Tiny Dungeon Another Story 作:のこのこ大王
第10章 双子の気持ち
俺は、大きく深呼吸をした。
そして―――
和也「―――ッ!?」
急に横の茂みから何かが襲い掛かってきた。
?「ガアアァァァ!!」
狼のようなものが飛び掛ってくる。
咄嗟に鬼影で切り抜ける。
?「アアァァ・・・」
いきなりだったため普通に斬ったが
魔力コアを捉えていたのだろう、相手は崩れ落ちる。
だが、相手に違和感がある。
和也「・・・いまのは」
確かにゴーレムだった。
だが、その形状はどう見ても狼型。
通常、ゴーレムは人型のみだ。
確かその姿以外だと・・・魔力効率がどうとか・・・
えっと・・・あれ?
な、何だかとにかく効率悪いし、制御も非常に難しいらしい。
ああ、やはり魔法系の授業は苦手だ。
そんなことを考えていると
ゴーレムの集団が目の前まで迫ってきていた。
和也「・・・何だ、こいつら」
ゴーレム達は、四足で狼のような姿や
八本足で、蜘蛛のような形状をしている奴も居る。
こんなに色々な姿をしているなんて聞いたことがない。
そしてゴーレム達は、全て俺を見ている。
どいつもこいつも目が無いにも関わらず
目線が合っているような感覚がする。
和也「ちっ、化け物どもめ」
周囲には2~30匹ぐらいのゴーレムが居る。
この程度なら、先ほどのように魔法を乱射されなければ
何とでもなるが、後ろから来ている数は
ちょっとご遠慮願いたい。
こちらの動きに合わせるように
ゆっくりと戦闘態勢になるゴーレム達。
初手の行動で全てが決まる。
意を決して仕掛けようとした瞬間―――
?「ファイア・アローッ!」
?「ウォーター・アローッ!」
突然の声と共に火と水の矢が何本も飛んでくる。
そして・・・
ゴーレム達「ググアアァァァ!!」
矢を受けたゴーレム達が次々と崩れていく。
矢が飛んできた方角から、足音が聞こえる。
やってきた相手は―――
セリナ「和也くん、大丈夫ですか!?」
エリナ「和也、生きてる!?」
神界王女姉妹だった。
和也「セリナにエリナ・・・。
どうしてここに?」
セリナ「和也くんの様子を見に来たんです」
エリナ「そうしたら、ベストタイミングだったって訳だね」
俺の隣まで来た2人は、軽くこちらに微笑みかけると
正面の敵を見据える。
エリナ「さってと。
じゃあ、倒しますかね」
セリナ「エリナちゃん、無茶なことはしないようにね」
エリナ「わかってますよっと」
そして2人は、同時に攻撃を再開する。
そこからは、一方的だった。
エリナの広範囲魔法の連続攻撃で
ゴーレム達は、次々とコアを潰され崩れ落ちるか
身体の一部を破壊され、進行が遅れる。
そしてセリナも儀式兵装を弓へと変化させ
狙撃で1体づつ確実に撃破していく。
それでも敵は、かなりの量だ。
少しづつ距離が縮まっていく。
しかし―――
エリナ「そろそろ本気でいこうかしらっ!」
翼を広げ、弾装を使う。
一瞬にして強大な魔力が集まる。
これだけの魔力を一瞬で収束させるなんて
一体どれだけの制御技術を持っているのだろうか。
エリナ「エリナちゃん必殺っ!
