Tiny Dungeon Another Story   作:のこのこ大王

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最終章 決着、そして・・・

 隣に立っているメリィさん。

 彼女の気配に俺は、一切気づかなかった。

 

 やはり、彼女も大戦争経験者ということか。

 

メリィ「噂を聞いた時は、何の冗談かと思いましたが

    実物を見ても、やはり冗談にしか思えませんね」

 

イリス「・・・アナタも、私の邪魔をするの?」

 

メリィ「私は、ただ和也様を引き取りに来ただけですよ」

 

 そう言うと俺を軽々と持ち上げる。

 

メリィ「少し我慢して下さいね」

 

和也「ぐっ・・・」

 

 その振動で痛みが全身に広がる。

 

イリス「私から和也を奪うつもりねっ!?」

 

メリィ「・・・う~ん」

 

 少し悩むように首を捻った後

 

メリィ「結果的には、そうなりますね」

 

 ニヤッとした顔で、そう答えた瞬間だった。

 

 強力な力に身体が引っ張られる。

 

 物凄い速さで流れる周囲の背景。

 

 気づけば高速で走るメリィさんに

 まるで物を運ぶように引っ張られ、移動していた。

 

和也「・・・これは」

 

 自分の身体が少し光っていて

 身体中の痛みが消えていく。

 

メリィ「とりあえず、応急処置程度になりますが

    少しはマシになりましたか?」

 

和也「メリィさん、回復魔法が使え―――」

 

 彼女の方へ振り向いた瞬間、言葉を失う。

 

 竜族であるはずの彼女の背中には

 真っ白な六翼があった。

 

メリィ「・・・ああ、これですか?

    私の父は神族なんですよ」

 

 竜族の母から生まれる子供は、必ず竜族の娘である。

 しかし例外として稀に、父親側の特性を受け継いだ子供が

 生まれる場合がある。

 

 しかし、それでも六翼もの翼を受け継ぐ竜族なんて

 さすがに聞いたことが無い。

 

メリィ「・・・あの。

    そんなにジッと見られると

    さすがに照れるのですが」

 

 翼に見とれていると、メリィさんと目が合う。

 珍しく恥かしがるメリィさんを見て

 急にこちらも恥かしくなる。

 

 視線を逸らした瞬間―――

 

 ドォーンッ!!

 

 後ろの方で大きな音が聞こえた。

 

 音のした方向に視線を向けると

 こちらを追いかけてくるイリスの姿があった。

 

メリィ「・・・はぁ。

    面倒ですねぇ」

 

 そう言いながらも、森を抜け

 街の屋根の上を走る。

 

 後ろから来るイリスは

 一見何もない空間を何度も殴りながら走ってきている。

 その余計な動作で、なかなかこちらに追いつけない。

 

 魔眼を開放していた俺は

 何が起こっているのか、しっかりと見えていた。

 

 メリィさんは、後方を確認していないにも関わらず

 イリスの進行方向に薄いウォーターシールドを

 定期的に設置して邪魔をしている。

 

 それだけならイリスを止めることは出来ないのだが

 彼女は、魔力の密度をかなり変化させていた。

 

 要するに、壊れやすい壁と壊れにくい壁を

 見分けがつかないように設置しているのだ。

 

 簡単に壊せる壁なら走りながら軽く殴るだけで十分であり

 力を込める必要はない。

 しかし、壊れにくい壁はそうはいかない。

 力を込めた一撃で破壊しなければならない。

 

 毎回、力を込めて破壊していけば

 無駄に力を使ってしまうし、走る勢いを殺してしまう。

 なので毎回全力攻撃というのは効率が悪い。

 

 しかしそうしなければならないのであれば

 そのつもりで行動するため、ロスを減らすことも可能となる。

 

 だから、そうならないように壊れやすい壁で相手を油断させ

 ここぞというタイミングで強力な壁を出現させることで

 殴って初めてそれと気づいた時には

 足は止まっており、目の前の壁を殴る動作が必要となる。

 結果的に大幅に時間を取られ、こちらに追いつけないのだ。

 

 的確な足止めを行いながらも

 こちらに回復魔法をかけ続けてくれていて

 しかも高速で足場の悪い屋根の上を走っている。

 

