Tiny Dungeon Another Story 作:のこのこ大王
そこは、一面に『死』が漂っていた。
燃える建物。
逃げ惑う人々。
悲鳴。
怒号。
爆発。
1人、また1人と・・・人が死んでいく。
肉を切り裂く音がする。
それは、また1つの命が消えたことを意味する。
?「はぁ・・・はぁ・・・」
立派な鎧に身を包んだ騎士は
その鎧にいくつもの返り血を浴びながら
燃える炎の中を、身を引き摺るようにして歩く。
騎士A「カイン様ッ!!」
騎士の1人が、その男に駆け寄る。
カイン「・・・住民の避難は、終わりましたか?」
騎士A「はいっ!!
あとは我々だけですっ!!」
その言葉を聞いて、彼は
はるか後方に目を向ける。
カイン「・・・これでは、オリビア様に合わせる顔がないですね」
立派な城が炎に包まれていた。
その城は、ただの城ではない。
神族を象徴する城。
そしてそれを見つめる男は
若くして神界宰相の地位まで出世した騎士。
その名は、カイン=ライト。
騎士A「住民に犠牲を出さず、更にこれほど素早い反撃準備は
カイン様出なければ不可能でしたっ!!
・・・不甲斐ないのは、むしろ我々の方です」
カイン「・・・では、私達も合流して
この借りを、一秒でも早く返してやりましょうっ!!」
そして2人は、炎の中を走り抜けていった。
第12章 大戦争の残火
昼休みの学園長室。
部屋は、いつもと違い重い空気に包まれていた。
マリア「・・・で、状況はどうなってるんだ?」
オリビア「まもなく神界側は、制圧出来るみたいだわ」
マリア「それで終わってくれるとありがたいのだがな」
リピス「・・・まったく。
神王妃と魔王妃が2人揃って何を言ってるんだ?」
マリア「それは、どういうことだ?」
リピス「メリィ、説明を」
メリィ「現在、大規模な部隊の行軍を確認しています」
そう言って、地図を取り出すと
複数の印をつけていく。
オリビア「―――ッ!?」
マリア「・・・ほぅ」
メリィ「今回、神界を襲った規模と同等の大きさです」
オリビア「こんなにも大規模に動けるなんて・・・」
マリア「しかし、ここまで広範囲に部隊を広げるからには
何か理由があるはずだ」
リピス「それは、もちろん・・・」
そう言って地図の一部に指を指す。
リピス「―――ここ、だろうな」
マリア「・・・やはり、か」
オリビア「・・・」
リピス「さて、どうするべきかな」
誰もが口を閉ざしていた。
正直、答えは一つしかない。
しかし、それは大きな賭けとなるだろう。
そして大きな犠牲を伴うだろう。
だが、それしかないと解っているからこそ
だれもそれを口に出来ずにいた。
しばらくの静寂の後
マリア「・・・戦いの準備をしよう」
オリビア「それは―――」
リピス「いや、私も賛成だ。
状況から考えて、戦いは避けられないだろう」
マリア「こうなってしまった以上は、最善を尽くすしかない。
・・・責任問題は、戦いの後だ」
オリビア「・・・そうね。
わかったわ。
被害は最小限に抑えなきゃね」
リピス「皆には、辛いことを押し付けてしまうだろうが
何もしなければ・・・逃げればいいという訳には
いかないからな」
マリア「・・・よし。
では、方針から決めよう」
3世界のトップが話し合っているころ
学園の中庭でも
違った問題が発生していた。
重い空気が周囲を覆っている。
だが、それだけではない。
このピリピリとした感じ。
通常の授業では無い・・・そう、特別な授業。
闘技大会やクラス対抗戦の時のような
独特の緊張感のある感じに似ている。
まるで、ライバルと対峙しているような
そんな空気だ。
エリナ「はい、あ~ん」
セリナ「ダメですよ、エリナちゃん。
まずは、こっちからです」
和也「・・・」
2人の王女が俺の左右に座り
『あ~ん』と食事を口元に持ってくる。
亜梨沙「それは、妹である私の仕事です。
勝手に取らないで下さい」
フィーネ「私もっ!
私もやるのっ!」
そしてそんな2人に乗っかり
加わろうとする2人。
ドウナッテルノ、コレ?
リピスが居ないから、誰も止めるものが居ない。
・・・いや、リピスが居たら面白がって自分も参加してるか。
そこで、ふと思ったことを口にする。
和也「そういや、リピスは何で居ないんだ?」
亜梨沙「何でも、学園長に話があるそうですよ。
あ、そこは妹の席ですよっ!」
セリナ「そう言えば、お母さんも
用事があるって学園にきてましたね。
ダメですよ、押さないで下さいっ!」
フィーネ「母様、今日は複雑そうな顔をしてたわ。
何かあったのかしら?