ファイア・ストームッ!!」
謎の掛け声と共に発動した魔法は
そんなことがどうでも良くなるほどの威力だった。
出現した炎の竜巻は、周囲を巻き込み
巻き込んだ全てを燃やし尽くしている。
しかも火と風の属性双方の特性を上手く利用して
次々と相手を飲み込んでいく。
やはり彼女は、天才だ。
これほどの魔法を難なく使用し
数多くの敵を一瞬にして仕留めることが出来るのだから。
彼女の魔法が消えると
周囲には、焼き尽くされた草の残骸が残る丘だけが残った。
まさに圧倒的な戦い。
だが歴史に名を刻んだ者達は、その誰もが
今のエリナ以上の戦果を次々と上げている。
それは、俺の目標の1つだ。
彼ら、彼女らに追いつくことが出来れば
もっと多くを守ることが出来る。
そんなことを考えていると
2人がこちらにやってくる。
セリナ「相変わらず、強力な魔法を簡単に使うんだから・・・」
エリナ「やっぱり魔法は、派手にドカーンといかないとね」
和也「お前、それ魔族の発想だぞ・・・」
セリナ「和也くん。
それにしても、あれは何だったんですか?」
和也「いや、俺もさっぱり解らん」
エリナ「ゴーレムっぽかったんだけど
な~んかちょっと違う気もするんだよねぇ」
3人で悩んでみるも、結論なんて出るはずも無い。
結局、この日は時間も遅かったので
女子寮に帰るだけとなった。
第10章 双子の気持ち
和也「悪いな」
その言葉と共に振り抜かれた紅の一撃で
神族生徒が倒れる。
フィーネ「和也~♪」
亜梨沙「さすが兄さんです」
リピス「本当に、和也は良い動きをする」
エリナ「さっすが和也」
彼の周囲に常に居るフィーネ達は
和也の活躍に喜び、これでもかと声を上げている。
ミリス「・・・まあまあですね」
ギル「いいね、いいね。
そうでなきゃリベンジする気にならないぜ」
ヴァイス「ふん。
やはり神族は、弱者の集まりだな」
彼を認めている者、認めたくない者、そういった者達も
また彼に視線を向けていた。
そんな中、彼女は―――
セリナ「和也・・・くん・・・」
他の種族から恨みや憎しみを持たれ
今も蔑まれ続ける種族・・・人族として生まれた少年。
そして儀式兵装を持たない戦士。
なのに今、フォースで一番気になる男の子。
特に最近、彼を見ていると
何だかモヤモヤとした気持ちになってくる。
どうしてだろう?
考えても答えは出ない。
こんなモヤモヤは、以前エリナちゃんと話した時以来。
セリナ「あ―――」
思い出した。
そう、こんな時こそ―――
・・・・・・・・。
・・・・・。
・・・。
その日の夜。
少し早いかもと思いながらも、彼が居るいつもの丘へ行く。
丘に近づくと、剣が空気を斬る独特の音が聞こえてくる。
そして私は、スグに目的の人物を見つける。
和也「・・・セリナか?」
さすが、というべきか。
気配だけで私と気づくなんて。
セリナ「こんばんは」
出来る限りさりげなく声をかけてみる。
和也「・・・何か用か?」
セリナ「え、えっと~」
いきなり用件があることがバレてます・・・。
セリナ「・・・」
和也「・・・」
そして沈黙。
・・・どうしましょう。
こういう時、どうしていいのか解りません。
和也「・・・まあ、話したくなったらでいいよ」
そういうと、剣の素振りに戻る和也。
ああ、気を使わせてしまった。
思えば、いつもそうだ。
周囲に気を使ってもらってばかり。
セリナ「・・・あ、あの・・・ですね」
和也「だから無理しなくてもいいって」
セリナ「それではダメなんですっ!」
思わず叫んでしまう。
セリナ「それでは・・・ダメなんです」
和也「・・・それは、どうしてだ?」
セリナ「・・・私は。
私は、神界第一王女。
私がしっかりしなければ、いけないんです。
神界を代表する者として―――」
和也「それは、オリビアさんが望んでいることか?」
こちらの言葉を遮るように発せられた問いかけ。
セリナ「それは・・・」
和也「違うだろ?」
確かにお母さんは、私達に自由に生きて欲しいと
言っています。
でも、私は神界の王女。
ただ自由に生きるという訳にはいきません。
神界に居た時は、常に周囲から
念願の八翼。
天才的な才能。
これぞ我らが夢見た王女。
このように様々な期待をかけられてきました。
そしてそれに応えるのが王族の使命だとも。
神族みんなの期待を、夢を裏切る訳にはいかない。
セリナ「・・・でも」
和也「神界第一王女ってのは、キミの全てか?」
唐突な質問。
その意味が理解出来ず首を傾げる。
和也「言い方を変えよう。
キミは神界第一王女であり、王女としての立場以外では
動いてはいけないのか?
