Tiny Dungeon Another Story   作:のこのこ大王

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第14章 決戦・学園都市 ―後編―

 

 

魔族男生徒「ファイア・アローッ!!」

魔族女生徒「アイス・アローッ!!」

 

ゴーレム「グ・・・ガァァァ・・・」

 

 魔法の直撃を受けてゴーレムが倒れる。

 

ゴーレム「ガァァァァッ!!」

 

 別のゴーレムが大きな瓦礫を投げつけてくる。

 

竜族生徒「はぁっ!!」

 

 横から飛び出した竜族生徒が、飛んできた瓦礫を破壊する。

 

魔族男生徒「お前も死にやがれっ!!

      ファイア・アローッ!!」

 

 火矢の直撃で、瓦礫を投げたゴーレムも崩れ落ちた。

 

魔族女生徒「助かったわ」

 

魔族男生徒「へっ!

      余計なお世話だぜ」

 

竜族生徒「あっそ。

     じゃあ次に何かあってもアナタは無視するわ」

 

魔族女生徒「・・・そうしちゃえば?

      つまらない見栄っ張っちゃって」

 

魔族男生徒「なっ!?

      べ、別にいいじゃね~かっ!」

 

竜族生徒「ええ、別に構わないわよ。

     さっきも言った通り、無視するだけだもの」

 

魔族男生徒「竜族のくせに―――」

 

?「はいはい。

  お前の負けだよ、一年坊主」

 

 竜族生徒に迫ろうとした魔族男生徒の頭の上に手が置かれる。

 

魔族男生徒「誰だっ!!」

 

 子供扱いされ、怒りながら振り向く魔族男生徒。

 

レイス「種族なんざ関係ない。

    女を敵に回した時点で、男は負けさ」

 

魔族男生徒「あ、あんた・・・レイス=ジャハル」

 

レイス「ん?

    俺のこと知ってるのか?」

 

魔族男生徒「学園の魔族では・・・わりと有名、です」

 

 いきなり目の前に実力者の1人として数えられる

 5階級の先輩が現れ、すっかり毒気を抜かれる魔族男生徒。

 

レイス「俺って有名らしいぜ?」

 

ファナ「そうやってスグに調子に乗るんだから・・・」

 

 レイスが楽しそうに振り返ると

 そこには、ファナ=リドルドが居た。

 

ファナ「交代よ。

    貴方達は、一旦後ろに下がって休憩しなさい」

 

魔族女生徒「はい、先輩っ!

      ありがとうございますっ!」

 

竜族生徒「では、私も失礼します」

 

レイス「お前も、後ろに下がって休め」

 

魔族男生徒「は、はいっ!!」

 

 魔族男生徒も慌てて一礼をすると後ろに下がっていく。

 

レイス「・・・しっかし、アレだな」

 

ファナ「・・・何よ」

 

レイス「どうして一気に襲ってこないで

    こうも散発的なんだ?」

 

 レイスが言うように、攻めてきた直後は

 それなりに大勢で攻めてきていた軍団だが

 スグに組織的な攻撃は無くなり、こうして定期的に

 ゴーレムが数体、侵入してくるぐらいになっている。

 

ファナ「・・・そんなの相手に聞けば?」

 

レイス「その辺のゴーレムでも捕まえてか?」

 

ファナ「ひょっとしたら会話出来るゴーレムが居るかもよ?」

 

レイス「んな、バカな話があるか」

 

ファナ「・・・まあ、バカな話は置いておくとして

    多分アレのせいじゃない?」

 

 そう言って、はるか前方を指差すファナ。

 その場所では、先ほどからいくつもの建物が崩れ落ちている。

 

レイス「・・・まあ、派手にやってるねぇ」

 

ファナ「どこの誰かは知らないけど

    楽させてもらえるんだからいいんじゃない?」

 

レイス「・・・確かにそうだな」

 

 そう言いながら、レイスは遠くに視線を向けていた。

 

 レイスが向けた視線の先。

 建物が崩れ落ちた場所では、戦いが起きていた。

 

グレイ「この『殲滅のグレイ』と呼ばれた、グレイ=バーンズを相手に

    よく戦えていると褒めてやろう」

 

 神族軍の軍服を着た長身の男は、疲れているにも関わらず

 それを感じさせない表情で、そう言い放つ。

 