あ、それ私もやるのっ!」
エリナ「3人集まってるってことも考えられるよね。
まあ、何だかんだで種族トップだし、色々あるんじゃないの?
ちょっと、そこは私の席よっ!」
亜梨沙「意外と世間話をしてるだけって可能性もありますよ。
甘いですね、その程度で私の邪魔は出来ませんよ」
フィーネ「まあ母様だからね。
真面目な話が長続きしないっていうのは納得出来るわ。
和也の隣は、私なのっ!」
セリナ「でも、急に慌てて集まってた感じでしたよ。
お母さん、かなり慌ててましたから。
やったっ♪ 和也くんの隣は貰いましたよっ!」
エリナ「大きなことになりそうなら、嫌でも解るから
今のところは、大丈夫なんじゃない?
あ、和也。
はい、あ~ん♪」
亜梨沙「まあ、何かあれば言ってくるでしょう」
兄さんは、それ苦手ですよ」
セリナ「そうなんですかっ!?」
フィーネ「そうなのっ!?」
エリナ「ホントっ!?」
亜梨沙「昔から『食感が苦手だ』と言ってましたからね」
エリナ「ううぅ・・・」
短く唸りながら、箸で持ち上げていたものを戻すエリナ。
確かに彼女が掴んでいたやつは、俺が苦手なものだ。
亜梨沙「・・・ふっ。
全然ダメですね」
何故か、勝ち誇った顔をする亜梨沙。
フィーネ「ち、ちなみに。
和也は、何が好きなの?」
亜梨沙「この中で言えば・・・割とこれとか好きですね」
そう言いながら亜梨沙が箸で掴もうとした瞬間
エリナ「もらったっ!!」
横から突然、エリナの箸が現れて
それを奪っていく。
亜梨沙「な・・・卑怯ですよっ!」
エリナ「恋愛は、過程じゃなくて結果よ、結果」
そう言いながら、奪ったものを俺に前に出す。
エリナ「はい、あ~ん」
会話しながらも、和也の隣や『あ~ん』の順番を取り合う4人。
それを見ていた周囲から上がる呪詛のような声。
かつて、学園に入学した時には
こんな未来を想像すらしていなかった。
だから嬉しいと思う反面、どうしていいのか本当に解らない。
この状況で、誰か1人を選ぼうものなら
大騒ぎになるかもしれない。
・・・それに、だ。
和也「(こんなにそれぞれ可愛く、違った魅力を持った
娘達から、誰か1人に絞れるか?)」
普通男なら選べないだろう。
そう自分に言い訳をしながら、差し出される食事を
口にするしかない和也だった。
和也が、そんなことを考えているころ。
荒地で爆発が起きる。
そこでは、ゴーレムの集団が、人界に迫っていた。
しかし、それを阻もうと人界の軍隊が戦いを仕掛けていた。
だが人界側の数は、ゴーレム達よりも圧倒的に少ない。
数にして3倍ほどの差だ。
普通なら、止められるはずの無い状況。
圧倒的な劣勢に思えた人界側。
本格的な戦いが始まり、集団同士がぶつかる。
だがその瞬間、その一瞬で全ての決着がつく。
?「「ふはははっ!!
根性じゃ!
根性が足りんっ!!」
大柄の男が、ゴーレムの大群に突っ込むと
それらを手に持った巨大な棍棒で、空へと吹き飛ばす。
そしてその大柄の男に続けとばかりに
大勢の人族が、斬り込んでいく。
皆、黒い服装で身を包み
白い鉢巻のような紐を腕に巻いていた。
その紐には黒色で『風』と書かれている。
ゴーレム「ギギッ!!」
八足の虫のようなゴーレムが
大きな鎌のようになってる腕を振り回してくる。
しかし―――
ガンッ!!
相手の一撃を儀式兵装の剣で受け止める。
風間剣士A「ふっ!」
相手に蹴りを入れて後ろに大きく跳躍する。
その瞬間―――
ゴーレム「ギ・・・ガ・・・?」
自分がやられたことすら解らずに崩れ落ちるゴーレム。
風間剣士Aが蹴りで上に跳躍した瞬間
その下を滑るように低い姿勢で走りこんできた風間剣士Bが
下段から跳ぶように上段へと儀式兵装の刀を振り上げた。
ゴーレムの視線からは決して見えない位置からの連携攻撃。
ゴーレム「グアガガガァ!!」
ゴーレムを倒した風間剣士Bが着地した正面に居た
人型のゴーレムが、両腕を振り下ろしてくる。
だが―――
ゴーレム「ガ・・・ガガ・・・」
腕を振り下ろす前に、両腕を切り落とされ
コアを潰されて崩れ落ちるゴーレム。
風間剣士B「風間流 ―火の章―『火炎弐連』」
風間剣士A「風間流 ―水の章―『裂水斬』」
後ろに居た風間剣士Aによる一撃が両腕を切り落とし
その援護が来ることを知っていたかのように
正面からの風間剣士Bによる一撃でコアが破壊されたのだ。
一瞬の出来事に、ゴーレムは反応すら出来なかった。
彼ら以外も、次々とゴーレム達を倒していく。
その光景は、一方的な虐殺にも見えるほど。
まさに圧勝。
1人1人の強さが、普通の兵士とは
比べ物にならないほどの強さ。
大吾「がっはっはっ!!
