Tiny Dungeon Another Story 作:のこのこ大王
突然の爆発音。
突如襲ってくるゴーレム達。
男子寮は、まさに大騒ぎだった。
ゴーレム「グオオォォォ!!」
暴れまわるゴーレム達に、近くに居た生徒達が応戦する。
神族男生徒A「何だこいつらはっ!?」
魔族男生徒A「とりあえず倒すのが先だっ!!」
ゴーレムに向かって2人とも魔法を放つ。
だが、ゴーレムに直撃するもまるで何かに弾かれるように
魔法が効かない。
神族男生徒A「くそっ!!
魔法が弾かれたぞ」
魔族男生徒A「何なんだ、こいつらはっ!?」
ゾロゾロと寮に侵入してくるゴーレム達。
だが、生徒達も集まってくる。
神族男生徒B「おい、どうしたっ!?」
魔族男生徒B「何があったっ!?」
ギル「おいおい、こりゃ何の騒ぎだ?」
アレン「・・・騒がしいな」
ヴァイス「煩いぞ、お前らっ!!」
そして同じく女子寮でも
ゴーレム達の襲撃があった。
しかし―――
神族女生徒A「とりあえずこっちに置いておくわ」
魔族女生徒A「そこのテーブルこっちに持ってきてっ!」
竜族生徒A「まだ寝ぼけてる人は、こっちで顔を洗ってっ!!」
アクア「女子寮を狙ったことを後悔させてあげますわ」
レア「人の安眠を妨げた罪は重いわっ!!」
イオナ「先輩・・・結構元気ですね」
フィーネ「とりあえず全員叩き起こしたわよ」
エリナ「1階の避難も完了したよ~」
セリナ「あとは迎え撃つだけですね」
亜梨沙「兄さんは大丈夫でしょうか・・・」
エリナ「和也なら、きっと大丈夫だよ」
セリナ「そう言えば、リピス達が居ませんね」
フィーネ「彼女達こそ大丈夫でしょ」
本来なら女子寮も奇襲同然に襲われるはずだった。
しかし、対男子用の侵入警戒網にゴーレム達が引っかかったため
こうして事前準備をする時間が稼げているのだ。
ミリス「はたして、それを喜ぶべきなのか。
悲しむべきなのか。
迷ってしまいますよね」
ミリスの言葉に、周囲の生徒達は一斉に頷く。
ゴーレム「グルァァァァ!!」
叫び声と共に玄関扉を破壊して侵入してくるゴーレム達。
セリナ「さあ、迎え撃ちますよっ!!」
そして生徒達とゴーレム達の壮絶な戦いが始まった。
だがそのころ、街では一方的な殺戮が起きていた。
市民A「た、助けてくれぇぇぇ!!」
市民B「いやぁぁぁぁ!!」
市民C「こ、殺さないでくれぇぇぇ!!」
戦う力を持たない街の人々は
ただ逃げ惑うしかなかった。
騒ぎに気づいた学園の教師達と
たまたま2人で酒を飲んでいた神王妃と魔王妃。
彼女達は、それぞれに街に出て市民を助けるも
この学園都市は広すぎる。
とてもではないが人数が足りない。
圧倒的なまでに後手となってしまい
被害だけが拡大していく。
第14章 届かぬ想い
夜の暗闇の中、火花が散って
一瞬だけ周囲を照らす。
響く金属音。
2つの影が動く。
動きながら2つは、何度もぶつかる。
時折、その衝撃に耐え切れず
草むらは刈られ、木々が倒れる。
風を切り裂く音と共に迫る爪を
ギリギリのところで回避して、紅を振るう。
しかし、バチッっという音と共に
弾かれてしまう。
その瞬間を狙った蹴りが来るも
後ろに大きく跳躍して回避する。
和也「はぁ・・・はぁ・・・」
何度も攻撃を仕掛けるも
和也はイリスを止めるどころか
一撃入れることすら出来ていない。
和也「金麟を・・・何とかしないと・・・」
何度も攻撃を仕掛けるが
全て金麟によって受け止められてしまっている。
ただでさえ、こちらは一撃もらえば即アウトの状況で
かつ、相手の方が圧倒的に身体能力が上な状態だ。
精神力がジリジリと削られているのが、わかる。
イリス「ラララ~♪
ランララ~♪」
対して相手は、歌を歌いながらこちらに
近づいてくる。
疲れている様子など、まったくない。
初めから竜族相手に長期戦を挑めば
こうなるとわかっていたため、短期決戦のつもりで
戦ったのだが、金麟の予想以上の堅さをどうすることも
出来ず、こうして時間だけが過ぎてしまっている。
和也「せめて、魔眼で金麟を見切ることが出来れば・・・」
魔眼という便利な能力に頼り過ぎないように
普段から頼らないと自身に言ってきたくせに
ピンチになると、こうも頼ってしまう自分が情けない。
自分の強さは、所詮持って生まれた特殊な能力のおかげに
過ぎないのではないかと思えてしまう。
和也「・・・はっ。
らしくないな」
そんなこと、昔からずっと色々考えてきたことだ。
手にした力である以上、それと上手に付き合っていくと
決めたはずなのに・・・。
イリス「・・・和也。
私ね、あまり時間がないの」
和也「・・・」
イリス「街とかぜ~んぶ壊しに行きたいから
・・・そろそろ本気でいくね?