アイリス「それは、こちらの台詞です。

     我々を相手に、よく粘りますね」

 

カリン「それも、ここまでですっ!!」

 

リリィ「疲れているのぉ~、バレてますよぉ~?」

 

 リピスの護衛である3人の竜族達が、神族の男と対峙している。

 

 グレイと名乗る男は、大戦争を生き抜いただけあり

 攻守のバランスが取れた優秀な兵士であったが、相手が悪い。

 

 彼女ら3人は、リピスの護衛部隊を率いる

 『破滅の竜』の二つ名を持つ、メリィ=フレールが

 その才能を見込んで直接育てている期待の若手達だ。

 

 護衛部隊の中でも上位であり、学園内でも5階級の竜族を越える

 戦闘力を持つ彼女らを一度に3人相手にしては、いかに実力者といえど

 苦戦するのは当然だと言える。

 

 そして更にやっかいなことに―――

 

ギル「おいおい、俺を忘れてもらっちゃ困るぜっ!!」

 

 瓦礫の影から飛び出したギルが、雷矢を放つ。

 

グレイ「くっ!!」

 

 防御魔法が間に合わないと判断して横に跳躍する。

 

 竜族相手には、魔法による遠距離攻撃でゴリ押しするのがセオリーだ。

 竜族は、攻撃魔法が使用出来ず、防御魔法も初級程度しか使えない。

 しかも大多数は、土属性であり完全ガードできないからだ。

 

 しかし、その弱点をギルが的確にカバーしていた。

 彼の援護で、接近戦に持ち込みやすくなり

 結果としてかなり有利な展開に持ち込めている。

 

アイリス「カリン、リリィ。

     次で終わらせますよ」

 

カリン「了解ですっ!!」

 

リリィ「はぃは~ぃ」

 

 アイリスの掛け声で、一斉に飛び掛る3人。

 

 そんな彼女らのスグ後ろでも剣戟が鳴り響く。

 

バガム「『神速のバガム』と呼ばれた

    この俺の速度に追いつけるだとっ!?」

 

 大戦争時、神族軍兵士に支給されていた防具に

 身を包んだ小柄な男は驚きながら、そう叫ぶ。

 

亜梨沙「この程度の速度で神速とか、ふざけすぎです」

 

 そう言いながら亜梨沙は蹴りを放つ。

 

バガム「ぐおっ!!」

 

 まともに決まった一撃に、思わず後ろに下がる。

 

バガム「ふ・・・ふふふっ」

 

亜梨沙「何か、おかしなことでも?」

 

バガム「大戦争から10年・・・。

    まさかこれほどの使い手が居ようとはな。

 

    だが、こうでなくては面白くないっ!!」

 

亜梨沙「はぁ・・・。

    何だか、根性の人を思い出すほど、暑苦しいですね」

 

 バガムが距離を詰めて放った剣による一撃を

 刀で軽く払い除けると、少しだけ後ろに下がる。

 

 そして低い姿勢で刀を構える。

 

亜梨沙「さて、そろそろ終わりにしましょう。

    風間流『舞』鬼刃―――」

 

 

 

 

 

第14章 決戦・学園都市 ―後編―

 

 

 

 

 

 森の木々が爆音と共に薙ぎ倒されていく。

 

ガルス「うおおぉぉぉぉっ!!」

 

 自分の身長を超えるほど大きな大剣を

 身体全てを使って振り下ろす。

 

 しかし―――

 

 ガギィンッ!!!

 

ミリス「ざんね~んですっ☆」

 

 振り下ろされた剣圧で、突風が起きるほどの一撃を

 大斧で軽々と受け止めるミリス。

 

ガルス「くそっ!!

    お前、竜族だなっ!?」

 

 それ以外に説明がつかない。

 いくら強化魔法を使おうが、小柄な少女に

 ここまで自分が力で圧倒される訳が無い。

 

ミリス「不愉快ですが・・・まあいいでしょう。

    私が竜族だとしたら、どうしますか?」

 

ガルス「竜族が、どうして攻撃魔法が使える?