 ちょっと困った癖のあるメイドという仮面に

 見事に騙されていた。

 リピスが竜界のNo2だと言っていたことを思い出す。

 やはり『破滅の竜』の二つ名は、伊達ではないと言うことか。

 

メリィ「・・・ちっ」

 

 舌打ちと共に膨れ上がる膨大な魔力。

 六翼が生み出す潤沢な魔力で術式が組まれていく。

 

メリィ「和也様。

    少し手荒に動きますので、ご注意を」

 

和也「っ!?」

 

 その言葉で、後ろのイリスが

 何をしようとしているのかに気づく。

 

イリス「ドラゴンブレスッ!!」

 

 イリスが後ろから放ってきた竜の息吹。

 

 直後に、大きく上に跳躍するメリィさん。

 足元どころか、周囲の建物全てが光の中に消える。

 

 発光が落ち着き、周囲が見えるようになった瞬間

 俺は、二重に驚いた。

 

 眼下に広がるのは、破壊された街並み。

 イリスの一撃で周囲の建物は全て消し飛ばされ

 ほとんど痕跡すら残っていない。

 その強力な一撃に驚いた。

 

 そして何も無いはずの空中を

 俺を持ったまま走るメリィさんに、また驚く。

 

和也「・・・これは、まさか」

 

 魔眼が捉えたのは、メリィさんの足元。

 空中で着地するタイミングで

 アイスシールドを一瞬だけ発生させ

 それを足場に空中を走っているのだ。

 

 魔法は応用力だと学園でよく聞いてはいたが

 この光景を見ると、その言葉の重みが解る。

 柔軟な発想が、常識をはるかに超えていた。

 

メリィ「和也様。

    もう少しご辛抱下さい。

    あと少しです」

 

 そう言いながら更に移動速度を加速させるメリィさん。

 

 何となく気になって後ろを振り返ると

 はるか後方に、イリスが立っている。

 

 こちらを見る瞳は、野生の獣のように鋭く

 強烈な敵意に満ちていた。

 

 

 

 

 

最終章 決着、そして・・・

 

 

 

 

 

 街から少し離れた森に建つ2つの大きく立派な建物。

 

 学園フォースが管理する学園寮。

 ここには、街をはるかに越える数のゴーレム達が

 集まってきており、生徒達とゴーレムの戦いが続いていた。

 

神族男生徒A「もらったっ!!」

 

 儀式兵装の剣による一撃で魔力コアを潰され

 土塊と化すゴーレム。

 

魔族男生徒A「魔法が効かないってだけだろっ!!」

 

 ゴーレムの一撃を魔法で受け止めた後

 儀式兵装の剣でゴーレムを押し返す。

 

ギル「任せろっ!!」

 

 押し返されてよろけるゴーレムを側面から

 双剣で切り裂く。

 

ゴーレム「ガァァァ・・・」

 

 コアを潰され倒れるゴーレム。

 その近くで、ゴーレム達が寮の中へとなだれ込もうとするも

 

アレン「遅いっ!!」

 

 高速の3連撃で3体のゴーレムが土塊になる。

 

ゴーレム「グアアアァァァ!!」

 

 乱戦の間をすり抜け、アレンの後ろに回り込んだゴーレムが

 腕を大きく振り上げる。

 

 それに気づいて、軽く避けると

 カウンター気味に槍を突き出そうとする。

 

 しかし―――

 

アレン「・・・ちっ」

 

 舌打ちしたアレンは、後ろに軽く跳躍する。

 すると炎の竜がゴーレムに巻きつくように

 現れる。

 

ヴァイス「ドラゴンフレイムゥゥッ!!」

 

 竜は、巨大な火柱となりゴーレムを焼き尽くそうとする。

 だが・・・

 

ゴーレム「アアァァァッ!!」

 

 まるで効いていないという感じで

 あっさりと周囲の炎を吹き飛ばすゴーレム。

 

ヴァイス「・・・何故だっ!?」

 

 悔しそうに横の壁を殴るヴァイス。

 

ギル「おいおい。

   魔法が効かないってのは、もうみんな試しただろ」

 

ヴァイス「私は、ヴァイス=フールスだぞっ!?