痛いのは、男の子だし我慢出来るよね?
だって私の王子様だもんっ♪」
彼女の周りに風が吹く。
その瞬間、魔力の高まりを感じる。
和也「ここで、更に魔法かよ・・・」
今まで魔法を使ってこなかったから
もしかして魔法が使えないのではという
甘い期待が砕け散る。
だが―――
和也「魔法を使ってくれるなら、まだいける」
そう、俺にはこの力。
魔眼がある。
和也「・・・魔眼、開放」
見える景色に魔法という色が加わる。
その色は、イリスが何をしようとしているのかを
俺に教えてくれる。
イリス「アースジャベリンッ!」
竜族は、本来魔法との相性が悪いため
攻撃魔法が使えない。
これはいかに金竜といえども同じだ。
実際、リピスも使えない。
しかし、目の前の金竜はその常識を超えてきた。
だが、魔眼で先にそれを知った俺に
動揺はない。
それに彼女なら、何をしてきてもおかしくないと思えるからだ。
迫る土槍を紙一重で避けながらイリスに近づく。
イリス「凄いね、和也ッ!
だけど―――」
和也「それは既に見切っているっ!!」
足元から出現して四方を囲もうとしたアースウォール。
既にそれを使うことを『知っていた』俺は、更に加速して
範囲から抜け切る。
そのままイリスの正面まで来た俺は
和也「これならどうだっ!
紅、最大出力ッ!!」
紅の魔力を最大限に放出して大剣状にする。
そしてそのまま剣を横に薙ぐ。
バチバチッ!!
ガキンッ!!
イリス「―――」
紅の一撃をイリスは右手のトンファーで受け止めている。
これがダメなら本当に打つ手が無い所だった一撃。
そして金麟を抜いたこのチャンスを逃がす訳にはいかない。
その場でクルっと一回転して遠心力をつけた一撃を放つ。
それを左の爪を開いて、紅の刀身を掴んで止めるイリス。
だが―――
イリス「・・・え?」
掴んだ瞬間に感触が無くなる左手。
和也は掴まれた瞬間に刀身を消して
そのままイリスの前で大きく踏み込んで
紅を振り下ろす。
イリスは、刀身の無い剣にも関わらず
右手のトンファーで受け止める体勢を取る。
ガキィン!!
トンファーに当たる直前で、刀身が再構成され
紅とぶつかり音が響く。
和也「いっけぇぇぇぇぇぇ!!!」
両手に込める力を更に強めて一気に押し込む。
同時に再度、紅を最大出力状態にして威力を上げる。
イリス「くっ・・・」
片腕だったとはいえ
人族相手に力で押し負けると思っていなかったイリスは
後ろに吹き飛ばされる。
空中で体勢を立て直して着地するイリス。
だが、目前には既に和也が走りこんできていた。
和也「まだまだっ!!」
せっかく流れがこちらに来たのだ。
このチャンスを逃す手はない。
イリス「アースジャ―――」
和也「遅いっ!!」
出現した土槍を斬りながらイリスに紅を振り下ろす。
それを横に飛ぶような速さで避けるイリス。
和也の背中を取ったイリスは
隙だらけになった背中へ、そのまま左手を前へ突き出す。
しかし和也は、そう来ると予想し
そのまま身体を捻って回避しながら
今度は、イリスの側面へ『旋風』を放つ。
それは、確実に決まるタイミング。
金麟を抜けるようにと紅は、最大出力。
決まったと思われた一撃。
和也「―――なッ!?」
空を斬る攻撃。
何の手ごたえもなく、振り抜いた一撃。
それもそのはず。
紅に・・・刀身はついていなかった。
咄嗟に跳躍して距離を取る。
イリス「あら?