    それにお前には耳がない」

 

 そう、ミリスが竜族ならば

 一番目立つ『耳』が頭にあるはず。

 

 だが彼女には、それが見当たらない。

 

ミリス「それを馬鹿正直に答えると思ってるのですか?」

 

ガルス「・・・」

 

ミリス「まあ、どの道ここで死ぬアナタが

    気にすることではありません」

 

 その言葉と共に、力任せに受け止めていた大剣を押し返す。

 後ろに押し込まれたガルスだが、満足そうに剣を構え直す。

 

ガルス「まさか小娘相手に使うことになるとはなぁ。

 

    ―――パワー・ウォーター・フォースッ!!!」

 

 ガルスの儀式兵装から弾装が弾き出されると同時に

 大剣は、まるで水が刀身を覆うかのように青く光る。

 

 ファーストを初級

 セカンドを中級

 サードを上級

 

 となっている現代魔法において、それを超えるものは

 超級という分類になる。

 

 この超級までたどり着ける者は、その魔法を根本から理解し

 全てを制御出来なければならない。

 それが可能なのは、やはり一部の才能ある者のみとされている。

 

ミリス「・・・超級強化、ですか。

    さすがは『切り込み隊長』と呼ばれただけは、ありますね」

 

ガルス「第3隊で、腕力だけは

    隊長達よりも上だったんだ。

 

    その俺が、竜族とはいえ

    小娘ごときに腕力で負けられるかよっ!!」

 

 強化された大剣をミリスに向けて薙ぎ払う。

 それを後ろに大きく跳躍して回避するミリス。

 

 周囲の木々が、まるで紙のように綺麗に薙ぎ払われる。

 

ガルス「どうだっ!!

    さすがに竜族でも、これは受け止められまいっ!!」

 

ミリス「・・・はぁ」

 

 ため息をつくと、ミリスは感情の一切無い瞳で

 ガルスを見る。

 

ミリス「竜族、竜族、竜族、竜族、竜族。

    ・・・ホント、煩いゴミですね」

 

 大斧を両手で持つと、下段に構える。

 

ミリス「そんなに死にたいのなら、今すぐ殺してあげます」

 

 ミリスの姿が一瞬ブレると、その圧倒的な身体能力で

 ガルスの目の前に迫る。

 

 しかし、ガルスもそれに反応して大剣を上から振り下ろそうとする。

 だが―――

 

 ミリスはガルスの直前で大きく上に跳躍する。

 その瞬間、ミリスの後ろからいつの間にか発動していた

 ファイア・アローが5本飛んできていた。

 

ガルス「ちっ」

 

 舌打ちをしながら大剣をそのまま振り下ろし

 剣圧で火矢を爆発させて潰す。

 

 だがその瞬間―――

 

ミリス「ファイア・ボール」

 

 後ろから聞こえる呪文にガルスは

 咄嗟に横に跳躍する。

 

ミリス「ブレイク」

 

 火球がガルスの横を抜ける瞬間に爆発させるミリス。

 一瞬にして視界が悪くなる。

 

ガルス「させるかよっ!!」

 

 大剣を大きく薙ぎ払う。

 その剣圧で周囲の煙が一気に払われる。

 

ガルス「―――ッ」

 

 周囲の煙が消えた時。

 ガルスは、自身の背中にそっと触れるように置かれた

 手の感触に気づいて、ゆっくりと振り返る。

 

 そこには、いつの間にか後ろに回りこんでいたミリスが

 瞳を閉じた状態で左手をそっとガルスの背中に当てていた。

 

ミリス「竜(ドラゴン)の息吹(ブレス)―――」

 

 

 ・・・・・・・・。

 ・・・・・。

 ・・・。

 

 

 一面を覆った爆音と発光が収まる。

 すると森には、無理やり新しい道を作ろうとしたかのように

 一部分だけ木々が根こそぎ土ごと吹き飛ばされていた。

 

ガルス「ぐ・・・がぁ・・・」

 

 全身ばボロボロ、折れた儀式兵装を杖代わりにし

 口から血を吐きながらも、ガルスが起き上がる。

 

 そんなガルスにゆっくりと近づくミリス。

 

ミリス「・・・せっかくですから教えてあげましょう」

 

 ミリスの後ろからゆっくりと『それ』は現れる。

 

ガルス「・・・紅い・・・六翼と、耳に尻尾・・・だと」

 

 ミリスに今まで無かったはずの、耳や尻尾が現れ

 更に紅い六枚の翼が出現する。

 