     魔王の血族たる私がっ!!

     この私の魔法がっ!!

     たかがゴーレム如きに効かぬなどっ!!

     認めんっ!!

     認められるかぁぁぁぁっ!!」

 

 そう言いながら魔法を乱射するヴァイス。

 ヴァイスは、剣を使った接近戦もちゃんと実力がある。

 しかし彼の場合は、魔法による圧倒的な攻撃というものが

 自分のスタイルであり自信でもあった。

 

 それが使い魔の1つに分類されるゴーレム相手に

 効かないということが、彼にとっては屈辱だったのだろう。

 

 しかし周囲の生徒達からすれば、いい迷惑だ。

 

 効かない魔法を周囲にばら撒かれ、迂闊に飛び出せない。

 魔王の血族であるがゆえに

 潤沢な魔力によって魔力切れは、なかなか起きない。

 そして下手に高威力であるがゆえに、強引に防御しながら

 前に出ることも出来ない。

 

 結局ゴーレムの味方をしていると言われても仕方が無いほど

 彼の行動は、邪魔であった。

 

 しかし彼は魔界においては名門貴族だ。

 その彼に下手にちょっかいを出して

 面倒なことに巻き込まれたくないと考えるのは

 皆同じだろう。

 だから誰もが見てみぬふりを決め込んでいた。

 

魔族男生徒C「どうだった?」

 

レイス「やっぱり、女子寮の方も同じみたいだな」

 

 後方で女子寮への連絡手段を模索していた集団は

 レイスとファナが持つ思念で会話出来る魔法アイテムで

 連絡を取らせていた。

 

魔族男生徒D「しかし羨ましいぜ。

      そんな貴重なマジックアイテム持ってて

      更にそれで連絡が取れる相手が女子寮に居るなんて」

 

魔族男生徒E「まったくだ。

      しかもファナちゃん、可愛いもんなぁ」

 

周囲の魔族男生徒達「リア充めっ!!」

 

レイス「・・・お前らが連絡しろって言ったんだろうが」

 

 うんざりだという顔のレイス。

 彼からすれば、ずっとその話題ばかりを振られ続けている。

 確かに彼女とそうなれたらという気持ちもあるが

 いい加減にしてくれという想いも強い。

 

神族男生徒C「女子寮もってことは、街も危なそうだな」

 

神族男生徒D「さすがに教師達も動いてるだろう」

 

 状況がわからず、突撃すべきか

 慎重に行くべきか、男子寮内では意見が割れていた。

 そんな時だった。

 

ギル「いや、待てよ。

   女子寮も襲われてるんだよな?」

 

レイス「ああ、ファナの話じゃ

    向こうも比較的防戦に徹しているから

    ほとんど被害は出ていないらしいが

    ゴーレムの数が多すぎるって言ってたな」

 

ギル「ということは、非常時の今。

   救援として女子寮内部に入ることは

   可能という訳だ」

 

 その言葉に周囲の男達は、ざわつき始める。

 

魔族男生徒G「つまり、合法的に秘密の園に入れる訳か・・・」

 

神族男生徒E「しかも、助けを求める女子生徒達がいっぱいだ」

 

魔族男生徒H「ってことはだな。

       助けが必要だよな」

 

神族男生徒F「そりゃ男として困ってる女性を助けるのは

       当然だな」

 

ギル「そして颯爽と現れる男。

   ゴーレムの魔の手から女生徒達を助け出す。

   ・・・そして彼女達は、自分を護ってくれる

   男の背中に、キュンっと来る訳だ」

 

男子寮の男達「王道的なイベントじゃね~かっ!!」

 

 丁度その瞬間だった。

 

ヴァイス「・・・ぐっ」

 

 魔力が尽きて立っていられなくなり

 片膝をついたヴァイスを見て、それは起きた。

 

魔族男生徒J「今しかないっ!!」

 

神族男生徒G「どけどけっ!!