どうしたの?」
暢気な声でこちらの様子を見るイリスを
警戒しつつも、手に持つ紅を確認する。
和也「・・・ちっ」
思わず舌打ちをする。
何度もイリスの儀式兵装に刀身を削られ
更に最大出力で振り回してた結果だろう。
予想以上に早く、紅の魔力が切れ
使用不能になってしまった。
和也「・・・タイミングが悪すぎる」
そう愚痴りながら、紅を片付けて
鬼影を抜く。
正直、鬼影は対魔法用であって
気麟を抜けるような代物ではない。
手持ちのマジックナイフもリピス相手に
試して、金麟を抜けないことは実証済みだ。
つまりこの時点で、金麟を抜く手段を
失ったことになる。
そして、この瞬間から
戦いは、一方的なものになってしまう。
攻撃が通じない相手に攻撃をしても意味はなく
相手も避ける必要のない攻撃をわざわざ避けることはない。
ひたすら相手の攻撃を避けることしか出来ず
逃げ回るしか出来ない状況が苦しい。
イリス「ねえ、和也。
さっきみたいに攻撃してこないの?」
イリスの言葉を聞き流しながら
必死に頭を働かせるが、打開策が見つからない。
攻撃を回避してカウンターを入れても
やはり金麟に阻まれる。
それどころか、時間と共に体力差が出始め
イリスの動きについていくことが出来なくなってくる。
こうなると、直撃をもらうのは時間の問題だ。
それが解っているだけに、余計に焦ってしまい
考えがまとまらない。
避けきれない攻撃が増え、受け止めることも出来ないために
何とか受け流すも、やはり衝撃を完全に殺しきれない。
全身に少しづつ蓄積していくダメージ。
そして攻撃を受け止め続ける鬼影も、このままではもたない。
誰が見ても絶体絶命だった。
しかし、それでも俺は剣を構える。
和也「ここで逃げたら、俺はきっと一生後悔する」
逃げるという選択肢は、初めから無かった。
ここでもし自分の命を惜しんで逃げたら
彼女を助けることが出来ないどころか
自分自身が許せなくなる。
和也「俺は、もう逃げたくない。
もう、あんな想いはしたくないんだ」
ゆっくりと瞳を閉じる。
自分の母親を手にかけた記憶が蘇る。
あんな想いは、二度とゴメンだ。
もう打つ手がない以上、俺が最後に頼れるのは
一つだけだ。
やはり・・・俺はまだ未熟だと言うことか・・・。
和也「・・・魔眼よ。
一瞬だ。
一瞬だけでいい。
俺に金麟を見せてくれ。
俺は、彼女を助けたいんだ。
今後もう使えなくなったって構わない。
今だけでいい。
・・・頼む。
俺に力を貸してくれ・・・ッ!!」
そしてゆっくりと瞳を開ける。
和也「・・・魔眼、完全開放ッ!」
全力の魔眼により、ほんの少しの魔力ですら
明確な色をもつ。
イリス「本当に、時間が無いの。
そろそろ終わりにしましょう、和也」
イリスは、まるで投げられた槍のように
鋭く一直線に、こちらに迫ってくる。
左腕が上から振り下ろされるも
魔眼にその色は見えない。
横に移動して避けると、今度は蹴りが来る。
それを上半身を後ろに引いて避ける。
今度は、右手の一撃が迫ってくるも
蹴りを合わせて勢いを殺しながら横に流す。
一旦距離を取ろうとするも、竜族相手では
それも不可能だ。
一撃が全て必殺に見えるほど強力な攻撃が
連続で襲い掛かってくる。
魔眼は、未だに金麟を捉えることは出来ない。
そして何度目かの攻撃を回避した瞬間だった。
和也「―――ッ」
イリスの一撃を避けきれず
防御で受け止めてしまう。
当然防御しきれるわけもなく、吹き飛ばされる。
和也「・・・ぐっ」
全身が痛みで悲鳴を上げている。
だが、立ち上がらなければ終わってしまう。
必死になって身体を動かし、立ち上がる。
ゆっくりと近づくイリス。
俺は、剣を構える。
和也「俺は・・・諦めないッ!」
一瞬で距離を詰めてきたイリス。
その攻撃の瞬間―――
イリス「―――え?」
和也「―――っ!?」
イリスの速度を重視した
左手の爪を前へと突き出した一撃。
金竜の身体能力が、その一撃を
まるで槍の一突きのような鋭さへと
変化させる。
だが、その動きをまるで知っていたかのように
完璧な回避を見せる和也。
イリス「・・・」
その動きに、改めて警戒を強めるイリス。
和也「・・・今のは」
イリスが攻撃する瞬間。
その一瞬に、今まで見たことも無い色を感じ
直感でそれを回避しただけだった。
それが、まさかイリスの一撃を避けることに繋がるなんて・・・。
自分の動きが信じられないと思っていたときだった。
視界の外から、先ほどの色が迫ってくるのが解る。
前を向くとイリスが左腕を後ろに下げていた。
その周囲に新しい色の動きが見える。
俺は、その色を信じて動く。
イリス「・・・?」
またもフェイントを入れた一撃を綺麗に回避され
イリスは、その違和感に軽く首を捻る。
和也「・・・まさか」
自身の手が震えているのを感じる。
突然見えた新たな色。
それは、俺にとって最後の希望となる。
イリスがまたも急激に距離を詰め
驚異的な連撃を放ってくる。
しかし、それらを全て回避する。
和也「行けぇぇぇっ!!」
未だ信じられない想いがあった。
だからこそ、今起こっている奇跡を
信じたいという気持ちを刀に込める。
色の流れの合間を狙った一撃。
ガキンッ!!