王女として不適切と言われれば、学園を辞めることも
友達を選ぶことも、食べるものや着る服だって
周りの誰かに決められてもいいのか?」
セリナ「それは・・・」
和也「要するに、そういうことさ。
キミは確かに王女だ。
それを捨てろなんて言わない。
でもあくまでそれは一部だ。
キミは、セリナだ。
セリナ=アスペリアという一人の神族でもある。
キミは、キミだ。
他の誰でもない。
肝心なのは、キミ自身の気持ちなんじゃないのか?」
その言葉を聞いて、心がざわつく。
神界では、まったく逆の・・・。
王女としての振る舞いばかりを求められた。
どうして彼は、その逆を言うのだろう。
どうして私は、その言葉でこんな気持ちになるのだろう。
セリナ「・・・」
彼に対する様々な想いが胸の中でグルグルと回る。
もっと彼のことを知りたい。
気づけば、私は以前から聞きたかったことを聞いていた。
セリナ「どうして和也くんが、騎士の型を知ってるんですか?」
和也「騎士の型?」
セリナ「これです」
私は、剣を持ってるように垂直に構える。
和也「ああ、それか」
セリナ「神族ではない和也くんが、どうしてそれを知っているのか。
そしてどうしてそれをやるのか、気になっていたんです」
和也「・・・昔、とある事件で神界に行くことになってな。
その時に出会った人から教えてもらったんだよ。
その人に、俺は本当の強さとは何かを教えてもらった気がする。
あの人に出会わなければ、今の俺は無かっただろう」
そう、あの儀式の日。
新たな翼を得たフィーネが裏切り者達を倒した後
魔王妃の率いる部隊と、事件を知った神族の部隊が
ほぼ同時に乗り込んできた。
人族の少年を抱える魔族の少女。
その2人以外は、全て死んでいた。
生き残り2人は、大事な事件の証人だ。
魔王妃のマリアは、娘が決して離そうとしない
人族の少年共々、魔界に引き取るつもりだった。
だが神族側も黙っていない。
魔界との交渉に有利になる事件の証人を
連れていかれる訳にはいかない。
2人とも神界に身柄という声が上がる。
だが魔界の王女であるフィーネを神界になんて
人質と同じようなものだと反発され
互いに妥協した結果、フィーネは魔界へ戻り
俺は神界に連れて行かれることになった。
神界で、何度も同じようなことばかり質問・・・
いや、あれは尋問とでもいうべきか。
何度も何度も同じことばかり聞かれうんざりしていた。
だが、ある日を境にそれが無くなり
ある程度、自由に動き回れるようになった。
そんな時だった。
あの人に出会ったのは。
さすがにフィーネとのことまでは話せないため
ある程度、誤魔化しながらセリナに関係のある部分だけを
選んで話す。
セリナ「・・・その人から教わったんですか?
あの・・・言葉も」
和也「『この力を、守りたい全てのために』。
そう、あの人は、この言葉を口癖のように言っていたよ」
その言葉は、昔に何度も聞いた神王だったお父様の口癖。
セリナ「・・・もしかして」
和也「そう、俺が出会い・・・そして師の一人として
今でも尊敬している偉大な人。
今は亡き神王アルバート=アスペリア」
俺に、強襲型魔法剣・紅を譲ってくれた人。
俺に、魔眼とその使い方を教えてくれた人。
そして、俺に本当の強さを教えてくれた人。
セリナ「・・・」
そうなんじゃないか・・・と思っていた。
だって彼は、あまりにもお父様の面影を残していたから。
和也「やっと、これを渡せる頃合かな」
そう言って彼が差し出してきたのは
とても古そうな封筒だった。
それに書かれた文字を見てハッとする。
『親愛なる我が娘 セリナへ』
そう書かれた封筒を受け取る。
震える手で、ゆっくりと開ける。
『セリナへ。
お前の自由に生きなさい』
簡潔に、そう書かれただけの手紙。
和也「『私には、2人の娘が居てね。
いつか会うことがあったら渡してくれないか』
・・・そう言われて持ってたんだよ」
セリナ「・・・お父様」
まるで私が、悩むことが解っていたという手紙。
たった一文の言葉。
でも、それだけで私は何かを許されたような気持ちになる。
自然と流れる涙。
セリナ「ああ・・・ぁぁあぁぁ・・・・」
気づけば和也に抱きついて号泣し始めるセリナ。
和也「・・・」
・・・まったく。
こうなると解ってて手紙を渡したでしょ・・・。
昔を思い出す。
突然出会った、何処となく底知れない雰囲気を持った男。
当時は、神王だと気づかず、あの人も名前しか名乗らなかったため
おじさんと呼んでたっけか。
俺の魔眼の師であり、心の師でもある。
人界に戻ってしばらくして、あの時のおじさんが
神王であり、その神王が亡くなったことを知った。
『また会えるといいな』と言っていた癖にと
当時は、怒ってたっけか。
昔のことを色々と思い出しながら
俺は、彼女が泣き止むまで
抱きしめ続ける。
そして寮への帰り道。
しっかりと握られた手。
手を繋いで歩く2人は、そのまま女子寮の前に到着する。
セリナ「・・・今日は、ありがとうございます」
静寂を破ったのは、セリナのそんな一言。
和也「いや、俺の方こそ
色々と黙ってて悪かったな」
名残惜しそうに離れる手。
セリナ「じゃあ、おやすみなさい」
和也「ああ、おやすみ」
先に女子寮の中へと入っていったセリナだったが
何かを思い出したかのように戻ってくる。
そして―――
和也「―――!?」
目の前に彼女の顔。
唐突に塞がれる唇。
セリナ「・・・ん、ちゅ・・・」
それは、紛れも無くキスだった。
呆然としている俺から、そっと離れるセリナ。
セリナ「・・・私。
フィーネ達や、エリナちゃんにだって
絶対に負けませんっ♪」
楽しそうに笑顔でそう言うと
今度こそ女子寮の中へと走っていった。
和也「・・・」
今のは、一体何なんだ。
エリナも昔、頬だったが突然キスしてきたことがあった。
神族の挨拶のようなものなのか?