       邪魔なんだよっ!!」

 

 男達が一斉に突撃を開始する。

 

単純な男達「千載一遇のチャンスを邪魔するなぁぁぁぁぁ!!!」

 

 突然、一斉突撃をする男生徒達に

 ゴーレム達は押し負ける。

 

ゴーレム「ガァァァ!!」

 

神族男生徒A「俺の邪魔をするなぁぁぁ!!」

 

魔族男生徒B「大人しく土塊になってろぉぉぉぉ!!!」

 

 攻撃を仕掛けるはずが、左右からの同時攻撃という

 カウンターを受け、あっさりと倒されるゴーレム。

 

 他のゴーレム達も欲望に忠実な生徒達の突進の波に飲まれて

 次々と撃破されていく。

 一体、今までの戦いは何だったのかと思える展開。

 

 殺気立った男達によって、男子寮周辺のゴーレムは

 短時間で一掃される。

 

欲望に忠実な男達「行くぜっ!!

         俺達を待つ女子寮にっ!!」

 

 我先にと争うように集団が走っていく。

 

ゴーレム「ア・・・アアァ」

 

 殺し損ねたゴーレムが修復を開始し始める。

 しかし―――

 

 ドスッ!

 

 短くも重い音と共にゴーレムが崩れ落ちる。

 

アレン「まったく。

    詰めの甘い連中だ」

 

 興味が無かったアレンは

 彼らが中途半端に蹴散らしたゴーレム達の完全な破壊のために

 1人残って周辺の後始末をすることを選ぶ。

 

 そして男子寮には、もう1人残っている人物が居た。

 

ヴァイス「・・・くそぉぉぉ!!

     私はっ!!

     私はぁぁぁぁっ!!!」

 

 何度も床を殴るヴァイス。

 完全にプライドを汚された彼は

 ただひたすら叫び続けるのだった。

 

 

 ・・・・・・・・。

 ・・・・・。

 ・・・。

 

 

 空中をひたすら走っているメリィさんが

 学園中央にある大きな公園の上を通る。

 

 その公園の広場に人影が1つ。

 

和也「・・・あれは」

 

 それは、竜界の姫。

 

 『金色の竜牙』リピス=バルトだった。

 

メリィ「姫様のことなら大丈夫です。

    ご心配には及びません」

 

 優しくそう言うと、そのまま

 リピスを通り過ぎていく。

 

 その時、リピスと目が合う。

 彼女は、笑顔だった。

 まるで心配するなと言っているような、そんな笑顔。

 

 そんなリピスを見て、自然とこちらも笑顔になる。

 そしてそのまま彼女とすれ違う形で

 メリィさんに運ばれていくのだった。

 

 ・・・ちょっと見た目が悪すぎるのが

 しまらない感じではある。

 

 

 和也を見送ったリピスは

 儀式兵装を手に、相手の到着を待つ。

 

 

 そしてついに2人の金竜が出会う。

 

 

イリス「あら。

    わざわざ待っててくれるなんて」

 

 悠長な声と共に現れたイリスだが

 その瞳には殺意に満ちている。

 

リピス「・・・感謝しろ。

    私自らが相手をしてやる。

    お前は、その存在そのものが

    竜族への冒涜だからな」

 

イリス「ひどいわ。

    私が何をしたっていうのかしら」

 

リピス「お前が被害者だと思っているのは

    恐らく和也ぐらいだろう。

    ほとんど無差別に人を殺す化け物が

    ・・・図々しいにも程がある」

 

イリス「・・・和也を返して。

    私の愛しい人を奪わないで」

 

リピス「何が愛しいだ。

    ・・・お前の語る愛は

    ただのママゴトにしか見えない」

 

イリス「そんなことはないわ。

    和也は、私の王子様。

    私は彼を愛しているもの」

 

リピス「だから所詮は、ママゴトだと言うのだ。

    恋と愛の区別もなく

    ただの『理想』を押し付けるなど

    話にもならん」

 

イリス「・・・どうやら、話をしても

    無駄なようね」

 

リピス「ようやく気づいたようで何よりだ」

 

 リピスがそう答えた瞬間。

 

 イリスが目の前まで一瞬で距離を詰めてくる。

 そして左の大きな爪を振り下ろす。

 

 リピスが左のトンファーで受け止めると

 金属がぶつかる音が響き、火花が散る。

 