イリス「―――ッ!?」
こちらの一撃を左腕で受け止めたイリス。
だかその瞳が見開いている。
金麟が一切反応しなかったのだ。
何の抵抗もせず、こちらの一撃が通ったことに
驚くイリス。
更にそのまま蹴りを放つ。
当然、金麟に阻まれるはずだが
金麟は何の反応も見せない。
イリスは、咄嗟に右のトンファーで受け止める。
彼女の顔は、驚いたままだ。
しかしスグに警戒心からか
彼女の方から一度距離を取ってくる。
イリス「・・・何をしたの?」
和也「・・・別に何も」
イリス「嘘をつかないで。
金麟が急に反応しなくなるなんて」
和也「・・・」
イリス「・・・そう、あくまで私の邪魔をするのね」
その瞬間、膨大な色の膨らみを感じる。
色としては初めて見るが
きっと、それは恐らく・・・
和也「・・・」
次の攻撃が、彼女に一撃決める最大のチャンスになるだろう。
正直、まだ完璧と言えない能力でこんな賭けには出たくない。
足も自然と後ろに下がろうとする。
だが、それでもと自身に言い聞かせ
勇気を出して刀を構える。
勝負は、きっと一瞬だ。
ほんの少しでも見逃せば終わる。
だから俺は、イリスの全てを見逃さないように
ジッと彼女を見る。
イリス「行くわよ、和也。
直撃するとさすがに壊れちゃうから
気をつけてね。
でも、大丈夫よね。
だって和也だもん」
もはや意味の解らない言葉を無視して
相手の動きに合わせる。
イリス「竜(ドラゴン)の息吹(ブレス)ッ!!」
放たれたのは、竜族の切り札。
必殺の威力を持った圧倒的な一撃。
迫ってくる何層にも重なる色の波を見極める。
和也「うおぉぉぉぉぉっ!!!」
俺は、正面から竜の放つ最強の息吹に向かって
刀を振り抜いた。
・・・・・・・・・。
・・・・・・。
・・・。
強烈な光が収まると、2つの影が重なっていた。
イリス「・・・」
和也「・・・」
イリスは、竜の息吹を放った左腕を前に突き出した状態で
止まっている。
その喉元には、黒く光る一本の刀。
イリス「まさか、竜の息吹を斬るなんて・・・ね」
その顔は、何処となく嬉しそうでもあった。
和也「・・・頼む。
武器を捨てて、降参してくれ。
・・・キミを、斬りたくはない」
彼女を倒すことは出来た。
彼女を殺すことも出来た。
だが、そんなことはしたくない。
彼女が自分の意思で、こちらに来てもらわないと
意味がないからだ。
だからこそ、俺は祈るように投降を呼びかける。
イリス「・・・やっぱり和也は和也だね。
本当に、私が思った通り。
私だけの王子様だわ」
和也「何を言って―――」
強烈な衝撃が腹部を襲い
そのまま大きく吹き飛ばされる。
地面に何度かぶつかりながら、地面を滑ってようやく止まる。
和也「・・・がっ」
口から血が出る。
腹部に受けた一撃で、骨が何本かやられたようだ。
身体も思うように動かない。
イリス「少しそこで眠っていてね、和也。
次に目覚めた時は、二人の世界が完成しているはずだから」
笑顔でそう言うイリスを見て
自然と涙が出る。
和也「(俺は結局・・・彼女を止められないのか)」
悔しかった。
ただ、ひたすらに悔しかった。
ゆっくりと街の方へと歩き出すイリスを
止めることも出来ない。
そもそも、声すらもう出ない。
だが、それでも俺は手を動かし
横に落ちていた鬼影を持つ。
そして立つはずのない身体を必死に動かそうとする。
まだ諦めたくなかった。
もう諦めたくなかった。
そんな想いが無駄と知りつつ身体を動かそうと
必死にもがく。
そんな時だった。
?「それでこそ、リピス様の認めたお方です」
突然現れた声。
イリスも立ち止まり、ゆっくりこちらを向く。
俺のスグ横に、何時の間にか現れたのは
メイド服を着た竜族。
メリィ=フレールが立っていた。
第14章 届かぬ想い ―完―
まずは、ここまで読んで頂きありがとうございます。
最近、季節の変わり目で寒くなってきました。
そしてバッチリ風邪をひいてしまいました・・・。
リピス編も、いよいよ次で最終話となる予定です。
そしてリピス編の次は、セリナ編へと続く予定となって
おりますので、よろしければお付き合い頂けるとありがたいです。