ミリス「私の名は、ミリス=ベリセン。

    人は、私をこう呼びます。

 

    ・・・『紅の死神』と」

 

ガルス「ハーフ・・・だった、のか」

 

ミリス「違います。

    私は『魔族』です。

 

    ・・・では、さようなら。

 

    フレイム・ピラー」

 

 ガルスを中心に巨大な火柱があがる。

 その中で、ガルスは無言のまま燃え尽きるのだった。

 

 

 

 同じころ。

 ―――学園都市。

 

和也「はぁぁぁぁっ!!」

 

フィーネ「ファイア・ボールッ!!」

 

リピス「はっ!!」

 

 3人によって次々とゴーレム達が倒されていくが

 一向のその数が減る気配がない。

 

フィーネ「ホント、何でこんなに居るのよ」

 

リピス「ボヤいても数は減らないぞ」

 

フィーネ「それはそうだけど・・・」

 

ゴーレム「シャシャッ!!」

 

 建物の上から、蜘蛛のようなゴーレムが落下してくる。

 

和也「バレバレなんだよっ!!」

 

 落下してくるゴーレムに、紅の刀身を投げつける。

 急所に紅の刀身が刺さったゴーレムは、そのまま崩れ落ちる。

 

リピス「これだけの数を、よく用意出来たものだな。

    今後の調査項目に加える必要があるな」

 

フィーネ「そんな後のことよりも、さっさと目の前の連中を

     蹴散らしましょう」

 

和也「そうだな。

   先に行かせたセリナとエリナも心配だ」

 

 会話しながらもゴーレムを倒し続ける和也達だったが

 更に周囲からゴーレムが集まってくる。

 

リピス「これは、完全に誤算だな」

 

フィーネ「何が、準備は出来てるよ。

     後で、文句言ってやるわ」

 

 集まってきたゴーレム達は、周囲を囲むように展開し

 隙をうかがうようにジワジワと動いている。

 

和也「面倒だなぁ」

 

 横から飛び出してきたサソリのようなゴーレムの一撃を

 『旋風』で返しながらも、周囲の様子に呆れる和也。

 

 そして更に遠くからもゴーレム達が近づいてくる音が聞こえる。

 

和也「完全にハズレくじだな」

 

 ため息をつきながらも、正面から突っ込んでくるゴーレムに

 対応するため剣を構える和也だった。

 

 

 王女姉妹は、トラップのポイント付近まで移動していた。

 もう少しというところで、2人の足は止まる。

 

 正面の瓦礫の上に、女が座っていた。

 

?「この先は、王女様方といえど通行禁止です」

 

 長い髪を印象的に揺らしながら女は、そう声をかけてくる。

 

セリナ「アナタも首謀者の1人ですね」

 

ラナ「ラナ=ハルハムと申します」

 

エリナ「どうしてこんなことをするのよ」

 

ラナ「さあ?」

 

エリナ「馬鹿にしてるの?」

 

ラナ「私に、あの人の考えは解りませんもの。

   ・・・私は、ただあの人のやりたいことを手伝うだけ」

 

エリナ「・・・そう」

 

 エリナは、セリナの方に振り向くと

 

エリナ「セリナちゃんは、先に行って。

    たぶん、スグそこに元凶が居るはずだから」

 

セリナ「何を言ってるんですか、エリナちゃん。

    エリナちゃんをひと―――」

 

エリナ「時間稼ぎに付き合う必要なんてない。

    それに、ここで逃がす訳には行かないでしょ」

 

セリナ「それは、そうですけど・・・」

 

エリナ「そんなに私、信用無いかなぁ」

 

セリナ「・・・」

 

 セリナは、瞳を閉じて考える。

 ほんの数秒だったが、彼女にとっては

 数時間と同等の時間に思えただろう。

 

 ゆっくりと瞳を開ける。

 

セリナ「・・・わかりました。

    絶対に無茶は、ダメですからね」

 

エリナ「それは、こっちの台詞だよ。

    ・・・気をつけて」

 

セリナ「エリナちゃんもね」

 

 そう言葉を交わすと2人は、ラナに向き合う。

 

ラナ「・・・相談事は、終わ―――」

 

エリナ「光の雫よっ!!」

 