 イリスが右のトンファーを持つ手に

 力を込めて動かそうとした瞬間

 リピスが右のトンファーで

 小さく最小限の動きで攻撃を仕掛けてくる。

 

 それを上半身を後ろにそらして避け

 逆に蹴りをカウンター気味に放つ。

 だが、下の地面が持ち上がり

 その蹴りに出した足を邪魔するように壁となる。

 

イリス「ちっ」

 

 無言のアースウォール展開に苛立ちながら

 後ろに下がろうとするが、周囲にも同様に

 シールドが展開され、四方を囲まれる。

 

 だが、一瞬何かが閃いたかと思えば

 大きな爪の一振りで四方全ての壁が切り裂かれ

 破壊される。

 

 スグに周囲を確認するもリピスの姿は見えない。

 

 ハッとして横に転がるように飛ぶ。

 すると自分の居た場所に

 上から降ってきたリピスの一撃が地面に刺さり

 地面が抉れる。

 

 スグに立ち上がるとリピスの前まで走りこみ

 右のトンファーを勢い良く放つ。

 

 リピスは、その場で一回転してから

 左のトンファーをイリスの右の攻撃にぶつける。

 

 激しい音と衝撃が駆け抜ける。

 互いに金麟を持つ者同士。

 一撃の重みが他の竜族とは大きく違う。

 

 リピスが少し物理的に後ろに下げられるが

 イリスも後ろへと跳躍して距離を取る。

 

 お互いに一呼吸してから

 再度、イリスから仕掛けてくる。

 

イリス「アースジャベリンッ!!」

 

 10本以上はあるだろうか。

 無数の土槍がリピスに向かって降り注ぐ。

 

リピス「くだらんな」

 

 右のトンファーから弾装の薬莢が1つ排出される。

 そしてリピスが右手を大きく前に突き出す。

 

リピス「はぁっ!!」

 

 気合の入った一撃は、弾装の魔力を正面に放出し

 飛んできていた土槍全てを破壊する。

 

イリス「・・・へぇ」

 

 その行為を軽く鼻で笑うと

 左手の爪の大きな弾装から薬莢が排出される。

 瞬間的に膨れ上がる魔力。

 明らかに単装式だ。

 

 強化された爪を大きく振り上げてこちらに

 迫ってくるイリス。

 

 振り下ろされる一撃を受け止める・・・ふりをする。

 

イリス「―――ッ!?」

 

 左手の爪を前に出ることで避けつつ

 腕を掴んでくるリピス。

 

 その両手には、何時の間にか儀式兵装が無かった。

 そして気づけば視界は逆さを向いている。

 イリスがそれを認識した瞬間だった。

 

リピス「はあぁぁぁぁっ!!!」

 

 地面に何かが激突する凄まじい音。

 イリスが背中から地面に叩き落され

 大きくバウンドして再度地面に落ちる。

 

 人族どころか、魔族・神族であっても

 恐らく即死しているだろう。

 

リピス「・・・やはり、付け焼刃では

    上手くいかないものだな」

 

 イリスを投げた一撃。

 それは以前、亜梨沙から教えてもらったもの。

 

 風間流・城落し

 

 しかし不完全だったため、落下点がズレて

 頭ではなく背中から地面に叩きつけてしまった。

 その失敗にリピスは、ため息をつく。

 

イリス「・・・ふふっ。

    あははっ、あはははは」

 

 倒れていたイリスから聞こえてくる笑い声。

 

リピス「・・・ちっ。

    ついに化け物が本性を現したか」

 

 立ち上がるイリス。

 たとえ不完全だったにしろ、金麟の反応しない

 投げ技で、しかも金竜の全力で投げたのだ。

 これほどの一撃を喰らえば

 普通の竜族ですら死んでいるだろう。

 

 しかし、イリスは立ち上がった。

 

 その姿を変化させながら。

 

 何時の間にか両腕が儀式兵装のような爪になっている。

 しかも装備しているのではなく

 融合しているように見える。

 

イリス「もう絶対に許さない。

    めちゃくちゃに壊してあげる」

 

 一瞬で距離を詰めてきたイリスは

 両腕を広げて左右から物を掴むように

 攻撃してくる。

 