・・・いや、そんな話聞いたことがない。
本当は理解しているはずだが、それを隠すように
出口の無い迷路に迷ったが如く余計な言い訳を探す和也だった。
そして次の日の朝。
いつも通り、皆で玄関前に集まる。
朝の挨拶を済ませ、いつも通りに学園に行くはずだった。
セリナ「お、おはよう・・・ございます」
エリナ「おっはよ~」
それは、まるで待ち構えていたような双子姉妹の登場。
和也「ああ、おはよう」
俺に続いて皆が挨拶する。
セリナだけ気のせいか、俺と視線を合わせたがらない。
まあ、理由が解らない訳でもないが・・・。
昨日キスされたことを思い出す。
・・・やばい。
自分も顔が赤くなりそうだ。
そんな時、すっと隣に移動してきたエリナ。
エリナ「昨日、セリナちゃんとキスしたんだって?」
小声だが、はっきりと聞こえた声。
思わずエリナの方へ振り向く。
エリナ「にひひっ♪
私の情報網を甘く見ちゃダメだよ~」
和也「・・・いや、それセリナから直接聞き出したんだろ」
エリナ「まあ、そんな細かいことはどうでもいいの。
・・・問題は、セリナちゃんとキスしたこと」
両手で俺の顔をしっかり押さえるエリナ。
エリナ「セリナちゃんとは唇で、私は頬。
これって不公平だよね」
和也「不公平とか、そういう問題じゃ―――」
エリナ「・・・んぅ、は、ちゅ・・・」
口を塞ぐような強引なキス。
フィーネ「ああああぁぁぁぁぁぁっ!!?」
亜梨沙「―――ッ!!?」
リピス「・・・ほぅ」
メリィ「あら、まあっ♪」
セリナ「もう、エリナちゃんは・・・」
周囲の反応なんて気にしてないというような
少し長めのキス。
そしてゆっくりと離れる唇と唇。
エリナ「・・・なんか、照れるね」
少し顔を赤らめるエリナ。
その普段とは違う乙女な顔に
俺の心は、カウンター気味のクリティカルヒットを
喰らったように一撃ダウンしそうになる。
・・・これは危ない。
本能がそう告げる。
よく考えれば、周囲に居る皆は全て
これ以上無いほどに美少女ばかりだ。
和也「(・・・まさかフォースに来て
こんな悩みを抱えることになるとはな)」
周囲では、先ほどのキスについてエリナを問い詰めたり
俺の腕を取り合ったりしている。
だが、俺は今。
完全に思考が遠くに行っていた。
いや本当に・・・。
どうなるんだろうな。
ふと見上げた空は、雲一つ無い快晴。
眩しいほどに輝く太陽に、笑われている気がした日だった。
第10章 双子の気持ち ―完―
ここまで読んで頂き、ありがとうございます。
セリナ編のスタートです。
そのスタートでいきなり投稿遅れてしまい
申し訳ないです。
最近、また仕事が忙しかったり
体調悪かったりで・・・。
個別編を書いてると
どうしても他のキャラが出しにくくなり
出番が減ってしまいます。
既に扱いに困っているキャラが・・・(笑)
それら色々とまとめて最後に
上手く繋げられるといいなと思いながら
今回は、この辺で失礼します。