 ラナが話終わる前に、魔法による奇襲を仕掛けるエリナ。

 一瞬で、周囲を眩しいまでの光が覆う。

 

ラナ「アイス・ジャベリンッ!!」

 

 光で視界を奪われながらも魔法を放つラナ。

 光が収まり、周囲が見えるようになる。

 

 すると、エリナの横にはアースウォールが

 まるで道のように続いて展開されており

 その土壁にラナの氷槍が突き刺さっていた。

 

 そしてその土壁の道のはるか先に

 駆け抜けるセリナの姿があった。

 

 ラナは、どちらかが自分を抜けていくだろうと判断し

 その移動経路に魔法を放った。

 

 だがエリナも発光の光と相手の魔法を防御するために

 土壁で道を作り、そこをセリナが走り抜けていったのだ。

 

エリナ「・・・残念だけど、アナタの相手は私よ」

 

ラナ「・・・あらそう。

   一人で挑んできた勇気は、褒めてあげる。

   だけど、その元気は何時までもつでしょうね」

 

 互いに儀式兵装を構え直し、対峙する。

 そのまま、にらみ合いが少しの間続くことになる。

 

 

 

 ・・・・・・・・。

 ・・・・・。

 ・・・。

 

 

 

?「ふむ。

  到着したのは、私が一番というところですか」

 

 フォースの正面門の前で、男は呟いた。

 

 ゆったりとした足取りで正門へと歩く男に

 正門前の生徒達は、遠巻きに見ているだけだ。

 

 何故攻撃しないのか?

 それは、単純な話。

 

 一番の激戦となる正門前は、5階級を中心に

 多くの優秀な生徒達が配置されていた。

 

 彼らは、期待通りに大勢押しかけてきた

 ゴーレム達を圧倒する。

 

 まさに圧勝。

 

 これなら余裕だと思った時

 この男が現れたのだ。

 

 そして・・・。

 

 男の後ろには、多くの生徒達が倒れている。

 この男1人にやられたのだ。

 

男「さて―――」

 

 男がこれからどうしようと考えた瞬間。

 

 大量の火矢が男に降り注いだ。

 しかし―――

 

 バンッ!

 

 大量の火矢は、男に当たる前に

 何かに当たって弾けるように消える。

 

男「・・・また無駄なことを」

 

 ため息をつくように、そんな言葉を呟く。

 

?「この私が居るかぎり、貴様に勝ち目などない」

 

 男の前に、一人の生徒が立ち塞がるように飛び出す。

 

ヴァイス「・・・そう。

     『魔王の血族』たる、このヴァイス=フールスが

     お前に引導を渡してくれよう」

 

男「ほぅ。

  魔王の血族・・・ですか」

 

ヴァイス「貴様も運が無いな。

     この私が居る場所に攻撃を仕掛けたのだから」

 

男「ふむ。

  名乗られた以上は、こちらも名乗りましょう」

 

 乱れた前髪を直すと、身なりを整える。

 

ワング「神族軍・第3特別遊撃隊のワング=ハーケンと申します」

 

 礼儀正しく一礼するワングと名乗る男。

 

魔族男生徒「・・・アイツ、死んだな」

 

魔族女生徒「でも、今全員で仕掛ければ・・・」

 

神族男生徒「さっきの戦いを見てなかったのか?

      あんな化け物、どうやって倒すんだよ」

 

神族女生徒「皆殺しが目的なんでしょ。

      どうせなら、仕掛けた方がまだマシだわ」

 

 周囲で弱きになっていた生徒達が

 少しづつ距離を縮めていく。

 

ワング「・・・懲りない人たちですね。

    まあ・・・若者なら、こんなものでしょうかね」

 

ヴァイス「せめてもの情けだ。

     苦しまぬように、一瞬で終わらせてやろう」

 

 竜の形をした炎が、ヴァイスの後ろから

 ゆっくりと姿を現す。

 

ヴァイス「ドラゴン・フレイムッ!!」

 

 炎竜がワングに向かって襲い掛かる。

 

神族女生徒「今よっ!!」

 

 1人の神族女生徒の声と共に

 周囲の生徒達が一斉に攻撃魔法をワングに向けて放つ。

 

ワング「では、私もそろそろ仕事をしますかね」

 

 自分に向かって飛んでくる大量の攻撃魔法を前にしても

 余裕の表情を崩さないワング。

 

 防御魔法すら使用していない所に魔法が直撃し

 大爆発を起こす。

 

 しかし―――

 

ワング「さて、今度は私からで構いませんね?」

 

 煙の中から出てきたのは、無傷のワングだった。

 それを見た生徒達は、驚きの表情で固まる。

 

ヴァイス「・・・くそっ!!