 それを両手のトンファーで受け止める。

 しかし―――

 

リピス「・・・くっ」

 

 明らかに威力が上がっている。

 力で押し負けそうになるのを堪えていると

 爪が手のように曲がり

 掴もうとしてくる。

 

 それに瞬時に気づいたリピスは

 力を込めて足を曲げ、全力で後ろに向かって跳躍する。

 

 何とか相手の攻撃を避け

 後ろに着地するリピス。

 

 イリスの爪と手が一体化している。

 そのため爪で掴むという行為が可能となっているため

 トンファーで迂闊に受け止めてしまえば

 そのまま腕ごと握られてしまう。

 

 戦術を見直す必要があるなと考えた瞬間。

 着地を狙って走りこんできたリピスの爪による突き。

 

 槍のように鋭い一撃を避けると、イリスは構わず

 連続で突きを入れてくる。

 

 さながら槍の連撃といった攻撃を避けきると

 今度は爪と化した手を広げて

 振り回してくる。

 

 下手に受け止められない一撃を

 リピスは打ち払いながら相手の隙を探す。

 

 イリスが蹴りを放ってきた瞬間に

 同じく蹴りを合わせて勢いを殺す。

 

 これは、和也がよくやる防御方法だ。

 リピスは、普段から和也を見ていた。

 当然、その戦い方もだ。

 

リピス「それがまさかこんなところで役立つとはな」

 

 そう言いながら、体勢を立て直そうとするイリスの

 足元を狙った蹴りを放つ。

 

 体勢の悪さから防御を諦め、後ろに跳躍して距離を取るイリス。

 

 低い姿勢でこちらを睨むイリス。

 その周囲で魔力が膨れ上がる。

 

リピス「・・・弾装まで融合したのか」

 

 イリスが跳躍する。

 

リピス「・・・速いっ!!」

 

 飛び掛ってくるような一撃を打ち払うと

 再度、突進してくるイリスを

 ギリギリで回避する。

 

 大きな爪を振り回し、暴れるように突っ込んでくるイリス。

 徐々に慣性が上乗せされ破壊力を増す攻撃。

 

 時には周囲を走りまわってこちらの死角に回しこもうとしたり

 フェイントを入れて、かく乱までしてくる厄介さに

 さすがのリピスも防戦一方となる。

 

 何度目かの撃ち合いの後、イリスの右腕に釣られて

 防御しようとした瞬間、逆方向からの蹴りを喰らう。

 

 大きく吹き飛び地面を1度バウンドして滑りながら止まる。

 

イリス「あははっ。

    あははははっ。

 

    待ってて和也。

    もうスグよっ!!

    もうスグだからねっ!!」

 

リピス「・・・煩い獣だ」

 

 何とか直前で膝を出して受け止めたため

 直撃は回避したものの、全身に溜まっていく

 ダメージは、無視出来るものではない。

 

 どうしたものかと考えている時だった。

 イリスが動き出す。

 

イリス「・・・もう飽きてきたから

    壊しちゃうわね」

 

 左手に集まる金麟の大きなうねりに

 イリスが次に何をしようとしているかが解る。

 

リピス「・・・ほぅ。

    私に、それで勝てると思っているのか?」

 

イリス「何も残らないようにしてあげる。

    その方が、ゴミより良いでしょ?」

 

リピス「・・・はぁ」

 

 ため息をつくリピス。

 

リピス「本当に、お前という存在は

    竜族にとって冒涜でしかないな」

 

 リピスの手にも金麟が集まり始める。

 しかし―――

 

イリス「な、何よ・・・それ」

 

 イリスは、驚く。

 

 リピスに集まっているのは金麟。

 しかし、ただの金麟ではない。

 

リピス「・・・私の全力の一撃だ」

 

 リピスは、金麟にアースシールドを以前使っていたことがあった。

 それは彼女が、金麟に魔力を馴染ませることが出来るからだ。

 

 それゆえに、今彼女の手元に集まっている金麟は

 魔力が練りこまれ通常の何倍もの密度になっている。

 

イリス「そ、そんなことが・・・。

    魔力と金麟を融合させるなんて・・・」

 

リピス「竜界王女として、竜族の代表者として、そして金竜として。

    お前の存在を認めない。

    この場で決着を付けさせてもらう」

 

イリス「冗談じゃないわっ!!