ワシらがおるかぎり、誰も人界には
近づけさせんぞっ!!」
その言葉に、周囲から勝利の声が上がる。
大柄の男。
彼の名は、近藤 大吾(こんどう だいご)
亜梨沙と同じ風間師範代の肩書きを持ち
風間の里に住む者だ。
そして彼の周囲にいる者は、全て風間の里の住人。
それは人界が誇る、最強の部隊でもある。
風間剣士C「しかし大吾様。
この使い魔のような連中は
何なのでしょう?」
大吾「ワシも解らん。
だが、心配するな。
師範達が、調べておる。
だからワシらのやるべきことは
このような連中を、人界に入れさせんことだ」
風間剣士C「確かに、そうですね。
では、私は帰還の準備を始めます」
大吾「うむ、たのむぞ」
風間剣士は、笑顔で頷くと後ろへ下がっていった。
それを確認した後、大吾は
空を見上げて呟いた。
大吾「・・・何か大変なことが起こりそうじゃわい」
大吾が不安を口にしたころ。
神界では、カインも勝利を手にしていた。
神族騎士A「しかし、これほど素早く城を取り戻せるとは
さすがは、カイン様です」
カイン「いえ、皆が頑張ってくれたおかげです。
・・・欲を言えば、こうなる前に何とか出来ればよかったのですが」
神族騎士B「そんなことはありません。
あの奇襲を防ぐことは不可能です。
あんな攻撃を受けて、被害がこの程度で済んだ。
それをやってのけたカイン様を、誰が非難出来るでしょうか?」
カイン「それでも、私はそれを防ぎたかった」
被害が抑えられたからといって
まったく被害が無かった訳ではない。
失われたものも多く、決して楽観視していいことではなかった。
神族騎士A「・・・そう言えば首謀者は、結局見つかりませんでしたね」
神族騎士B「そもそも、連中は何がしたかったんだ?
せっかく占領した城も、殆ど抵抗せず逃げていくとは・・・」
カイン「・・・何故、でしょうね」
そこがカインも一番引っかかっていた。
何故、ここまで用意周到な計画をして城を落としたにも関わらず
まるで、それが目的ではなかったかのように捨てたのか。
そこまで考えて、ハッとする。
カイン「まさか、狙いは―――」
・・・・・・・。
・・・・・。
・・・。
その日の夜。
森の中を進む集団があった。
?「で、神界の方はどうなったのかしら?」
?「予定通りに足止めしました。
これで何の問題もありません」
?「なら、他の連中はどうしたよ?」
?「全て予定通りです。
まったく問題ありません。
下手な横槍など気にせず、好きなだけ暴れられますよ」
?「そうか、そうか。
そいつぁ~結構だ」
声は、とても満足そうだった。
?「これで、俺達の戦いが始められる。
・・・そうだ。
『大戦争』は、終わっちゃいねぇっ!!」
その声に周囲からも声があがる。
彼らの声を聞きながら、瞳を閉じる。
あの時の光景が蘇る。
全ては、あの時から始まった。
?「待ってろよ・・・偽善者ども。
『借り』は、必ず返してやるよ」
目を開けなからそう呟くと
夜の闇に溶け込むかのように彼らは
森の中へと姿を消した。
?「ふふふっ♪
や~っと見つけましたっ☆」
しかし、その集団を見つめる影が1つ。
?「なるほど・・・やはり本命はこちらでしたか」
少し乱れた紅い髪を軽く整えると
口元に笑みを浮かべる。
?「まあ、そんなに死にたいのでしたら
徹底的に殺してあげないと・・・ですよねっ☆」
そう呟くと、その影は音も立てずに姿を消した。
第12章 大戦争の残火 ―完―
まずは、ここまで読んで頂きありがとうございます。
仕事が年末で忙しいです(切実)
そして今年の風邪は、完治しても
スグ別の風邪を呼んでくるので
体調もずっと悪いまま(もうヤダ)
そのため更新ペースが低下しておりまして
大変申し訳ありません。
年末年始の休暇あたりで何とか挽回出来ると
いいなという希望的観測です。
物語的には、そろそろ戦いが始まる感じとなります。
なかなか登場キャラが多く、全てを上手く使いきれずに
悩んでますが、何とか頑張りたいと思ってますので
寛大な心で次話をお待ち頂けると助かります。