ、金竜と言われる元となったと、聞いたことがある。
イリス「私は、イリスと申します。
よろしくお願いしますね、和也様」
丁寧な挨拶で深々と頭を下げるイリス。
和也「とりあえず、『様』は止めてくれ」
イリス「では、どうお呼びすればいいのでしょう?」
和也「和也でいいよ」
イリス「・・・和也」
和也「そう、それでいいよ」
イリス「和也・・・和也・・・和也」
まるで何かを言い聞かせるように何度も
俺の名を呟く少女。
和也「とりあえず色々と聞きたいんだが・・・」
イリス「はい? 何でしょう?」
和也「キミのその髪の色は、金竜ってことでいいのか?」
イリス「・・・イリスです」
和也「え?」
イリス「私のことは、イリスと呼んで下さい」
和也「・・・イリス。
金竜だけと言われる金色の髪をしているが
それは、金竜だということか?」
イリス「そうですよ。
私は、金竜です」
和也「・・・確か金竜は
リピスを残して死んでいるはずだ」
イリス「その話は、また今度。
今は、デートしましょう。
デートです」
そう言うと強引に腕を組んで歩き出す。
和也「お、おい!
まだ話は・・・」
イリス「いつまでもここにいては、ダメです。
だからデートです」
まるで取り付く島も無い。
そして始まる彼女曰く『デート』
腕を組んで、まるで恋人同士のように歩くが
薄暗い迷宮内では、デートという雰囲気よりも
何か出そうという雰囲気の方が強いと思える。
だが、いくら進んでもモンスター1匹たりとも
出てこない。
確か今回は、かなりの量を出したと聞いていたのだが・・・。
イリス「どうしました?」
和也「・・・何でもない。
いや、あるのか。
キミは、一体何者なんだ?」
イリス「私のことより、和也の話が聞きたいです」
・・・こちらの会話が成立しない。
イリス「何が好きで、何が嫌いで、普段はどういうことを
しているとか・・・聞かせて下さい」
かなり一方的ではあったが、俺のことばかり聞くイリス。
1つ知るたびに笑顔で喜ぶ彼女を見ているかぎり
悪い娘ではないのだろうとは思う。
そしてまったく何事もなく
迷宮の出口まで来てしまう。
イリス「はぁ・・・。
愉しい時間は、一瞬で終わってしまいますねぇ」
心の底から残念という表情のイリス。
和也「キミは―――」
俺が言葉を発した瞬間だった。
イリス「ん―――」
俺の口を彼女の唇が塞ぐ。
突然のことに思考が停止する。
イリス「初めてのキス・・・素敵でした」
顔を赤らめて恥らう彼女に
思わずドキッとしてしまう。
イリス「名残惜しいですが、今日はこれで。
・・・また、必ず会いましょうね」
そう言い残すと、迷宮の暗闇の中へと
消えるように姿を消した。
和也「・・・」
唇にまだ残る彼女の肌の温もりを感じながら
しばらく放心していた俺だが
捜索隊の出現で、一気に熱が抜ける。
どうやら俺の本来ペアになる予定だった
神族生徒が何者かに襲われて
重症を負ったそうだ。
判定ネックレスで回復した直後に
もう一度攻撃されたようで
かなりひどい状態らしい。
俺は、迷宮内で不審者を見たことを話したが
特徴全ては伝えなかった。
何故なら、あんなにも楽しそうに
少女らしい一面を見せていた彼女が
そんなことをしたと信じたくなかったのだろう。
まずリピスに確認してみよう。
金竜のことなら彼女が知らないはずもないだろうし
後で聞きに行こう。
だが、これが全ての発端となる。
昼休み。
さっそくリピスに尋ねてみる。
リピス「私の他に金竜が居るかだと?
何故、そんなことを聞く?」
俺は、迷宮内で出会った少女について話をした。
リピス「・・・見間違いではないのか?」
和也「確かに少し薄暗い場所だったが
明かりの前に立った時に、ちゃんと確認したよ」
メリィ「・・・ですが、金竜は
リピス様以外・・・もう居ないのです」
リピスの両親も大戦争で死んでいる。
元々金竜は、一族そのものが全滅していて
リピス達以外は居なかった。
そこで両親が死んでしまった以上
生き残りは、リピスだけだとなる。
和也「・・・見間違い・・・だったのかなぁ」
しかし、あの鮮やかな金色の髪は
今でもハッキリと思い出せる。
リピス「そこまで言うなら、少し調べてみるか」
メリィ「では、手配しておきましょう」
その時は、それで会話が終了した。
リピス達からすれば、ありえない話である以上
聞き流されるだろう話ではあったが
俺の中では、彼女の姿が・・・。
その声が鮮明に記憶に残っているのだった。
和也「・・・彼女は、いったい」
そんなモヤモヤとした気持ちを抱えたまま
夜を迎える。
いつもの丘は、メリィさんの一撃で荒地と化していたが
まあ剣を振るぐらいには、困ることはない。
いつも通りの訓練をしている最中だった。
近くの茂みから、こちらをジッと見る気配を感じて
声をかける。
和也「・・・誰だか知らないが
何かあるなら、出てきたらどうだ?」
?「あらら。
見つかってしまいました」
茂みから出てきた人影が、月の光に照らされる。
イリス「えへへっ・・・きちゃったっ♪」
可愛らしい笑みと共に、彼女が現れた。
和也「・・・キミに聞きたいことがある」
イリス「・・・イリスって名前で呼んでくれないと
何も答えません」
そう言っていきなり拗ねる彼女。
和也「・・・イリス。
教えて欲しい。
キミは、一体何者なんだ?」
イリス「前に言った通りですよ。
それに、私は私です。
それ以上でもそれ以下でもありません」
そう言いながら腕を組んでくるイリス。
イリス「そんなことより、また和也の話が聞きたいです。
・・・ダメですか?」
上目遣いで、こちらの顔色を伺うイリス。
きっと彼女とは、もっと長く時間をかける必要があるのだろう。
和也「・・・そうだなぁ」
俺は、一旦追及を諦めて無難な会話をすることにした。
事を急いで、下手に彼女が手元から居なくなられる方が
後で色々と困ることにもなる。
結局、訓練を中止して
彼女との会話をすることにした。
相変わらず気になったことは、その場聞いてきたり
1つ何かを知ると笑顔で喜んだ。
その姿は、子供のようだった。
イリス「・・・あら。
もうこんな時間ですか」
夜も深まり、そろそろ深夜という時間となると
彼女の方から会話を終了してきた。
イリス「名残惜しいですが・・・今日は帰ります」
帰ると言った彼女だったが
正面から抱きついてきて―――
イリス「ん・・・ちゅ・・・はぁ・・・」
少し長めのキスをされた。
イリス「じゃあ和也。
また会いましょうねっ♪」
やることをやりきった彼女は
あっさりと引き下がり、姿を消した。
和也「・・・」
フィーネやエリナのおかげ?で
急に抱きつかれたりすることには慣れてきたのだが・・・
キスは、わかっていても避けれない。
そこが男の悲しいところでもある。
和也「だって・・・あんなに可愛い娘だぞ?」
誰に言い訳しているのか、わからないが
一人でひたすら言い訳をしていた俺は
半ば放心状態で、寮へと帰るのだった。
第10章 もう一人の金竜 ―完―
まず、ここまで読んで頂きありがとうございます。
この回から竜族編になります。
基本的には第9章からの派生物語ですが
色々と最終的な展開もありますので
気長に読んで頂けると、ありがたいです。