    2人だけの・・・私と和也の世界を創るのっ!!

    邪魔なんてさせないわっ!!」

 

 そして先にイリスが動いた。

 

イリス「ドラゴンブレスッッッ!!!」

 

 その攻撃は、地面を抉りながら突き進む。

 金竜が放つ竜族最強の一撃がリピスに迫る。

 

リピス「これが・・・私から手向けと受け取れっ!!

    竜(ドラゴン)の咆吼(バスター)ァァァァァッ!!!」

 

 その一撃は、イリスの放った竜の息吹を一瞬で飲み込み

 全てを光で覆った。

 

 凄まじい爆発と発光が、周囲の何もかもを消し去る。

 

 そして少し時間が経って

 音が消え、光が無くなり

 ようやく辺りを見ることが出来るようになると

 公園は、跡形も無く消えていた。

 

 周囲は、ただの荒地と化し

 全てが消え去っていた。

 

 たた、1つを除いて。

 

イリス「・・・ああ、和也。

    和也は、ドコ?」

 

 荒地の中に倒れていたのは、イリスだった。

 全身がボロボロで血まみれ。

 左腕も吹き飛ばされたのか、失っていた。

 

 ただひたすら、虚ろな瞳で

 和也を呼び続ける。

 

リピス「だから所詮は、ママゴトだと言ったのだ。

    お前の『愛』は、実らない」

 

イリス「・・・和也、大好き。

    大好き・・・大好き・・・大好き」

 

 壊れた機械のように大好きと繰り返すイリスに

 リピスは近づいて・・・止めを刺した。

 

リピス「もし、違った形で出会えていたなら―――」

 

 途中で言葉を止め、立ち上がるリピス。

 

リピス「いや、やめておこう。

    考えても無駄なことだ」

 

 そう言ってイリスに背を向け

 リピスは、歩き出すのだった。

 

 

 こうして一連の騒動が、ようやく一つの決着をみる。

 

 街に居たゴーレム達は、途中で到着した竜族の特殊部隊と

 学園教師や学園長達によって倒され

 一番数が多かった寮周辺のゴーレムも

 生徒達によって倒され、ゴーレムは全て居なくなった。

 

 その後、まもなく暴れる金竜の姿を見たという

 複数の目撃情報が出るも、竜界はそれを否定。

 

 そもそも金竜の生き残りがリピス1人だということは

 世界中の誰もが認めていることであり

 その他に居たなんてことは、誰も証明出来ない。

 

 結局、現世界体制に反感を持つ者による攻撃だとして

 この事件は処理されることになった。

 

 ただ、街の3割の住民が犠牲となった事件だけに

 学園はしばらく休校となり

 皆は、街の復旧を手伝っている。

 

 街には常時、一定の部隊が駐留することが決まり

 見回りの兵士を見かけることが多くなり

 少し物騒になったが、まあ仕方が無いだろう。

 

 俺は結局、ベットの上で事の顛末をリピスから聞かされた。

 

 イリスやゴーレムを創り出したと思われる集団の死体を

 メリィさんが、発見していると説明され

 その上で、イリスの件は他言無用と念押しされる。

 まあ、当然の話だろう。

 

 イリスのことが話せないため、大怪我をした俺を

 心配して駆けつけたフィーネ達には

 本当のことが話せずに悪いことをしたと思っている。

 

 時間は、止まることはない。

 皆が、次へと歩き出そうとしている。

 

 

 ―――そして数日後。

 

 メリィさんの回復魔法のおかげで

 通常よりもかなり早く、動けるようになった俺は

 いつもの訓練に使っていた丘に来ていた。

 

 そこはすっかり荒地となっている。

 

和也「・・・イリス」

 

 俺は、イリスとの出会いを思い出す。

 突然現れた彼女。

 数日ではあったが、楽しかった日々。

 

和也「俺は、また守れなかったのか・・・」

 

 自然と手に力が入る。

 彼女の笑顔が離れない。

 