     まだだっ!!」

 

 儀式兵装を構え直すと、ワングに向かって走り出した。

 

 

 

 そのころ、セリナは戦闘を避け

 更に奥へと走っていたが、何かに気づいて

 ゆっくりと足を止める。

 

 そこは、今が戦闘中だということが嘘のように

 静かだった。

 

 誰も居ない街にポツンと立つ男が1人。

 神族軍の軍服に使い込まれた防具。

 手には包帯を巻いている。

 

 男は、ゆっくりとセリナに向き合う。

 

男「ほぅ。

  まさか神界の王女様自ら出てくるとはな。

 

  ・・・これは手間が省けた」

 

セリナ「・・・アナタが、首謀者ですね?」

 

ジャック「神族軍・第3特別遊撃隊

     部隊長のジャック=ダルケンだ」

 

セリナ「亡き神王アルバート=アスペリアが娘。

    神界王位継承権第一位、セリナ=アスペリアです」

 

ジャック「・・・わざわざ死ぬために、ご苦労なことだ」

 

セリナ「アナタの目的は、何ですか?」

 

ジャック「・・・セリナ王女。

     貴女は、今の世界をどう思う?」

 

セリナ「今の・・・世界、ですか?」

 

ジャック「そうだ。

     誰もが大戦争は終結したと。

     この10年は、平和だったと口を揃えて

     言うことだろう」

 

セリナ「・・・」

 

ジャック「だが、実際は違う。

     未だに国境では、小競り合いが多く

     それぞれの国内でも、強硬派と保守派が

     下らない権力争いばかりしている。

 

     そして国を背負いながらもそれを口に出来ず

     どれだけの同胞が、戦争の後に

     くだらないやりとりで死んでいったと思っている。

 

     かつて誇りを胸に戦い続けた日々は

     ただ下らない権力争いの果てに

     邪魔者を排除するだけの装置に成り下がった。

     それが我ら軍人の末路だ。

 

     それに何の意味がある?

     我々は、そんなことのために

     戦ってきた訳ではない」

 

セリナ「・・・だから戦争を再び起こすと?」

 

ジャック「・・・可能性の話だ。

     偽りの平和の影に隠れ

     こそこそと戦争を続けるのなら

     誇りを胸に、堂々と正面から戦争を

     仕掛けるべき。

 

     ・・・だから我々がやるのだ。

     この世界には腐った連中が多すぎる。

 

     そんな連中を全て綺麗に掃除してから

     改めて決めればいい。

 

     戦争をするのか、止めるのかをな」

 

セリナ「・・・一体どれだけの罪の無い人々が

    巻き込まれると思っているのですか。

 

    この学園都市で暮らす人々を

    どうして巻き込んだのですか?」

 

ジャック「この学園都市は、いずれ必ず障害となるからだ。

 

     そしてこの都市から、我々の戦いを始める。

     何かを変えるには、何かが犠牲になることもある」

 

セリナ「どれだけ立派な理由を並べようとも

    力無き人々を巻き込んだ時点で、それはただの自己満足です。

 

    それ以外の方法を考えもせず、ただ自分のしたいことだけを

    しているだけの子供です。

 

    そんなアナタに、思想や理念を語る資格は、ありませんっ!!」

 

ジャック「・・・理解してもらおうとは思っていない」

 

 剣状の儀式兵装を構えるジャック。

 

セリナ「私は、アナタを必ず止めてみせます」

 

 セリナも儀式兵装を手にする。

 

 ゆっくりと距離を詰め・・・そして2人は、激突した。

 

 

 

 

 

第14章 決戦・学園都市 ―後編― ~完~

 

 

 

 

 




まず、ここまで読んで頂きありがとうございます。

セリナ編も残すは、あと1話。
最後の結末は、どうなるのか?

それは最終章のお楽しみということで。

セリナ編の後は、また別の話が始まります。
よろしければ最後までお付き合い頂けると幸いです。
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