 後悔の念が押し寄せてくる。

 

?「見つけた」

 

 突然後ろから響く声に

 ハッとして振り返る。

 

 そこには小柄な少女が立っていた。

 

和也「・・・キミは」

 

 彼女を見て何かを思い出しそうになるが

 突然頭が痛み出す。

 

 ・・・思い出せない。

 

久遠「私の名前は、久遠」

 

 そして差し出される手。

 

久遠「さあ、行きましょう」

 

 何故だか解らない。

 しかし、彼女の言葉に手が伸びる。

 

 ゆっくりと彼女の手を取った瞬間。

 周囲は、光に包まれる。

 

 そして和也と少女は、跡形もなく姿を消した。 

 

 

 

 

 

最終章 決着、そして・・・ ―完―

 

 

 

 

 

・おまけ

リピス編が、そのまま進んだその後の世界。

 

*風間 亜梨沙

風間の家に生まれ、若くして風間流の師範代になった

若き天才。

 

学園を卒業後、王女達と一緒に

合同結婚式を挙げて念願だった和也の嫁になる。

1人の息子が生まれ、幸せに暮らした。

 

和也が多忙なため、彼に代わって

風間一族を纏める立場となる。

 

また最近、竜族で風間流を学ぶものが増え

対応に追われているという。

 

 

 

 

*フィーネ=ゴア

魔王の1人娘として生まれ

幼少期から激しい人生を送ることになるも

そこで運命の相手に出会い

人らしく生きるようになった少女。

 

学園を卒業後、合同結婚式で

夢だった和也の嫁となる。

 

マリアの補佐をしながら

魔界の姫としての立場で

様々な外交をするようになり

その存在は、女性達の憧れとなる。

 

息子が1人生まれ、その子を溺愛した。

 

 

 

 

*リピス=バルト

竜界の王女にして金竜最後の生き残り。

大戦争では激動の人生を経験し

一度は、挫折したこともある王女。

 

学園卒業後は、彼女の提案により藤堂 和也との

合同結婚式が行われ、彼女も妻となる。

 

和也が竜の祝福を受け、正式に竜王となり

彼女も正式に竜王妃となる。

 

5人の娘にも恵まれた彼女は

竜族を上手くまとめて繁栄させ

後の竜界の歴史書に、名前が頻繁に出るほど

有名な王妃となる。

 

 

 

 

*セリナ=アスペリア

神界第一王女として生まれ

常に王女としての重圧に悩まされてきた少女。

 

学園卒業後の合同結婚式に参加して

和也の嫁となる。

 

2人の娘を育てながらも神王妃である

母オリビアの手伝いをしながら

神界を上手くまとめることに奔走する。

そのおかげで和也にたまにしか会えず

不満を言っているらしい。

 

 

 

 

*エリナ=アスペリア

神界第二王女として生まれるが

その責任を丸投げて、自由に生きようとする

非常に奔放な性格の少女。

 

学園卒業後、合同結婚式に参加して

姉共々、和也の嫁となる。

 

自分の研究施設を作り

オリジナル魔法の研究を始め

戦闘だけでなく生活に役立つ魔法を

次々と作り出していく。

その結果、学園フォースの教科書に

名前と功績が載るほどの有名な研究者となる。

 

1人の娘を育てながら、たまに姉の子供を預かったり

するも意外に家庭的で、家事と育児と仕事全てを

完璧にこなす優秀な母親となり、周囲を驚かせた。

 

 

 

 

 

 

上記は、あくまで可能性の話。

物語が別の可能性を選ぶのであれば

また違った結末を迎えることになるだろう。

 




リピス編を最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

リピス編が終了でございます。
やっと終わったという感です。
でも残念ながら本編全体的に見ると
まだまだ先が長いんですよねぇ・・・。

ちょっとだけ現実逃避したいです(笑)

次からは、セリナファン待望の
セリナ編がスタートします。
・・・セリナファンって居るのかな?とか
一瞬思ってしまいました。

それぞれの各ヒロイン編も
最後の話に繋がる大事な話になりますので
頑張っていきたいです。
・・・更新ペースも、出来れば維持したい。
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